監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
労働審判を申し立てられた場合に、会社としてどのように対応すべきかについて、本記事では、手続の全体像を踏まえながら、実務上の重要ポイントを解説します。
目次
労働審判のポイント
労働審判は、労使間の労働関係の紛争を迅速かつ実情に即して解決することを目的としており、原則として3回以内の期日で結論が出されることから、初動対応を誤ると、十分な主張や立証ができないまま不利な結論に至るリスクがあります。
労働審判を申し立てられた場合には、労働審判が短期間で終了することを前提に対応することがポイントです。
労働審判の大まかな流れ
労働審判の一般的な流れは、以下のとおりです。
- ①労働者からの申立て
- ②裁判所から会社への期日指定・呼び出し
- ③会社からの答弁書等提出
- ④第1回期日
- ⑤第2回・第3回期日(必要に応じて)
- ⑥調停成立又は審判言渡し
- ⑦審判に異議がなければ確定(異議があれば訴訟へ移行)
労働審判を申し立てられた会社はどう対応すべきか?
労働審判においては、実務上、第1回目の期日で大筋が決まることも多く、第1回目の期日までの準備は結果を大きく左右するといえるため、戦略的に対応する必要があります。
申立て~期日前のポイント
会社は、裁判所から送達された申立書に対して、答弁書を作成し、会社側の主張を裏付ける証拠を提出します。
会社としては、申立て内容を正確に把握し、事実関係の整理、関係資料の収集、関係者からのヒアリング等を行うことにより、会社に有利な主張を説得的に論じる必要があります。
この段階での準備の質が、その後の展開を大きく左右するといえます。
答弁書は期限間近に提出すると不利になる?
形式的には、答弁書は指定期限内に提出すれば足ります。
しかし、実務上、期限間近に提出すると、労働審判委員会が事前に内容を十分検討できず、第1回期日での心証形成に影響することが考えられ、また、準備不足や消極的対応と受け取られる可能性があるなどといった点で、不利に働く危険があります。
そのため、可能な限り、早めに提出し、会社側の主張と証拠関係を明確に示すことが望ましいといえます。
労働審判期日のポイント
事実関係を説明できる者を同行させる
労働審判期日では、口頭でのやり取りも重視されるため、直接の上司や労務担当者、事実経過を把握している責任者等を同行し、事実関係について即座に補足説明ができる態勢を整える必要があります。
審判員からの質問には端的に回答する
労働審判では、審判員から具体的な質問が多く投げかけられます。
その際には、感情的にならず、余計な主張を付け足したりせず、質問に正面から、簡潔に答えるという姿勢が重要です。
長い弁解や抽象論は逆効果となることがあります。
調停成立時のポイント
和解の落としどころを見極める
会社としては、審判に進んだ場合の勝敗見込みや、支払額と訴訟移行時のコスト、社内外への影響等を検討し、どこで解決するのが合理的かという視点から、譲歩して和解とするのか、譲歩せず審判を求めるのかを見極めることが不可欠です。
調停条項には「守秘義務条項」を入れておく
調停が成立する場合、守秘義務条項を盛り込むことは重要です。
これにより、紛争内容や解決金額が外部に拡散するリスクを抑えることができます。
審判確定時のポイント
異議申立ては2週間以内に行う
審判書の送達から2週間以内に異議申立てをしなければ、審判は確定します。
異議を申し立てると、事件は自動的に通常訴訟へ移行します。
異議を出すか否かは、審判内容・証拠状況・経営判断を踏まえ、慎重に検討する必要があります。
労働審判でやってはいけない対応とは?
労働審判の呼出しを無視する
労働審判の呼び出しを無視して欠席すると、5万円以下の過料の制裁が科される可能性があります(労働審判法31条)。
また、期日において、労働者側からの主張のみで会社側の主張、反論はないとして、会社に不利な審判がなされる可能性が高まります。
そのため、労働審判が申し立てられている以上、呼び出しを無視してはいけません。
法律や証拠に事実に基づかない主張を行う
労働審判委員会は、証拠や経験則に基づいて事実を認定します。
証拠のない主張や虚偽、感情的な誹謗中傷は、他の正当な反論までも「信用できない」と判断される要因になり、会社側の主張全体が退けられるリスクが高まります。
声を荒げたり、侮辱するような発言をする
労働審判委員会は、当事者の言動を通じて、普段の職場環境を推認します。
感情的な言動は、審判委員会の強い不信を招くため厳禁です。
申立人が嘘の主張をしたり、会社を挑発したりするようなことがあったとしても、それに乗じて感情的になったりせず、反論はあくまで客観的な証拠に基づき、冷静かつ論理的に行うことが最善の戦略です。
労働審判委員会の進行に従わない
労働審判委員会は、対話を通じて実情を把握しようとします。
進行に従わない態度は、自社の労務管理を正す意思がない、といった強い悪印象を与え、手続全体に悪影響を及ぼしかねません。
会社が労働審判で虚偽の陳述をした場合はどうなる?
虚偽の説明や証拠提出が判明した場合、会社の信用性が大きく損なわれ、当該事件のみならず、以後の主張全体が信用されなくなるおそれがあります。
仮に訴訟に移行した場合、移行後に審判での嘘を修正しても、変遷した主張は「後付けの言い訳」とみなされ、不利な心証が固定化されることもあります。
労働審判に強い弁護士を選ぶポイント
労働審判は、短い準備期間で充実した主張を行う必要があることから、会社側代理人としては、労働法制に関する知識や経験、労働審判の実務経験等が豊富で、調停交渉に強く、企業リスクを踏まえた助言ができるといった点が重要といえるでしょう。
労働審判の有利な解決を目指すには会社側の対応が重要です。労働審判の対応でお悩みなら弁護士にご相談下さい。
労働審判は、スピードと初動対応が結果を左右する手続です。
会社として適切な対応を行うためには、早期に専門家の助言を受けることが不可欠です。
労働審判への対応でお悩みの場合は、労働問題に精通した弁護士への相談をおすすめします。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
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