監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
示談交渉では、相手方保険会社から賠償金額を提示されるのが一般的です。
しかし、保険会社が提示する金額は低額なことも多く、必ずしも適正とはいえません。
実際に、「慰謝料はこれしかもらえないのか」「金額が低すぎる」と感じる被害者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、交通事故の慰謝料が少なくなる原因、算定基準ごとの慰謝料額、適正な慰謝料を受け取る方法などをわかりやすく解説していきます。
これから示談交渉に臨む方は、ぜひご覧ください。
目次
交通事故の慰謝料が少なくなる原因は?
交通事故の慰謝料が少なくなる原因は、以下のようなものが挙げられます。
- 低い算定基準で計算されている
- 通院日数が少ない、または過度に多い
- 後遺障害等級の認定がない、または等級が低い
- 被害者側の過失割合が高い
原因を知ることで早くから対策をとれるため、適切な慰謝料を取り逃がすリスクを抑えることができます。それぞれの原因と対策について、詳しくみていきましょう。
低い算定基準で計算されている
慰謝料の算定基準には以下の3つがあり、それぞれ計算方法が異なります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
このうち、自賠責基準は“基本的な対人賠償の確保”を目的としているため、3つの基準のうち最も金額が低くなるのが一般的です。
相手方保険会社は自賠責基準に近い金額を提示してくる傾向がありますが、必ずしも適正とはいえません。安易に示談せず、一度弁護士に相談することをおすすめします。
慰謝料の比較
自賠責基準と弁護士基準では、慰謝料の金額が大きく変わる可能性が高いです。
例えば、以下のケースで比較してみます。
〈例〉
- むちうちで通院期間180日(6ヶ月)、実通院日数60日
- 後遺障害等級14級9号認定
| 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
|---|---|---|
| 通院慰謝料 | 51万6000円 | 89万円 |
| 後遺障害慰謝料(14級9号) | 32万円 | 110万円 |
| 計 | 83万6000円 | 199万円 |
弁護士基準で計算すると、自賠責基準の2倍以上の金額になることがわかります。
なお、自賠責基準の通院慰謝料は、「日額4300円×対象日数」で計算します。
対象日数は、“通院期間”と“実通院日数×2”のうち日数が少ない方を適用します。
その他の項目については、赤い本の算定表や一覧表にあてはめて算出します。
通院日数が少ない、または過度に多い
慰謝料は通院期間や通院日数をもとに算出するため、通院頻度が低いと受け取れる慰謝料も少なくなります。また、通院日数が不十分だと後遺障害等級が認定されず、症状に見合った補償を受けられないおそれがあります。
一方、過度な通院も慰謝料減額の一因となります。
必要以上に通院すると、相手方保険会社に“過剰診療”を疑われ、早々に治療費の支払いを打ち切られたり、慰謝料の対象期間として認められなかったりする可能性があるからです。
そのため、症状が残っているうちは医師と相談のうえ、一定の頻度を保ちながら通院を継続することが重要です。
後遺障害等級の認定がない、または等級が低い
後遺症が残っても、後遺障害等級が認定されなければ「後遺障害慰謝料」は支払われません。また、等級が低いと補償額も大きく下がるため、何級が認定されるかも重要なポイントです。
適切な後遺障害等級を認定されるためには、いろいろの事情が考慮されるのですが、通院期間との関係でいうと、むちうちであれば「6ヶ月間、月10日以上」程度の通院継続が望ましいとされています。
また、後遺障害等級申請で作成する診断書の書き方にもコツがあるため、申請前に弁護士に相談すると安心です。
被害者側の過失割合が高い
被害者にも過失があると、「過失相殺」によって慰謝料が減額します。
過失相殺とは、加害者と被害者の過失割合に応じて、双方の賠償金額を差し引きするルールです。
例えば、被害者に2割の過失がある場合、賠償金が2割差し引かれるだけでなく、加害者の損害の2割分も負担しなければなりません。そのため、被害者の過失が大きいほど、慰謝料の減額幅も大きくなることに注意が必要です。
もっとも、保険会社に提示された過失割合が適切とは限らないため、割合に納得できない場合は一度弁護士にご相談ください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
自分の慰謝料が少ないかわからない場合はどうしたらいい?
「慰謝料が相場通りなのかわからない」「何となく少ない気がする」とご不安な方に向け、弁護士法人ALGでは損害賠償金の無料診断サービスを実施しています。
提示された賠償金額がわかる書面をメールなどでお送りいただければ、金額が妥当なのか弁護士が診断し、最短30分ほどで結果をお伝えしています。
依頼の流れなどは、以下のページをご覧ください。
無料診断サービスまた、今すぐ適正額を知りたいという方は、以下の「損害賠償額計算ツール」もあわせてご利用ください。
このツールでは、怪我の内容や通院状況、ご自身の年収などを入力するだけで、すぐに賠償金額の目安が表示されます。
ただし、実際の示談交渉ではさまざまな個別事情が考慮されるため、計算ツールの結果は“目安”とお考えください。
損害賠償額計算ツール適正な交通事故慰謝料をもらう方法
適正な慰謝料を受け取るには、ご自身の状況に応じて適切な対策をとることが重要です。
この点、「まだ治療中の方」と「後遺障害等級認定がお済みの方」では対応が異なるため、以下でそれぞれ解説していきます。
まだ治療中の方は
まだ治療中の方は、適切な通院頻度で治療を継続することがポイントです。
むちうちや打撲の場合、3日に1回(月10日)のペースを維持するのが慰謝料の観点からは望ましいとされています。また、後遺障害等級の審査では、症状固定までの通院期間や通院日数が大きな判断要素となります。
例えばむちうちの場合、月10日の通院を6ヶ月継続するのが認定の目安とされています。
なお、整骨院は主治医の同意があれば併用しても構いませんが、必ず整形外科への通院も続けましょう。
整骨院にばかり通うと、相手方保険会社に治療の必要性を疑われ、示談交渉でもめるおそれがあります。
後遺障害等級認定がお済みの方は
後遺障害等級がすでに認定されている場合、弁護士基準での慰謝料獲得を目指しましょう。
“後遺障害慰謝料”は算定基準によって金額が大きく異なるため、弁護士基準で請求できれば賠償額が大幅にアップする可能性が高いです。
ただし、被害者自身が交渉しても保険会社が応じてくれることはほぼないため、弁護士基準で請求する際は弁護士に依頼するのが基本です。
交通事故で慰謝料以外にも獲得できる損害賠償金
交通事故の被害者は、慰謝料以外にも以下のような賠償金を受け取れる可能性があります。
- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 付添費
- 逸失利益 など
このうち治療費については、相手方保険会社から病院に直接支払われるのが一般的です。
その他の賠償金については、弁護士基準で請求できれば増額する可能性が高いため、示談前に一度弁護士に相談されることをおすすめします。
また、後遺症が残ってしまった方は、後遺障害等級申請の手続きから弁護士に任せると安心でしょう。
交通事故の慰謝料が増額した事例
〈事故の概要〉
ご依頼者様(20代前半男性)が車を運転中、中央分離帯を越えてきた加害車両に正面から衝突された事故です。
男性はこの事故で“頚椎捻挫”と“左手指骨折”を負い、すでに治療は終了していましたが、相手方保険会社に提示された賠償金額に納得できず、弁護士に相談に来られました。
〈弁護士の対応〉
弁護士が確認したところ、休業損害は適正額だったものの、慰謝料については弁護士基準を大きく下回る金額が提示されていました。そこで弁護士は、「有益な部分は維持しつつ、弁護士基準で請求を行う」という方針をとり、粘り強く交渉を続けました。
その結果、休業損害はそのままに、慰謝料部分だけを当初の金額の2倍にまで増額することに成功しました。最終的な受領額は当初の相手方保険会社提示額65万から100万まで増額しました。
慰謝料が少ないと感じたら弁護士にご相談ください
慰謝料は、弁護士基準で請求することで大幅に増額するケースも多いです。
しかし、弁護士基準は裁判を前提とした高い基準なので、被害者自身で請求しても保険会社が応じてくれることはほぼありません。
また、一度示談が成立すると基本的に再交渉はできないため、示談前に一度弁護士に相談・依頼することがポイントです。
弁護士法人ALGは、賠償金額の無料診断を行っているほか、費用倒れの可能性についても依頼前にきちんと説明しております。
「提示された賠償金額に納得いかない」「適正額がわからない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
