労務

労働審判に対応するうえでの初動対応の重要性

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

労働審判とは、会社と労働者との間の労働紛争について迅速な解決を図るための手続きで、通常の手続きよりも早くに進みます。そのため、労働審判を申し立てられた場合には、実質的に初回期日までに主張や立証を尽くす必要があるため、初動対応が重要となります。

以下、労働審判に対応するうえでの初動対応の重要性について解説します。

労働審判で初動対応が重要視される理由

労働審判は準備できる期間が短い

労働審判は、紛争の早期解決の観点から、原則として3期日以内で終了する手続きです。

そうすると、第1回期日での主張立証がその後の審理や結果に大きく影響することになるので、労働審判を申し立てられた場合には、基本的には第1回期日までに準備を完成させる必要がありますが、申立書が到着してから第1回期日までに準備できる期間は、大体3週間から1か月程度です。

そのため、労働審判が申し立てられた場合に、会社として労働審判のための準備ができる期間は非常に短いです。

第1回期日を変更することは可能か?

第1回期日は、裁判所と申立人の予定で調整をして決定しており、相手方(会社)の予定は考慮されていません。そのため、事前に連絡をすれば、第1回期日を変更することは可能です。

ただし、期日の直前で連絡をしても、変更することができない可能性もありますので、裁判所から期日通知書が到着した段階で、期日に予定がある場合には、速やかに裁判所に連絡することが必要です。

労働審判はどのような流れで行われるのか?

労働審判は、申立人が裁判所に対して、労働審判の申し立てを行うことから始まります。

申立人から労働審判の申立てを受けた裁判所は、申立人と裁判所で第1回期日の日程調整を行った後、労働審判の申立書類と期日通知書を相手方(会社)に送付します。

その後、相手方(会社)は、第1回期日までに答弁書を提出し、第1回期日に臨みます。

期日には、裁判官(労働審判官とも言います。)1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が進行をします。第1回期日までに提出された、申立書や答弁書、証拠書類等を踏まえて、当事者双方に直接質問をしながら主張、争点を整理していきます。

その後、労働審判委員会が双方の意向を確認し合意点の模索、場合によっては労働審判委員会としての和解案の提示がされます。

当日に双方が合意できれば、その日に調停(和解)が成立します。第1回期日において合意ができなかった場合には、必要に応じて第2回、第3回期日が開かれ、双方の調整を行います。

基本的には、第3回期日までに合意ができない場合には、調停は不成立となり、労働委員会が審判を下すことになります。

労働審判に対応するうえでの初動対応

第1回労働審判期日の確認

まず、第1回労働審判期日の日程確認をするとともに、労働審判申立書類の確認をします。第1回期日までに、主張の整理や証拠の確認をする必要があるためです。

第1回期日を欠席するデメリット

まず、第1回期日だけではありませんが、正当な理由なく期日を欠席すると、5万円以下の過料が課されます。

労働審判は、短期間で審理が進むため、第1回期日は、その事案の争点を成立する意味でも労働審判委員会の心証を得るためにも重要な期日となります。

第1回期日を欠席しても、手続き自体は進みますので、申立人側の話だけで進められたり、申立人に傾いた心証を形成されたりする可能性があります。

労働審判が行われる裁判所の確認

労働審判が行われる裁判所の確認をすることが必要です。

期日には出席すべきですが、期日が行われる裁判所がわからないと出席もできません。また、期日までに不明点の確認や緊急事態が発生した際の連絡をすることもありますので、期日が行われる裁判所がどこであるか、裁判所の担当係はどこかなどを、期日までにしっかり確認しておきましょう。

会社側が労働審判を行う裁判所を選べるか?

労働審判は、法律で定められている場所の裁判所で行われますが、その場所は複数ある場合があります。その場合、申立人が申し立てをした裁判所で審理を進めますので、申し立てられた会社側が労働審判を行う裁判所を選ぶことはできません。

答弁書の作成

申立人が作成した申立書に対して、相手方(会社)の主張、反論を記載した答弁書を作成することになります。

答弁書には、①申立ての趣旨に対する答弁、②申立書の理由(申立書記載の事実)に対する認否、③相手方(会社)の主張等を記載する必要があります。

指定された期限までに提出できない場合

指定された期限までに、答弁書の提出ができない場合には、そのことが判明した時点で速やかに裁判所の担当部署に連絡をして、対応を相談してください。

反論のための証拠書類を収集

答弁書の作成だけでなく、②や③に記載した内容を裏付ける証拠も提出する必要がありますので、証拠の準備も同時に行う必要があります。

第三者である労働審判委員会に、相手方(会社)の主張が正当であることを理解してもらうためには、客観的な証拠が重要となるからです。

会社側の出席者を決定

労働審判では、裁判所から直接双方当事者に話を聞くことが通常ですので、期日には労働者と会社の双方に出席が求められています。

会社側は、社長や事実関係を把握している担当者(人事担当者、上司等)が出席することが多いです。

なお、弁護士に依頼して対応している場合には、弁護士のみの出席でもよいですが、直接裁判所に主張したい場合には会社の社長や担当者の出席をすることもあります。

社長や取締役などの出席は必須か?

社長が労働者の人事権も担っていたり、事情も把握していたりする場合には、社長の出席は必須です。弁護士に頼している場合には、必須ではありません。

和解による解決を望む場合に準備すべきこと

申立人の主張と会社の主張とを比べて、どのような内容までであれば会社として譲歩できるのかを事前に検討することが肝要です。

特に、早期解決のためには、会社側が一定程度の解決金の支払いを求められることが多いですので、金額について検討しておいた方が良いです。

金額以外に会社が申立人に求めるものがあるのであれば、その点も洗い出しておいたほうが良いです。

労働審判を申立てられた場合、いかに迅速に対応できるかが重要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

労働審判における会社側は、準備できる期間が1か月内程度とかなりタイトなスケジュールとなっており、その間に事実確認、書面の作成、証拠の収集等の準備を行わなければなりません。また、答弁書の作成においては、事実を主張すればよいだけでなく、法的な主張もいなければなりません。

加えて、会社の業務を行いながら、労働審判の準備もしなければならないため、労働審判を申し立てられた会社側は非常に負担が大きいです。

また、労働審判で解決ができない場合には、労働訴訟に移行することもあり、その対応も必要となります。

この点、労働審判の解決実績を多く有している弁護士にご相談いただければ、事実関係の確認、答弁書の作成、証拠の収集、期日の対応等、適切なアドバイスをすることが可能です。労働審判を申し立てられたら、お早めに労働審判に詳しい弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
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