労働審判制度の概要

労働審判制度の概要

一言でまとめると、裁判所主催の、進行がかなり速い、強制的な解決手続です。

労働審判制度の概要

労働審判制度の法的強制力について

労働審判が確定した場合の効力は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(労働審判法21条4項)。
すなわち、労働審判にて金銭の支払いが内容として盛り込まれた場合、これを支払わなければ強制執行を受けることとなります。

労働審判制度の特徴

迅速かつ柔軟な紛争解決が期待できる

通常訴訟との違いとは

上述に挙げた

通常訴訟(民事訴訟) 労働審判手続
主催者 裁判官 裁判官、組合関係者、企業の人事担当
経験者等、それぞれ1名
(事件と関係ない人が選ばれます)
プライバシー保護 公開 原則として非公開
対象 訴えの利益が認められる限り
「なんでも」
個別の、労働関係民事紛争に限定
付加金 請求可 請求不可

※訴訟移行をにらみ、除斥期間に対応する趣旨で労働審判において付加金を請求する場面はあります。

どのようなトラブルが労働審判の対象となるのか?

典型的には、残業代の支払い請求のように、使用者と労働者(組合を除く)との間の労働に関係する紛争に限定されます。

労働審判の対象とならないケースとは

例えば、以下のようなケースは労働審判の対象にはなりません。

労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応

第1回期日は、申立てから概ね40日以内に指定され、会社側の書面提出は、第1回期日の10日前程度と定められる場合が多いです。労働審判は第1回期日で心証のほとんどが形成されてしまうので、速やかに対応する必要があります。

労働審判手続きの流れ

概要としては、以下のとおりです。 申立て→第1回期日(期日終了時に次回期日指定、原則、期日は第3回期日まで)→調停・審判

労働訴訟

労働審判の結果に当事者のいずれかが異議を申し立てれば、紛争は訴訟へと移行します。
訴訟に移行すれば、審判の時点では非公開であった事件記録が公開されてしまうため、労働審判対応の段階から、証拠の提出については慎重な検討をしなければなりません。
また、審判手続中の対応は、訴訟へ移行した場合でも判断の参考とされるため、労働審判対応の段階から一貫した対応が求められます。

労働審判を有利に進めるにはどうすべきか?

相手方の申立ての内容を迅速に分析し、客観的な証拠を速やかに収集し、適切な主張を組み立てて期日に臨む必要があります。

会社側の初動対応が重要となる

労働審判手続は、原則として第3回期日までに終結が予定されています。

弁護士に依頼することのメリット

弁護士は民事訴訟に詳しいため、万一訴訟となった場合を見通して、訴訟と審判いずれの段階で解決することが、経済的に有利なのか判断ができます。 また、ごく短い時間で対応しなければならない労働審判においても、効率よく準備を進めることができます。

労働審判に必要な費用について

労働審判の解決金の相場はどのくらい?

一概には言えませんが、給与額数か月分とされることが多いです。

弁護士に依頼する場合の費用

緊急度や事案の複雑さ等によって決します。

労働審判制度に関する様々なご質問に、法律のプロである弁護士がお答えいたします。

労働審判で準備にあてることができる時間は、他の紛争類型と比較するととても短いです。なるべくお早目にご相談ください。

未払い賃金請求や、未払残業代請求に関するトラブルは、労使間トラブルの中でも特に件数の多い問題です。最近では、新型コロナウイルスが経済活動に多大な影響を及ぼしたため、業績が悪化し、未払の賃金や残業代があるという会社も多くなってきているのではないでしょうか。労働者の適切な請求に対しては、会社としても適切に対応しなければなりませんが、中には、不当な請求を行う事案もしばしば見受けられます。不当な請求か否かを判別し、不当な請求に屈しないようにするために、賃金や残業に関するルールをきちんと把握しておくことが重要です。

未払い賃金・残業代請求のリスク

未払い賃金・残業代請求は、対内的・対外的に大きなリスクを抱える問題です。

(1)対外的なリスク
まず、訴訟を起こされた場合、賃金や残業代を払わない企業であるとして公開の法廷で糾弾されることとなり、社会からの信用を大きく損なうこととなります。印象悪化による採用への影響にとどまらず、賃金や残業代すら払えない経営状況であると推認され、取引にも影響があります。

(2)対内的なリスク
未払い賃金・残業代は、個人の問題であることはむしろ稀で、当該会社に所属する労働者全員が潜在的に問題として抱えていることがほとんどです。
もし、とある労働者の残業代請求等が認められたならば、連鎖的に他の労働者も残業代請求等を行う可能性があり、キャッシュフローの致命的な悪化の引き金となり得ます。

賃金の支払いに関する法律上の定め

賃金の支払いについては、労働基準法24条にて、次の5つの原則が定められています。

(1)通貨払いの原則
賃金は原則として、現物ではなく、現金で払わなくてはなりません。なお、賃金の口座振込払いは認められています(労働基準法施行規則7条の2)。

(2)直接払いの原告
賃金は直接労働者本人に支払わなくてはなりません。もし友人や代理人に支払った場合、改めて本人に支払い、二重払いをしなければならなくなる可能性があります。

(3)全額払いの原則
賃金は、法令で定められているもの(例えば税金)を除いては、全額払わなければなりません。

(4)毎月1回以上払いの原則
賃金は毎月1日から月末までの間に、1回以上支払わなければなりません。

(5)定期払いの原則
賃金は毎月一定の期日に払わなければなりません。
月給制の場合、「毎月第2金曜日」とすることは許されません。

残業代支払いの事前防止策

未払い残業代の支払い義務と罰則

残業代の支払いは、労働基準法で定められた使用者の義務です(37条)。
支払いを怠った場合は、単に違法と評価されるだけでなく、社長や残業をさせた管理職等に刑罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。

残業時間の立証責任

残業時間の立証責任(証明をしないと金銭請求が認められないこと)は労働者側にあります。
しかし、だからといって、会社側で労働者の残業時間を把握しなくてもよいということにはなりません。
突発的な残業代請求に備えて、会社側でも労働者の残業時間を正確に把握・管理することが必要です。

未払い賃金請求の対応

労働者から未払い賃金請求がなされました。どうすべきでしょうか。

初動対応の重要性

未払い賃金請求は、場合によっては、労働審判という進行の早い法的手続に発展しかねない問題です。時間のない中で、確実な証拠に基づき、迅速かつ慎重に意思決定を重ねる必要があります。
①まずはマネジメント層及び顧問弁護士に直ちに状況の報告を行い、
②請求に対応する期間について、総務・人事部門に勤怠状況の確認を指示し
③直属の上長を呼び出し請求者の業務状況・職務内容についてヒアリングを実施してください。
④その上で、請求者が主張する未払い賃金が本当に発生しているのか、発生しているとして、請求されている金額と一致するのか、記録と突き合わせて確認をしてください。

請求を放置した場合のリスク

請求に理由があるか否かにかかわらず、放置は絶対にやめてください。
放置をした場合、追い詰められた労働者は訴訟提起に及ぶ可能性があります。
訴訟提起された場合、対外的には、訴訟提起による公開の法廷を経由した風評被害(企業イメージの大幅な悪化)、対内的には、他の労働者による同種請求の連鎖等、企業の存続にかかわるリスクが発生します。

会社側が主張すべき反論

会社側としての法的な反論は、典型的には、以下のようなものが挙げられます。

未払い賃金・残業代は発生していない

そもそも、残業をしていないとの反論です。
この後に述べる反論にも共通して言えることですが、労働者の勤怠記録や業務状況について、平時からしっかりと記録をとることで、会社側の反論に説得力が出てきます。

会社の許可なく残業をしていた

いわゆる残業許可制を敷いていたことを理由に、許可なく労働者が残業をしていたと反論することが考えられます。
もっとも、会社の許可の有無と残業代の発生は法的に無関係であり、単純に許可をしていなかったといだけでは、法的な反論にはなり得ません。
寧ろ、当該労働者の業務状況を洗い出し、残業の必要性について吟味を行うべきであると考えます。残業の必要性がなかったため残業の許可をしなかった、つまり当該労働者は仕事をしていたのではなく、意味もなくダラダラと会社に残っていただけとの反論の準備を進めましょう。

管理監督者からの請求である

当該労働者が、労働基準法41条2号にいう管理監督者にあたるため、残業代はそもそも発生しないとの反論が考えられます。 ただし、会社組織における「管理職」と労働基準法上の管理監督者は必ずしも一致しないことに注意をしてください。
会社組織における「管理職」が労働基準法上の管理監督者に該当しないとして、会社に対する残業代請求が認められたケースがあります(東京地裁平成17年(ワ)26903号・平成20年1月28日民事第19部判決)。
また、仮に労働基準法上の「管理監督者」に該当するとしても、深夜手当の支払いを免れることはできませんので、平時からの就労状況把握が必要です。

定額残業代として支払い済みである

固定残業代制を敷いていることを理由に、既に残業代は支払い済であるとの反論が考えられます。
もっとも、固定残業代制の導入にあたっては、固定残業代の金額と、当該残業代が何時間分の残業に対応するものであるかを労働者に対し、周知している必要があります。労働者への周知状況を確認する必要があります。
また、例えば固定残業代が20時間分であったとして、20時間を超えた分の残業代は、固定残業代とは別途支払う必要があります。
したがって、請求を受けた段階で、当該労働者の残業時間について、早急に洗い出しを行う必要があります。

消滅時効が成立している

労働基準法上、未払い残業代を遡って請求できるのは、2年までと定められています(115条)。
したがって、2年より以前に発生していた残業代請求権は、時効によって既に消滅しているとの反論もあり得るでしょう。
もっとも、2020年4月1日以降に支払われる賃金からは、消滅時効が当面の間3年となっているため、注意が必要です。

未払い賃金請求の和解と注意点

残業代請求がなされている案件で、労働者と和解をする際には、特有の問題があります。
一般論として労働者が会社と和解をする際、労働者は一部乃至全額の賃金債権を放棄することとなります。
しかし、労基法上、賃金全額払いの原則が定められているため(24条1項)、賃金債権の放棄は賃金全額払いの原則に抵触し、無効ではないかという疑義が生じます。

この問題が争われたシンガー・ソーイング・メシーン事件(最判昭和48年1月29日)において、最高裁は、当該事例においては、放棄をなすことにつき合理的理由があり、自由な意思に基づいているとし、放棄は有効と判断しました。
この判例は、未払い賃金請求について和解したとしても、労働者側が、事後的に「会社におどされて賃金債権の放棄をさせられた」などと主張し、会社側が和解の経緯について十分な記録をとっていないようなケースでは、和解そのものが無効となる可能性を示唆しています。

付加金・遅延損害金の発生

(1)付加金
次のいずれか未払いがある場合、裁判の際、裁判官は請求額と同一額の付加金の支払いを命じることができると定められています(労基法114条)。
ア 解雇の際の予告手当
イ 休業手当
ウ 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
エ 年次有給休暇中の賃金

(2)遅延損害金
例えば、賃金が本来支払われるべき日に支払われなかった場合、本来支払われるべき日の翌日から、年利5%の遅延損害金が発生します。

弁護士に依頼すべき理由

未払い賃金や残業代請求の案件は、決して単純なものばかりではなく、裁判所の判断も分かれ得るような高度な法的判断を要求される論点があります(例えば、未払残業代請求における、固定残業手当の有効性や管理監督者の該当性等)。このような点について、労働契約や就業規則、労働実態等を細かく確認した上で、適切な反論をしていかなければ、交渉や訴訟で優位に立つことは難しいでしょう。

更には、使用者側が特段意図せず行った行動が、法的には大きな意味を持ち、それが最終的な解決に大きく影響する場合があります。後になって、そのような法的効果が生じるとは思わなかったと主張しても、その主張が認められることはありません。

このように、未払い賃金、残業代請求に関しては、専門家である弁護士でなければ、一筋縄ではいかない点も多々あります。適切な解決をするためにも、ぜひ弁護士には相談をしてみましょう。

弁護士に相談をすれば、➀不当な請求に対しては適切に反論ができますし、②労働者が適切な請求をしてきている場合には、それが適当な請求であることの判断が出来るため、徒に紛争を長期化させずに済ませることができます(未払い賃金や残業代には、退職後の場合には14.6%と高率の遅延損害金がかかるため、早期解決をするに越したことはありません。)。更には、③今後同様のトラブルが生じないようにするために、労働契約や就業規則を見直す必要がある可能性がありますが、弁護士に相談をしておけば、就業規則等を改善することも可能です。実務的には、特に中小企業に多いですが、就業規則が会社の実態と乖離していたり、記載しておくべきものが記載されていないということが多々見受けられます。

このように、弁護士に相談をすることで、目の前の紛争を適切な解決に導くだけではなく、将来的な会社の健全化についてもサポートを受けることができます。

当事務所は、企業案件の豊富な実績を有しており、労使間トラブルについて、事案に即した適切な解決法をご提案することができます。トラブルでお困りの方も、トラブルを防ぎたいという方も、ぜひ一度ご相談ください。

関連記事
従業員から残業代を請求されたら?企業がとるべき対応と反論する際のポイント「残業代」とは何か?- 割増賃金が発生する3つの「労働」残業代請求を和解で解決する場合の注意点-和解と賃金債権放棄管理職と残業代請求-管理監督者とは残業許可制でダラダラ残業を防ぐ!

労働トラブルの性質

労働トラブルには次のような特徴があります。

⑴ 非定型性
労務トラブルにはその企業の特徴が如実に現れるため、他社の対応や、裁判例を単純に参照するといった表面的な対応だけでは、根本的な解決はできません。その企業の業務の性質や商流といった労働者を取り巻く環境の本質を理解した上でのアプローチが必要となります。

⑵ 重大性
対応を誤った場合、労働トラブルが社会に広く知れ渡ることになり、新規採用はもちろん、取引上の信用にも影響が生じる可能性を孕んでいます。

⑶ 専門性
労働法分野と政令、裁判例への理解が要求されます。

⑷ 非対価性
トラブル対応によって積極的な利益を獲得できるという性質のものではありません。対応に気がすすまない担当者の方が大半ではないでしょうか。

弁護士の関与の必要性

以上のように、労務トラブルの性質を踏まえると、⑵⑶⑷から、平時に多数の業務を担っている人事担当者が労務トラブルに対応することは困難であることと、弁護士の介入の必要性がお解りいただけるかと思います。  もっとも、単発のご契約では、⑴の部分について十分な配慮は難しい場合が多いです。当該企業への理解というものは、継続的な関与の中で培われるものだからです。

顧問

1つの解決策としては、弁護士とは継続的な契約(顧問契約)を締結して、労働トラブル発生リスクについて継続的な手当をしていくことが考えられます。

弁護士と顧問契約を締結すれば、問題社員への対応や、退職にまつわるトラブル、労働審判申立て等の労働問題への対応を通じ、弁護士自身が企業の商流・製品や企業の人事制度についての理解をより深め、より企業にマッチした解決案を提案する中で、貴社における労働トラブル発生リスクを低減していくことができます。

弁護士との顧問契約について一度ご検討いただければと思います。

もともと日本では、外国人労働者の受け入れについては消極的でしたが、少子高齢化が進むにつれて、高齢者が増える一方で労働者が減っているという状況を改善するために、最近では外国人労働者の受け入れをする方向で法整備も行われ始めています。 しかし、まだまだ整備が追いついておらず、外国人労働者を受け入れるにあたっては様々な問題が発生しています。

会社が雇用する人が、日本人と外国人とで一番の相違点は、外国人労働者はビザを取得、更新しなければならないことです。また、ビザを取得、更新できたとしても、在留資格に応じた活動を3カ月以上行わないと、正当な理由がない限り、ビザは取り消されてしまいます。外国人労働者は、ビザが取得更新できるか、日本で継続して仕事ができるのかなど不安を抱えながら仕事をしなければなりませんし、会社としても、ビザの取得更新ができなければ就労することができなくなるためダメージがあります。そのため、外国人労働者を雇用する会社は、ビザなどの仕組みや手続きをしっかりと理解する必要があります。

また、外国人労働者は、日本とは違った言語、文化、宗教、慣習を有しています。そのため、他の従業員やお客様とスムーズに仕事ができないこともあります。実際に、雇用契約書の未作成、長時間労働、各種手当の未付与、パワハラなどの様々な問題が発生しています。

しかし、会社が従業員の国籍や信条などによって差別的な取り扱いをすることは禁じられていますし、会社には雇用の安定を図るために必要な措置を講じることが求められています。

加えて、会社が外国人と日本人という国籍や信条などに関係なく、働きやすい環境を作ることは、会社内の雰囲気もよくなり業績を上げることができますし、人手不足という事態を回避することができます。

外国人の入国や在留に関する仕組みの理解や手続方法、雇用契約書の作成方法、雇用に関する協議は、その他の労務管理や事例と関連して検討することが重要です。弁護士であれば、専門的な観点からお手伝いができますので、ぜひご相談ください。

労務トラブルの中で、頭を悩ませる問題の一つとなるのが団体交渉及び労働組合対策です。
団体交渉とは、労働者の集団が代表者を通じて使用者と行う交渉をいいます。団体交渉には、社内の労働組合から申し込まれる場合と社外の合同労働組合(ユニオン)から申し込まれる場合とがあります。使用者は、正当な理由のなく団体交渉拒否することは、不当労働行為に該当します(労働組合法7条2号)。そのため、使用者は、労働組合との団体交渉に対して、適切な準備、対応をする必要があります。

労働組合との団体交渉対策の重要性について

団体交渉の対策を全くしていない場合、会社側の対応が、不当労働行為であると扱われる危険性が高まります。
不当労働行為であると判断されてしまうと、労働委員会より救済命令が発令される可能性があります。救済命令の内容は、労働委員会の裁量に委ねられており、不本意な法的義務を負担することにもつながりかねません。
したがって、会社側は、不当労働行為と判断されないよう、事前に十分な準備をする必要があるのです。

企業に求められる誠実交渉義務

団体交渉の拒否は可能か

団体交渉の拒否はできません。合理的な理由なく拒否した場合は不当労働行為となるからです。

労働組合と団体交渉を行う際の対応

申入れを受ける前の対応・準備

大多数の団体交渉は、前触れなく突然申し入れがなされます。したがって、いつ申し入れがなされても対応できるように、平時から準備をする必要があります。
「準備」とは、もしこの瞬間に申入れがなされたと仮定して、

①誰が担当となるのか。
②担当となった人はどの部門の、どのグレードの人にまで報告をするのか。
③決裁権者を誰に据えるのか。
④顧問弁護士等の報告する外部専門家を設定するのかしないのか
⑤基本的な初動

の各点について、事前に人事部の長とルールを決めておくことを意味します。

労働組合法上の労働者性の判断基準

問題となる場面

団体交渉を拒絶すれば不当労働行為として扱われ、労働委員会から予期せぬ是正命令が発令されるリスクを負いますが、その前提として、団体交渉が、「労働者」からの申入れであることが必要です。
具体的には、下請業者や派遣労働者が加入している労働組合から、団体交渉の申入れがなされた場合に「労働組合法上の労働者性」が問題となります。

労働者性の判断基準

単に直接の労働契約が締結されているか否かにとどまらず、当該労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度の支配、決定することができる地位にあるか否かという観点から個別に判断がなされます。

団体交渉の流れ及び留意点

①団体交渉申入書への対応
団体交渉は、労働者側が提出する団体交渉申入書の提出によって、開始されます。 団体交渉申入書には、労働者側が指定する時間や場所等の記載がされています。
当然、会社側にも都合はありますので、労働者の要求どおりに団体交渉ができるとは限りません。そのような場合、団体交渉には応じるが、時間や場所については改めて回答する旨を迅速に労働者側に連絡しておくのがよいといえます。

②労働者の要求事項の確認
団体交渉を始めるうえで、労働者側の要求が何かを把握するのは重要です。 団体交渉申入書に記載に要求事項の記載がない場合には、要求事項を確認する必要がありますし、記載があっても、記載内容が不明確な場合に要求事項を明確するように求めなければなりません。また、会社の経営に関する事項については、使用者に裁量があるため、経営に関する労働者の要求に対しては、団体交渉には応じないという対応をしても不当労働行為には該当しません。 しかし、労働者に対して、要求事項の明確化を厳格に求めすぎたり、経営に関する事項で労働条件に結び付く内容についてまで団体交渉に応じない場合には、団体交渉を拒否していると判断されかねないことから注意が必要です。

③要求事項に対する回答
まず、労働者側に対する回答をするにあたっては、どのような文言を使うかにも注意したほうがよいですし、要求事項に対して、簡潔に答える姿勢を持つ必要もあります。例えば、要求事項と直接関係な内容まで回答してしまったことで上げ足を取られる結果になったりする可能性があります。

また、団体交渉の意義は、団体交渉の場で使用者と労働者が話し合いを行うことにあるため、使用者として即答できない内容もあるとはいえ、「社内で検討して書面で回答します」という対応ばかり続けていると使用者の誠実交渉義務に反すると判断されうるので注意しなければなりません。

さらに、回答をするうえでは、労働者、使用者双方が十分に主張を尽くした後でなければ団体交渉を使用者側から打ち切ることはできないことにも留意しなければなりません。使用者が、一方的に合意の見込みなしとして団他交渉を打ち切る旨を回答することは不当労働行為に該当します。

なお、回答自体ではありませんが、団体交渉では、労働者側から就業規則やタイムカードの開示を求められることもありますので、そのような資料の開示の請求に対しても適切に対応していく必要があります。

団体交渉時の対応・注意点

団体交渉は、労働者と喧嘩をする場ではなく、話し合いをして合意を模索する手続きです。訴訟に移行した場合の人的、金銭的コスト、訴訟での敗訴リスクなどを踏まえ、労働者側との間で着地点を模索することで、早期かつ円満な解決につながることも少なくありません。一方で、労働者側の要求事項が明らかに不当なものであるような場合には、毅然とした対応をすることも必要となります。団体交渉においては、労働者側の要求事項をしっかり見極め、落としどころがあるのかどうかを適切に判断していくことが重要といえます。

義務的・任意的団交事項の条項

使用者は、労働組合が団体交渉の対象事項として提示するもの全てについて、交渉に応じなければならないのでしょうか。

【任意的団交事項】

使用者が任意に応じる限り、どのような事項も団体交渉の対象とすることは可能ですが、そもそも団体交渉に応じる義務が発生しません。

【義務的団交事項】

①労働条件その他の待遇、②個別人事や個別的権利主張、③団体的労使関係の運営に関する事項等は基本的に交渉に応じなければならない事項とされています。
一方で、経営・生産に関する事項については、労働条件や待遇に関係のない要求は義務的団交事項に含まれません。「環境破壊を招く製造工程を取りやめろ」等が例として挙げられます。

労働組合からの不当な要求への対応法

労働組合からの要求について、必ず応じたり、譲歩をしたりしなければならないというわけではありません。
対応の方針としては次の2点に留意すればよいでしょう。

【誠実交渉義務違反とならないための立ち回り】

当該不当な要求には応じることができない旨の書面での回答を行いましょう。この回答により、誠実交渉義務違反の回避を目指します。

【争議行為の正当性を否定する方向での立ち回り】

組合側の争議行為には、民事免責や刑事免責等、様々な法的保護が与えられています。しかし、要求が不当であるにも関わらずその不当な要求をとおすべく争議行為がなされているのであれば、組合側の争議行為は法的保護を受けなくなります。
したがって、不当な要求がなされた場合には、争議行為の正当性を否定する起点とするため、当該要求を具体的に記録しておく必要があります。

交渉後の和解・決裂時の対応

労働協約作成の注意点

交渉がまとまった場合、労働協約の合意の証として書面が作成されます。
なお、使用者と労働組合との間で、労働条件に関して署名押印した書面は、全て労働協約として扱われます(労働組合法14条)。
使用者がこれを拒んだ場合、誠実交渉義務違反となりますので、書面による締結には応じてください。
使用者が労働協約に署名押印をした場合、その合意は、労働問題の契機となった労働者以外にも影響することとなりますので、合意内容については、慎重に定めるようにしてください。

交渉決裂時の対応

団体交渉が決裂した場合、使用者側に明らかな落ち度があれば、労基署に申告されるなどの不利益が生じることがあります。
団体交渉の行き詰まりに際しては、使用者側から都道府県の労働局紛争調整委員会等、別途紛争解決機関の利用を検討します。

争議行為における正当性

正当な争議行為には、法律上の保護が与えられています。
当該争議行為が正当といえるか否かは、目的、開始時期、手続、態様の側面から検討がなされます。

民事免責

正当な争議行為がなされたことで、使用者に損害が発生しても、使用者は、損害賠償請求をすることはできません。

刑事免責

正当な争議行為は、刑法上の違法性が否定され刑罰を科されません。

不利益取扱いからの保護

労働者が正当な争議行為に参加したことや、それを指導等したことを理由とする解雇や懲戒等の不利益取扱いは無効となります。

労働組合との団体交渉を弁護士へ依頼するメリット

団体交渉の対応を誤った場合、紛争が発展し、使用者に損害が発生したり、予期せぬ命令が発令されたりする結果にもなりかねません。そのため、団体交渉に適切に対応し、労働組合と適度な緊張関係を維持していくことが、会社の経営において重要です。団体交渉や労働組合の対策については、是非弁護士にご相談ください。

企業が問題社員と相対するとき、慎重な対応が必要となる場面の一つが解雇・雇止めです。

問題社員と一言でいっても、その態様は様々です。

企業が期待した能力水準に達しない、職務遂行の意欲がない、企業の規律を乱す、配転・出向命令違反、チームプレイができない、社内の規律を乱す等々様々なケースがあり得ます。

しかし、問題社員対応でまず意識をしなければならないのは、

①問題社員といっても、その身分は労働法制による保護がなされていること

②特定の問題社員への対応は、他の社員との間でも公正・公平に実施しなければならないこと

の2点です。

この、公正・公平について考える上で一つの判断要素となるのが、労働法であり、厚生労働省等の官公庁が公表している各指針であり、裁判例です。

すなわち、問題社員への対応を検討するためには、法律・政令・裁判例についての理解が不可欠なのです。

解雇

解雇は、労働者側への影響が大きいため、労働法制により強く規制されている領域です。またそれだけ規制が強くなされているということからわかるように、問題となる場面は紛争が生じている場面そのものです。

したがって、解雇を検討するにあたっては、法的知識や紛争対応の実務経験が高い次元で要求されます。

また、対応を誤れば、企業のイメージを損ない、採用活動の際に影響がでてしまいかねないため、平時から紛争発生を予防する備えが必要です。

さらに、解雇を巡る裁判例は膨大な数が存在します。人事担当者が個人で裁判例を分析し、自社に当てはまるもの・役立つものを選択し、その意味正しく理解し、自社の案件に役立てることは現実的には極めて困難です。

雇止め

期間を定めた雇用契約であったとしても、単に更新をしないという消極的対応で問題社員と接するだけでは不十分です。  なぜなら、過去に反復して更新されたことがある有期契約の場合には、雇止め(有期雇用契約の更新拒否)にあたり、一定の場合には、解雇をする際と同様の厳しい規制がなされるからです(労働契約法19条)。

したがって、雇止めについても、解雇と同様、慎重な検討が必要となります。

問題社員対応

以上により、問題社員対応には法律・政令・裁判例等の専門知識と、紛争対応の実務的な経験の双方が求められます。

弊所はその双方を有しておりますので、問題社員対応の際には一度ご相談ください。

労働訴訟とは

労働者との間で紛争が発生した場合に、当事者間での話し合いで解決できなかった場合には、裁判所で解決しなければなりません。そのとき、裁判所では、労働審判と労働訴訟という二つの方法があります。労働審判では、非公開で行われますし、短期間での解決を目指す手続きですが、労働訴訟は、労働事件を扱うという点を除けば、通常の民事訴訟と同様の手続です。つまり、労働訴訟は、公開で行われますし、短期決戦というよりは、主張と立証をじっくりと尽くしながら裁判所の判断を求めることになります。

労働訴訟の流れ

労働訴訟は、まず訴状を裁判所に提出することで開始します。訴状を受け取った裁判所は、内容を確認し、被告に訴状を送達します。


訴状を受領した被告は、原告の主張することに対する反論を記載した答弁書を提出します。ここで、被告が、訴状を受領し内容が全く違うと思っていても、答弁書を提出しなかったり裁判の最初の期日に出席しなかったりすると、原告の言っていることは正しいと被告が認めたことになり、原告の求めをすべて認める判決が出される危険があるので、注意が必要です。


期日が始まると、お互いの主張を戦わせます。 双方が主張をし尽くした段階で、当事者や関係者が裁判所に行き、当事者尋問や証人尋問などの人証が行われます。


これまでの書面や人証の内容を踏まえて、裁判所が判断をし、判決が下されます。 もちろん、この判決の前であっても、当事者間の話し合い解決する和解によっても事件を解決することの可能です。


裁判所による判決が下されたけれど、その内容に不服がある場合には、上級裁判所への上訴を行います。

はじめに

働き方改革が叫ばれる中、数々の法改正がなされてきました。「働き方改革」という言葉は知っているものの、具体的な内容はよく知らない、という経営者の方も一定数いらっしゃると思います。働き方改革による法改正は、大企業や有名企業に限られず、中小企業も対象になっています。そこで、働き方改革の中でも特に重要なものを、簡単にご説明します。

時間外労働の上限規制

従来は、時間外労働の上限は、厚生労働大臣の告示によって基準が定められていましたが、罰則による強制力はありませんでした。それが、今回の法改正により、時間外労働の上限について法で定められ、かつ、罰則も設けられることになりました。

また、従来は、特別条項という条項を36協定に盛り込むことで、上限を超えて労働させることが可能でしたが、今回の法改正により、臨時的な特別な事情がある場合であっても、超えることのできない上限が設けられました。 新しいルールは次の通りです(これに違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に科されるおそれがあります)。

①原則として、時間外労働の上限は、月45時間・年360時間

②臨時的な特別の事情があり、労使間合意がある場合でも、以下のルールを破ってはいけません

(1) 時間外労働が年720時間以内

(2) 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

(3) 時間外労働と休日労働の合計について、2か月平均~6か月平均がいずれも、1月あたり80時間以内

(4) 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

年5日の年次有給休暇の確実な取得

従前、年次有給休暇について、労働者によっては、十分に取得をしない実態があるということが問題となっていました。今回の法改正では、年10日以上年次有給休暇を与えている労働者に対して、年5日については、労働者の意見を聴取した上で、使用者が時季を指定して取得させなければならないことになりました。

細かいルールについての記載は割愛しますが、年に5日の年次有給休暇を取得させなかった場合には、30万円以下の罰金に科せられるおそれがあります。

正社員と非正規社員間の不合理な待遇差の禁止

従前から、正社員、非正規社員間の待遇差については問題とされていました。同一の労働をしているにもかかわらず、賃金が異なる場合等です。今回の法改正では、同一企業内において、正社員、非正規社員間での不合理な差別が禁止されました。具体的には、ガイドラインが発表されており、不合理な待遇差について例示されています。

また、使用者は、合理的な待遇差を設けることは可能ですが、非正規社員から、正社員との待遇差について理由の説明を求められた時には、その説明をしなければならなくなりました。合理性について十分説明ができるように、待遇差を設ける際は、その理由や程度について、社内で慎重に検討したほうがよいでしょう。

弁護士にご相談ください

働き方改革に伴い、時間外労働や年次有給休暇の取得等で、様々なトラブルが顕在化する可能性があります。労働者権利意識が高まりつつありますので、不要な紛争を避けるためにも、使用者は労働者に対して適切に対処していかなければなりません。

その際、正確な法的知識と豊富な実績を持つ弁護士に相談していただければ、状況に応じたベストな解決法をお伝えすることが可能です。働き方改革に伴うご不明点がある方、実際に会社内でトラブルが生じてしまった方、トラブルを防止したいという方等、ぜひ一度ご相談ください。

昨今、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、アルコールハラスメント、アカデミックハラスメントなど、さまざまな「ハラスメント」が問題視され、企業においてこれらのハラスメントへの対策をすることが求められています。

令和2年6月の法改正により、パワーハラスメントなどについては就業規則へ一定の内容を定めることが義務付けられました。

職場環境の整備や上司への相談フローの構築、ハラスメント告発に協力したことに対する不利益取り扱いの禁止など、求められる対策の範囲は多岐にわたります。

ハラスメント問題による企業リスク

損害賠償を請求されるリスク

企業は、従業員が安全に働けるように、特段契約の中で定めていなくとも、就業環境を整える義務があると判例上考えられています。この義務のことを「安全配慮義務」といいます。

ハラスメントが発覚した場合、被害者から加害者に対する請求はもちろん、企業に対して、安全配慮義務が尽くされていなかったことを理由として、損害賠償請求がなされるリスクがあります。

金額は一概には言えませんが、ハラスメントが原因で被害者が自殺し、その遺族が損害賠償請求をするなど極端な場合には、何千万もの慰謝料支払い義務が生じることもあります。

信用低下のリスク

金銭的な問題以外にもリスクはあります。

もし、「ハラスメントを許容する企業」との風評がたてば、取引先からの信用に影響し取引及び新規採用に重大な障害が発生します。

人材喪失リスク

ハラスメントの発生により、優秀な人材が被害者となってしまった場合、当該人材自体が会社から離れることも当然あり得ます。

企業で問題となりうる代表的なハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

職場において行われる、優越的な地位を背景とした言動であって業務上の必要かつ相当な範囲を超えたものをいいます。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

人を不快にさせる性的な言動をいいます。

マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠・出産・育児に関する嫌がらせをいいます。

その他問題となるハラスメント

他にも特定の宗教を信仰する人に対する「レリジャスハラスメント」や、酒席での迷惑行為である「アルコールハラスメント」等様々なハラスメントが存在し問題視されています。

問題となりうるハラスメントの行為

ハラスメントの種類 ハラスメント行為
パワーハラスメント(パワハラ) ・人間関係の切り離し
・過少、過大評価
セクシュアルハラスメント(セクハラ) ・他の者を不快にさせる性的な言動
マタニティーハラスメント(マタハラ) ・妊娠を理由とする退職の強要
・育児休暇を認めない
・妊娠しないことを雇用条件とする
・妊婦へのいやがらせ目的の発言
・妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い
パタニティハラスメント(パタハラ) ・男性が育児休業や時短勤務などの制度を利用する場合に他の社員からされる嫌がらせ一般
モラルハラスメント(モラハラ) ・言動により、人格の尊厳を傷つける
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ) ・性別を理由に一定の行動をとるように圧力をかける

各種ハラスメント問題における企業の法的義務

パワハラ防止法の成立と企業の取り組み

2019年5月に改正労働施策総合推進法が成立しました。通称「パワハラ防止法」と呼ばれています。パワハラ防止法は、大企業においては2020年6月、中小企業においては2022年4月から施行される予定です。

パワハラ防止法は主として、以下の点について企業側に対応するよう求めています。


企業が行うべきハラスメント防止策

パワハラを例に挙げると、以下のようになります。

ハラスメント防止策の明確化・社内周知

事業主において、職場における「パワハラ」とは何かを明示し、「パワハラ」を明確に禁止するとともに、「パワハラ」には厳正に対処する旨、労働者に周知する必要があります。

単に「パワハラ」をしてはいけないと社内掲示するだけでは足りず、そもそも「パワハラ」とは具体的にどのようなものなのかを周知し理解させることまで求められている点に注意してください。

対応窓口の設置

対応窓口については、事前に定め、労働者に周知するようにしてください。

窓口については、内密に相談ができるよう、専用のメールアドレスと担当者名を明示することが望ましいでしょう。

関係者のプライバシー保護・不利益取り扱い禁止

事業主は、以下の点についてプライバシーを保護するとともに、以下の点を理由として労働者に不利益な取り扱いをすることが禁じられました。


もしこれらの点についてプライバシーが保護されなかったり、不利益な取り扱いを受けるとなった場合、パワハラの有無についての調査が事実上不可能となり、労働者の保護が著しく困難となるためです。

企業内でハラスメントが発生した場合の対応

事実関係の確認

当該ハラスメントが実際に発生したか否かを調査します。

口頭でなされたのであれば、当事者ではなく、当事者の上長・部下・同僚に事情の確認を行いましょう。このとき、ヒアリングを実施した人には、ハラスメント調査を実施中であることを秘密にするよう求めてください。

ハラスメントの判断基準

ハラスメントには様々な種類がありますので統一的な判断基準を策定することは不可能です。

ただ、敢えて基準策定を試みるのであれば、

①その言動をする業務上の必要性がなく、
②その言動を受けた当人又はその周辺の人が不快な思いをする

の2つを満たす場合につきるのではないでしょうか。

例えば、セクハラを例に挙げると、

①職場において性的発言をする業務上の必要性は大多数の企業においては認められないでしょうし、
②については、男性の方であれば自分の妻や娘の目前でその発言をすることができるかどうかが一つの目安となるでしょう。

加害者・被害者への対応

被害者へのフォローアップ

被害者と面談し、現状の把握をしてください。必要であれば、産業医等との面談調整を実施します。
また、当然のことながら、被害者の情報については慎重に取り扱う必要があります。

加害者への処分

ハラスメントの加害者には、厳正に対処しましょう。また、処分した旨社内掲示することも効果的でしょう。
ただ、当該処分の公表については細心の注意が必要です。少なくとも、被処分者の氏名と所属は伏せてプライバシーに配慮する必要があります。

弁護士へハラスメント問題を依頼するメリット

ハラスメント問題については、加害者被害者間での解決に任せればよい問題ではなく、会社として取り組む必要があります。その会社でのハラスメントとは何であるか、どのような対策をしていくか、実際に発生した場合にどのように対応するかなどを事前に考え、施策を実際に打ち出す必要があります。

弊所は、単に、法令そのものの遵守を抽象的に求めるのではなく、御社の特性を踏まえ、研修ではどのような内容を伝達すべきなのか、社内掲示はどのような内容とすべきなのか等具体的なフローを踏まえた提案が可能ですので、お気軽にご相談ください。

コラム一覧
関連記事
ハラスメントの労働審判で、会社側が主張すべき反論と答弁書ハラスメントが企業経営に及ぼす悪影響ハラスメントが及ぼすメンタルヘルス不調ハラスメントが他の従業員に及ぼす悪影響カスタマーハラスメント対応について解説パワーハラスメント対応について解説セクシュアルハラスメント対応について解説

はじめに

会社の中には、勤勉に業務に取り組む写真がいる一方で、勤務態度や社内で言動に問題が見られる社員がいることが少なくありません。問題社員が社内にいることによって、会社全体の士気が下がったり、他の社員の業務に支障が出たり、場合によっては、優勝な社員が問題社員の存在を理由に退職してしまうといったこともありえます。さらに、中長期的に見れば、外部から評判や信頼にまで悪影響が生じる可能性もあります。そのため、問題社員に適切に対応することが重要です。

問題社員への対応

問題社員がいる場合、会社としては、その社員を解雇したり、雇止めしたりすることで、会社の外会社を去ってもらうことが最もシンプルな解決策といえます。しかし、判例上、長期雇用システムを前提とした解雇権濫用法理が確立され、解雇及び雇止めが可能な場合は制限されています。そのため、問題社員を解雇や雇止めした場合、問題社員が不当な解雇・雇止めであると争われ、紛争がさらに拡大してしまう可能性もあります。

したがって、解雇や雇止めは最終手段として検討するべきといえ、まずはそれ以外の方法で対応ができないかを検討するべきといえます。具体的には、①業務指導の徹底、②問題行動に対しての注意処分、③問題行動の程度に応じた懲戒処分といった形での対応が検討されるべきといえます。

①業務指導の徹底
業務指導は、問題社員に対する場合に限らず、会社から社員に対して一般的にも行われうる対応といえます。問題社員に対して業務指導を行う場合には、会社側が認識している問題点を明確にして、適切な形で伝えることが重要です。例えば、問題社員の職務内容や社内で地位によって、記載内容を変えたりする必要性もあります。

業務指導は、口頭でなされることも多いと思われますが、後々のトラブルを回避する観点からは問題社員に対する業務指導は書面で行う方が無難です。

②問題行動に対しての注意処分
業務指導を行っても、状況が改善しない場合には、一歩踏み込んだ措置として問題社員に対して注意処分を行うことになります。注意処分とは、「業務指導を行ったこと」、「業務指導をしても改善が見られていないこと」、「今後も改善が見られない場合には、解雇等の人事上の対応する場合があること」などを伝えます。業務指導と同様に、書面で作成することが推奨されます。

③問題行動の程度に応じた懲戒処分
業務指導や注意処分を経ても、問題社員の対応が変わらない場合や問題写真の行動が無断欠勤やパラハラ、セクハラといった悪質性の高いものである場合には、懲戒処分を行うことも検討していくことになります。懲戒処分には、譴責、戒告、減給、停職、解雇といったものがあります。解雇は、懲戒処分の中で最も重たい手続きですから、よほどのことがない限りは別の手段で対応を検討し、何度も懲戒処分がなされているような場合に初めて検討することになると思われます。 懲戒処分は社員にとって不利益の大きい手続きですから、事後的なトラブルを回避するためにも、会社側としても慎重な意思決定を行うべきです。例えば、懲戒処分の理由となる客観的な事実を示すことや、懲戒処分の決定過程を記録に残しておくことが重要になっていきます。

問題社員のタイプ

問題社員といっても、社員の抱えている問題はそれぞれであって、以下のような類型があるといわれています。

・規律無視型

無断欠勤や遅刻、早退が多い、勤務中にゲームをしているなど。

・労働能力不足型

能力不足の業務が滞る、部下に過剰なノルマを課してしまうなど。

・協調性欠如型

他の社員とのトラブルを起こす、チームで協力した業務遂行ができないなど。

・ハラスメント型

セクハラ、パラハラといったハラスメントをしてしまうなど。

・私生活上の素行不良型

社内不倫をしてしまう、酔っぱらって社外でトラブルを繰り返すなど。

・メンタル不調型

集中力や判断力の低下が見られるなど。

問題社員に対する一般的な対応は上記のとおりですが、問題社員の性質を把握することでより適切な対応につながります。

最後に

問題社員への対応は迅速に対応しないと、短期的、中長期的に会社に大きな不利益をもたらす一方で、対応を誤った場合、不当解雇など主張されて、訴訟沙汰になってしまうこともあり得ます。問題写真の傾向を掴んだ適切な対応をするためにもぜひ一度目弁護士にご相談ください。