交通事故が原因でボーナスがカットされた場合の慰謝料請求について

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交通事故が原因でボーナスがカットされた場合の慰謝料請求について

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

ひとたび交通事故に遭ってしまうと、怪我の治療費、通院のための交通費など、何かとお金がかかってきます。仕事に支障が出るような怪我であれば、収入が減ってしまうことも考えられます。

収入というと、まず“給与”が頭に浮かぶかもしれませんが、損害賠償請求において見逃されやすいのが“ボーナス”の減額です。このページでは、事故の影響でボーナスがカットされた場合の損害賠償請求について、解説していきます。

交通事故の影響でボーナスがカットされたら慰謝料請求は可能?

交通事故が原因で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりして、ボーナス(賞与)がカットされてしまった場合、カットされてしまった分の補償は、【慰謝料】としてではなく、【休業損害】として加害者に請求していくことになります。
次項より、具体的な請求の方法を見ていきましょう。

ボーナスの減額を立証する方法

ボーナスの減額について、交通事故の加害者に損害賠償請求をするためには、①被害者が交通事故の影響で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりしたことがボーナスカットの原因であり、②そのためにいくらの減額があったのかを証明する“証拠”が必要になります。
このとき有益な証拠となるのが、ボーナスの査定方法について記載がある就業規則や賞与規程、そして「賞与減額証明書」です。

賞与減額証明書の記載内容

《記載内容》

  1. 賞与支給年月日
  2. 賞与支給対象期間
  3. 欠勤期間
  4. 正常に勤務していた場合の支給金額および支給計算式
  5. 欠勤により減額した額および減額計算式
  6. 差引支給額
  7. 賞与減額の根拠

交通事故の影響でボーナスの減額があった場合には、給与の減額があった場合に必要な「休業損害証明書」とは別に、ボーナスの減額を証明する「賞与減額証明書」会社に作成してもらいます。

なお、「賞与減額証明書」の書式は加害者側の任意保険会社から取り寄せる運用が一般的ですが、加害者側が自発的に送付してくれるとは限りません。その場合は、被害者からアクションを起こす必要があります。
また、書式の送付に応じてくれない場合には、上記1~7の記載内容を満たした書面をウェブ上からダウンロードするなどして対応するというのも一つの手段です。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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ボーナスの減額分を請求する際の注意点

ボーナスカットの要因が“交通事故による被害者の休業”であるという根拠を示すことができなければ、減額分の請求は認められないおそれがあります。なぜなら、ボーナスカットの要因は交通事故以外にも考えられるからです。

例えば、被害者だけでなくほかの従業員のボーナスも平均的に減額されているといった場合、ボーナスカットの要因は、“交通事故による被害者の休業”だけでなく、“会社全体の業績悪化”である可能性も考えられます。
そのため、就業規則や賞与規程上にボーナスの計算方法が明確に記載されておらず、使用者の裁量によって都度支給額が決められているといった運用である場合、“交通事故による被害者の休業”の影響でいくら減額されたのか証明することは難しいと言わざるを得ません。

「賞与減額証明書」を作成するのは被害者が勤める会社ですから、担当者に詳しい事情を説明し、協力を仰ぐことが望ましいでしょう。

交通事故慰謝料の他にボーナスの休業損害が認められた裁判例

【大阪地方裁判所 令和2年3月10日判決】

<事案の概要>
丁字路交差点を直進中の原告(自転車)に、本件交差を左折した被告(原動機付自転車)が衝突した事故により、第1・第2腰椎の圧迫骨折を負った原告が、被告に対して損害賠償を請求した事案です。

<裁判所の判断>
裁判所は、通院期間等に対する傷害慰謝料(135万円)、後遺障害等級8級相当の後遺障害慰謝料(830万円)、休業損害(197万5851円)など、合計3732万4847円の損害を認め、そこから過失相殺及び既払金を差し引いた金額の支払いを被告に命じています。

なお、本件は、提出した証拠から、ボーナスの支給対象期間や減額分が明らかであったため、休業損害(197万5851円)のうち、ボーナスの減額分として46万2500円が認められています。

【名古屋地方裁判所 令和2年2月12日判決】

<事案の概要>
交差点において原告(大型自動二輪車)と被告(普通乗用自動車)が衝突した事故について、原告の損害や後遺障害の程度が争点となった事案です。原告は、2年近く入通院を続けるほどの怪我(左大腿骨転子部骨折、左示指末節骨骨折、左示指背側割創)を負いました。

原告は、この事故のために休業を余儀なくされたこと、また、勤め先の業務委託契約が更新されなかったことを理由に、本来ボーナスの支給対象期間(1年間)中に無欠勤であれば、あるいは順調に契約更新がなされていれば支払われていたはずのボーナス相当額(37万274円)も請求の対象と主張しました。

<裁判所の判断>
裁判所は、被告が負担するボーナスの減額分について、支給基準が明らかでないことを理由に、休業等の程度に照らして相当な範囲(10万541円)で休業損害と認めました。

また、原告が負った怪我の後遺症である左股関節痛等の症状・下肢の短縮について、それぞれ12級13号に該当する後遺障害と認めたうえで、通院頻度や後遺障害の内容、程度に照らして傷害慰謝料を180万円、後遺障害慰謝料を250万円としました。また、休業損害(250万6031円)その他の損害項目を含めて合計1278万円4142円の損害を認め、過失相殺及び既払金を控除した残額の支払いを被告に命じています。

交通事故でボーナスが減額された場合は弁護士にご相談ください

会社によって支払時期や金額は異なるものの、働くためのモチベーションにもなる“ボーナス”。ボーナスの支給を期待して、大きな買い物の予定を組んでいる、将来のための積立資金にしているといった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
交通事故で怪我をして、思うような生活ができないストレスの中で、楽しみにしていたボーナスまで取り上げられてしまったら、やりきれない気持ちでいっぱいでしょう。
交通事故で発生した損害は、加害者側にしっかり請求し、補償を受けるべきです。

もっとも、あくまでも請求できるのは交通事故を原因とした減額分のみです。適正な賠償額を算定できる“根拠”がなければ、加害者側に請求を認めてもらうことが難しくなってしまいます。

そこで、交通事故事案に精通した弁護士への相談をご検討ください。

弁護士法人ALGでは、まずはご相談いただき、弁護士への依頼によってどんなことが実現する可能性があるか知っていただくことが大切と考えています。
なお、弁護士にご相談いただく前に、交通事故事案専門の受付スタッフがお客様のご状況をお伺いする段階を踏みますので、ご不明点等も気軽にお話しいただければと思います。

ご依頼者様に発生した損害について、とりこぼしなく加害者側に請求できるよう事案を精査し、必要なサポートを提供できる環境が整っていますので、ぜひ一度お電話にてお問合せください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。