監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
労働者から労働審判が申し立てられた場合、会社がそれを拒否することは原則としてできません。
労働審判が申し立てられ、第1回期日が指定されると、裁判所から期日呼出状とともに労働者が作成した申立書の写しが届きます。
会社は、この申立書を読んで争点を把握した上で、第1回期日までに「答弁書」を作成し反論を行わなければなりません。
本記事では、この答弁書作成のポイントについて説明していきます。
目次
労働審判を有利に進めるには「答弁書」が重要
労働審判の第1回期日においては、会社及び労働者が双方同席の上、それぞれの主張の整理が行われます。
労働審判は3回しか期日が開かれないため、会社は第1回期日までに反論に必要な主張や証拠をまとめておく必要があります。
会社の主張や証拠をまとめた書面が「答弁書」です。
書面にすることで、審理を行う労働審判委員会に会社側の主張をわかりやすく伝えることが重要です。
答弁書は誰が作成するのか?
答弁書を作成するのは事業主ですが、弁護士に依頼することもできます。
先述したとおり、答弁書には反論に必要な主張を書ききる必要があるため、労働問題に精通した弁護士に依頼することは労働審判を有利に進めるために有用です。
労働審判の答弁書に記載する内容とは?
答弁書に記載しなければならない事項は、労働審判施行規則第16条1項と、非訟事件手続規則第1条1項に定められています。
具体的には、申立ての趣旨への答弁、申立書の事実への認否、答弁を裏付ける具体的な事実、予想される争点と関連する事実・証拠、交渉経緯の概要などです。
関係者の供述を記載することは可能?
関係者の供述は答弁書に記載しなければならない事項として定められてはいませんが、書いていけないわけではありません。
むしろ、重要な関係者の供述はその要点を答弁書に記載しておくことで、会社の主張を補強することができます。
答弁書を書くうえでのポイント
労働審判における答弁書の重要性がわかったところで、ここからは、答弁書を実際に書く上で気を付けるべきポイントを説明していきます。
争点を正確に把握しておく
労働関係の法的紛争は争点が多岐にわたることが多く、一方で労働者本人が申し立てるような場合には、争点に関係のない主張が続くこともあります。
答弁書において必要な主張を出し切るためには、労働者が作成した申立書をよく読んで、争点を把握した上でその全てに反論をする必要があります。
会社の主張が伝わるよう具体的に記載する
労働関係の紛争には、会社の経営実態や、労働者と会社との長きにわたる雇用関係が複雑に絡み合っていることが多いです。
審判員に対し、会社の主張を十分に伝えるためには、時系列のほか、会社の事業内容や規模、またこれらを背景とした労務管理方法等を理解してもらう必要があるため、できる限り具体的に記載していくことが望ましいです。
事実を裏付ける証拠を記載する
労働審判施行規則第16条1項6号には、答弁書に記載しなければならない事項として、予想される争点ごとの証拠が挙げられています。
審判員に会社の主張を説得力あるものとして受け入れてもらうためには、その主張を裏付ける証拠が必要です。答弁書には、この証拠書類の写しを添付する必要があります(同条2項)。
メモ等を証拠として用いることは可能か?
会社が提出する証拠として考えられるのは、雇用契約書や就業規則等の法的文書のほか、メールやメモ等、事実の経緯を示すものを証拠とすることができます。
当然、労働者もこれを証拠とすることができるため、会社は労働者がどのような証拠を持っており、何を出してくるのか、考えながら証拠の選別を行う必要があります。
選別に迷う場合は弁護士に相談しましょう。
相手の主張に対する認否を明確にする
相手の主張を認めたり否認したりすることを、「認否」と言います。
争点とは、労働者の主張する事実で会社が否認しているものを指すため、争点を整理するためには相手の主張に対する認否を明確にすることが不可欠です。
安易に全てを認めない・否認しない
労働者の主張で会社が認めたものは、たとえ客観的な証拠がなくてもあったものとして扱われます。
一見事実の帰趨に関係ないように見える事実でも、組み合わせや時系列によって会社に不利に働くことがあるため、認否は細かく行わなければなりません。
かといって、とりあえず否認すればよいというわけでもありません。
否認した事実は争点になりますが、争点が多ければそれだけ審理も複雑になります。
また、期日間で行われる和解による解決が試みられますが、それも争点が多くなるほど困難になります。
事案の解決のためには的確に争点を絞ることが重要であり、そのためには丁寧な認否が必要です。
一度提出した答弁書の内容を変更・追加できる?
労働審判では、双方が提出した申立書・答弁書・書証に基づき争点整理が行われた後、口頭によって審理が進められるため、口頭で主張を変更したり追加したりすることは不可能ではありません。
しかし、争点整理が終了すると労働審判委員会の心証が形成されるため、既に形成された心証を口頭で変えることは困難です。
会社に有利な解決を導くためには、主張の変更や追加の必要が無いよう、答弁書を丁寧に作成することが重要です。
答弁書には提出期限があるので注意
答弁書の提出期限は、第1回期日の10日から1週間前程度に設定されます。
裁判官や審判員に、会社の主張を事前に把握してもらうためには、提出期限までには提出すべきです。
提出期限までに間に合わない場合は?
答弁書の提出が遅れると、労働審判委員会が答弁書を読んで検討する時間が取れなくなり、会社の主張を十分に理解してもらえないまま第1回期日を迎えることになってしまいます。
裁判所から期日呼出状が届いてから答弁書の提出期限までは1ヶ月弱しかないことが多いため、時間制限は厳しいですが、提出期限は必ず守るようにしましょう。
万が一間に合わない場合には、間に合わないことが分かった時点で、裁判所に連絡を入れましょう。
労働審判では答弁書の内容が非常に重要となります。答弁書の作成は、労働問題を得意とする弁護士にお任せください。
労働審判を有利に進めるためには、会社の主張やそれを裏付ける証拠を全て記載した答弁書を作成することが必要です。そして、答弁書には厳守すべき提出期限があります。
短期間で十分な内容の答弁書を作成するために、裁判所から期日呼出状が届いたらすぐに、労働問題に精通する弁護士に依頼していただくことをお勧めします。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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