監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
労働審判を申立てられた場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
労働審判制度が生まれた背景
労働トラブルを解決する方法として真っ先に思い浮かぶのが裁判という手続きではないでしょうか。
しかし、いわゆる裁判(民事訴訟)は、判決が出るまでに通常半年~1年程度の時間を要しますし、内容も職業裁判官が審理を行うため、「ビジネス」について専門性のある人が担当するわけではないという意味で、労働トラブルの解決に馴染まない側面があります。
そこで労働審判という、迅速かつ専門的な問題解決が可能な手続きが生まれました。
労働審判制度の概要について
ひとことでいうと、個別の労働紛争について、3回以内の期日での解決を目指す、非公開の裁判所での手続きです。
労働審判の法的強制力とは?
当事者の合意があった場合、以下のような効力があります。
形成力(解雇が無効となったり、あらたな労働契約上の地位の創設をしたりする効力)
執行力(約束した金員の支払いがない場合は強制執行できる)等があります。
迅速かつ柔軟な紛争解決が期待できる
労働審判の本質は話合いであり、ごく短い期間に集中して議論がなされますので、素早く、実態に即した結論を得ることができる可能性があります。
「通常訴訟」とはどのような違いがあるのか?
以下の点が大きな違いです。
非公開:通常訴訟と比べると、手続は非公開でなされる点に違いがあります。
開 催:通常訴訟にはない3回という期日の回数制限があります。
進 行:通常訴訟と異なり、裁判所での口頭での受け答えも重要となります。
どのようなトラブルが労働審判の対象となるのか?
個別の労働関係のトラブルを取り扱います。
労働審判の対象とならないケース
⑴極端に複雑なケース
⑵個別労働紛争ではなく、集団の労働紛争(労働組合等)
⑶公務員の雇用が問題となる事件(行政事件)
労働審判を有利に進めるにはどうすべきか?
速やかに弁護士に依頼することが何より重要です。
初動対応が重要となる
労働審判は原則として3回以内の期日で審理を終結することとなります。
もっとも、実態としては第1回目でほぼ審判委員と裁判官にて心証をとっていることが通常ですので、
第1回目の期日までの初動が極めて重要です。
弁護士に依頼することのメリット
弁護士に依頼することによって、法的に適切な対応や、莫大な情報の整理を行うことができ、適切な防御が実現できます。
また、最悪、訴訟に進行することもあり得る制度ですが、弁護士であれば、訴訟になった際の見通しも踏まえて労働審判に対応することができ、一貫した対応が実現できます。
申し立てがあった場合の手続きの流れ
申立てがなされた後、裁判所は40日以内に第1回期日の指定をしなければなりません。
第1回目の期日には、当事者の話を聞いて、争点と証拠を整理して進めていきます。
解決までにかかる期間はどれくらい?
労働審判の平均審理期間は80日程度と言われています。
審判に不服があれば異議申し立てが可能
意外に思われるかもしれませんが、審判の言渡しが仮になされたとしても、その内容に不服があれば、当事者は不服申立てを行い、通常訴訟に移行させることができます。
その意味で労働審判事体は強制的な紛争解決方法ではありません。
労働審判に必要な費用について
弁護士費用を除いては、申立てをする側は、裁判所に納める収入印紙代が必要です。
申立てを受ける側は弁護士費用を除いては、解決金等の用意をする必要がある場合があります。
労働審判の解決金の相場はどのくらい?
解決のためのいわゆる相場は存在しません。事案によります。
労働審判を申し立てられてしまったら……
労働審判はごく短い期間で膨大な準備をこなさなければなりません。
加えて、強制的な解決ではないものの、訴訟手続と地続きになっており、労働審判時の対応がそのまま通常訴訟の帰趨に影響を与えてしまいます。
申立てをされたらすぐに弁護士に相談しましょう。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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