労務

労働審判制度の概要

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

一言でまとめると、裁判所主催の、進行がかなり速い、強制的な解決手続です。

労働審判制度の概要

労働審判制度の法的強制力について

労働審判が確定した場合の効力は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(労働審判法21条4項)。
すなわち、労働審判にて金銭の支払いが内容として盛り込まれた場合、これを支払わなければ強制執行を受けることとなります。

労働審判制度の特徴

迅速かつ柔軟な紛争解決が期待できる

  • (1)迅速に手続きが進行すること

    労働審判は、統計によると、全体の7割以上が申立てから3か月以内、たった3回の手続きで終決しています。そして、実務上は最初の1回目の手続きまでに当方側の主張の組み立てと証拠の収集が求められるのです。したがって、良くも悪くも早期に紛争の解決がなされます。

  • (2)柔軟な解決の可能性

    労働「審判」手続との名前からは、話し合いの余地はないように見えますが、調停(話し合い)による解決も当事者が合意をすれば可能です。 また労働審判そのものも裁判手続に比べて柔軟な解決ができるよう制度設計されています。

通常訴訟との違いとは

上述に挙げた

  • (1)迅速性
  • (2)柔軟な解決
  • 以外にも、主に次のような違いがあります。

通常訴訟(民事訴訟) 労働審判手続
主催者 裁判官 裁判官、組合関係者、企業の人事担当
経験者等、それぞれ1名
(事件と関係ない人が選ばれます)
プライバシー保護 公開 原則として非公開
対象 訴えの利益が認められる限り
「なんでも」
個別の、労働関係民事紛争に限定
付加金 請求可 請求不可

※訴訟移行をにらみ、除斥期間に対応する趣旨で労働審判において付加金を請求する場面はあります。

どのようなトラブルが労働審判の対象となるのか?

典型的には、残業代の支払い請求のように、使用者と労働者(組合を除く)との間の労働に関係する紛争に限定されます。

労働審判の対象とならないケースとは

例えば、以下のようなケースは労働審判の対象にはなりません。

  • 1 使用者と労働者との間での単なる金銭の貸し借りについての紛争(労働に関係がない)
  • 2 会社の上司個人を相手方とする事件(労働に関係がない)
  • 3 労働組合と使用者との間の集団的労働関係紛争(個別ではない)

労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応

第1回期日は、申立てから概ね40日以内に指定され、会社側の書面提出は、第1回期日の10日前程度と定められる場合が多いです。労働審判は第1回期日で心証のほとんどが形成されてしまうので、速やかに対応する必要があります。

労働審判手続きの流れ

概要としては、以下のとおりです。 申立て→第1回期日(期日終了時に次回期日指定、原則、期日は第3回期日まで)→調停・審判

労働訴訟

労働審判の結果に当事者のいずれかが異議を申し立てれば、紛争は訴訟へと移行します。
訴訟に移行すれば、審判の時点では非公開であった事件記録が公開されてしまうため、労働審判対応の段階から、証拠の提出については慎重な検討をしなければなりません。
また、審判手続中の対応は、訴訟へ移行した場合でも判断の参考とされるため、労働審判対応の段階から一貫した対応が求められます。

労働審判を有利に進めるにはどうすべきか?

相手方の申立ての内容を迅速に分析し、客観的な証拠を速やかに収集し、適切な主張を組み立てて期日に臨む必要があります。

会社側の初動対応が重要となる

労働審判手続は、原則として第3回期日までに終結が予定されています。

弁護士に依頼することのメリット

弁護士は民事訴訟に詳しいため、万一訴訟となった場合を見通して、訴訟と審判いずれの段階で解決することが、経済的に有利なのか判断ができます。 また、ごく短い時間で対応しなければならない労働審判においても、効率よく準備を進めることができます。

労働審判に必要な費用について

労働審判の解決金の相場はどのくらい?

一概には言えませんが、給与額数か月分とされることが多いです。

弁護士に依頼する場合の費用

緊急度や事案の複雑さ等によって決します。

労働審判制度に関する様々なご質問に、法律のプロである弁護士がお答えいたします。

労働審判で準備にあてることができる時間は、他の紛争類型と比較するととても短いです。なるべくお早目にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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