セクシュアルハラスメント対応について解説

公開日:2020年9月7日
  • ハラスメント対応

令和2年6月1日、改正男女雇用機会均等法が施行され、事業主に対して、セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」といいます。)についての防止措置がより高い水準で求められることとなりました。

以下、セクハラ対応への解説を行います。

セクハラが企業にもたらす損失

⑴ 法的なリスク

ア 加害者が負う責任
(ア)不法行為(民法709条・同710条)
加害者からのセクハラにより、性的な自己決定権等を害されたとして、損害賠償請求を受けるリスクがあります。
(イ)名誉棄損(民法723条)
セクハラにより名誉を傷つけられたとして、損害賠償請求を受けるリスクがあります。

イ 企業が負う責任
(ア)債務不履行
 企業は、働きやすい良好な職場環境を維持する義務(「職場環境配慮義務」といいます。)を労働契約上、労働者に対して負っていますが、この義務が果たされていないとして、労働契約上の責任を追及されるリスクがあります。
(イ)不法行為・共同不法行為
事業主がセクハラの事実を認識しながら黙認したり、十分な調査を行わない場合、損害賠償のリスクを負う場合があります。
(ウ)使用者責任
加害者からのセクハラが、事業に関係する形で行われていた場合、加害者とは別に事業主も賠償の責任を負う可能性があります。

⑵ 法的なもの以外のリスク

ア 風評被害
セクハラが発生し、責任追及のための訴訟が被害者から起こされた場合、当該職場でセクハラが発生した事実が広く知れ渡ることとなり、取引や新規採用に悪影響が出ます。
イ 労働者の喪失
セクハラの被害者が退職するなどし、当該部門の一人当たりの業務量が急激に増大するリスクがあります。

男女雇用機会均等法による「セクハラ」の定義

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)は、その11条1項にて、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」とセクハラについて言及しています。

職場のセクハラ発生時に取るべき対応とは

セクハラが社会的に許容されない行為であることや、セクハラが発生した場合に様々な損害が発生することは抽象的には想像しやすい方も多いでしょう。
しかし、企業はセクハラに対して、具体的にどのような対応をとるべきなのでしょうか。

被害者と加害者の隔離

被害者と加害者を早急に隔離する必要があります。

一般にセクハラは、加害者側の規範意識の低さに由来することが多いため、隔離が実施されなければ同種のセクハラが加害者により繰り返され、より事態は深刻化する傾向にあるためです。

隔離は、物理的なものにとどまらず、情報面でも実施します。

例えば業務上の伝達系統についても加害者から被害者に直接の連絡をさせない等の配慮が必要です。

ヒアリングなどによる事実調査

まずは、加害者の上司から同僚へ順次ヒアリングを実施します(※加害者の上司がセクハラをしている場合は次席からヒアリングを実施します。)。ヒアリングの際には、セクハラの調査等の理由で呼び出しをすることは関係者のプライバシーを損なう恐れがあるため、配慮が必要です。

事実の調査は一人一人個別に行い、ヒアリングの際には、会社としての態度決定をするまではヒアリングがされたことやヒアリングの内容について外部にもらさないよう被聴取者に徹底させてください。

加害者に対する処分の検討

加害者に対して、懲戒処分をする際には、

①就業規則上の懲戒規定(懲戒の種類と事由)の有無をまず確認し、
②懲戒規定が存在する場合には、当該処分に合理性・相当性があるかを検討します。

まず、①の段階で、懲戒規定が存在しない場合、そもそも懲戒処分をすることができないため、就業規則の整備から行う必要があります。

また、処分をする場合には、過去の会社での処分例を踏まえ、処分の内容に合理性・相当性があるのか、吟味する必要があります。

被害者へのフォロー

セクハラ被害者の相談窓口は、法的な対応・調査にとどまらず、精神的ケアの役割も担うことを期待されています。まずは管理監督者、必要に応じて産業医との面談を設定する等、被害者の精神的不調に対応してください。

再発防止のための措置

管理職も含めて、定期的に研修を実施し、会社として、セクハラは例外なく許さないことを示す必要があります。

また、中途採用や新卒採用の際の導入研修の際にも、セクハラ防止の研修をすることが必要です。

セクハラの相談者・行為者等に対するプライバシー保護

セクハラの相談者のプライバシー確保がされていないと、セクハラの相談が一切されなくなり、セクハラの実態把握ができなくなります。

専用のメールアドレスを新設し、相談窓口とすることが望ましいです。

セクシュアルハラスメントに関する裁判例

セクハラの調査についての不備が問題となった裁判例をご紹介します。

事件の概要

市の職員である原告が、上司である係長から度重なるセクハラを受けたため、セクハラ被害に関する苦情・相談窓口の責任者である課長や市長に苦情や相談の申出、就労環境の改善などを申し入れたものの、適切な対応を講じてもらえなかったため、市に対して損害賠償請求をした事案です。

裁判所の判断(事件番号 裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、事業主には、雇用する女性労働者に対して、性的な言動により職場環境が害されることのないように、配慮する義務があるとしました。その上で、セクハラがあったことを認識していた課長は、セクハラ相談窓口の責任者として、職員と連携、協力し、速やかに調査を開始し、対応すべきであったとして、結論として市長の責任は否定しつつも、課長の不作為は、国家賠償法上、違法であるとし、市に対する慰謝料等として220万円を認めました。

(平成15年(ワ)32号:横浜地方裁判所平成16年7月8日判決)

ポイントと解説

この裁判例は、セクハラをした加害者が責任を負うことはもちろんのこと、セクハラの事実を認識しながら必要な調査を怠った場合、相談窓口も責任を負う可能性を示した点に意義があります。

法改正によるセクシュアルハラスメント等の防止対策の強化

雇用機会均等法の改正に伴い、事業主は職場におけるセクハラ防止措置について、より高い次元で実施するよう求められています。

なお、改正雇用機会均等法は、令和2年6月1日付で既に施行されており、取り組み自体は現時点で求められているものです。

法改正に向け企業に求められる取り組み

以下の4点について、企業での取り組みが求められています。

①事業主の方針の明確化及びその周知・労働者への啓発
②苦情を含む相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④相談者・行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること等

詳細は、厚生労働大臣の指針により10項目に細分化され示されています。

職場におけるセクシュアルハラスメント問題の早期解決は、法律の専門家である弁護士にお任せください。

セクハラが社内で発生し対応を間違えると、加害者のみならず、会社としての責任を追及されかねないため、慎重に対応をする必要があります。また、問題の性質上、関係者の名誉やプライバシーと密接にかかわるため、具体的な対応にあたっても配慮が必要です。早めに弁護士にご相談いただき、リスクを低減させることが寛容です。

関連記事

企業側人事労務に関するご相談

初回30分電話・来所法律相談無料

顧問契約をご検討されている方弁護士法人ALGにお任せください

土日祝日・年中無休・24時間電話受付中

※会社側・経営者側専門となりますので、
労働者側のご相談は受け付けておりません

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません