監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
「信号待ちしていたら、後ろの車から追突された。事故以後、首の痛みに悩まされている。」このような方はいらっしゃいませんか?
自動車の追突事故などにあった際、首を痛めるケースは非常に多いです。
また、事故直後は異常がなくても、しばらく経ってから痛みが発生したり、首の痛みが発端となり、頭痛やめまいなどの全身症状が現れたりするような場合もあります。
このように、首を負傷し、後遺症に悩まされている方は、後遺障害等級認定を受ける必要があります。等級認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を加害者側に請求することが可能になります。
ただし、後遺障害等級認定を受けるためには、単に首が痛いだけでは足りず、等級認定の要件を充たす必要があります。
ここでは、事故による首の痛みが後遺障害として認められるための要件、首の痛みに関連する後遺障害、首の痛みへの対処方法などについて、説明していきたいと思います。
目次
首が痛いだけでは後遺障害とは認められない
単に首が痛いというだけでは、交通事故で残った後遺障害として認定されませんので注意が必要です。首の痛みが後遺障害として認定されるためには、主に下記の要件を充たすことが必要です。
①事故状況や治療状況等により、交通事故が原因で負った後遺症であることを証明できること
②将来においても回復困難である(症状固定)と医師が判断したこと
③MRIやレントゲンの画像、各種検査により、後遺症の存在や程度を医学的に説明もしくは証明できること
④通院が途切れず、適切な通院頻度を保つなど、負傷した後から症状固定に至るまで、症状が一貫して継続的に続いていることが証明できること
⑤後遺症の症状が自賠責保険の定める後遺障害等級に該当すること
加害者側の自賠責保険会社を通じて、審査機関(損害保険料算出機構)に対し、後遺障害診断書や必要資料を提出し、上記要件を充たすと判断されれば、後遺障害等級認定が受けられます。そして、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの賠償金を得ることが可能になります。
後遺障害と認められるには検査が必要
首の痛みが後遺障害として認められるためには、症状を客観的に示す検査結果が必要になります。首の痛みは画像に現れない可能性がありますので、MRIやレントゲンの画像検査だけでなく、体をたたいて反射を見る深部腱反射テスト、患部に刺激を与えることで痛みやしびれの症状を調べるジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査を医師より受け、その結果を後遺障害診断書に記載してもらいましょう。何らかの異常所見が後遺障害診断書に記載されれば、後遺障害として認定される可能性が高まります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
首の痛みの原因と関係のある後遺障害
交通事故によって首を負傷した場合、どのような疾患になる可能性があるのでしょうか。
以下、考えられる疾患について、説明していきたいと思います。
むちうち
交通事故によって首を負傷した場合、むちうちになることが最も多いとされています。
むちうちとは、交通事故などによる衝撃で、首の骨の頸椎がむちのようにしなる動きをすることで、首の筋肉、靭帯、椎間板、神経などに起こる損傷のことを言います。
事故直後は痛みがなくても、しばらく経ってから、痛みが発生する場合もあります。
頸椎がむちのようにしなるため、一般的に、むちうちと呼ばれていますが、これは正式の傷病名ではありません。医師の診断を受けると、「頸椎捻挫」「頸椎椎間関節症」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」「脊柱管狭窄症」などの傷病名が診断書に記載されます。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症とは、事故による頭部への強い衝撃などにより、脳脊髄腔に穴が開き、脳脊髄液が漏れ続け、首の痛みなど様々な症状を引き起こす疾患のことをいいます。
脳脊髄液減少症の症状は首の痛み以外にも、起立性頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど人によって様々です。一見関係のないような症状でも、脳脊髄液減少症が原因でなっている可能性があります。
もし、事故後、上記の症状、特に寝起きすると頭痛が悪化するような症状が出ている場合は、脳脊髄液減少症の疑いがありますので、医師の診断を受け、MRIやCT検査を受けることが必要です。
脳脊髄液減少症は立証が難しい症状のため、後遺障害等級認定を受けることが難しく、認められたとしても14級というケースが殆どです。適正な等級認定を得るためには、医学的知見のある弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故後に首が痛い(首の痛みが続く)ときにやるべきこと
事故後に首が痛くなった場合は、まずは整形外科に行き、医師の診察を受けましょう。自動車のエネルギーは想像以上に大きいため、事故直後は軽傷だと思っていても次第に症状が悪化することがあります。
事故直後の急性期は、炎症をおさえるために湿布やアイシングなどで患部を冷やしたり、コルセットなどで首を固定し、患部になるべく負担がかからないようにしたりすると良いようです。その後、炎症が治まり痛みが軽減されてきたら、首を温める温熱療法や、首のストレッチやマッサージなどのリハビリが行われることが多いでしょう。
治療方法や治療期間、整骨院への通院の必要性などに関しては、自己判断ではなく、医師の指示に基づき、判断するようにしてください。なお、むちうちの場合、医師の指示にもよりますが、週2~3回、1ヶ月に10日程度、6ヶ月以上通院するのが望ましいでしょう。
首が痛い場合にやってはいけないこと
首が痛い場合は、つい首を動かして音をぽきぽき鳴らしたくなってしまうかと思いますが、事故後はなるべく首を安静にしておくことが必要です。
無駄な動きをしたり、無理に刺激を与えたりすると、症状が悪化する可能性があります。座っているときも、立ち上がるときも、なるべくまっすぐ前を向き、首が体幹に対してねじれないような姿勢を保ち、激しい運動も控えましょう。
首の痛みと交通事故の因果関係が認められた裁判例
首の痛みと交通事故との因果関係が認められた裁判例をご紹介します。
以下の裁判例では、追突被害事故により負った首の損傷による痛みと交通事故との因果関係が認められ、後遺障害等級14級に該当するとの判断が下されています。
【京都地方裁判所 令和2年12月9日判決】
(事案)
赤信号で停車中の原告車に被告車が後方から追突。原告は頸部に傷害を負い、通院治療を受けた(通院期間7ヶ月、通院実日数123日)が、症状固定後も首の鈍痛が続いている。
(争点)
本件事故によって負った後遺症(頸部の鈍痛)は後遺障害として認定できるか。
(結論)
原告は、本件事故により首に傷害(頸椎椎間関節症等)を負い、約7ヶ月にわたり通院治療を受けたものの、症状固定後も頸部に鈍痛があり、週1回程度の神経ブロック注射及び鎮痛剤の内服による治療を受けており、本件事故によって生じた傷害の後遺障害として、頸部の鈍痛が残存しているものと認められる。よって、原告の後遺症は、後遺障害等級14級9号に該当するとものと認められる。
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交通事故後の首の痛みに困りなら弁護士にご相談ください
交通事故に遭い、首の痛みにお困りの場合は、交通事故に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
特にむちうちに関しては、明らかな外傷が見えず、レントゲンやMRIなどの画像所見が出ないことも多く、後遺障害等級認定を受けるのが難しい類型になります。
そのため、適正な後遺障害等級認定や慰謝料などの賠償金を得るためには、医学的知識や交通事故に関する法的知識が必要となります。
弁護士法人ALGでは、医学博士弁護士が在籍する医療事故チームと交通事故チームが連携し、事件解決にあたっているため、適正な賠償金を求めて専門性の高い主張、立証をすることが可能です。
「事故により首の痛みに悩まされているが、今後どのように対応すればいいのかわからない」「後遺障害等級認定の申請をしたい」と思われるような場合は、ぜひ、一人で悩まず弁護士法人ALGにご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)