労務

36協定が対象外となるケースとは?適用除外・猶予される事業や業務

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

法定時間を超えて従業員を労働させる場合、あらかじめ労働基準法第36条で規定された協定(36協定)を締結する必要があります。

36協定は、労使協定の締結によって、使用者が従業員に対し、法定労働時間を超えた残業を命じられる制度です。

しかし、36協定を結んでいたとしても、従業員の年齢や状況、申請の有無によっては残業を命じることができないこともあります。

この記事では、36協定の適用対象者や、協定を締結した後の時間外労働の上限、36協定の限度時間が適用されない業種等について解説します。

36協定の対象者は誰か?

36協定の対象となるのは、労働基準法上の労働者です。

労働基準法第9条では、同法上の労働者について職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと規定しています。

そのため、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなどの非正規雇用者も「労働者」にあたり、36協定の対象となります。

36協定が適用除外となるケースとは?

従業員が18歳未満の場合や、育児・介護を理由とする請求があった場合、妊産婦から請求があった場合、管理監督者にあたる場合に該当するケースでは、36協定を理由とした時間外労働を命じることはできません。

従業員が18歳未満の場合

従業員が18歳未満の年少者の場合は、原則として、36協定や変形労働時間制は適用されず、下記の労働に従事させることはできません。

  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働
  • 22時から翌日5時の時間帯の労働(深夜労働)
  • 休日労働

なお、年少者の場合、本人から希望があったとしても、時間外労働などに従事させることはできないことに注意が必要です。

育児・介護を理由とした請求があった場合

育児介護休業法の定めにより、下記に該当する従業員から申し出があった場合は、1カ月に24時間、1年に150時間を越えた残業及び、深夜労働(22時から翌日5時の労働)に従事させることはできません

  • 小学校就学の始期(6歳になる日を含む年度の3月31日まで)の子供を育てている
  • 要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護している

妊産婦から請求があった場合

妊娠中の女性または出産後1年未満の女性従業員から請求があったときは、法定労働時間を超えた残業や、深夜労働、休日労働に従事させることはできません

ただし、妊産婦のケースでは従業員本人からの請求が必要で、請求があった場合にのみ「36協定適用対象外」となります。

管理監督者の場合

36協定は、管理監督者以外の一般従業員に適用されるため、労働基準法41条に定められる「監督もしくは管理の地位にあるもの」は対象ではありません。

「経営者と一体的立場にある」管理監督者は、自らの裁量で業務量が調整でき、十分な待遇を受けているのが一般的ですので、そもそも36協定を締結する必要がなく、時間外労働や休日労働の制限を受けません。

ただし、深夜労働の割増賃金は適用されます。

労働基準法上の管理監督者といえるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 重要な職務内容を有していること
  • 重要な責任と権限を有していること
  • 労働時間などの規制になじまない勤務実態であること
  • 地位にふさわしい待遇がなされていること

「名ばかり管理職」の残業代に注意

名ばかり管理職とは、管理職という肩書が与えられているものの、上記の労働基準法上の管理監督者の要件を満たさず、実態は一般の労働者と同様の人をいいます。

名ばかり管理職にあたる場合には、部長、店長、マネージャーなどの管理職としての肩書が与えられていたとしても、一般の労働者と同様の扱いがなされますので、36協定が適用され、残業代の支払い、休日手当の支払いなどが必要になります。

管理監督者と名ばかり管理職のどちらに該当するかは、肩書などの形式面ではなく、経営者と一体的な立場にあるのかといった実質面で判断する必要があり、注意が必要です。

上限規制が適用除外・猶予されている事業・業務

36協定を結んでいても、使用者は、原則として、月45時間・年360時間の上限を超えた労働を従業員に命じることはできません

しかし、下記に該当する業種は2024年3月31日までは、上限規制の適用が猶予されていました。

  • 建設業
  • 運送業
  • 医師
  • ⿅児島県・沖縄県の砂糖製造業

また、「研究開発業務」は猶予ではなく、36協定の適用自体が除外されます。

ここでは、それぞれの職種の適用について簡単に紹介します。

建設業

工作物の建設や修繕、解体などを行う建設業では、これまで適用外とされていましたが、2024年4月から36協定が適用されます。

しかし、建設業は災害時のインフラ復旧に関わる業種なので、例外があります。

上限規制の適用後も、災害復旧や復興に関する業務は、上限規制の適用外となります。

自動車運転の業務

トラックやバスの運転者、タクシードライバーなど、人や物を運ぶ運送業も、これまで上限規制からは除外されていました。

2024年4月からは、36協定特別条項が適用されますが、運送業の場合は例外として、時間外労働などの上限は年960時間、時間外労働の回数上限はなしとなっています。

医師

医師については、令和6年4月以降、以下の残業規制が適用されるようになります。

まず、特別条項付きの36協定を締結する場合には、年間の時間外・休日労働の上限が最大「1860時間」になります。

また、時間外労働が「1か月について45時間」を超えるのは年6か月までという残業規制は適用されません。

さらに、医療法などに追加的健康確保措置に関する定めが存在しています。

鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

鹿児島県や沖縄県の砂糖製造業については、季節により業務量の変動が激しいためこれまで残業規制から除外されていました。しかし令和6年4月以降、残業規制がすべて適用されることになります。

新技術・新商品開発等の研究開発業務

新技術・新商品等の研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。

なお、今回の法改正によって労働安全衛⽣法が改正され、新技術・新商品等の研究開発業務については、 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が⽉100時間を超えた労働者に対しては、医師の⾯接指導が罰則付きで義務付けられました。

事業者は、⾯接指導を⾏った医師の意⾒を勘案し、必要があるときには就業場所の変更や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じなければなりません

36協定を正しく運用するための企業対応

36協定を締結した際には、従業員への周知も義務となるため、就業規則の変更なども必ず詳細に説明しなければなりません。

そのため、担当者は、36協定の内容を正しく理解しておく必要があります。

特に抑えておくべきポイントとしては、以下の点が挙げられます。

  • 36協定は時間外労働や休日労働をさせるための法律ではないことを理解すること
    36協定は、本来、長時間労働を防止することを趣旨とするものですので、基本的に、時間外労働や休日労働は必要最小限に留めることを前提として締結しなければなりません。
  • 特別条項付き36協定についても把握しておくこと
    36協定が定める限度時間を超えて時間外労働や休日労働をさせる場合に締結する「特別条項付き36協定」れについても、詳細をしっかりと把握しておく必要があります。
  • どのような場合に違反になるのかについても把握しておくこと
    36協定の違反となるのは、限度時間を超えて時間外労働や休日労働をさせた場合だけではありません。その他の違反とみなされる対応についても、しっかりと把握していないと気づかぬ間に違反をしてしまう恐れがありますので、注意が必要です。

36協定に違反した場合の罰則

36協定や特別条項に関するルール違反は、労働基準法違反として、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑罰が法律上定められています(労働基準法32条違反)。

また、厚生労働省では、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として、労働基準法等に違反した企業名やその内容を、インターネットで公開しています。

36協定や時間外労働に関するご相談は、労働問題に強い弁護士にお任せ下さい。

協定や時間外労働に関して、具体的に従業員の残業規制が適用除外となるのかについて、正確に判断することは困難な場合もあります。

協定を正しく運用していくために、判断に迷うようなことがあるような場合は、是非一度弁護士にご相談されることをおすすめします

関連記事
横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません