パワーハラスメント対応について解説

2020年6月1日、パワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)が施行され、中小企業を除き、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」といいます。)防止のための雇用管理措置を講じることが大企業の事業主に義務付けられました。

ここでいう「雇用管理措置」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。以下、解説します。

企業におけるパワハラ対応の重要性

パワハラは、企業において、重大なリスクとなります。具体的には以下のようなものが考えられます。

重大な経営リスクになりかねないパワハラ問題

⑴ 加害者個人に対して
民法上の不法行為(民法709条)に基づき損害賠償をするよう求められるリスクがあります。事案にもよりますが、慰謝料のみで2800万円の請求が認められた事例があります。
⑵ 会社に対して
加害者本人とは別に、使用者責任(民法715条)を問われるリスクがあります。
また、雇用契約上の債務不履行責任を問われるリスクもあります。

労働施策総合推進法改正によるパワハラ防止対策の法制化

パワハラ防止法が成立した背景

平成29年4月28日、厚生労働省は報道関係者に向けて、「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書」を公表しました。この報告書では、

・従業員向けの相談窓口で従業員から相談の多いテーマは、パワーハラスメント(32.4%) が最も多いこと。
・過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は 、 36.3%であること。
・過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、32.5%であること

が報告され、パワハラが社会的な問題であることが示されました。

パワハラ防止法の施行に向けて企業はどう取り組むべきか?

概要としては、以下の4点について、対応をする必要があります。

①社内方針の明確化と周知・啓発
②相談に適切に対応するための体制づくり
③パワハラが発生した場合の迅速・適切な対応
④関係者へのプライバシー配慮や相談に関連する不利益的な扱いの禁止

パワハラに該当する言動例

様々なものが考えられますが、代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

①身体的な攻撃
例:業務の成果物の品質が十分でないとして、蹴りを入れる。
②精神的な攻撃
例:期限を遵守できなかった部下に、「生きる価値がない」「死んで詫びるべき」と申し述べる。
③人間関係からの切り離し
例:特段必要がないのに、特定の仕事部屋にて一人で作業するよう求め、他の従業員と連絡を取らせない。
④過大要求
例:達成が物理的に不可能なノルマの設定
⑤過小な要求
例:仕事を与えず、終日ただ執務机に着席することのみを求める。
⑥個の侵害
例:酒の肴として私生活について、執拗に問い詰める。

パワハラ発生時に企業が取るべき対応とは

パワハラの発生の端緒を企業が掴んだ場合、企業はどのように対応すべきなのでしょうか。

ヒアリングによる事実調査

パワハラ対応の出発点は、相談窓口での相談者対応です。

まずは、相談内容の秘密は守られることを相談者に説明し、なるべく具体的にヒアリングを実施します。

その上で、相談者の了解を得ることを前提に、ヒアリング対象者を加害者の上司、相談者の同期と徐々に広げていきます。

就業規則の規定に基づく判断

事実調査の結果、パワハラの存在が確認できた場合、懲戒処分を含めて処分を検討します。

まず、就業規則上に懲戒処分の種類と理由が定めてあるか確認をする必要があります。もし、実施する予定の懲戒処分の種類や、処分の理由が記載されていなかった場合は、就業規則の整備を行う必要があります。

また、就業規則に基づいて処分を行う場合でも、過去の処分例に照らして、処分内容が相当か、また合理性があるのか吟味をする必要があります。

パワハラの加害者に対する処分について

行為者に対して、認定した事実及び処分の理由を説明した上で、具体的な処分を行います。

処分を先行させてはいけません。必ず行為者に処分の理由を説明し、弁明の機会を設けます。

弁明を受けて、なお処分が相当と判断する場合には、人事異動や場合によっては懲戒処分等を視野に入れます。

懲戒処分をする場合には、

①処分の根拠となる規定が就業規則上存在するかの確認が必要で、
②根拠があったとしても、処分の内容の、合理性と相当性が求められます。

パワハラの事実を確認できなかったときの対応

調査結果を相談者に報告し、パワハラの存在が確認できなかった理由を丁寧に説明し、会社として適切に対応したことを理解してもらいます。

パワハラに関する裁判例

事件の概要

社長らによるパワハラで従業員の1人が精神疾患を発症した上、自殺した案件です。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

短期間のうちに行われた暴行及び退職強要が本人に与えた心理的負荷の程度は強いものであったとして、警察署に相談に行った際の落ち着きなくびくびくした様子であったことや、自殺の6時間前に自宅で絨毯に顔をこすりつけながら「あーっ!」などという行動、遺書の記載内容を合わせ判断すると、自殺とパワハラの間には因果関係が認められるとして、会社と加害者に連帯して約2700万円等の損害賠償を認めました。

(平成24年(ワ)1947号:名古屋地方裁判所平成26年1月15日判決)

ポイントと解説

この判決のポイントは次のとおりです。

①パワハラが自殺の原因となることがある
②パワハラと自殺との因果関係は、パワハラの内容や、自殺前後の本人の様子等から判断される。
③パワハラと自殺との因果関係が認められた場合は、加害者個人だけでなく会社も責任を負う

プライバシーの保護・不利益取扱いに関する留意点

パワハラが真実存在しない場合、事実の調査によって加害者とされた人物の名誉が損なわれる可能性があります。パワハラ相談窓口に相談に来た人物はもちろんのこと、加害者とされた人物や、相談対象者のプライバシーは守らねばならず、ヒアリングの際には、調査に関与した者全てに、ヒアリングの内容について秘密を守るよう徹底させることが重要です。

また、パワハラ相談をしたこと自体や、パワハラの調査に協力したこと自体を理由として人事上の不利益な扱いをしてしまうと、パワハラ相談自体がされなくなったり、調査協力が得られなくなりますので、人事担当者を中心に、不利益な扱いをさせないよう、事前に周知しておきましょう。

パワハラの予防に向け、企業はどう取り組むべきか?

まず、マネジメント層が従業員に対して、会社としてパワハラを認めないこと及び、パワハラは厳正に処罰することを明示する必要があります。

その上で、定期的な研修にて、管理職含めて、パワハラの具体例を認識させる必要があります。

また、新卒や中途採用等、外部から人材を調達した際の導入研修にパワハラ研修を盛り込む必要もあります。

パワハラが発生した場合の対処法は、労働問題を専門的に扱う弁護士にお任せください。

弁護士は紛争対応を通じて、どのような場合に紛争化しやすいのかを経験上理解しています。社内研修を始めとしたパワハラ予防のご相談や、万一紛争化した際の対応等、弁護士にご相談ください。

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