遺産分割協議とは|揉めやすいケースと注意点

相続問題

遺産分割協議とは|揉めやすいケースと注意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

人がお亡くなりになり、相続が発生したときに気を付けなければならないのは、遺産をどのようにわけるのかということです。以下では遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)について解説していきます。

遺産分割協議とは

財産のある人がお亡くなりになった際、その財産は遺産となります。
この遺産について相続する人が複数いる場合、どの遺産を誰にどのように引き継がせるのかという話合いをする必要があります。これが遺産分割協議です。

遺産分割協議の注意点

遺産分割協議のやり直しは原則不可

一度遺産分割協議を纏めると、その内容にしたがって、財産が具体的に分配されていくこととなります。したがって、基本的には遺産分割協議をやり直すことはできません。

全員の合意がなければ成立しない

遺産は基本的には相続人全員の問題ですから、遺産分割協議をまとめるためには相続人全員の合意が必要です。もっとも、いくら相続人であっても、その人本人が協議に参加することが認められない事情もあります。

相続人に未成年がいる場合

未成年者は、単独で有効な法律関係の行為をすることができません(制限行為能力者といいます)。
遺産分割協議は法律関係の行為なので、相続人であっても未成年者は遺産分割協議に参加することができません。
原則として、未成年者の法定代理人(親)がいれば、その法定代理人が未成年者の代わりに参加します。法定代理人がいない場合は、未成年後見人を選任します。
法定代理人が存在するものの、未成年者と法定代理人との利害関係が対立する場合には特別代理人の選任が必要となります。

相続人に認知症の人がいる場合

認知症を患っておられる相続人の方が、遺産の価値を理解したり、分け方について他の相続人の方と交渉したりすることは一般的には難しいと考えられています。したがって、認知症の方は基本的には遺産分割協議に参加することはできません。
協議をするためには、家庭裁判所に法定後見人の選任申立てをする必要があります。法定後見人自体については、一般的には、親族が望ましいとされていますが、誰を選任するかは最終的には家庭裁判所の裁量に委ねられています。

遺産分割協議でよく揉めるケース

土地や不動産がある場合

土地・建物等の不動産は、基本的には高額であるため、誰が取得するか、その価値をいくらと見積もるのか、不動産そのものを取得する代わりに他の相続人にいくら支払うか(代償金といいます)等で紛争になりやすいです。

家業がある場合

家業や会社を相続する際には、そもそも家業や会社を誰が相続するのかが問題となります。また、家業等を継いだ兄弟が遺産の内容を開示しなかったり、家業を継いだ方が、「自分はこんなに苦労した」といい、等分なのは納得いかない等の主張をして揉める場合があります。

相続人以外が参加した場合

当事者でない人が参加すると揉めやすいです。
相続人の配偶者が参加して揉めるなどのケースが典型例です。

遺産の分割方法

遺産を分割するといっても、その分け方は様々です。

現物分割

遺産分割の原則的な方法です。個々の財産の形状や性質を変更することなく分割するものです。

代償分割

一部の相続人に法定相続分を超える財産を取得させた上で、他の相続人に対する債務を負担させる方法です。

換価分割

遺産を売却等して換金した後に、それを分配する方法です。

共有分割

遺産の一部や全部を共有とする方法です。

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遺産分割協議に期限はある?

現状、期限については存在しません。もっとも、相続発生から10か月以内に、相続税の申告や納税を済ませる必要がありますので、特段手当をしないのであれば、この期間が一応の目安となります。
なお、令和5年4月1日から、改正民法が施行され、特別受益と寄与分の主張について、相続開示の時から10年の期限が設定されることとなりました。

遺産分割協議をしないで放っておいたらどうなる?

借金がある場合には、利子の支払いが嵩んだりします。
さらには、相続人当事者が経年により死亡し、相続そのものがより複雑化する場合があります。

遺産分割協議が無効になるケース

遺産分割協議の参加者の中に、未成年者等の判断能力が十分でない方がいたりする場合には、協議そのものが無効となります。
また、遺産や遺産分割の内容に重大な誤解があった場合にも無効となることがあります。

遺産分割協議のやり直しが必要になるケース

せっかくまとめた遺産分割協議がやり直しとなってしまう場合は以下のとおりです。

・協議成立後に新たな遺産が見つかった
単純に未知の遺産が見つかったという場合には、遺産分割協議をやり直す必要はありません。しかし、その遺産をある相続人が隠していたり、遺産の価値が極めて高いといったりする場合には、遺産分割協議そのものをやり直さなければならなくなる可能性があります。

・協議成立後に遺言書が見つかった
相続人全員で、遺言書を問題としないとの合意ができれば、遺産分割協議は有効ですが、原則として遺言の内容が優先することとなります。

なお、遺産分割協議後に相続人が亡くなった場合には、亡相続人の地位について別の方が相続することとなりますので、遺産分割協議をやり直す必要はありません。

遺産分割協議に応じてもらえない場合にできること

遺産分割協議に応じてもらえない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停の申立てをすることができます。
遺産分割調停とは、家庭裁判所での話し合いです。この調停がまとまらない場合には、審判といって、裁判官が証拠に基づいて判断する手続きに移行します。

そもそも遺産分割協議が必要ない場合

ここまで、遺産分割協議について説明してきましたが、そもそも遺産分割協議を行う必要がないケースも存在します。

遺言書がある場合

遺言書の内容に、相続人全員が不満のない場合は、遺言書の内容にしたがって遺産分割をすればよいので、遺産分割協議は不要です。

法定相続人が一人しかいない場合

そもそも相続にあたって協議する必要がないため、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談ください

遺産分割協議にあたっては注意すべき点は多々ありますので、協議するにあたっては、是非一度弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。