労務

和解を有利に進めるために会社が立てるべき方針とポイント

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

労働審判とは、労働紛争を迅速に解決するために設けられた制度です。
労働審判は、紛争の早期解決ができるというメリットから広く利用されています。

労働審判では、和解によって事件が終了する場合が多く、当事者が合意によって解決をするからこそ早期解決が実現している面があります。
今回は、労働審判における和解に焦点を当てて解説します。

労働審判における和解(調停)とは?

労働審判では、当事者の提出した申立書や答弁書に記載された主張を元に争点を整理し、当事者から提出された証拠から認められる事実を踏まえつつ、期日において、当事者に対する聞き取りを行い、まずは合意によって紛争を解決できる余地がないかを模索します。

裁判所の決定ではなく、当事者双方の和解によって紛争を解決することを目指します。

労働審判の和解成立率

労働審判では、最大3回の期日で審理が終結されるため、訴訟のように時間をかけて充実した審理を行うことは難しいため、当事者間の争いが大きく、和解による解決が困難な場合には、早々に労働審判を終結して、審判を出し、審判に異議がある場合には訴訟に移行させる取扱いがされます。

そのため、労働審判の実態としては和解において紛争を解決させる場として機能している側面もあり、実際に労働審判における和解成立率は約70%と非常に高いものになっています。

労働審判で和解を目指すべきケース

例えば、労働者が使用者によって不当解雇されたと主張するケースにおいて、労働者が解雇自体を争うのではなく、未払賃金の支払いのみを請求しているのであれば、一定の金銭の支払いによる解決が可能であるため、和解を目指すべきであるといえます。

一方、労働者が解雇の違法性を主張し復職を強く希望している場合、一度解雇した労働者を復職させることは他の労働者の労働環境に与える影響も大きいため、使用者としては受け入れがたく、解雇事由に関して丁寧に審理する必要があります。

そうすると、時間をかけて審理をする必要があるため、和解を目指すことは難しいといえるでしょう。

労働審判で和解する会社側のメリットとは?

前述のように一定の金銭の支払いに応じて和解をすることに会社側にはどのようなメリットがあるのかについて解決します。

早期解決できる

第一に、紛争を和解によって早期解決することができるというメリットが挙げられます。

審判や訴訟となった場合、主張立証のために人員や時間などの多くのコストをかけなければなりません。
和解に応じることで早期解決をして、コストの削減ができるメリットがあります。

柔軟な解決が可能

第二に、柔軟な解決が可能であるという点が挙げられます。

裁判所の決定や判決の場合には、請求された事項のみの判断となりますが、和解の内容は、必ずしも労働者が請求した内容に限られません。すなわち、一定の金銭の支払う代わりに労働者の地位を失わせ職場復帰はしないなどの内容の解決を図ることができます。

訴訟リスクを回避できる

第三に訴訟リスクを回避できるというメリットがあります。

和解が成立した場合、紛争は解決されたことになるため、訴訟が提起されることを避けることができます。そうすることで、長期間にわたる訴訟は行われないですし、敗訴リスクを回避することもできます。

和解を有利に進めるために会社が立てるべき方針とポイント

次に、和解をするとして和解を有利に進めるために会社が立てるべき方針とポイントについて解説します。

ある程度譲歩できるか検討する

和解とは、当事者が互いに譲歩をして紛争を解決することを約することによって、その効力を生じるものであるため、主張を維持するだけでは合意は難しく、双方に一定の譲歩が求められます。

そのため、まずは会社としてどこまで譲歩ができるのかを検討する必要があります。
和解の成立を目指すためには、ある程度譲歩できる範囲を広くしておいたほうが良いです。

妥協案の提示とタイミング

労働審判において労働審判委員会は、当事者の提出した主張や証拠に基づいて心証を形成し、その心証に基づいて妥当な和解案を検討、提示します。

当事者からも、相手方の主張や証拠の状況を見つつ解決案を提示することは可能です。
そのため、ある程度当事者双方の主張及び証拠が出揃ったタイミングで、労働審判委員会からの和解の打診や、当事者からの解決案の提示をすることが多いです。

解決金(和解金)はいくら支払うか

労働審判における解決金の相場というものはなく、金額は事案によって異なります。

労働者側の請求している額がいくらか、労働者側の請求が認められる可能性がどの程度ありそうか、早期解決によって得られるメリットの大きさ等、様々な要素を考慮して合意ができるラインを探っていくことになります。

労働審判で和解できなかったらどうなるのか?

ここまで、和解を目指すポイント等を解説しましたが、もし和解が成立しなかった場合はどうなるのでしょうか。

裁判所による審判が下される

和解ができない場合、労働審判委員会が審判を下し、一定の判断を示します。

当事者はその審判に異議がある場合は2週間以内に異議を申し立てます。当事者のどちらかが異議を申し立てた場合、訴訟に移行することになります。
一方、当事者のどちらからも異議が申し立てられなかった場合は、その決定が確定します。

異議申立てをして訴訟に進むべきか?

審判が出た場合に、異議申立てをすべきかどうかはその決定の内容から検討すべきです。
審判は、裁判官を含む労働審判委員会が出すものであるため、訴訟における裁判官の判断の方向性を一定程度推測することができるからです。

会社側に不利な内容で和解しないためには

和解は、裁判所の審判や判決と異なり、必ずしも法律論や実務上の相場に拘束されるものではありません。

和解は当事者の合意によるものであるため、当事者の状況や意向も内容を左右します。
とはいえ、和解が不成立になった場合に待つのは審判や判決です。

そのため、会社側に不利な内容で和解をしないためには、証拠の収集状況、審判や判決に移行した場合の見通しを踏まえつつ、労働委員会の心証等を確認しながら客観的に分析することが肝要です。

和解を有利に進められるよう、労働審判を得意とする弁護士がサポートいたします。

これまで開設した通り、労働審判において和解をする場合、審判や判決においてどのような判断がなされるのかなど様々な事実を考慮し、見通しを立てること重要となり、経験豊富な弁護士でなければ困難です。

そのため、和解を有利に進めるためには労働審判を得意とする弁護士のサポートを受けることをおすすめします。労働審判を申し立てられた場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

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監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
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