監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭ってむちうち等の怪我をした場合、症状を緩和するために「整骨院」に通いたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、“整骨院に通院すると慰謝料が減額されてしてしまう”という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
この記事では、交通事故で負った怪我の治療で整骨院に通う場合に慰謝料はどうなるのか、整骨院に通院する際の注意点などについて解説していきます。
目次
整骨院に通院しても慰謝料はもらえる
結論から言うと、整骨院に通ったからといって慰謝料がもらえなくなるということはありません。
ただし、整骨院で施術を行っているのは医師ではなく柔道整復師であり、医療行為ではありません。
そのため、医師の診察を受けずに整骨院にしか通っていなければ、「治療に必要な施術」と認められず、慰謝料が適正額支払われない可能性もあります。
怪我の治療のために整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の医師の診察を受け、整骨院に通いたいことを相談したうえで通うようにしましょう。
「整骨院への通院は慰謝料が半額になる」は本当?
整骨院に通院したら慰謝料が半額になるというルールはありません。
しかし、医師のいる整形外科へはほとんど通院せずに、整骨院ばかり通っていると「医学的な観点から必要な治療を受けたわけではない」と判断されるおそれがあります。
そうすると、相手方保険会社からの慰謝料提示額が、適切な頻度で整形外科に通院して医師による治療を受けていた場合よりも、半額程度に減額されてしまう可能性もあります。
整骨院にも通う場合は、医師に判断を仰いで、整形外科へも定期的に通うようにしましょう。
交通事故で整骨院に通院した場合の入通院慰謝料の相場
交通事故の慰謝料を算定するには以下の3つの基準があり、自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準の順に金額が高くなります。
ここでは、自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料相場を計算してみましょう。任意保険基準については、算定表が非公開であるため割愛させていただきます。
以下の表の相場は整形外科と整骨院を併用して通院し、交通事故により、頚椎捻挫や腰椎捻挫のむちうちを負った場合とします。
例:通院期間5ヶ月(150日)・実通院日数50日の場合
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
43万円 | 79万円 |
整骨院に通院したい場合の注意点
整骨院に通院したい場合は、気を付けるべきポイントがいくつかあります。
- 病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
- 保険が適用される治療かどうかを確認する
- 病院(整形外科)にも通院する
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
交通事故で怪我を負った場合、治療費や慰謝料を相手方に請求することができますが、怪我の治療として必要だと医学的に認められた部分にのみ請求が可能です。
整骨院での治療は医療行為ではないため、整形外科の担当医に整骨院への通院の許可を得ていない場合は、怪我の治療として医学的な観点から必要な治療ではないと判断されてしまう可能性があり、治療費や慰謝料が適正額支払われないおそれもあります。
このような事態にならないためにも、整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の担当医の了承を得るようにしましょう(医師の了承があっても適正額が支払われないこともあるため、最低限医師の了承は必要です)。
保険が適用される治療かどうかを確認する
交通事故で負った怪我の治療費は、基本的に相手方保険会社が病院へ直接支払う任意一括対応をしてもらえます。
しかし、この対応は打ち切られることもあり、その場合は自費で支払い、後から治療費として請求する手順になります。
自費で通院する場合は、健康保険が利用できるかどうかで負担額が大きく変わるため、健康保険が適用されるかどうかを通院前に整骨院へ確認しておきましょう。
病院(整形外科)にも通院する
適切な慰謝料を受け取るためには、医学的に怪我の治療のために必要な医療行為を行ったことを証明する「診断書」を相手方保険会社に提出する必要があります。
しかし、整骨院では診断書を発行することはできず、医学的に治療が必要な怪我を負ったことが認められない可能性があります。
治療費や慰謝料について争いになった場合、医師が整骨院に通うよう指示したかが重要なポイントとなります。
整骨院に通院する場合でも、定期的に整形外科を受診し、医師の診察を受けましょう。
後遺障害が残りそうな場合も整形外科への通院が重要になる
治療を続けていても怪我が良くも悪くもならず、後遺症として残った場合は、後遺障害等級認定の申請をすることができます。
後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を新たに請求でき、示談金が大きく増額するでしょう。
しかし、後遺障害等級認定は、基本的に書類審査のみであり、医師が作成する「後遺障害診断書」が非常に重要です。
後遺障害診断書には、事故時の症状、治療による経過などを書く必要があり、それまで整骨院にしか通っていなければ書く材料がなく、後遺障害診断書の作成を断られたり、内容が不十分な後遺障害診断書しか作成されなかったりする場合もあります。
そのため、治療開始から継続して整形外科にも通院することが大切です。
整骨院への通院と慰謝料に関するQ&A
整骨院に毎日通えば、その分慰謝料はもらえるのでしょうか?
入通院慰謝料は、通院すればするほど増額するものではありません。弁護士基準は、基本的には通院日数ではなく通院期間で計算することになるため、通院日数を増やすことが当然に慰謝料額を増額させるわけではありません。
また、毎日通院することは、早めに治療費打ち切りにあったり、過剰診療と判断され慰謝料が減額されてしまう可能性もあります。
どのくらい通院するべきかは整形外科の医師の診察を受け、判断を仰ぎましょう。
保険会社に、整骨院への通院は治療費として認めないと言われてしまいました。医師の許可は取っているのですが、どうしたらいいでしょうか?
医師の許可を取っている場合は、その旨を相手方保険会社に伝えましょう。その際、医師が許可したことが分かる書面や整骨院への紹介状などがあるとその根拠になります。
それでも相手方保険会社が整骨院への通院を治療費として認めない場合は、裁判で争うことも考えられます。
ただし、裁判でも接骨院の治療費の全部または一部が否定されることはあるので注意は必要です。
裁判は非常に被害者の方の負担になってしまうので、弁護士に相談することをおすすめします。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
整骨院に通院した場合の治療費や慰謝料の請求は弁護士へご相談ください
交通事故の怪我の治療のために整骨院に通う際は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。
しかし、ポイントを抑えていても、相手方保険会社から治療費や慰謝料が適正額支払われるか不安に思うことでしょう。
事故による怪我の治療で整骨院に通ってもいいか、不安な方は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
交通事故に強い弁護士だからこそ、不利にならない示談や、慰謝料増額のポイントを心得ています。
また、弁護士は代理人として相手方保険会社に対応できるため、治療費打ち切りや慰謝料額で争いになった場合でも法的な観点から主張・立証していくことができます。
交通事故について少しでもお悩みの方は、まずは私たちに一度ご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)