監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
コンプライアンス違反は、企業に損害が生じるだけでなく、対外的な信頼も失墜することに繋がるので、企業利益の損失は多大なものになります。
そういった事態を未然に防止するために、企業がとるべき5つの対策を以下にご紹介していきます。
コンプライアンス違反とは?
コンプライアンス違反とは、法令や条例、社内規則や社会規範に違反する行為です。
企業のコンプライアンスが重視されている背景
一部上場企業やマスコミのコンプライアンス違反など、近年、企業の不祥事に関する事件が相次いで報道されています。
段々と、不祥事を起こす企業は増加しており、コンプライアンスに関する意識を高めなければならなくなっています。こうした背景もコンプライアンスの重要性に注目を集める要因の1つとなっています。
コンプライアンス違反が起こる要因
コンプライアンス違反が起こる要因は、いくつかあります。
社員や管理者の知識不足の場合もあれば、違反をしてでも他に守らなければならないノルマ等があったり、違反をしていても指摘をできない雰囲気である場合等です。
コンプライアンス違反のリスクと影響
コンプラインス違反があると、企業には多大なリスク及び影響が生じます。
以下に挙げるので、参考にしてください。
行政処分・刑事罰
対象となる企業が、許認可を受けているような場合、それが取り消される可能性があります。
損害賠償責任
違反行為について被害者がおり、損害が生じた場合、損害賠償請求をされる可能性があり、その場合、企業に経済的損害が生じます。
社会的な信用の失墜
コンプライアンス違反が報道やSNSで拡散されたりすると、たちまち社会に知られることになり、 取引先等の関係者やその他の人々からの企業イメージの低下は避けられないでしょう。
その結果、ユーザーが離れ営業利益に影響するほか、株価に影響する可能性もあります。
従業員の離職
イメージの低下した企業で働き続けることに抵抗を示す社員は少なからずいると言えます。そのため、働きづらさを感じ、モチベーションが低下したり、退職者が増加したりする可能性があります。
株主離れ
上場企業であれば、株主は株価の下落した株式は、早めに売却をしてしまおうと考える株主は少なくありません。その結果、株主が離れていってしまうことになります。
【5つの対策】コンプライアンス違反を未然に防ぐには
上記のようなリスクを未然に防ぐため、コンプライアンス違反が生じないように対策をする必要があります。そのための5つの対策を以下に紹介していきます。
①自社リスクの洗い出し
まずは、社内にどんなリスクが潜んでいるかを洗い出しましょう。その洗い出しにより、どのような体制を作るべきかが見えてくるためです。
②社内ルール・マニュアルの作成
まずは、コンプライアンス違反を防ぐため、社内規程やマニュアルを整備することが大切です。
企業の基本となる業務について、マニュアルや手順書を作成することで、コンプライアンス違反が生じにくい体制を構築することが重要です。
③コンプライアンス研修の定期的な実施
従業員に対し、コンプライアンス遵守意識を持たせるためには、研修を行うことが効果的です。また、社内全体にその意識を浸透させるためには、一時的な研修ではなく、定期的に行う必要があるといえます。
④コンプライアンス相談窓口の設置
社内でコンプライアンス違反が疑われる事象が生じた場合、すぐに対応しリスクを防げるよう、社内に相談窓口を設置することは不可欠だといえます。
⑤内部監査の実施
定期的に、従業員に事情聴取などをして、内部監査を繰り返すことが必要です。これにより、予め不祥事が生じる原因を潰しておくことが可能になるからです。
コンプライアンス対策を成功させるためのポイント
コンプライアンス対策を成功させるためのポイントがいくつかありますので、以下に紹介していきます。
企業のトップが違反を許さない決意を示す
従業員によるコンプライアンス違反であっても、最終的には企業の利益の損失に繋がります。
そうしたことを防ぐためには、企業の代表者がコンプライアンス違反を断固として許容しないといった意思を明確に社員に示すことが大切です。
コンプライアンス教育は階層別に行う
コンプライアンス研修等の教育は、社員の地位ごとにすることが大切です。
管理職、中間管理職、新入社員それぞれで、生じ得るリスクが異なり、注意すべきポイントも変わってくるからです。
法律の専門家である弁護士に相談する
あらかじめ、弁護士と顧問契約を締結しておくなど、弁護士に相談できる体制を作っておくことが大切です。何かあったときに、専門知識のある弁護士に相談するようにしましょう。
よくあるコンプライアンス違反の事例
起こりやすいコンプライアンス違反について、以下で紹介していきます。
これを参考に、事前防止策を考えてみることをおすすめします。
企業によるコンプライアンス違反事例
企業が決算書を出す際、実際の数字よりも利益が出ているように偽装する「粉飾決算」といった、不正会計処理も、企業のコンプライアンス違反の一例として挙げられます。
このような事が一度でもあると、企業の信頼が大きく失墜してしまう可能性があります。
従業員によるコンプライアンス違反事例
従業員個人によって、横行しやすいのは、ハラスメント行為です。
上司が部下に対し、必要以上の叱責や退職勧奨を行ったりするパワーハラスメントは近年、増加しており、上司本人にその意識がないことも問題となっています。
コンプライアンス違反を未然に防ぐために、弁護士法人ALGがサポートいたします。
コンプライアンス違反は、企業のリスクの最小化を図るために、防がなければなりません。
弁護士法人ALGは、このような予防に専門家として尽力します。
ぜひご相談ください。
よくある質問
なぜ企業はコンプライアンス対策を重視する必要があるのでしょうか?
一部上場企業やマスコミのコンプライアンス違反など、近年、企業の不祥事に関する事件が相次いで報道されています。
不祥事を起こす企業に対する世間の反応は厳しくなっており、コンプライアンスに関する意識を高めなければならなくなっています。こうした背景もコンプライアンスの重要性に注目を集める要因の1つとなっています。
中小企業でもコンプライアンス対策に取り組むべきですか?
中小企業であっても、コンプライアンス対策に取り組む必要があります。
コンプライアンスに対する意識を高めなければならないのは、全ての企業に共通することであり、経営上のリスクを回避しなければならないのは、中小企業も同じです。
「ガバナンス」や「CSR」とコンプライアンスの違いは何ですか?
ガバナンスとは、「管理体制」のことを意味し、企業が透明性のある経営をするための体制を構築・管理することを言います。これに対し、コンプライアンスは、「法令順守」を意味し、法令や条例、社内規則、社会規範等を遵守することを言います。
CSRは、企業が社会に対して負う責任を意味しており、コンプライアンスの1つと考えることもできます。
機密情報や個人情報の漏洩を防止するには、どのような対策が有効ですか?
情報の漏洩を防止するには、社内規定を整備し、従業員に遵守させることが有効です。
社内規定の整備については、弁護士に相談して定めれば、安心感が増します。また、従業員に意識を持たせるために、社内でコンプライアンス研修を実施している企業もあります。
反社リスクに対して企業はどう備えるべきですか?
企業が反社会的勢力と関係を持たないよう、事前に確認作業をするべきです。
インターネットや登記情報、雑誌や新聞等で、取引先や関係機関が反社会的勢力の疑いがないかを確認することが重要です。
コンプライアンスの相談窓口は社外にも設置した方が良いですか?
社外の相談窓口を設ける方がより有効的です。
社員が安心して通報することができ、また、専門家が対応することにより、迅速かつ的確な処理が可能になります。
また、社外に通報窓口を設けているということ自体が、企業の信頼を増すことにも繋がります。
コンプライアンスに関する社内規程には、どのような内容を盛り込むべきでしょうか?
社内規程には、規程及びその目的、適用範囲、遵守事項、組織体制、懲罰について、盛り込むべきでしょう。企業が、何を実現するためにどのような仕組みを作り、どのように遵守していくのかを明確にすることが、法令順守に繋がるからです。
社内のコンプライアンス対策チームに、外部の弁護士を加えることは可能ですか?
社内のコンプライアンス対策チームに社外の弁護士を加えることも可能です。
この場合、担う役割は、リスク管理や予防法務を行う社内弁護士とは異なります。この場合には、実際に紛争が生じた場合の訴訟の代理や事件処理を当該弁護士が行うことができなくなる場合がありますので、弁護士への依頼前に、何を依頼するのか、求める効果はなんなのか明確にしておいた方がよいでしょう。
労務コンプライアンス体制を構築する際のポイントを教えて下さい。
企業は、従業員の労働労務が不可欠です。そのため、就業規則を作成し、労務管理を行っていくことになります。
その際、労働基準法だけでなく、労働契約法、労働組合法のほか、男女雇用機会均等法、育児介護休業法などの関係法令もチェックすることがポイントです。
コンプライアンス違反が発生した場合の対処法について教えて下さい。
まずは、焦らずに事実関係を調査・把握しましょう。そして、上司等、自分より上の階層へ速やかに報告をすることが重要です。被害者がいる場合、損害賠償請求等への対処の適切性も問題となりますし、その被害者に対してもケアを怠らないようにする必要があります。
最終的には、同様の違反が起こらないよう、再発防止策を立てていくことになります。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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