監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
就職活動は外部の人間と会社側とが接する場面ですが、会社が「採用する」という強い立場であることから、時として求職者に対し、セクハラが会社側からなされることがあります。
採用の場において、外部の方へのセクハラは、社内でのセクハラと同様致命的な問題を生じさせます。
目次
「就活セクハラ」とは
「就活セクハラ」とは、就職活動をしている男女に対し、採用活動の場で、性的な嫌がらせを行うことを指します。
どのような言動が就活セクハラになり得るのか?
性的な冗談やからかい、食事への執拗な誘い、性的な事実の確認等が就活セクハラになり得ます。
就活セクハラが発生した際の企業リスク
就活セクハラを発生させた際の、企業側のリスクは計り知れません。
企業の社会的信用を失う
就活の場という、いわば「入口」ですらセクハラがなされるのであれば、就職後の環境でも、セクハラが平然と行われていると認識されるでしょう。
法的な責任の有無という次元以前に、採用への応募そのものが悪評により絶えてしまう可能性があります。
使用者責任を理由とした損害賠償請求
セクハラそのものをいわゆる「不法行為」と捉え、交通事故の被害者が加害者へ賠償を請求するのと同様の理屈で、セクハラを受けた方が会社に対して損害賠償請求をすることがありえます。
この場合は、金額はもちろん、採用の場という謂わばオフィシャルな場面で平然とセクハラがなされたという事実が公となり、企業イメージが大きく棄損されることは避けられません。
刑事責任を追及される可能性も
セクハラの程度が深刻であれば、刑法典への抵触を理由に、刑事責任を追及される可能性もあります。
採用の場に関係するのは人事や役員等、当該会社の中枢の方々です。そのような中枢の方々がセクハラにより刑事責任を追及されれば、会社の信用は回復不能なダメージを受けることとなります。
就活セクハラを防止するために企業がとるべき対策
会社は、就活セクハラを防止するために何をすればいいのでしょうか。
OB・OG訪問における対策
例えば就活生が、企業に所属する同門の学校卒業生のもとを訪れるOB・OG訪問は、採用の場ではよく行われています。
学生側からしても、企業側にとっても、有益な情報交換の場と言えますが、企業の目が届きにくい面もあります。したがって、管理職や、人事部門以外の社員に対しても、就活セクハラ等のリスクについて、日ごろから意識を醸成する機会が必要となります。
採用面接における対策
実際の面接に先んじて、面接担当者に採用活動の場でのセクハラについて具体的な事例を示し、注意喚起をしてください。
従業員へのハラスメント研修
従業員に対し、セクハラとなる具体的な事例を共有し、意識を醸成しましょう。
就業規則の懲戒事由に規定する
就業規則に従業員へのセクハラはもちろん、会社外(就活生等)の人物へのセクハラについても懲戒事由となることを明記しましょう。
就活生に向けた相談窓口の設置
就活生に向けた相談窓口を自社にて設置しましょう。
いきなり外部(例えば弁護士)に相談されるくらいであれば自社の窓口を設け、自浄のための能力があることを示した方がまだ就活生への印象はよいと思われます。
もっとも、相談者や相談内容の秘密は厳守し、相談内容にかかわらず相談者に不利益な扱いは絶対にしてはなりません。
男性への性的な言動にも注意が必要
就活セクハラが問題となるのは女性の場合に限りません。
男性に対しても、性的な冗談やからかい、性的な事実に関する質問等セクハラは許されません。
女性に対してはセクハラになるが、男性に対してはセクハラにならないなどということはないので、注意してください。
就活セクハラが発生した場合の対処法
事実を確認し、セクハラの事実が真実であった場合、セクハラを行った人物を会社として処分し、当該人物とは別の、責任ある立場の方が被害者の方に謝罪すべきです。
就活セクハラで企業がとるべき対策について、労働問題に強い弁護士がアドバイスいたします。
就活セクハラは、会社全体で予防する必要があり、万一発生した場合にも社をあげて対応をしなければならない重大なテーマです。予防はもちろん、発生後の事後対応についても、弁護士に相談ください。紛争対応の実績が豊富にあるからこそ予防も効果的に行えます。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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