監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
はじめに
働き方改革が叫ばれる中、数々の法改正がなされてきました。「働き方改革」という言葉は知っているものの、具体的な内容はよく知らない、という経営者の方も一定数いらっしゃると思います。働き方改革による法改正は、大企業や有名企業に限られず、中小企業も対象になっています。そこで、働き方改革の中でも特に重要なものを、簡単にご説明します。
時間外労働の上限規制
従来は、時間外労働の上限は、厚生労働大臣の告示によって基準が定められていましたが、罰則による強制力はありませんでした。それが、今回の法改正により、時間外労働の上限について法で定められ、かつ、罰則も設けられることになりました。
また、従来は、特別条項という条項を36協定に盛り込むことで、上限を超えて労働させることが可能でしたが、今回の法改正により、臨時的な特別な事情がある場合であっても、超えることのできない上限が設けられました。 新しいルールは次の通りです(これに違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に科されるおそれがあります)。
①原則として、時間外労働の上限は、月45時間・年360時間
②臨時的な特別の事情があり、労使間合意がある場合でも、以下のルールを破ってはいけません
(1) 時間外労働が年720時間以内
(2) 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
(3) 時間外労働と休日労働の合計について、2か月平均~6か月平均がいずれも、1月あたり80時間以内
(4) 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
年5日の年次有給休暇の確実な取得
従前、年次有給休暇について、労働者によっては、十分に取得をしない実態があるということが問題となっていました。今回の法改正では、年10日以上年次有給休暇を与えている労働者に対して、年5日については、労働者の意見を聴取した上で、使用者が時季を指定して取得させなければならないことになりました。
細かいルールについての記載は割愛しますが、年に5日の年次有給休暇を取得させなかった場合には、30万円以下の罰金に科せられるおそれがあります。
正社員と非正規社員間の不合理な待遇差の禁止
従前から、正社員、非正規社員間の待遇差については問題とされていました。同一の労働をしているにもかかわらず、賃金が異なる場合等です。今回の法改正では、同一企業内において、正社員、非正規社員間での不合理な差別が禁止されました。具体的には、ガイドラインが発表されており、不合理な待遇差について例示されています。
また、使用者は、合理的な待遇差を設けることは可能ですが、非正規社員から、正社員との待遇差について理由の説明を求められた時には、その説明をしなければならなくなりました。合理性について十分説明ができるように、待遇差を設ける際は、その理由や程度について、社内で慎重に検討したほうがよいでしょう。
弁護士にご相談ください
働き方改革に伴い、時間外労働や年次有給休暇の取得等で、様々なトラブルが顕在化する可能性があります。労働者権利意識が高まりつつありますので、不要な紛争を避けるためにも、使用者は労働者に対して適切に対処していかなければなりません。
その際、正確な法的知識と豊富な実績を持つ弁護士に相談していただければ、状況に応じたベストな解決法をお伝えすることが可能です。働き方改革に伴うご不明点がある方、実際に会社内でトラブルが生じてしまった方、トラブルを防止したいという方等、ぜひ一度ご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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