離婚慰謝料を減額したい!請求された場合にすべき対応とは

離婚問題

離婚慰謝料を減額したい!請求された場合にすべき対応とは

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

配偶者と離婚することになった際、慰謝料を請求される場合があります。ある日突然、自宅に内容証明郵便が届き、1週間以内に何百万の慰謝料を支払わなければ法的措置を取るなどと書いてあった場合、どう対応すればよいのでしょうか。必ず全額支払わなければならないのでしょうか。

実は、請求された慰謝料を減額できる場合があります。この記事では、相手から請求された離婚慰謝料を減額できる場合について解説していきます。

離婚慰謝料を請求された!減額はできる?

離婚慰謝料の額は、言い値で決められるわけではありません。不貞行為やDVを理由とする慰謝料であれば、請求する側において、問題となる行為の日時や場所、故意・過失、因果関係、損害の内容(額)を主張立証する必要があります。

また、裁判所の判決により決められる慰謝料の額には、ある程度の相場があります。その他、消滅時効が成立している場合やそもそも婚姻関係が破綻している場合等、様々な方法で慰謝料を減額できるケースがあります

離婚慰謝料を減額できるケース

この記事で紹介する離婚慰謝料を減額できるケースは、①相手にも過失がある場合、②相場以上の慰謝料を請求された場合、③自分の資産・収入が少ない場合、④自分のした行為の有責性が低い場合の4つです。以下詳しく見ていきましょう。

相手にも過失がある

民法には、過失相殺という制度が定められています。過失相殺とは、被害者側にも非がある場合、当事者間の公平のためにその非の程度に応じて賠償額を減額するという制度です。

例えば、夫のDVにより妻から離婚慰謝料が請求されたが、妻の方でも不貞行為をしており、それも離婚の一因になっていたという場合です。このような場合、双方に過失があると認められ、妻からの慰謝料請求が減額される場合があります。

相場以上の慰謝料を請求された

裁判所で認められる慰謝料の金額は、実はさほど高くありません。一般的には100万円~300万円とされており、多くても500万円までの範囲で決められることがほとんどです。

調停や交渉においては、交換条件の提示や早期解決の観点等から相場より高い額で提案される場合もありますが、当事者が合意しなければその額を支払うことにはなりません。相手から請求された額が高すぎる場合には、減額の交渉をできる余地があります。

自分の資産・収入が少ない

裁判所が慰謝料額を決定する際には、

  • 当事者の状況:年齢、社会的地位、支払能力等
  • 離婚後の生活状況:収入の有無、療養監護の必要性、親族の援助の有無等

など、慰謝料を支払う側・支払われる側の経済状況も考慮されます。そのため、請求額が本人の支払能力を明らかに超えるような場合には、慰謝料が減額される可能性があります。

自分のした行為の有責性が低い

離婚慰謝料とは、離婚によって生じる精神的苦痛に対する損害の賠償のことをいいます。すなわち、相手に精神的苦痛を生じさせた程度=有責性が低ければ、その程度に応じて減額される場合があります。

例として、不貞行為を原因に慰謝料請求がされた場合には、交際期間が短い、不貞行為の回数が少ない、婚姻期間が短い等の事実を説明して、自らの行為の有責性が低いことを主張していくことになります。

慰謝料の支払いを拒否できるケースもある

ケースによっては、離婚慰謝料の減額にとどまらず、支払自体拒否できる場合があります。それが、①相手の主張内容が虚偽である・証拠がない場合、②時効が成立している場合、③不法行為の時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合の3つです。

それでは、見ていきましょう。

相手が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合

慰謝料の請求には、精神的苦痛の原因となる不法行為の存在があることが前提です。よって、相手が不法行為として主張する事実が虚偽である場合は、当然慰謝料を払う必要はありません。

また、とりわけ裁判所の手続きで慰謝料が請求された場合には、精神的苦痛の原因となる不法行為があったことを証明する責任は請求をする側にあります。よって、仮に行為の存在が真実であっても、証拠によりその存在が証明できない場合は、慰謝料の請求は認められません。

時効がすでに成立している場合

離婚成立後3年を経過すると、慰謝料を請求する権利自体が時効で消滅します。また、個別の不法行為を原因として離婚慰謝料を請求する場合には、それぞれの不法行為の存在を知ったときから時効が進行し、同じく3年で請求権が消滅します。

ただし、民法159条により、夫婦間の権利については離婚の時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないことが定められていますので、離婚前に時効で消滅することはないことに注意が必要です。

婚姻関係が破綻していた場合

判例は、不法行為の時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合には、特段の事情のない限り、不法行為責任を負わないものとするとの判断を示しています。

例えば、夫婦が性格の不一致で別居し、双方離婚に合意しつつ離婚条件の協議を進めているている状況の中で、妻が別居後に知り合った男性と親しくなり、不貞行為に及んだ場合は、すでに婚姻関係が破綻した状態で不法行為がされているため、不法行為自体は離婚に直接の関係がないことになります。

したがって、これを理由に慰謝料請求をすることはできません。相手がいつの時点での不法行為を主張しているのかを把握することが重要になります。

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離婚慰謝料を請求された場合の対応

離婚慰謝料の請求の対応に慣れている方は少ないでしょう。焦りや戸惑いも多いと思いますが、初期段階から落ち着いて対応をすることが大事です。慰謝料が請求されたらまずやるべきことを、以下見ていきましょう。

慰謝料請求を無視しない

仮に、相手が離婚慰謝料を請求している理由に覚えがなくても、相手からの請求を無視してはいけません。

請求に対して応答しないでいる場合、交渉の余地がないと判断され、訴訟を提起されてしまうかもしれません。訴訟が提起されてしまった場合は、何らの対応しないでいると欠席判決で敗訴になってしまいます。

訴訟の対応には膨大な費用と時間がかかるだけでなく、請求当初の対応が不誠実であるとして、慰謝料が増額されてしまう可能性があります。

慰謝料の減額交渉をする

最初の請求時点では、相手が相場を理解していなかったり、感情的になっていたりして、請求が高額になっていることもしばしばあります。そのため、上記のような減額事由を主張して、減額を交渉する余地があります。

いきなり弁護士等から請求が来ると、直ちに支払わなければならないのか、書かれていることを認めなければならないのかと焦ってしまいますが、勢いで認めてしまうと後々不利になることもあり得ます。慎重に検討しましょう。

相手の気持ちを考えた対応をする

離婚慰謝料を請求してきた相手は、往々にしてこちら側に相当な不満を抱いています。相手の請求を無視したり、強い態度で拒否したり、まして相手を批判したりすることは、相手の気持ちを逆なでしてその態度を硬化させることになりかねません。

相手の態度が硬化してしまうと、訴訟等の手続きに移行されたり、その後の交渉が難航したりする可能性があります。誠実に対応することが求められます。

交渉を弁護士に任せる

夫婦間で離婚慰謝料が請求されるに至っている場合、当事者間の対立は激しくなっていることが予想されます。また、法律の専門知識がない状態で慰謝料の減額等の交渉をすることは簡単なことではありません。

そこで、法律の専門家である弁護士に、第三者的な立場で交渉させるというのが一つの方法です。交渉が硬直化してしまった場合や、相手方が弁護士をすでに依頼している場合等は、自分一人でやろうとせず、弁護士に任せることをご検討ください。

離婚慰謝料が支払えない場合の対処法

減額をしても一括の支払いが困難である場合は、分割払いの提案をすることも考えられます。一括で支払うことはできないため、支払う総額を増額する代わりに、分割で支払うことを交渉するという方法もあるでしょう。

ただし、分割払いでは支払いが途中で止まってしまう可能性があるので、相手からは難色を示される場合もあります。支払回数やその期間については、弁護士に交渉を任せるとよいでしょう。

離婚慰謝料を減額した事例

依頼者が口論の際、相手をたたいてしまい、怪我を負わせてしまったところ、相手から離婚の請求と慰謝料の請求をされた事案があります。もっとも、相手は、依頼者と同居中に不貞行為をしている状態で、口論もこの不貞行為の追求時でした。

裁判所にて審理を行うことになりましたが、当方から、相手に不貞行為があること、口論をしていた際の状況、その後にも同居し協力しながら生活していたことなどを丁寧に主張、立証しました。

最終的に、裁判所は、不貞行為の存在、怪我を負わせたこと自体はいけないがそうなった相当の原因があることなどを認め、離婚請求及び慰謝料の請求を認めませんでした。

離婚慰謝料を請求されてお困りなら弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求されると、突然のことでどうすればいいか分からず、不安な気持ちになると思います。どのような場合に減額の交渉ができるのか、減額の交渉ができる場合であったとして、その交渉はどう進めれば良いのか、当事者だけで適切な対応をすることは大変困難です。

誰にも相談できず、1人で解決しようとすると、気づかないうちに自分に不利なことを言ってしまったり、支払う義務のない慰謝料を支払ったりしてしまうことがあります。弁護士であれば、ご依頼者様の代わりに交渉をして、適切な結果へ話合いを進めることができます。

弁護士法人ALG&Associates横浜法律事務所では、男女問題を数多く扱った弁護士が多数在籍しておりますので、お困りの際はぜひ一度ご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。