労務

フレックスタイム制の留意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

日本でも浸透しているフレックスタイム制では、どのような問題が生じるのでしょうか。
残業代等との関係や清算期間中の実労働時間の不足等、実務を意識した場合には様々な問題が予想されます。以下個別に見ていきます。

目次

フレックスタイム制における留意点

フレックスタイム制そのものを導入するにあたっては、メリット・デメリットを踏まえ、会社に導入する必要があるか、慎重な検討を要します。

フレックスタイムとは

フレックスタイムとは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

⑴ メリット
日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

⑵ デメリット
一般的には、会社側で労働時間等の正確な把握が難しくなります。
また、労働者自身、時間管理が甘くなる傾向にあります。
さらに、従業員間や顧客との連絡がとりにくくなる点もデメリットとして挙げられます。

フレックスタイム制の導入にあたっての留意点

それでは、フレックスタイム制を導入するにあたってはどのような点に注意をする必要がありますでしょうか。

労使協定の締結

まず、労使間で、対象となる従業員の範囲や労働時間をカウントする期間等について労使協定を締結しておく必要があります。

就業規則の規定と従業員への周知

就業規則に始業及び終業時刻を従業員の決定に委ねる旨定める必要があります。

労働時間の管理における留意点

フレックスタイム制であっても、以下の点、注意が必要です。

休憩時間の付与について

原則として、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を付与しなければなりません。
フレックスタイム制ではこの時間の管理が難しいので特に注意をしなければなりません。

遅刻・欠勤・早退の取扱い

フレックスタイム制においては、通常、遅刻・欠勤・早退は考えにくいのですが、コアタイムの設定をしていた場合には、遅刻・欠勤・早退が発生します。
したがって、コアタイムを設定している際には、特に注意が必要です。

フレックスタイム制の清算期間に関する留意点

法改正による清算期間の上限延長

2019年4月、働き方改革関連法の施行により、フレックスタイム制のルールが改められ、労働時間を調整できる期間である清算期間は最大1か月であったものが、3か月まで伸びることとなりました。

時間外労働に関する留意点

フレックスタイム制は労働時間の裁量を労働者に与えることが前提の仕組みですが、時間外労働との関係はどのように整理すべきでしょうか。

時間外労働の上限規制

フレックスタイム制であっても、時間外労働について上限規制が存在します。
具体的には、原則として、月45時間以内、年360時間以内におさめなければなりません。

割増賃金の支払いについて

フレックスタイム制であっても、清算期間内の総労働時間を超えた場合、残業代は発生します。
時間外労働や法定休日労働、深夜労働の場合にあたる場合は割増賃金を支払わなければなりません。

フレックスタイム制のよくある質問

以下では、フレックスタイム制でよく質問いただく内容に触れていきます。

個人単位でフレックスタイム制を導入することは可能ですか?

結論としては可能ですが、実際に導入する手間を検討いただき、慎重に決断いただいた方がよいかと思います。

フレキシブルタイムやコアタイムは必ず設定しなければならないのでしょうか?

フレックスタイム制の本質は労働者に労働時間についての裁量を与えることですので、フレキシブルタイムの設定は必ず必要です。
一方で、コアタイムについては、法律上、必ずしも設定しなければならないものではありません。

コアタイム以外の時間帯に、出勤命令を下すことは可能ですか?

フレックスタイム制の本質は労働者に労働時間についての裁量を与えることですので、コアタイム以外の時間帯に出勤命令を下すことはできません。
あくまで任意での協力を求めることができるにとどまります。

フレックスタイム制を導入した場合、早出や居残り残業を命令することは可能ですか?

フレックスタイム制の本質は労働者に労働時間についての裁量を与えることですので、早出や居残り残業の命令をすることはできません。
あくまで任意での協力を求めることができるにとどまります。

清算期間における実労働時間の合計が、総労働時間を下回った場合の対応について教えて下さい。

総労働期間中の労働時間が不足した場合、賃金控除が認められます。 あくまで総労働期間中の労働時間が不足した場合ですので、1日4時間しか働いていないだとかコアタイムに遅刻したからといった理由では控除はできません。
清算期間が終わった後でないと判断できない点、ご注意ください。

フレックスタイム制において、休日労働や深夜業の取扱いはどのようになりますか?

フレックスタイム制においても休憩時間中や、休日、深夜労働についての規定は適用されます。

フレックスタイム制が適用対象外となるケースについて教えて下さい。

フレックスタイム制を悪用し、1日のほとんどを就労しないといった労働者が出てきた場合に対応するため、事前に労使協定の中で「適用対象外」のルールを定めておくとよいでしょう。
具体的には、合理的な理由もなく、頻繁に実労働時間が不足するものについて、フレックスタイム制の適用を解除することがあるといった定めをしておくとよいでしょう。

会社の部署ごとに清算期間を変えることは可能ですか?

労使協定に明記をすれば可能です。

フレックスタイム制における、年次有給休暇の取り扱いについて教えて下さい。

フレックスタイム制でも年次有給休暇は付与しなければなりません。 その際、就業規則が対応していること、労使協定の締結がなされていること、労働者側の希望がなされていること等の条件を満たすことで、時間単位や半日の年次有給休暇を付与することは可能です。

フレックスタイム制の導入において、時間管理が苦手な社員への対処法を教えて下さい。

労働時間についての裁量を与えても逆効果となる社員の場合、同意を得ることを前提に、その人物だけ固定の労働時間を設定する対応をとった方がよいかと考えます。

フレックスタイム制で生じる問題解決に向けて、弁護士がアドバイスさせて頂きます。

フレックスタイム制で生じる問題については、フレックスタイム制の性質を踏まえ、紛争対応経験を活かした対応が必要となります。豊富な紛争対応実績のある弊所に是非お任せください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
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