フレックスタイム制の遅刻、時間単位年休、半日年休

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼

監修弁護士 沖田 翼弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

フレックスタイムを導入するにあたって、遅刻等の「イレギュラー」に対してどう対応するのかは、導入後ではなく、導入前に事前に検討をしておく必要があります。
どのように対応すればいいのでしょうか。

目次

フレックスタイム制に遅刻は存在するのか?

フレックスタイム制とは、一定期間についてあらかじめ設定した総労働時間を前提として、その範囲内で日々の始業・終業時刻や働く時間を労働者自身が自由に決めることができる制度です。
そうすると、そもそもフレックスタイム制のもとでは、「遅刻」というものがないようにも思えます。

コアタイムの有無で判断は異なる

実はフレックスタイム制のもとでも「遅刻」というものは観念できます。
多くのフレックスタイム制を導入する会社は、全員が必ず勤務すべき時間帯として「コアタイム」を定める場合が多いです。
このコアタイムに遅れてやってきた場合は「遅刻」ということができるでしょう。

※コアタイムを定めていない場合、「遅刻」を観念することはできません。

コアタイムの遅刻に対して賃金控除は可能か?

では、コアタイムに遅れたことをもって、賃金控除を行うことは可能なのでしょうか。
この点については、フレックスタイム制の存在意義を踏まえた検討が必要です。

総労働時間を満たしていれば賃金控除はできない

フレックスタイム制の根本は、特定の期間中、一定の時間数労働すること(総労働時間)を前提として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる点にあります。
そのため、総労働時間が満たされている限り、コアタイムに遅刻をしたとしても、賃金控除は許されません。

コアタイムの遅刻には減給処分などのペナルティを設ける

コアタイムに遅刻してもペナルティがない場合、コアタイムを設けた意味がなくなってしまいます。
そこで、コアタイムに遅刻し、その遅刻にキチンとした理由がない場合は減給処分とする等、就業規則に定めておきましょう。
※コアタイムの遅刻にペナルティを与える場合には、事前に終業規則に定めておく必要があります。

フレックスタイム制でも年次有給休暇の時間単位や半日単位付与は可能か?

フレックスタイム制の根本は、特定の期間中、一定の時間数労働すること(総労働時間)を前提として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる点にあります。
そうすると、
⑴ フレキシブルタイムについて
フレキシブルタイムについては、もともと自分の選択と判断にて労働時間を設定できるのですから、時間単位年休を認めないとの判断は就業規則への事前の定めを前提として可能です。
もっとも、もともと裁量の範囲内で労働時間の開始・終了を決することができるのですから、
年休を認める意義は乏しいとの考えも成り立つでしょう。
⑵ コアタイムについて
一方コアタイムについては、年休自体が、1日に取得する時間帯や時間数を制限できないことに照らして、コアタイムの年休取得は認めないとの判断はできません。

時間単位年休・半日年休を付与するための条件

フレックスタイム制でも年次有給休暇は付与しなければなりません。
その際、就業規則が対応していること、労使協定の締結がなされていること、労働者側の希望がなされていること等の条件を満たすことで、時間単位や半日の年次有給休暇を付与することは可能です。

フレックスタイム制における時間・半日単位年休の時間数

フレックスタイム制のもとで社員が年休を取得した場合には、その日の標準となる労働時間のうち、取得をされた時間分について働いたものとして取り扱うこととなります。
半日単位での年休を取得した場合には、標準となる労働時間の内、半分の時間を働いたものとして取り扱われます。

フレックスタイム制の時間・半日単位年休はどの時間に充当すべきか?

半日の年休取得であれば、標準労働時間の半分、時間単位であれば、その時間分、期間中の総労働時間に充当をすべきです。
※総労働時間に充当する目的のみ(不足分を解消する目的のみ)で年休を取得させることは例え労働者自身が希望していても認められません。

フレックスタイム制に関するよくある質問

いずれのご質問も、フレックスタイム制の根本にたちかえることで、ある程度道筋をつけることができます。
フレックスタイム制の根本は、特定の期間中、一定の時間数労働すること(総労働時間)を前提として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる点にあります。

コアタイムの遅刻が複数回続いた場合、懲戒処分の対象とすることは可能ですか?

就業規則に事前にその旨(コアタイムに遅刻した場合の具体的な処分名)定めてあったのであれば、懲戒処分の対象とすることは可能です。

コアタイムの遅刻について就業規則に規定してない場合、賃金控除はできないのでしょうか?

単純に遅刻をしているか否かという点を捉えた場合には、就業規則に定めがない場合、賃金控除はできません。

コアタイムに遅刻した者に対し、皆勤手当を与えないとすることは問題ないですか?

就業規則にその旨定めることで皆勤手当を不支給とすることについては差支えありません。

フレックスタイム制の従業員に、事前に出社時間を申告してもらうことは可能ですか?

フレックスタイム制の根本は、特定の期間中、一定の時間数労働すること(総労働時間)を前提として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる点にあります。
出社時間について事前に申告をさせることは、出社時間について裁量を労働者に与えるフレックスタイム制の本質に合致しませんので、フレックスタイム制を導入する以上、できないとの結論となります。

1日の労働時間の半分がコアタイムになっています。半日年休を取得された場合、丸一日休むことになるのでしょうか?

コアタイム部分を全てカバーするように半日年休を取得された場合は、ご指摘の整理となります。

半日年休でコアタイム全てを休んだ場合、欠勤扱いにすることは可能ですか?

できません。
年休を取得した場合、取得した時間については働いたものとして扱われるためです。

フレックスタイムで半日年休の取得日に残業した場合、残業代の支払いは必要ですか?

フレックスタイム制のもとで有給を取得した場合、その1日分に相当する時間は清算期間の総労働時間に含めることとなります。
そしてフレックスタイム制のもとでの残業時間とは、清算期間内で総労働時間を超過した分を指しますので、ただちに残業代の発生がするというわけではありません。

清算期間中の総労働時間が不足している場合、時間単位年休や半日年休を充当することは可能ですか?

できません。
年休制度の根本は休養により疲れをいやし、再度能率的に働けるようにするという点です。
不足分を解消する目的のみで年休を取得することは年休制度の根本的な考えに合致しません。

時間単位年休や半日年休に充てる時間を、会社が指定することはできるのでしょうか?

時間単位の年休は、1日に取得する時間帯や時間数の制限ができません。
したがって、会社が指定をすることはできません。

時間単位年休や半日年休を取得する場合、従業員に事前申告を義務付けることは可能ですか?

就業規則上に定めていれば、事前申告を義務付けることは可能です。

フレックスタイム制の勤怠管理で不明点があれば、一度弁護士にご相談ください。

フレックスタイム制は複雑であり、経営層と労働者との間で、理解に違いが生じやすくトラブルが生じやすい制度です。
不明点があれば一度弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼
監修:弁護士 沖田 翼弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:53524)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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