監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
労使間でトラブルに発展した際、よく利用される紛争解決手続きが労働審判です。
例えば、解雇した従業員が、解雇無効を訴えて、労働者としての地位の確認や稼働できていない間の賃金の支払いを求めて、労働審判を起こすことがあります。
労働審判では、どのような解決が図られることが多いのか、以下解説していきます。
目次
労働審判で会社が支払う解決金の相場は?
労使トラブルも、最終的には、金銭による解決が図られることが大多数です。
多くの場合、会社側が一定額の金銭を労働者側に支払い、解決とすることが多いです。
では、労働審判の解決金の相場はどうなっているでしょうか。
労働審判における「解決金」とは?
労働者は、いろいろな名目で金銭の請求をします。
未払残業代や、パワハラ等による慰謝料、解雇され稼働できなかった期間の未払賃金等です。
最終的に労働審判で、和解で解決する場合には、これらをひとまとめにして、解決金という名目で支払うことが多いです。
つまり、労働審判における解決金というのは、労働者の請求する種々の金銭をひとまとめにして会社側が紛争解決のために支払うものです。
解決金の金額はどのようにして決まるのか?
解決金はどのようにして決まるでしょうか。労働審判においては、双方の主張内容や証拠資料に基づき、裁判官が一定の心証開示をして、和解を促すことが多いです。
解決金の金額は、給与の金額や期間等を考慮しつつ、裁判官が一定の心証を開示して決めていくことが多いと思われます。
月給を基準として決定する
例えば、会社は解雇したものの、裁判官の心証として、解雇は無効であるとします。
その場合、裁判官からは、解雇が無効の可能性は相当程度あることを示されたうえで、労働者には確定的に辞めてもらう代わりに、解決金として、月給数か月分を支払うのはどうか、というような提案を受けることがあります。
何か月分かは案件によって異なりますが、解雇無効の可能性が高いほど、より高額になっていくと思われます。
会社と労働者の責任の割合で決定する
他にも、会社と労働者のいずれか一方に原因があるというよりは、双方に責任があったというようなケースでは、その責任の割合も踏まえて、金額を決定することもあります。
例えば、解雇無効である可能性はあるため、半年分の解決金は必要だが、労働者にも相当程度原因があるため、3割程度解決金を減ずるというような和解もあり得るでしょう。
責任が同程度であれば解決金は不要か?
労働者と会社で、責任が同程度であるようなケースでは、お互い様ということで解決金は不要になるはずと考えられますが、実際は必ずしもそうではありません。
0円で解決というのは、請求を単に取り下げることと同様の状態であり、一定額の金銭の支払いがないと労働者にとってその内容で合意をするメリットが労働者にありません。
一定額の金銭の支払いがないと労働審判で双方が合意をすることができず、“解決”のためには一定額の支払いが必要になるということが多いと思われます。
解雇期間中の賃金を支払う
仮に解雇が無効であるという場合には、解雇期間中、労働者が稼働できなかったのは会社の責任ということになります。そのため、稼働していない間でも賃金が発生し、それを支払わなければなりません。
これは会社にとって非常に大きなリスクですので、解雇する場合には、そのリスクも踏まえて慎重に行う必要があります。
会社の業績は解決金の額に影響するのか?
会社の業績が労働審判における解決金の額に影響するということは、多くはないように思われます。
未払賃金の請求事案の場合、解決金は基本的にはその労働者の給与の月額を基に計算することが多いですし、慰謝料請求事案であれば、慰謝料の相場感から決まることが多いと思われます。
会社の業績の良し悪しはあまり影響していないと考えられます。
不当解雇について争われた場合の解決金
不当解雇による解雇無効を争われた場合、仮に解雇が無効という心証ならば、6か月~12か月程度の解決金を示される可能性があります。解雇が有効という心証ならば、1~3か月程度のことが多いでしょうか。
もちろん案件ごとに異なりますので、絶対的な基準はありません。
解雇の有効性によって金額が変動する
解雇が有効という心証の場合、当然ながら、解決金の金額は減ります。
解雇が有効ならば、もとより解雇時点で給与は得られなくなるはずだったためです。
逆に解雇が無効だった場合、解雇されていないので、解雇した後でも賃金は発生していますし、今後も発生し続けるということになります。
そうだとすると、解雇無効の心証の場合、当然ながら、解決金の金額は増えることになります。
労働審判の解決金をなるべく抑えるには?
労働審判の解決金の金額は、裁判官の心証によって大きく左右されます。
そのため、労働審判の解決金を抑えるには、なるべくわかりやすく、かつ、会社の主張が正しいということを説得できる主張書面と客観的な証拠を提出することが重要です。
解雇が有効であるというならば、具体的にどのような解雇事由があったのかを詳細に主張し、証拠も提出しましょう。裁判官の心証を解雇有効とできれば、大きく解決金を減らすことができます。
解決金の交渉を弁護士に依頼する
労働審判では、裁判官の心証開示に基づく、和解での解決をまずは目指すことになります。当然、双方が合意しなければ、和解は成立しません。
したがって、裁判官の心証開示と同様に重要なのが、和解協議における金額面での交渉です。
解決金の交渉を適切に行うためにも、弁護士に同席してもらい、きちんと意見を述べていくことが重要です。
労働者側にも責任があることを主張する
解決金を減らすために、労働者側にも責任があることは積極的に主張していきましょう。
単純に労働者側に責任があるという主張も重要ですし、他にも、実際に会社側からも労働者に金銭を請求するということを主張するのも有効です。
仮に労働者側が損害賠償義務を負うようなものがあれば、それを請求することにより、最終的に相殺勘定により解決金の金額を下げられることがあります。
労働者保護の必要性が薄いことを主張する
労働者側が既に他の職場で稼働していたり、労働者側に大きな責任があったために解雇に至ったりした事情があれば、労働者保護の必要性は低くなり、その結果、裁判官が示す解決金の金額も、相当程度下がる可能性があります。
労働者保護の必要性が薄いこともきちんと主張していきましょう。
労働審判の早期解決を目指すなら解決金による和解も検討すべきです。お悩みなら一度弁護士にご相談下さい。
労働審判は早期紛争解決に適した手続きです。
労働審判での和解による早期解決を目指す場合には、裁判官の心証形成に影響を与える事情を主張、立証できるかがポイントです。
事情の整理、証拠の有無など短期間に行う必要がありますので、労働者側から労働審判が申し立てられた場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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