監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
相続をするときになってから、これまで交流のなかった異母兄弟がいたという事実が判明すると、相手がどのような人なのかが分からず、相続は大丈夫なのかと不安になってしまうでしょう。
あらかじめ異母兄弟がいると分かっていても、相続するとなったら、どのように手続きを進めていくのかが分からないかもしれません。
この記事では、異母兄弟の相続権や相続順位、相続割合、遺産分割協議を進める流れなどについて分かりやすく解説します。
目次
異母兄弟ができるケース
父親が前に結婚していた時の子がいる
父親と、以前結婚していた女性との間に子がいる場合、その子は異母兄弟にあたります。
普段の生活では交流がなかったとしても、法律上は同じ父親から生まれた子として扱われるため、相続するときには重要な関係者となります。
父親と再婚相手(後妻)の子ができた
父親が再婚して、後妻との間に新たな子が生まれた場合、その子は異母兄弟となります。
異母兄弟と積極的に交流する機会がなかったとしても、相続の場面では血縁に基づく権利が発生するため重要な相続人となります。
父親が認知した子(婚外子)がいる、自分が婚外子である
父親と婚姻関係にない女性との間に生まれた子は、父親が認知をすれば法律上の子として扱われ、異母兄弟となります。
婚外子であっても、相続において正当な相続人として扱われます。また、自分自身が婚外子で父親からの認知を受けている場合にも、父の別の子と異母兄弟の関係になります。
現在の法律では、婚外子の相続分に差はありません。
認知されていなくても、子が認知を求める訴えを起こすことができます。父親の死後であっても、3年以内であれば死後認知の訴えが可能です。
異母兄弟にも相続権はあるのか?
異母兄弟であっても、父親にとっては血縁上の子であり、相続権は認められます。
亡くなったのが父親である場合、前婚の子・後妻との子・認知された婚外子のいずれも、法律上は平等の相続人として扱われ、相続分に差はありません。
普段ほとんど交流がなくても、相続手続きでは必ず関わる相続人となります。
一方で、亡くなったのが母親である場合には事情が異なります。
例えば、自分が前妻の子であれば、亡くなった後妻とは血縁関係がないため相続権はありません。母親側の相続は、その母親の子だけが相続人となります。
前妻の子が後妻の相続人になるためには、後妻と養子縁組をしておく必要があります。養子の相続順位や法定相続分は、実子と同じになります。
異母兄弟の相続順位
子の相続順位は第1順位であり、兄弟姉妹の相続順位は第3順位です。
異母兄弟であることによって、相続順位に差がつくことはありません。
相続順位は、あくまでも血縁関係の近さによって定められており、同じ親から生まれた兄弟であれば、母が違っても同順位に扱われます。
なお、兄弟姉妹が相続人になるのは、子や直系尊属がいない場合に限られます。
このため、異母兄弟が相続に関わる場面は限られますが、同じ兄弟姉妹として相続人になる点が重要です。
異母兄弟が相続人になる場合の相続割合
父親が亡くなった場合
父親が亡くなった場合に、相続人となるのは現在の配偶者と父の子です。
ここで重要なのは、すでに離婚している前妻には相続権がないという点です。離婚後に交流があっても、相続上の取扱いは変わりません。
相続割合は、現在の配偶者が1/2、残りの1/2をすべての子で等分します。
つまり、異母兄弟が複数いる場合には、前妻の子・後妻の子・認知された婚外子といった区別なく、子として平等に同じ割合を受け取ります。
血縁上の親子であれば、法律上の取扱いはすべて同じです。
兄弟姉妹が亡くなった場合
兄弟姉妹が亡くなった場合、その故人に配偶者や子がおらず、両親などが亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人となります。
この場面で異母兄弟がいる場合も、血縁がある兄弟姉妹として平等に同順位で相続します。
前妻の子A、後妻の子B、後妻の子Cがいるときに、Bが亡くなって配偶者も子も先順位の相続人もいなければ、相続人はAとCになります。
このとき、片方の親が違うAの取り分は、両親が同じであるCの半分です(民法900条4項)。そのため、Aは1/3、Cは2/3を相続します。
異母兄弟の母親が亡くなった場合
異母兄弟の母親が亡くなった場合、その相続人となるのは配偶者である父親と、その母から生まれた子です。
そのため、後妻が亡くなっても、前妻の子には基本的に相続権がありません。
相続割合は、父親が1/2、残る1/2を後妻の子が等分します。前妻の子は、後妻とは血縁関係がないため、実の親子のような関係であったとしても相続人になりません。
後妻が、自身の死後には前妻の子に相続させたいと思っていたのであれば、生きているうちに養子縁組などの対策をする必要があります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続で異母兄弟と遺産分割協議を進める流れ
①異母兄弟を探す
異母兄弟と普段から交流がない場合には、遺産分割協議を進めるために異母兄弟を探す必要があります。
存在を無視して手続きを進めることはできません。異母兄弟が行方不明のままでは遺産分割協議ができず、金融機関の手続きや不動産の相続登記も認められません。
親が亡くなったら、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を連続して取得し、婚姻歴や認知の有無などを確認することによって、異母兄弟の有無や人数を調査して法定相続人を確定させます。
②異母兄弟と連絡をとる
相続人調査によって異母兄弟の存在が判明したら、連絡をとって相続手続きへの参加を求めましょう。
これまで関わりがなかった異母兄弟に、どのように連絡を取ればよいのか迷う方は多いです。連絡先が分からない場合には、戸籍の附票を確認すれば住所を把握できる可能性があります。
疎遠な相手に突然連絡することには心理的な負担があり、状況によってはトラブルに発展するおそれがあるため、まずは手紙を送るなどの方法で連絡するのが望ましいでしょう。
③遺産分割協議をする
相続人が揃ったら、全員で遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議とは、相続人全員が参加して、遺産の分け方を話し合って決める手続きです。
異母兄弟が相続人に含まれる場合でも、他の相続人と同じように協議へ参加してもらう必要があります。
一人でも欠けると協議は無効となり、銀行での手続きや不動産の相続登記が進みません。
協議では、遺産の種類や価値、分割の方法を話し合い、最終的に遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議については、以下の記事をご覧ください。
遺産分割協議について詳しく見る異母兄弟に相続させない方法はある?
遺言書を作成する
父親の立場で、異母兄弟が相続で揉めるのを防ぎたい場合、有効な手段の一つに遺言書の作成があります。
遺言書があれば、法定相続分とは異なる財産の配分を指定できるため、望まない相続人へ相続財産が渡らないようにすることが可能です。
特に、前妻の子や後妻の子、婚外子などがいて家族関係が複雑な場合には、遺言書がないと相続人同士の対立が生じやすくなります。
相続財産の行き先を明確にしておけば、残される家族の負担を減らすことができます。
異母兄弟から遺留分を主張されることがある
遺言書によって、特定の相続人に対して相続財産を集中させると、遺留分が認められる相続人が発生します。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、相続財産の最低限の取り分です。
父親が亡くなった場合に、父親の子である異母兄弟について、遺言書で少ない取り分が指定されていると、他の相続人に対する遺留分侵害額請求が行われるおそれがあります。
遺留分を考慮しながら遺言書を作成しておくことが、相続が発生した後のトラブルを防ぐためのポイントです。
異母兄弟に相続放棄してもらう
異母兄弟に相続権がある場合、相続人の立場からそれを無くす手段として、相続放棄をしてもらう方法があります。
ただし、相続放棄は本人の意思によって家庭裁判所に申述する必要があるため、強制することはできません。また、相続が始まる前には相続放棄を申し立てることができません。
確実に相続しないようにするためには、遺言書を作成して相続財産を分配したうえで、相続分のない異母兄弟には家庭裁判所に遺留分の放棄を申し立ててもらう必要があります。
異母兄弟と相続トラブルが起きたときの対処法
遺産分割調停を申し立てる
異母兄弟との話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を図る方法があります。
遺産分割調停とは、裁判所の調停委員に仲介してもらいながら、相続人の間で意見を調整し、合意形成を目指すための手続きです。
直接の対話が難しいケースでも、第三者を介することで感情的な対立を避けながら、現実的な解決策を探ることができます。
訴訟よりも負担が小さく、多くの相続トラブルで利用されている制度です。
弁護士に相談する
異母兄弟との相続問題を解決するためには、弁護士に相談することが有効です。
異母兄弟の相続では、家族の間に複雑な経緯があるケースも少なくありません。相続では感情的になりやすく、当事者だけで話し合っても平行線になってしまうおそれがあります。
弁護士に相談することによって、相続人調査や連絡、協議内容の整理までサポートしてもらえるため、法的に適切な解決ができる可能性が高まります。
直接話すのが難しいような関係になっているなら、弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。
異母兄弟との相続トラブルでお困りの場合は、経験豊富な弁護士にご相談ください
異母兄弟との相続問題は、家族関係の複雑さから、自分だけで対応しようとすると大きな負担となりがちです。相続人調査や遺産分割協議、調停への対応などでは、専門的な判断が必要な場面が多くなります。
弁護士法人ALGでは、兄弟姉妹が相続で争った案件の解決実績がいくつもあります。
生前の家族関係の経緯を踏まえて解決に至った事例もあります。
感情的な対立は、当事者だけで話し合っても乗り越えるのが難しいため、早い段階でぜひ私たちにご相談ください。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
