監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
在宅ワークを行う上での悩みどころは、働いている時間をどのように管理し、残業代を払うかでしょう。
以下で、在宅ワークの特徴を踏まえた上での考え方についてご説明していきます。
在宅ワークで課題となる労働時間の管理
在宅ワークで問題となるのは、労働時間をどのように管理するかという点です。
在宅ワークでは、直接上長がその仕事ぶりを肉眼で確認できないため、労働時間の把握方法について注意する必要があります。
使用者には従業員の労働時間を把握する義務がある
前提として、使用者には従業員の労働時間を客観的な方法(例:タイムカード等)で把握する義務があります。これは、単に給与計算上の必要というよりは、従業員の健康管理の観点からも求められているものです。
在宅勤務者の労働時間を適正に管理する方法とは?
そうはいっても、在宅勤務者は文字通りオフィスにはおらず、直接働いている姿を目視できるわけではありません。どのようにして在宅勤務者の労働時間を把握し、管理すればよいのでしょうか。
労働基準法上の留意点
そもそも、在宅勤務であってもなくても、労働基準法上の規制については同様に適用されます。在宅勤務だからといって、労働基準法の適用が除外されるということはありません。
就業規則にはどのような規定が必要か?
在宅ワークを導入するにあたって、労働時間等、条件に特段変更がない場合には、就業規則を変更する必要がない場合もあります。
しかし、一般には、従業員側に一定の通信費等の負担が生じる可能性がありますので、就業規則の変更が必要となるでしょう。
その他にも、以下のような規定について定める必要があります。
①在宅勤務を命じることに関する規定
②テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合はその労働時間に関する規定
③通信費などの負担に関する規定
労働時間を自己申告制とする場合に企業が講じるべき措置
自己申告制とする場合には、漫然と導入するだけではなく、定期的に、実態調査を行う必要があります。
申告時間と実際の労働時間に乖離がある場合には、実態調査を踏まえ、再発防止を検討しなければなりません。
在宅ワークでの休憩時間はどのように取り扱うのか?
労使協定や就業規則などで所定の休憩時間をあらかじめ定め、その時間には休憩をとるよう指導を徹底しましょう。
在宅ワークの時間外・休日・深夜労働について
在宅ワークであっても時間外労働や休日、深夜労働については割増賃金が発生します。
在宅ワークでも残業代の支払いは生じるのか?
在宅ワークであっても、残業が発生した場合には、当然に残業代を支払う必要があります。
就業場所が会社ではないことから、残業の必要性や、その時間の把握については、特に注意が必要です。
残業を許可制にすることは可能?
可能ですが、許可を得てないからといって「残業をしていなかった」と扱うことはできません。
許可制は残業の必要性を従業員自身に検討させるためのものに過ぎないことを踏まえる必要があります。
「事業場外みなし労働時間制」の適用について
在宅勤務の場合でも「事業場外労働みなし労働時間制」の利用は一定の条件のもと可能です。
①業務が自宅で行われていること
②通信機器が常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
みなし労働時間制でも残業代の支払いは必要
みなし労働時間制をとったとしても「みなし労働時間」を超過した場合、割増賃金を支払う必要があります。
長時間労働対策として企業に求められる対応
長時間労働そのものの対策については、業務そのものの量や各従業員の業務遂行のやり方について調査をすることからはじめましょう。
実態を把握することで、具体的な対策が定まることがあります。
在宅ワークを円滑に運用するには、労働時間の適正な管理が重要となります。不明点があれば一度弁護士にご相談下さい。
在宅ワークの導入にあたっては、実務上、多くの注意点があります。ポイントとなる点が会社によって様々ですので、導入にあたっては弁護士に相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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