役員(取締役)の不正行為に対する対応

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼

監修弁護士 沖田 翼弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

役員が「不正」をしているとわかった場合、会社としてどのような対応をすべきなのでしょうか。
会社の役員は、いわば経営の基幹であり、その「裏切り」にあなたは大きな衝撃を受けていることでしょう。しかし、影響は、会社全体にとどまらず、株主、ひいては社会に及びかねない重要な問題です。冷静かつ論理的な対応が求められます。

役員(取締役)の不正行為が発覚した際の対応

会社側としては、以下の対応が考えられます。

初動対応のポイント

事実関係の早急な調査が必要です。
類型的にみて、役員の不正については証拠の隠滅・隠匿が発生しやすく、時間の経過とともに真相の解明が難しくなりやすいためです。

社外に向けた公表は必要か?

役員の不祥事が社内に留まるものであるならば、公表の必要性は基本的にはありません。
もっとも上場会社の場合には公表が義務付けられる場合があります。

不正行為を調査する上での注意点

特に、証拠の収集について注意すべき点は、当該役員の立場から推測して、消去が容易なものから優先度をつけて回収することでしょう。
物証(音声データ、書証等)について、データはアクセスのしやすいものから回収し、書面については距離的に近いものから抑えるのが基本です。
聞き取りについては音声記録をとっておくなど時間の経過による変質や失念を防ぎ、着実に回収していきましょう。

役員のパソコンの無断使用について

不正の内容にもよりますが、役員使用のパソコンは重要な証拠となる可能性があります。
もっとも会社貸与のパソコンであっても、無条件で回収し内容を確認できるわけではありません。
プライバシー性への配慮をしつつ、重要な証拠が記録されている可能性の高さも踏まえながら、対応をしていくことが求められます。

役員の不正行為に対して会社ができる請求

役員の不正行為に対しては、
各種法的な責任追及の他、
辞任・解任といった会社との契約関係の解除
役員報酬の自主返納といった報酬面での整理
等、会社は様々な対応をとることができます。

違法行為の差止め請求

株主は、役員に対し、不正行為の差し止め請求をすることができます(会社法360条)。

職務執行停止の仮処分

容易には認められませんが職務執行停止の仮処分(民事保全法23条2項)も視野に入れる必要があります。ハードルは高いですが、緊急性がある場合には、役員の職務執行を停止させることができる可能性があります。

役員の不正行為に対する責任追及

上述の対応は、「今まさに動いている役員をどうするか」という問題ですが、「起こした問題についての責任を問う」という方法もあります。

会社は損害賠償責任を負うのか?

代表取締役がその行為により第三者に損害を与えた場合、会社はその損害を賠償する責任を負います(会社法350条)。
代表取締役以外が問題行為を起こした場合でも、管理監督責任は基本的には会社が負うものとされています(民法709条)。

監査役への責任追及について

監査役は、会社法381条1項により取締役の職務執行を監査するという使命を担っています。もし、監査役がその使命を全うしていれば、取締役の不正を未然に防げていた事実が認められた場合、監査役が責任追及を受けることとなります。

役員の不正は株主にも大きな影響を及ぼす

会社法は、株主に一定の条件のもと、役員への責任追及手段を定めています(株主代表訴訟や差し止め等)。
役員に不正があった場合、単に株主の印象が悪くなるというレベルにとどまらず、事業の遂行ができなくなり、場合によっては役員人事の変動に発展する事態が生じます。

株主へ説明する際の注意点

まず、会社として当該不正に対して、どのような考えのもと、どのような処分を行うのかについて法的な根拠やビジネス上の合理性と合わせて説明できなければなりません。
説明に株主が納得しない場合、株主は独自に役員の責任追及に及ぶこととなります。

役員(取締役)への訴訟を提起できるのは誰か?

会社の構成によって異なります。
⑴監査役設置会社
監査役設置会社であれば監査役が会社を代表して訴訟を提起することとなります。
⑵監査役を設置していない会社
原則として代表取締役が会社を代表することとなります。
代表取締役が会社を代表することが不適切な場合、株主総会で会社を代表する者を定めることとなります。

「株主代表訴訟」について

株主は、一定の条件を満たせば、株主としての立場で、会社を代表して、役員に対し責任追及の訴えを提起することができます(会社法847条第1項)

不正をした役員にはどのような処分を下すべきか?

役員と会社の関係は、「雇用」関係にあるわけではありません。
役員と会社の関係は「委任」関係ですので、就業規則等を理由として懲戒処分を行うことは基本的にできないことを踏まえ、対応を検討すべきです。

役員報酬の減俸処分

役員報酬は、株主総会や取締役会での決定事項であるため、会社側から一方的に役員報酬を減額することができません。
プレスリリースなどでよく公表されているのは役員報酬の「自主返納」です。
いくらの金額を、どれほどの期間返納するのかについては、会社側と当該役員との間での協議を経て当該役員が決する問題となります。
その際には同業他社の事例等が参考とされることが多いかと思います。

役員の解任

会社は、役員を容易に解任できません。
解任にあたっては、役員本人と会社側が話し合い、役員に任意でやめてもらう(「辞任」してもらう)のが基本です。

解任拒否された場合はどう対処すべき?

辞任を拒絶された場合、対応としては次の2系統があります。
⑴ 任期満了を待ち再任をしない
任期満了が違い場合は、任期満了まで待つという対応が考えられます。
⑵ 株主総会による役員解任をする
株主総会を招集し、その過半数の賛成をもって解任する方法があります。
もっとも、「正当な理由」がない場合は、役員から損害賠償を、訴訟という態様で請求されるリスクがありますので、まずは任意での辞任を求めるべきでしょう。

再発防止に向けて会社が講じるべき措置とは?

発生した原因の分析を行うことが第一です。
その際には、役員の不正がなぜ実現できたのか、会社の構造ベースで分析することが必要です。
構造ベースで、問題がより発生しにくくなる仕組みの検討をすることで、本当の意味での不正防止が実現できるのです。

役員(取締役)の不正に関する裁判例

事件の概要

A社はランチャイズ方式で、とある商号(仮に「B」とします)のもと、食品の販売を行っていました。しかしその食品には、法令で使用が禁止されている添加物が混入しており、それが新聞・テレビ等各種メディアで大々的に報道され、Bの売上が大幅に低下し、A社に損害が生じました。
A社株主はA社の取締役や監査役らに対し、責任追及の訴えを提起しました。

裁判所の判断(平成17年(ネ)568号・平成18年6月9日・大阪高等裁判所・判決)

法令上使用が認められていない添加物を使用した商品が販売されていたことを後から認識した取締役らには、その事実を公表すべき義務がある。

ポイント・解説

①食品については、実質的に回収の余地がなく、健康に影響を及ぼす可能性がない場合についても、公表が原則であることを示した点、そして、②公表を先送りとしたこと自体についての責任を認めたことがポイントです。
取締役の責任については厳しく解釈される方向にあると考えられる点が参考となります。

役員(取締役)の不正行為への対応に関するご相談は、企業法務に精通した弁護士にお任せ下さい。

役員の不正対応については、対内・対外を両にらみし、冷静かつ迅速に手続きを進めていくことが必要です。企業法務経験が豊富な弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼
監修:弁護士 沖田 翼弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:53524)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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