監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
家族関係が複雑化する現代では、兄弟姉妹とは絶縁状態という方も少なくありません。
しかし、たとえ長年連絡を取っていなくても、相続する権利は自然になくなるわけではありません。
そのため、両親等が亡くなったときに、絶縁状態になっている者を無視して手続きを進めてしまうと、後でトラブルに発展するおそれがあります。
この記事では、絶縁した兄弟姉妹との相続問題について、相続の進め方や相続させたくない場合の対処法、弁護士に相談するメリット等を解説します。
目次
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続はどうなる?
絶縁状態になっている兄弟姉妹であっても、特別な事情がなければ、法定相続人として相続財産を受け取る権利は残り続けます。
そして、両親等が遺した財産を分配するためには、相続人全員による遺産分割協議が必要です。この協議を行わず、一方的に手続きを進めてしまうと、後になって無効を主張されるおそれがあります。
絶縁している兄弟姉妹とは関わりたくないと考えていても、相続手続きは無視できないため、適切な方法で協議を進めなければなりません。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の遺産相続の進め方
相手の連絡先を知っているケース
絶縁状態にある兄弟姉妹でも、連絡先が分かっている場合、まずは冷静に連絡を取りましょう。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、感情的な対立がある相続人についても、協議の場に参加してもらう必要があります。
直接会うのが難しい場合でも、メールや手紙などの文書で協議を進めることは可能です。
相手方とのやり取りに不安がある場合には、弁護士に依頼して代理人になってもらうことにより、代わりに相手方と交渉してもらえます。
相手の連絡先を知らないケース
絶縁状態の兄弟姉妹の連絡先や居住地が分からない場合には、戸籍の附票を取得して現在の住所を確認することが可能です。
戸籍の附票によって住所が判明すれば、郵便による連絡が可能になります。
戸籍の附票でも住所が分からない場合には、弁護士に依頼すると、弁護士会照会という方法によって探し出せる可能性があります。
どんなに調べても居場所が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法によって、代わりに協議に参加してもらうことができます。
相手の生死が7年以上不明のケース
兄弟姉妹が長年行方不明で、生死すら分からない場合には、失踪宣告によって相続人から除外できる可能性があります。
失踪宣告とは、家庭裁判所に申し立てることによって、基本的に7年以上は生死不明である者を法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪宣告が認められると、その兄弟姉妹は相続人から除外されるため、遺産分割協議を進めることが可能になります。
ただし、失踪宣告後にその人物が生存していることが判明した場合には、複雑な手続きが必要になるケースもあります。
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絶縁した兄弟姉妹に相続させたくない場合の対処法
絶縁した兄弟姉妹に相続させたくない場合には、被相続人に遺言書を作成してもらい、他の人に財産を渡す意思を明確にしてもらう方法があります。
ただし、被相続人が両親等である場合には、兄弟姉妹には遺留分があるため、遺留分侵害額請求が行われるおそれがあります。
兄弟姉妹に相続放棄をしてもらうことができれば、相続させないことは可能です。ただし、そのためには、兄弟姉妹が自分で家庭裁判所において手続きしなければなりません。
もしも、兄弟姉妹が遺言書の偽造や改ざんをする等、相続制度を悪用して利益を得ようとしていた場合には、相続欠格に該当する可能性があります。
また、被相続人への虐待や重大な侮辱などを行っていた場合には、相続人廃除を申し立てることができます。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続を弁護士に相談するメリット
弁護士に相談すれば、絶縁状態の兄弟姉妹との相続手続きを、顔を合わせずに進めるためのアドバイスを受けることができます。
相手方との接触は感情的な負担が大きく、冷静な話し合いが難しい場合も少なくないため、直接会わないままで遺産分割などの手続きを進められることが重要です。
また、最終的に法的な争いになった場合には、代理人への就任を依頼することもできます。対立が激しくなってから弁護士に相談や依頼をするよりも、解決しやすくなるケースが多いです。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続についてのQ&A
絶縁した兄弟に遺産相続の連絡をしましたが返事がありません。放っておいて手続きを進めても良いですか?
たとえ連絡に対して返事がなくても、兄弟姉妹が法定相続人である限り、勝手に遺産分割協議を行うことはできません。
勝手に協議して手続きを進めてしまうと、後で協議は無効だと主張されて、手続きをやり直す必要が生じるおそれがあります。
連絡を無視された場合には、内容証明郵便などによって再度連絡を試みる方法や、弁護士を通じて正式な通知を行う方法等が考えられます。
それでも無視されたら、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることも検討しましょう。
遺言書に絶縁した兄弟の名前がありませんでした。連絡せずに相続手続きしても良いですか?
兄弟姉妹の1人が亡くなったケースにおいて、絶縁している兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺言書に名前が記載されていなければ、連絡せずに手続きを進めることも可能です。
これは、絶縁している兄弟姉妹には、相続できる財産がないと考えられるからです。
ただし、遺言書の内容や形式に不備がある場合には、無効とされるリスクもあるため注意しましょう。
また、両親等が亡くなったケースでは、絶縁している兄弟姉妹が遺留分を主張するおそれがあります。
絶縁状態の兄弟に連絡をせず勝手に遺産分割や相続手続きを行ったらどうなりますか?
兄弟姉妹と絶縁していたとしても、連絡を取らずに手続きを進めてしまうと、後にその兄弟姉妹が相続権を主張して、協議の無効ややり直しを求めてくるおそれがあります。
特に、相続登記や預貯金の解約などを行った場合には、損害賠償請求などの訴訟に発展することもあり得ます。
また、相続人の一部を除外して行った遺産分割は、法的に無効とされるリスクが高いので、手続きをやり直さなければならず、兄弟姉妹との関係がさらに悪化する可能性があります。
兄弟姉妹との遺産相続でトラブルにならないためにも弁護士にご相談ください
兄弟姉妹との関係が絶縁状態である場合には、相続によって感情的な対立が生じるだけでなく、手続きが進まなくなりがちです。
相手方が協議に応じてくれない等の状況でも、法定相続人を一方的に排除するのは難しいので、適切な対応をしなければ後でトラブルになりかねません。
相続の際、絶縁状態の兄弟姉妹について悩んでいる方は、弁護士にご相談ください。
弁護士は、相手方との接触を抑えながら相続手続きを進めるためのアドバイスが可能です。
また、書類のやり取り等についてもサポートすることができます。
相手方との対立を避けながら、複雑な相続手続きを進めていくために、できるだけ早く法律の専門家の力を活用することをおすすめいたします。

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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
