慰謝料が1日8600円で提示されていたら注意!増額の可能性あり

慰謝料が1日8600円で提示されていたら注意!増額の可能性あり

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

交通事故の示談交渉で、相手方の保険会社から「1日8600円」の慰謝料を提示されたら、要注意サインですので、示談するのをちょっと待ってください。

1日8600円の話が出ているならば、最低水準の自賠責基準で慰謝料が計算されている可能性があり、ご自身が本来もらえるはずの慰謝料よりも、かなり低額となっているおそれがあります。
そこで、本記事では、交通事故の慰謝料が8600円と言われる理由、正しい慰謝料の計算方法、慰謝料を増額させる方法などについて解説していきます。適正な慰謝料を受けとるためにも、ぜひ最後までご一読ください。

慰謝料が1日8600円(旧8400円)になるのはなぜ?

交通事故でケガをした場合、入院や通院を強いられた精神的苦痛に対する「入通院慰謝料」を加害者に請求することができます。この慰謝料の金額について、保険会社から「1日8600円」と提示されることが多い理由は何なのでしょうか?

これは、自賠責基準による慰謝料の計算過程で生じた誤解であると考えられます。
自賠責基準では、以下の①と②を比較して、金額の少ない方を入通院慰謝料の金額とします。

【自賠責基準による入通院慰謝料】

①入通院期間(初診日~治療終了日)×4300円
②実際に入通院した日数×2×4300円

※2020年3月31日以前に起きた事故:4200円で計算

②の下線部分をご覧ください。この部分だけを見ると、「2×4300円(旧4200円)」と見えるため、入通院慰謝料は8600円(旧8400円)と誤解される方が多いのでしょう。
しかし、実際には「実際に入通院した日数×2」が正しい計算方法となります。

また、②の実際に入通院した日数×2より、①の入通院期間の日数の方が短い場合は、①の式で計算した慰謝料が適用されます。
そのため、1日8600円という入通院慰謝料額は、そもそも何ら関係がないことになります。

通院回数を増やした分だけ慰謝料がもらえるわけではない

手当たり次第に通院回数を増やしても、慰謝料が増えるとは限りません。
これは、前述の自賠責基準の計算式にあてはめてみれば分かりやすいです。

(例1)入通院期間200日、実際に入通院した日数100日

①200日×4300円=86万円
②100日×2×4300円=86万円
①=②であるため、慰謝料は86万円になります。

(例2)入通院期間200日、実際に入通院した日数101日

①200日×4300円=86万円
②101日×2×4300円=86万8600円
①<②であるため、慰謝料は86万円となります。

つまり、自賠責基準では、入通院期間の半分の日数(2日に1回)通院した場合に、慰謝料が最大となり、それ以降は、通院回数を増やしても、慰謝料額は変わらないことになります。

また、ケガの症状に照らして必要以上に多く通院したり、湿布やマッサージだけの漫然治療を続けたりすると、過剰診療を疑われる場合があるため注意が必要です。

保険会社は、あくまでも「交通事故のケガの治療に必要だった治療分」の治療費や慰謝料しか支払いません。過剰診療と判断された治療費については自腹で支払わなければならなくなったり、入通院慰謝料が減額されたりするおそれがあります。

適切な通院頻度はどれくらい?

適切な通院頻度は、ケガの内容や症状の重さ、治療経過等により異なるため、まずは医師の指導に従って、通院を続けるのが望ましいでしょう。

仕事が多忙などの理由でなかなか通院ができない場合もあると思われますが、通院頻度が少なすぎると、「もう治療の必要はないのに、わざと通院期間を延ばしている」などと判断され、治療費の支払いが早期に打ち切られたり、慰謝料が減額されたりするおそれがあります。そのため、医師の指導に従って適切な頻度で継続的に通院をすることが治療の効果を上げるうえでも、適切な慰謝料を受け取るうえでも重要です。

骨折や重傷で自宅安静が必要な場合には無理して通院する必要はありませんが、捻挫、打撲系の事案等では週に2~3日程度の頻度が望ましいといえます。

自賠責には120万円の限度額がある

自賠責保険には支払われる損害賠償金に上限額が設けられており、例えば、被害者がケガをした場合に受領できる傷害部分の自賠責保険金の上限は120万円と決められています。

この120万円には、入通院慰謝料だけでなく、治療費や休業損害(ケガの治療のために仕事を休んだ分の補償)などの金額も含まれています。
つまり、入通院が長引いたことで、治療費が高額になったり、仕事を長期休んだことで休業損害が生じたりした場合には、自賠責保険から受け取れる慰謝料が、その分減ってしまう可能性があることを意味します。

弁護士基準なら自賠責基準の入通院慰謝料を上回る可能性大

交通事故の慰謝料を計算する基準には、以下の3つがあります。

①自賠責基準(自賠責保険が用いる最低補償の基準)
②任意保険基準(各任意保険会社が独自に定める基準)
③弁護士基準(過去の裁判例をもとに作られた基準で、弁護士や裁判所が用いる基準)

どの基準を使うかで慰謝料の金額が変わり、一般的には、①≦②<③の順で金額が上がり、弁護士基準が自賠責基準の入通院慰謝料を上回り、、多くの事案で最も高額の慰謝料の獲得することができます。そのため、弁護士に依頼することで自賠責基準のまま算定するよりも高額の慰謝料を獲得できる可能性が高いということです。

ただし、弁護士基準では、被害者にも過失がある部分については、その分慰謝料などの損害賠償金が減額されます。これを過失相殺といいます。
一方、自賠責基準では、被害者の過失が7割未満であれば、過失相殺による減額は行われません。よって、自賠責基準の方が高額になることもありえます。
そのため、多くの場合には弁護士基準で算定するのが最適となりますが、事案によってはどの基準で慰謝料を算定するべきを慎重に検討するべきことになります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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1日8600円の慰謝料が貰えるのは治癒・症状固定までの「治療期間」のみ

入通院慰謝料は、初診日からケガの完治日まで、もしくは症状固定日※までの「治療期間」を対象して算定されることになります。

※症状固定日:これ以上治療を続けても、改善の見込みがない状態に達したと医師より診断を受けた日

症状固定と診断されると、これ以上の通院治療は必要がないと判断されるため、症状固定後の通院は、基本的には、入通院慰謝料の支払い対象から外れることになります。

なお、保険会社から「そろそろ症状固定ですね」「もう治療は必要ないでしょう」などと言われても、安易に応じないよう注意が必要です。症状固定を判断するのはあくまで主治医であって、保険会社ではありません。まだケガが治っていないのに治療を終えてしまうと、ケガが悪化したり、通院期間が短くなることで入通院慰謝料が低額になったり、後遺障害認定においても不利になったりする可能性があるからです。

後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料が請求できる

医師より症状固定の診断を受けた後も、痛みやしびれなどの後遺症が残っているケースがあります。このとき、ご自身の後遺症が「後遺障害」として認定されれば、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求することができるようになります。

後遺障害は1級から14級まで区分され、1級が最も重症、14級が最も軽症、傷害の程度が重症であればあるほど、慰謝料額も増えるよう設定されています。そのため、どの等級に認定されるかが重要ポイントになります。

適切な後遺障害認定を受けるには、通院の仕方や後遺障害診断書の作成が鍵となるため、それなりの戦略と医学的知識が求められます。後遺障害認定を希望される方は、できれば交通事故に精通した弁護士に相談して、今後の方針を立てることをおすすめします。

後遺障害等級認定についての詳細は、以下の各記事をご覧ください。

後遺障害等級認定の申請方法

慰謝料が1日8600円から増額した事例

依頼者が交通事故の被害にあい、むちうちのケガを負ったという事例です。治療を続けた後も後遺障害が残ったため、事前認定を行った結果、後遺障害14級9号と認定されました。

加害者側の保険会社から、慰謝料などの損害賠償金として約130万円の提示(既払い分は除く)がありましたが、妥当な金額であるかどうか判断できなかったため、弁護士法人ALGにご依頼されました。
担当弁護士が保険会社の示談案を確認したところ、弁護士基準と比較すると、相当低い金額となっていました。そこで、保険会社に対し、弁護士基準で計算した賠償金額を提示し、応じないのであれば、すぐに裁判を起こす旨強く主張しました。

その結果、保険会社は当方の主張を認め、弁護士基準で計算した場合の満額に近い、約300万円の賠償金額で示談が成立し、当初の提示額より約170万円増額させることに成功しました。

保険会社から「1日8600円」と提示されたら、弁護士へご相談ください

保険会社から示談案を提示されても、すぐにサインせず、まずは交通事故に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

保険会社からの「1日8600円」の提示には、金額の低い自賠責基準を基にした算定になっていることが多いです。この場合、被害者本人で慰謝料の増額を求めても弁護士基準と同程度までは増額されないことがほとんどです。

この点、弁護士が交渉に入れば、、弁護士基準による増額交渉に応じる可能性が高くなり、慰謝料の増額が叶うとともに示談交渉や保険関係の書類集めなどの面倒な手続きも一任できるため、心身の負担が軽くなり、治療に心置きなく専念できるという利点もあります。
示談案の妥当性を知りたい方や、慰謝料をできる限り増やしたいと考えている方は、ぜひ交通事故対応を得意とする弁護士法人ALGにご相談下さい。

亡くなった親や兄弟姉妹が生きている間、献身的に介護をし続けたとしても、その相続人でなければ1円ももらう権利はないのでしょうか。相続人でなくても、親族であればこのような貢献をした人が、一定の金額を相続人に請求できる制度が創設されました。
この制度は令和元年7月1日以降に開始した相続に適用されます。しかし、どのような制度がまだ知らない方も多いでしょう。以下、制度内容を具体的に解説していきます。

特別寄与料とは

被相続人(要は亡くなった人がこれにあたります)の生前、親族が被相続人の療養看護やその他の労務提供を無償で行ったことにより、被相続人の財産が維持または増加した場合、その親族が相続人に対し、一定の割合で寄与料を請求できるという制度です。

相続人でなくても、親族であれば、献身的に介護をすることはよくある話です。仕事や自身の生活を捧げながら何年間にもわたり介護を続けたにもかかわらず、相続人でないというだけで貢献が評価されず、相続人という立場だけが法的にものをいうというのも理不尽ではないかと考えられるようになりました。そこで、このような制度が創設されました。

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特別寄与料の範囲は?請求できるのは誰?

特別寄与料を請求できる者の範囲は、「親族」です。そして、親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。もっとも、親族であっても、相続人である場合には当然、請求権者にはなりません。また、相続放棄をした、相続欠格や排除により相続人でなくなった者も当然にこれにあたりません。

特別寄与料が認められる要件は?

特別寄与料を請求するためには、まず、親族が被相続人の生前、療養看護をしたか、あるいは、労務の提供をしたことが必要になります。あくまで労務の提供であるため、財産を提供してもこれに含まれません。そして、これは無償で行わなければならず、対価を受け取っていた場合には、請求の要件をみたさないことになります。
さらに、上記行為によって、被相続人の財産が維持または増加したことが必要です。たとえば、介護をし続けたことにより、介護サービスを利用せず、被相続人がその料金を支払わずに済んだというようなケースです。この場合には、本来ならば支払っていたであろう介護料を支払わずに済んだので、財産が維持されたといえます。

いつまで請求できる?時効はあるの?

特別寄与料を請求できる期間には定めがあり、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6カ月間とされています(民法1050条2項但書)。
6か月を超えて請求した場合、相続人が「援用」という形で消滅時効を主張すると、請求自体をすることは一切できなくなってしまいます。このようなことを避けるため、相続が開始されたら、すみやかに請求の手続きをすすめましょう。

遺産分割終了後でも請求できる?

原則として、遺産分割協議が終了した後には、特別寄与料の請求をすることはできません。すでに、各相続人の取り分が決まった状態でこのような請求をかけられると、不安定な状態になってしまうからです。
遺産分割協議自体を、脅迫や錯誤、などの理由によりもう一度リセットする場合に限り、遺産分割協議後であっても請求はできますが、このようなケースは限られています。

特別寄与料の相場はどれくらい?計算方法は?

特別寄与料には、明確な計算方法がありません。そのため、相続人との協議による場合には、合意で決めることになります。もっとも、家庭裁判所が決める場合には、計算方法に一定の基準があり、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して金額を算定するとされています(民法1030条5項)。
以下のように、療養看護型と家事従事型の2パターンに計算方法を分けるのが一般的とされています。

介護した場合(療養看護型)

療養看護をした場合の日当額に、療養看護の総日数を乗じ、さらに裁量割合として0.5~0.8の数字をかけるとされています。この日当額は介護報酬基準額などに基づいて決められます。
たとえば、日当額が7000円で、総看護日数が年300日(10年)、裁量割合が0.5だとすれば、このような計算になります。

7000円×(300日×10年)×0.5=1050万円

もちろん、遺産額を超えたり、遺産額と同額になることは想定されていないので、実際には調整がされることになります。

事業を手伝った場合(家事従事型)

この場合、療養看護型と計算方法は異なり、以下の計算式で金額を算出します。

特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1-生活費控除割合)×寄与期間

特別寄与者が通常得られたであろう給与額は、賃金センサス(年齢、性別、学歴ごとの平均収入の統計資料)を参考に定めます。また、生活費控除割合とは、労働の対価から生活費を控除するために設けられた一定の指標です。家業の収入の中から生活費が支出されていることが多いためです。

特別寄与料の請求先は?誰が払うの?

特別寄与料を請求する先は、相続人です。相続人全員が対象になり、各相続人が法定相続分に応じた割合で特別寄与料を負担することになります。たとえば、特別寄与料が200万である場合、配偶者及び子1人が相続人だとすると、それぞれ法定相続分は2分の1になるので、各相続人は100万円ずつ(200万×1/2)負担することになります。このように、相続人に対しての一種の請求権として、特別寄与料は位置づけられています。

特別寄与料請求の流れ

特別寄与料を請求しようと考えた場合、まずは相続人と直接交渉をし、合意をして決めることが考えられます。交渉が難しいといった場合、家庭裁判所に対し「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てることになります。この調停もやはり、最終的には相続人との合意が必要になるので、合意ができなければ不成立になります。その時は、さらに、審判へ移行してもらうようにし、裁判所の判断に任せることになります。

このように、段階を踏む必要も生じてくるので、早いうちに介護当時の日記や、亡くなった被相続人との関係を示すメールなど、証拠を集めておくのが得策です。

特別寄与料の受け取りに税金はかかる?

特別寄与料は相続人に請求しているため、無事取得した場合、「被相続人から遺贈されたもの」という扱いになり、相続税の課税対象財産に含まれます。具体的には、相続税法に基づき、算出された税額にこの特別寄与料の分として、2割を加算することになります。

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特別寄与料請求をお考えの方は弁護士にご相談ください

特別寄与料を請求できるといっても、このように税金がかかったりなど、知らないことがたくさんあると思います。どのような資料を収集すべきか、どんな手続きを踏めばいいかなど、わからず考えているうちに、時効期間を過ぎてしまうといったこともあるかもしれません。
そのようなことがないように、法律の専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。そして、できる限り早く依頼される方がよいでしょう。主張、立証や収集する証拠についてアドバイスを早い段階で得られるので、スムーズに請求の手続きが進められるかと思います。まずはお早めにご相談ください。

借金を残して死亡した場合、その人が残した借金はどうなるでしょうか。相続人は借金も引き継がなければならないのか、借金を引き継がないでよい方法はないのか、借金を引き継ぐ場合、債権者にどのように対応しなければならないのか等、相続に関する借金問題は、正しく理解しておかなければ予期しない損害を被る可能性がありますので、注意する必要があります。ここでは、相続と借金の問題について、いくつか解説していきます。

相続財産には借金も含まれる

相続人は、被相続人から、相続財産を引き継ぎます。
そして、相続財産は、プラスの財産のみならず、マイナスの財産(借金等)も含まれます。
例えば、被相続人について、預金が1000万円、借入金が1500万円あるような場合、相続人は、1000万円の預金のみならず、1500万円の借金も引き継がなければなりません。
相続した結果、マイナスの財産の方が大きい場合には、残念ながら、相続をしたことで損をしたということになります。

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相続放棄すれば借金は相続しなくてもいい

では、借金等のマイナスの財産を引き継がないために、どのような手段を講じることになるでしょうか。
借金等のマイナスの財産を引き継がず、相続財産としての負債から解放されたい場合には、「相続放棄」の手続きをとらなければなりません。
「相続放棄」の手続きは、必ず、家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければなりません。この手続きを行わない場合、いくら他の相続人との遺産分割の結果、遺産を取得しないこととなったとしても、「相続放棄」はできていませんので、注意が必要です。

相続放棄するメリット

相続放棄をするメリットは、相続財産に含まれるマイナスの財産を引き継がなくてよいということです。相続放棄をすれば、借金、第三者への損害賠償債務、連帯保証債務等、マイナスの財産を引き継がなくてよくなり、債権者に対して支払いを行わないで済むようになります。
また、相続人が複数人いる場合、遺産の最終的な取得内容について、相続人で遺産分割を行わなければなりません。遺産分割は相続人全員で行う必要があり、分割が終わるまで、その手続きに拘束されることになります。例えば、自分以外の相続人同士が揉めているというだけであっても、数年単位で自分も手続きに拘束されるというケースが多く存在します。相続放棄を行えば、相続人ではなかったことになるため、遺産分割にも参加する必要がなくなります。このように、煩わしい遺産分割協議からも解放されるというメリットもあります。

相続放棄するデメリット

他方、相続放棄をするのであれば、当然、プラスの財産を受け取ることもできません。相続放棄は、プラスの財産も、マイナスの財産も一切取得しないという内容のため、プラスの財産は相続し、マイナスの財産は相続しないという「良いとこ取り」はできません。
また、原則として相続放棄は撤回できません。そのため、仮に相続放棄をした後に、多額のプラスの財産があることが判明したとしても、基本的に、プラスの財産を相続するということはできなくなります。プラスの財産があるかどうか、十分に調査を尽くすために時間が必要であるということであれば、「熟慮期間の伸長の申立て」を家庭裁判所に対して行うことになります。

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ほかの相続人とトラブルになる可能性がある

相続放棄を行うと、他の相続人とトラブルになることもあります。
例えば、複数の相続人がおり、遺産に倒壊寸前の空き家があったとします。この場合、誰も、この空き家を相続したいとは考えません。そのため、相続人全員が、内心、相続放棄をしたいと考えていたとします。
そのような中で、他の相続人より先に相続放棄をしてしまうことは可能です。しかし、その場合、「まだ相続放棄をしていない相続人」が、その空き家を管理しなければなりません。そして、順次相続放棄されていき、最後に相続放棄をした相続人は、「自分が取得する財産ではないにもかかわらず」その空き家を管理する義務を法律上負うことになります。
つまり、先に相続放棄をしてしまって、「管理が面倒な遺産の管理を他の相続人に押し付ける」こととなるため、相続放棄をすることで、他の相続人と揉めるきっかけにはなってしまいます。このようなトラブルが起こり得ることは、十分認識しておく必要があります。

限定承認という方法もある

多くの相続案件では、相続人は、単純承認(プラスの財産も、マイナスの財産も全て引き受ける)か、相続放棄(プラスの財産も、マイナスの財産も全て引き受けない)を選択します。
他方、法律上、「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産の責任を負う」という、限定承認という方法も認められています。例えば、預金が1000万円あることがわかったが、負債がいくらあるか分からないという状態において、限定承認したとします。その場合、限定承認の手続きの中で、借金が1500万円あることが分かったとしても、相続人は1000万円だけ、債権者に弁済をすれば良いことになります。すなわち、相続の結果、プラスマイナス0か、プラスで終わることができます。
しかし、実際には限定承認はほとんど利用されておらず、取り扱ったことのある弁護士も非常に少ないと思われます。これは、限定承認の手続きが煩雑で負担が大きいことが主たる原因と思われます。

限定承認ならトラブルを回避しやすい

限定承認であれば、プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産についての責任を負えばよいので、相続人からすれば安心です。また、限定承認は相続人全員で行う必要があるため、相続人同士でトラブルになるということも少ないように思われます。手続き的な煩雑さはあるものの、事案によっては限定承認をすべき事案もあるため、限定承認を検討する際は、限定承認の取り扱い経験のある弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

相続放棄・限定承認には期限がある

相続放棄や限定承認をするには、家庭裁判所に対し、「相続放棄の申述」「限定承認の申述」をしなければなりません。
そしてこの申述には期限が定められており、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」以内に申述を行う必要があります。
この期間を熟慮期間といい、この間に、単純承認するか、相続放棄をするか、限定承認をするか検討し、結論を出す必要があります(熟慮期間内に相続放棄又は限定承認の申述を行わない場合、単純承認をしたことになります)。
熟慮期間が3か月では足りないという場合には、熟慮期間伸長の申立てを、家庭裁判所に対して行う必要があります。

債権者から取り立てを受けた場合の対応は?

熟慮期間中に、債権者から支払を求められた場合、どのように対応したらよいでしょうか。
結論としては、「熟慮期間中であり、相続放棄や限定承認する可能性があるため、待って欲しい」と債権者に対して伝え、単純承認をするか、相続放棄をするか、限定承認するかを早期に判断することになります。

単純承認をした後に、債権者から支払を求められた場合には、その債権が真実として存在するものであれば、法定相続分に応じて支払いをする必要があります。相続人間での負債の負担割合は、別途相続人間で協議を行うことになります。
相続放棄をした後に、債権者から支払を求められた場合には、相続放棄をしたので支払いをしないという旨を債権者に伝え、支払いを拒絶するということになります。

相続財産から借金を返済してしまうと相続放棄ができなくなる

相続財産から、相続財産に含まれる借金を返済してしまうと、それが相続財産の処分にあたり、単純承認をしたものとみなされる可能性があります。その場合、単純承認をしていることとなるため、相続放棄をすることはできなくなってしまいます。
相続放棄を確実に行うためには、とにかく遺産には手を付けないというのが鉄則です。他方、現実には様々な債権者から対応を求められたり、支払いを求められたりすることが多くあります。これらに対してどのように対応するのが適切か、相続放棄に精通している弁護士に適宜相談をしながら進めるのが良いでしょう。

借金の相続に関するQ&A

法定相続人全員が相続放棄した場合、借金はどうなりますか?

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産は、現実の人間は誰も引き継がないということになります。最終的には、引き継ぐ者がない相続財産は、国庫に帰属することになります。国庫に引き継がれるまでの間は、相続財産自身が相続財産法人として権利義務の主体となり、相続財産清算人がその管理を行います。
相続財産に借金が含まれる場合、相続財産清算人が、プラスの財産から借金を返済し、残ったプラスの財産を国庫に引き継ぐことになります。

相続放棄する前に借金があるか調べる方法はありますか?

全ての借金を漏れなく調査する方法はありません。金融機関等からの借金であれば照会により判明しますが、個人からの借入金等は、資料が紛失していることもあり、その存否が不明とせざるを得ないためです。
その上で、調査可能な借金はあります。信用情報を利用している業者からの借入金であれば、CIC、JICC、KSC等に照会をすれば、一括で調査を行うことができます。これらは、相続人の身分であれば、被相続人の負債調査が可能なため、財産調査の一環として、基本的に行うことが多いです。これらの調査により多額の借金が判明した場合には、相続放棄を検討した方がよいでしょう。
なお、これらの調査にも戸籍等の提出書類が必要であったり、回答も一定程度時間がかかったりするため、調査自体は早期に進めることをお勧めします。

借金があることを知らず、相続放棄の期限が過ぎてしまったのですが、相続するしかないのでしょうか?

個々の案件毎に裁判所が判断することになりますが、借金の金額、それが後から発覚した経緯等によっては、「借金があることを知ってから」3か月というように、熟慮期間の起算点が遅くなる可能性があります。 後から借金が発覚した場合でも、諦めずに相続放棄の申述を行うことをお勧めします。
もっとも、必ず起算点を後にずらせるとは限らないため、いずれにしても、早期調査、必要であれば熟慮期間の伸長を行うのがよいでしょう。

相続後に借金が発覚したのですが、相続放棄はできますか?

一度、遺産を処分するなどして単純承認をしてしまった後は、その後に借金が発覚したとしても、基本的に相続放棄はできないものと考えた方が良いです。
一応、遺産の処分を行い単純承認した後に、その遺産の処分行為自体に民法により定められた取消事由がある場合には、その取消により単純承認の効果がなくなり、結果的に、相続放棄を行うことが可能となる場合があるという見解はあります。ただし、実務上も必ずしも統一的な取り扱いがされている部分ではなく、個々の裁判官の判断に委ねているのが現状と考えられます。
したがって、遺産の処分行為を行う際は、「万が一借金が後から発覚しても相続放棄できない」という心づもりでいる必要があります。

亡くなってから4ヶ月ほどたった頃に債権者から連絡があり、借金していたことを知りました。もう相続放棄できないのでしょうか?

4ヶ月の間、特段遺産に手を付けておらず、遺産の処分行為を行っていないという状況があれば、借金の金額や後から判明した経緯によっては、「借金が発覚した時点」が熟慮期間の起算点とされる可能性があります。その場合、借金が発覚してから3か月以内であれば相続放棄ができることとなります。この点も、専門家である弁護士に相談の上、相続放棄の申述を行ってみるのも良いでしょう。

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借金はどの被相続人にもある可能性があります。プラスの財産は、後から判明しても再度遺産分割すればよいという程度ですが、借金の場合、一度相続してしまうと、その責任を負わなければなりません。そのため、本来なら借金の調査は必ず行うべきですが、実際には、借金の調査を行わず単純承認している人が大半です。後になって後悔しないように、借金の調査を必ず行った上で、単純承認、相続放棄、限定承認のいずれかを選択しましょう。専門家である弁護士であれば、これらの手続きをスムーズに行うことができ、安心して相続問題に対処することができますので、是非お気軽にご相談ください。

離婚するときに、離婚原因に責任のある配偶者に対して、慰謝料を請求できることがあります。離婚の際には必ず慰謝料が支払われると思われるかもしれませんが、全ての離婚で慰謝料の請求が認められるわけではありません。また、慰謝料の請求が認められたとしても、慰謝料の額にはケースによって大きな開きがあります。

本稿では、離婚する際に、慰謝料の支払いが認められるのはどのような場合か、また、具体的にどの程度の慰謝料が認められるのかということをご紹介していきます。

離婚慰謝料とは?

離婚慰謝料とは、夫婦の一方が離婚の原因を作り、離婚せざるを得なくなった場合に、相手の配偶者の受けた精神的苦痛に対して認められる慰謝料です。これは、離婚の原因となった個別の行為に対してではなく、離婚という結果そのものへの精神的苦痛に対して認められるものです。

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離婚慰謝料を請求できるケース

離婚慰謝料の請求が認められる具体的な行為には、不貞行為・DVなどがあります。
以下では、その中で代表的なものをご紹介します。

不貞行為

不貞行為とは、配偶者がいるにもかかわらず、それ以外の者と関係を持つことです。一般的には、「浮気」や「不倫」と呼ばれる行為ですが、慰謝料を請求するためには、2人きりでの食事やキスだけでは足りず、通常は性行為を伴う関係であることが必要になります。
慰謝料の金額は、婚姻期間の長さや不貞行為の回数・期間に影響されます。また、不貞相手が妊娠・中絶していた場合も、慰謝料の増額事由になります。

DV・モラハラ

DVとは、家庭内で行われる暴力一般のことであり、モラハラとはその中でも精神的な暴力のことを指します。
体にあざなどが残る身体的な暴力は、写真や医師の診断書などの証拠を集めることによって、証明が比較的容易です。これに対して、暴言や冷たい態度をとるといった精神的暴力は、形として残るものではないため、客観的な証拠を集めにくいです。そのため、慰謝料を請求するためには、相手の言動を録音したり、日記に残したりすることで、できる限り物理的な証拠を作成しておく必要があります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、夫婦としての扶養義務や同居義務を果たさないことです。具体的には、自宅を出て長期間連絡をしないことや、必要な生活費を渡さないことです。
悪意の遺棄に対する慰謝料は、結婚期間の長さ、別居期間の長さや別居に至った経緯によって、慰謝料の金額が変わります。例えば、別居期間が長くなるほど精神的苦痛も大きいため、慰謝料の金額も大きくなりますし、不貞行為が原因で一方的に別居を開始すれば、慰謝料の増額理由になります。

浪費やギャンブルによる借金

ギャンブルや浪費で多額の借金をしたことにより離婚せざるを得なくなった場合も、離婚慰謝料を請求できる可能性はあります。
本当に借金で生活が困難となるくらいの精神的苦痛を味わったことを証明するために、細かい借金の額についての証拠を集めておく必要があります。

セックスレス

正当な理由がないのに夫婦間の性行為を拒否された場合、いわゆるセックスレスにより離婚に至った場合にも、離婚慰謝料を請求することができます。
ただし、セックスレスを理由に慰謝料を請求するためには、長期間夫婦の間に性交渉がなかったことが必要であり、性交渉はあったが単に自分が求めたときに応じてもらえなかったというだけでは、慰謝料の請求は難しくなります。

離婚慰謝料を請求できないケース

離婚による慰謝料請求の性質は、法律的には、不法行為に基づく損害賠償請求と呼ばれるものです。そのため、慰謝料の請求をするためには不法行為と評価される程度の違法性を帯びている必要があります。

単なる性格の不一致程度が原因では、離婚は認められても、慰謝料の請求までは認められない可能性があります。また、不法行為と婚姻関係の破綻との間に因果関係がない場合、具体的には、不貞行為が行われた時には既に婚姻関係が破綻していた場合も、慰謝料請求は認められません。

不貞行為が原因で離婚に至った場合は、有責配偶者と不貞相手で慰謝料を分担する関係にあるので、不貞相手が慰謝料全額を支払った後は、配偶者に慰謝料を請求することはできません。

離婚慰謝料の請求でのポイントは「不法行為の証拠」

離婚慰謝料を請求するためには、離婚の原因となる行為についての証拠が必要になります。不貞行為であれば、配偶者と不貞相手がラブホテルへ出入りする写真や、肉体関係の存在が明らかである、あるいはそうした行為があったことを推認させるメール等のメッセージです。

ただし、ラブホテルでの写真が撮れていても、出入りのどちらか片方しか取れていなかったり、写真がぼやけていて誰か判断できなかったりする場合は、不貞行為の存在を立証できず、慰謝料が減額される又は認められないこともあります。

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の相場は、一般的には数十万円から300万円程度の幅に収まることが多いです。
しかし、相場がはっきりと決まっているわけではないので、事案の性質や証拠がどれだけ揃っているかによって、金額にはかなり幅があるといえます。

離婚慰謝料の増額・減額に影響する要因

一般に、婚姻期間が長ければ離婚慰謝料は高くなります。婚姻期間が長いほど、婚姻関係が破綻した際の精神的苦痛も大きくなると判断されるからです。また、相手の行為の悪質さが大きい場合、具体的には、不貞行為なら不貞相手が妊娠・出産した場合、DVなら暴行の程度や頻度が大きい場合は、慰謝料を増額する要因になります。

反対に、婚姻期間が比較的短い場合や、夫婦間に未成熟子がいない場合は、精神的苦痛や離婚による影響が小さいとして、慰謝料を減額する要素として判断されます。

離婚慰謝料の請求の流れ

離婚慰謝料を請求するためには、まず、離婚協議の話合いの中で慰謝料の支払いを求めることになります。話合いで慰謝料の支払いに合意できた場合は、必ず書面を作成するようにしましょう。
当事者同士の話合いで合意できなかった場合は、調停委員を交えた離婚調停の場で話合いが行われます。ただし、調停はあくまで話合いでの解決を目指す場なので、条件で合意できなければ慰謝料は支払われません。

調停でも合意できなければ、最終的に裁判で、裁判官に請求が認められるか判断をしてもらいます。裁判では、慰謝料を請求する側が、請求が認められるための証拠を集めて提出しなければなりません。

離婚慰謝料に関するQ&A

離婚慰謝料の貰い方(受け取り方)は?

慰謝料を支払うときは、現金や預貯金を振り込む方法で支払うことが一般的です。ただし、当事者同士で合意できていれば、金銭に代えて不動産などを取得させることもあります。通常、不動産は財産分与の中で考慮されることが多いですが、当事者が納得していれば、財産分与と慰謝料の支払いをまとめて行うことで、離婚の手続きを一度に清算することができます。

離婚後でも慰謝料請求できますか?できる場合、いつまで可能ですか?

離婚後でも、慰謝料を請求することはできます。ただし、離婚から3年が経過した場合は、時効により慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。そのため、離婚後に慰謝料を請求しようと思ったときは、離婚から何年経過したかに注意してください。

また、離婚する前であれば、早く離婚問題を解決するために、慰謝料についても比較的短期間で合意できることがあります。しかし、離婚した後は、そうした考慮が必要ないので、離婚前と比べて交渉が難航する可能性があります。

離婚慰謝料には税金はかかりますか?

離婚による慰謝料が金銭で支払われた場合、相当な金額であれば税金はかかりません。離婚慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償であり、利益が発生しているわけではないからです。
ただし、慰謝料の金額が不相当に過大な場合や、金銭の支払いに代えて不動産が譲渡された場合は、贈与とみなされて税金がかかる可能性があります。

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離婚慰謝料についてわからないことがあれば弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求するためには、慰謝料の原因となる行為を特定し、必要な証拠を用意しなければなりません。また、金額が高すぎる場合などは、相手との交渉が難航し、慰謝料だけでなく離婚手続きにも影響が出てしまいます。

弁護士にご依頼いただければ、慰謝料の相場や証拠収集についてアドバイスするだけでなく、相手との交渉を代理することで、依頼者の精神的負担を軽減することができます。離婚慰謝料の請求を検討している方は、是非弁護士にご相談ください。

父母間で養育費を取り決めても、その後養育費が支払われないという問題が多く見受けられるのが実情です。
養育費未払いへの対策のひとつとして、公正証書を作成しておくことが挙げられます。
公正証書があれば、強制執行の手続きをすることで、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえて回収することができます。

本記事では、養育費に関することを公正証書に残すことのメリット・デメリットや公正証書に記載しておくべき内容など、“養育費の公正証書”に関して、幅広く解説していきます。

養育費を公正証書に残すべき理由とは?

公正証書とは、裁判官や検察官などを長年努めてきた法律の専門家である公証人が作成する公文書です。
養育費を取り決めたときに、公正証書を残しておけば、養育費の不払いが生じたときに強制執行の手続きを行って、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さ、不払いとなった養育費を回収することができます。また、公正証書は当事者間の合意を確定的なものとする証拠として、信用性が高く、養育費の金額等での将来の紛争・トラブルを防止するのに効果的です。

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養育費に関することを公正証書に残すことのメリット

養育費に関することを公正証書に残すことのメリットとして、次の3つが挙げられます。
具体的にそれぞれ説明していきます。

合意した条件について争いにくくなる

公正証書は、当事者それぞれが公証人の前で内容を確認しながら作成しますので、後日、合意した内容について争いにくくなります。
例えば、あとから、相手から「そんな取り決めをした覚えがない」、「そんな内容は知らない」といってくるようなトラブルは回避できます。

なお、公正証書は当事者それぞれに交付されますが、公証役場でも20年保管されていますので、相手による偽造や破棄などが行われるおそれはありません。
万が一、偽造したとしても公証役場に保管している公正証書の原本を確認すれば、偽造がすぐに判明します。

養育費の支払が滞ったときに強制執行ができる

公正証書を作成しておくと、万が一、養育費の支払いが滞った場合は、裁判所の手続きを経ずに強制執行の手続きができます。強制執行の手続きをすると、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえ、不払いとなった養育費を回収することができます。

※なお、強制執行の手続きを行うには、「強制執行認諾文言付公正証書」にしておく必要があります。

財産開示手続きが利用できる

まず、財産開示手続きとは、裁判所に養育費を滞納している相手を呼びだし、自己の財産について陳述させて財産を特定する手続きです。
以前は、調停や審判、裁判などの手続きで養育費を取り決めた者に限定されていましたが、2020年4月に民事執行法が改正されて、公正証書(強制執行認諾文言付)で養育費を取り決めた者も財産開示が利用できるようになりました。財産開示手続きに応じなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑罰が課せられる可能性がありますので、実効性の向上が期待され、利用するメリットが高まりました。(改正前は30万円以下の過料のみでした)。

養育費に関することを公正証書に残すことのデメリット

他方で、養育費に関することを公正証書に残すデメリットもあります。
主に、次の3つが挙げられますので、それぞれ詳しくみていきましょう。

作成費用がかかる

公正証書は公証人によって作成される公文書のため、作成には次のとおり作成費用(手数料)がかかります。
公正証書に記載させる養育費の合計金額(支払期間の上限は10年)によって、作成費用(手数料)は異なります。
下記表のとおり、取り決めた養育費の合計金額が高ければ高いほど、公正証書の作成費用(手数料)は高くなります。

そのほかにも、公正証書の文案の作成や公証役場での手続きの代行などを弁護士に依頼すると、別途弁護士費用が発生します。

目的の金額(養育負の合計金額) 公正証書作成の手数料
100万円以下 5,000円
100万円超、200万円以下 7,000円
200万円超、500万円以下 11,000円
500万円超、1,000万円以下 17,000円
1,000万円超、3,000万円以下 23,000円
3,000万円超、5,000万円以下 29,000円
5,000万円超、1億円以下 43,000円

作成するのに時間がかかる

公正証書は、すぐに完成して受け取ることができるものではありません。
まず、公正証書にする内容が決定すれば、公証役場へ連絡し、公正証書の作成を申し込みます。
しかし、公証人との文案の調整や公証役場の予約状況もあるので、申し込みを行った当日中に、公正証書を作成するのは、現実的に難しく、公証役場や時期などによって異なりますが、約2週間程度、準備に時間を要します。

準備が整うと、事前に指定された日時に夫婦ともに公証役場へ行き、公証人と最終確認をしたうえで、公正証書を完成させます。
完成した公正証書は、公証役場に行った日に受け取って持ち帰ることができます。

作成するためには夫婦で協力しなくてはいけない

公正証書は、夫婦で取り決めた内容で作成する必要があり、相手と話し合って、内容について合意していることが前提です。
また基本的に夫婦ふたりとも、公証役場に出向いて、公証人の前で、夫婦それぞれが意思を互いに確認したうえで公正証書を作成しますので、夫婦の協力は必要不可欠です。

養育費と公正証書の書き方

養育費について公正証書を作成するときに、記載しておくべき事項があります。
具体的に記載しておけば、後々のトラブルや紛争を未然に防げられます。
では、記載しておくべき事項について、具体的に説明しておきましょう。

毎月の支払額

養育費は、子供の日々の生活にかかる費用であるという性質上、“毎月払い”にするのが通常です。
毎月の支払額は明確に公正証書に記載しておきましょう。

養育費の金額は夫婦で合意できれば自由に決めて問題ありませんが、だいたいの相場を知りたいという方もいらっしゃるかと思います。
相場を知る方法として、裁判所のウエブページで公表されている「養育費算定表」を確認することになります。
養育費算定表は夫婦それぞれの年収と雇用形態(自営業か給与所得者か)と子供の人数と年齢で算出できます。
参考例として、次のとおり、2つのパターンで養育費の相場を把握してみましょう。

【例1】
夫(義務者・会社員)年収500万円、妻(権利者)専業主婦、子供1人(0歳~14歳)の場合
相場・・・6~8万円

     支払う側が年収500万、受け取る側が専業主婦の養育費相場

【例2】
夫(義務者・会社員)年収300万円、妻(権利者・会社員)年収200万円、子供2人(いずれも0歳~14歳)の場合
相場・・・・2~4万円

     支払う側が年収500万、受け取る側が年収200万の養育費相場

養育費の支払日

養育費の毎月の金額だけでなく、養育費の毎月の支払日についても、明確に公正証書に記載しておきましょう。
例えば、「当月分」を「毎月25日」や「毎月末日」までに支払うなどです。
取り決めておくと、養育費を使う予定も立てやすく、支払いが遅れているかどうかも確認しやすくなります。

支払開始日

養育費をいつから支払うのか、支払開始日を取り決めておくことも重要です。
当事者間で話し合って自由に決めても問題ありませんが、一般的に、離婚前に取り決める場合は「離婚が成立した月から」支払開始とするケースが多いです。
離婚をした後に養育費を取り決めた場合は、支払開始日を「●年●月●日から」と明確に記載していたほうがいいでしょう。

支払終了日

養育費の支払終了日も事前に明確に取り決めておいたほうが、後からのトラブルや紛争を防げます。
一般的には、子供が社会的・経済的に自立するであろう「20歳になるまで」と取り決めることが多いです。
しかし、大学に進学させる予定の場合は、「大学卒業するまで」や「満22歳に達した3月まで」などと夫婦で合意すれば取り決めて問題ありません。
ただし、注意しないといけないのは、「大学卒業するまで」と取り決めた場合、子供が浪人や留年などをして、社会的・経済的に自立する時期が延びたときに、いつまで養育費を支払うのか問題になるケースもあるので、具体的に決めておく方が良いでしょう。

支払方法

養育費の支払方法もしっかり取り決めて公正証書に記載しておきましょう。
手渡しでも問題ありませんが、養育費の受領を証明しづらいという問題があり、一般的には、銀行口座への振り込みが多いです。口座名義は親名義の口座でも子供名義の口座でも問題ありませんので、当事者間で話し合って決めましょう。
また、通常は、銀行口座への振り込みをする場合には振込手数料がかかりますので、この振込手数料を振り込んだ側が負担するのか、振り込まれた側が負担するのかも明確にしておくとトラブルを未然に防止できます。
一般的には、振り込んだ側が負担するケースが多いです。

養育費の変更について

離婚してから、養育費を支払い終えるまで長期にわたるので、(元)夫婦どちらにも生活環境の変化は当然に起こりえることです。
例えば、どちらかが再婚して新たに子供が生まれたり、再婚相手と子供が養子縁組をしたり、リストラに遭い失業したりするなどの場合です。
公正証書を作成するときに、「離婚後、やむを得ない事情の変更があった場合は、当事者間で改めて誠実に協議をする」などの文言を入れておくと、安心です。

強制執行について

公正証書を作成するときに、「強制執行認諾文言」付きにしておくと、裁判所の手続きを経ずに強制執行の手続きをして、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえ、不払いとなった養育費を回収することができます。

「強制執行認諾文言」とは

公正証書の末尾に記載する、「債務者は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」という一文のことです。

一度公正証書に養育費のことを残したら、金額は変更できない?

公正証書を作成したあとに、養育費の金額をはじめ、内容・条件についても変更したい場合は、父母間で合意できれば変更は可能です。話し合いで変更ができた場合には、変更した内容で、新たに強制執行認諾文言付の公正証書を作成しておくようにしましょう。
父母間で合意できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てして話し合って決めるか、審判を申し立てして裁判所に判断してもらうことになります。
ただし、裁判所の手続きでは、養育費の条件を定めたときには予測できなかった「やむを得ない事情」が認められる必要があります。

よくある質問

養育費について公正証書を作成したいのですが、相手に拒否された場合はどうしたらいいですか?

公正証書は、夫婦ふたりの同意と協力のもと作成しますので、相手が拒否をしていると公正証書の作成は断念せざるを得ません。
相手に拒否された場合は、方法を変えて、家庭裁判所に調停を申し立てしましょう。
調停では、調停委員を交えて話し合いを行い、養育費について合意できれば、調停が成立します。
調停が成立すると「調停調書」が作成されます。調停調書は、裁判の確定判決を同じ効力をもちますので、公正証書とも同等の効力を持ちます。
もし、調停が不成立になっても、審判や裁判で裁判所が養育費について決定し、「審判書」、または「判決書」が作成されます。

公正証書が作成できなくても、調停調書や審判書や判決書などがあれば、養育費の不払いが生じたときは、強制執行の手続きで相手の財産を差し押さえたり、裁判所から養育費の支払いを勧告してもらえたりします。

養育費の公正証書はどこで作成することができますか?

養育費の公正証書は、「公証役場」と呼ばれる場所で作成します。

公証役場とは、法務省によって管理されている役所のひとつです。
聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、国民が公証役場を利用しやすいように、日本各地・約300ヶ所に設置されています。

どの公証役場で作成するかについては、自分たちで希望する場所の公証役場を選んで利用することができます。
ただし、公正証書を作成するときには、実際に公証役場に行かなければなりません。そのため、夫婦双方にとって、利便性のいい公証役場に依頼するのがいいでしょう。

離婚の際に公正証書を作成したいのですが、養育費に関して書けないことなどありますか?

公正証書は、執行力もあり、強力な証拠として使える公文書です。そうであるがゆえに、公正証書には記載できない内容があります。
「養育費の支払いの拒否」や「養育費の放棄」、「養育費の利息制限法を超える金利の記載」などは、公正証書に書けませんので、公証人に削除される可能性が高いです。
養育費の関連以外にも、「面会交流の拒否」や「親権者の変更予定や変更の禁止」、「慰謝料や財産分与の長期分割払い」なども記載できません。

そのほかに、夫婦どちらかに対しての罵倒や悪口など、公序良俗に反するような内容についても記載できません。

公正証書がないと養育費がもらえませんか?

公正証書がなくても、父母間で話し合って決めた養育費を請求することや、養育費を受け取ることは可能です。
養育費の請求方法は、電話やメールなどで行ってかまいません。内容証明郵便を送付するのも、相手に心理的プレッシャーを与えるのに効果的です。
もし、取り決めた養育費が滞った場合も、電話やメールや内容証明郵便などで督促することは可能です。
しかし、公正証書がないと、督促しても相手が応じない場合に、裁判所の手続きを踏まえなければ強制執行の手続きが行えないため、手間・時間・費用などがかかります。

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養育費の公正証書を作成する際は弁護士にご相談ください

養育費は、子供が健やかに成長するための大切なお金です。
離婚後に、金銭面で子供に不自由をさせないためにも、しっかり養育費を取り決めて公正証書に残しておきましょう。
公正証書は自分でも作成できますが、決して容易なものではありませんので、作成に労力や手間を費やすことになります。また記載漏れがあれば、将来トラブルを招いてしまうおそれもあります。
養育費に関する公正証書の作成を検討している方や、お悩みのある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、それぞれの事情を伺い、困っている点、悩んでいる点について、的確にアドバイスをいたします。
また、公正証書の作成も弁護士に一任できますので、相手とのやりとり、公証人とのやりとりなど、手間のかかる作業が軽減できます。まずは弁護士法人ALGにお気軽にご相談ください。

「信号待ちで停車していたら、突然、後ろの車から追突された」
このように、全く自分に責任がない事故のことを、「もらい事故」といいます。
何も悪いことをしていないのだから、慰謝料は多くもらえるはずと思う方がいるかもしれませんが、実はもらい事故だからと言って、十分な慰謝料がもらえるわけではないのです。

それでも、相手方保険会社が提示する慰謝料額に安易に応じると、適正な慰謝料がもらえなくなる可能性があるため注意が必要です。
そこで、もらい事故の被害者の方が損をすることのないよう、本記事で、もらい事故の慰謝料や、被害者が注意すべき点について解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

もらい事故と通常の事故の違い

もらい事故とは、被害者に全く過失がない事故のことをいいます。
過失とは、交通事故を起こした責任のことです。
通常の事故では、加害者と被害者、どちらにも過失があるケースが多く、例えば、お互いに前方不注意で衝突したような場合は、それぞれの責任の重さを「7:3」のように、過失割合で示します。そして、自身の過失分だけ、慰謝料・賠償金が減額されることになります。これを過失相殺といいます。

一方、もらい事故では、被害者に過失がないため、「10:0」となり、過失相殺が適用されず、慰謝料を満額もらうことができます。
ただし、相手方保険会社から相場よりも低い慰謝料が提示されるおそれがあるため、油断できません。

もらい事故になりやすい例

もらい事故になりやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 赤信号で停車中に、後ろから追突された
  • 駐車場に適切に停めていた車がぶつけられた
  • 交差点に青信号で進入したところ、赤信号無視の相手と出合い頭にぶつかった
  • 対向車線を走る車がセンターラインを越えて、ぶつかってきた
  • 青信号で横断歩道を渡っていたら、車にはねられた

もらい事故の慰謝料相場はいくら?

慰謝料の金額はケガの症状や治療内容、通院日数・期間・頻度などにより決まるため、もらい事故特有の慰謝料の相場というものはありません。ただし、もらい事故の被害者には全く過失がないため、過失相殺による慰謝料の減額を受けず、基本的な慰謝料相場の満額を受けとることができます。
基本的な慰謝料相場については、以下のページで解説していますので、ご一読ください。

交通事故の慰謝料相場

もらい事故ならではの注意点

もらい事故の被害者は、慰謝料を満額受け取れるため、心配がないように見えますが、実は注意すべき点があります。特に、相手方保険会社との示談交渉のときには、保険会社と直接調整をしなければならないので、気をつけなければいけません。
どのような点に注意すべきか、以下にポイントを挙げますのでご確認ください。

もらい事故は保険会社が示談交渉を行えない

加害者と被害者、どちらにも過失がある事故であれば、お互いに加入する保険会社同士で示談交渉を行うのが通常です。
しかし、もらい事故では、被害者に過失がないため、被害者が加入する保険会社の示談代行サービスを利用できず、被害者自身で加害者側の保険会社、または加害者本人と交渉する必要があります。

なぜなら、加害者に賠償金を支払う必要がないのに、被害者側の保険会社が示談交渉を行うことは、弁護士法で禁止されているからです。
一方、加害者は示談代行サービスを使い、保険会社を代理人として、示談交渉を行うケースがほとんどです。つまり、慰謝料などの賠償金を受けとるために、もらい事故の被害者本人が、加害者側の保険会社と示談交渉を行う必要があります。

「もらい事故で過失ゼロだから慰謝料額に心配はない」というのは間違い

慰謝料を計算するための算定基準は、3種類あります。

①自賠責基準:法律で決められた最低補償の基準。基本的に、3つの基準の中で最も低額となる。

②任意保険基準:任意保険会社ごとに定める基準。基本的に、自賠責基準とほぼ同額か、多少高い程度となる。

③弁護士基準:裁判例をもとに作られた、弁護士や裁判所が使う基準。基本的に、最も高額となる。

相手方の保険会社が提示する慰謝料は、自賠責基準か任意保険基準で計算された、低額なものであることがほとんどです。しかし、被害者が本来受け取るべき慰謝料は、最も高額で、法にかなった弁護士基準の慰謝料であるといえます。

ただし、弁護士基準の慰謝料を請求できるのは一般的に弁護士だけです。被害者個人で請求しても、認めてもらえないことがほとんどでしょう。
弁護士基準を使うと、どのぐらい慰謝料がアップするのか、例をあげてみましょう。

弁護士法人ALGの事例ですが、弁護士が介入し、弁護士基準による増額交渉を行った結果、軽症のケースで、慰謝料を12万円から70万円、後遺症の残ったむちうちで、130万円から300万円に増額した事例があります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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もらい事故に見えても過失割合で揉めることがある

もらい事故に見えても、相手方保険会社が、被害者にも一定の過失があると主張してくることがあります。
過失割合でもめやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 正しい事故状況を示す証拠がない:ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、ブレーキ痕などの明確な証拠がない
  • 事故状況について当事者間の証言が食い違っている:ウィンカーを出したか、前方不注意があったか、速度違反があったか、停車していたかなど
  • 駐車場での事故:駐車場での事故にあてはめられる、過去の裁判例データが少ないため

もらい事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

もらい事故の示談交渉を被害者に有利に進めるには、交通事故を得意とする弁護士に依頼するのが望ましいといえます。相手方の保険会社は年間何十件も示談交渉を行う、いわば示談交渉のプロです。専門知識のない被害者が個人で保険会社と交渉を行うと、保険会社主導で示談が進み、適正な慰謝料が得られなくなるおそれがあります。
弁護士に依頼するメリットについて、以下でご紹介します。

弁護士に依頼すれば高額の慰謝料を受け取れる可能性がある

相手方の保険会社は、被害者本人と示談交渉をしている場合は、弁護士がいないため、弁護士基準の慰謝料を支払おうとは思っていません。そのため、「自賠責基準」か「任意保険基準」で計算した、低額な慰謝料を被害者に提示することがほとんどです。
しかし、弁護士が示談交渉に入れば、高額になることが多い「弁護士基準」による慰謝料を請求することができます。

保険会社は弁護士が登場すると、裁判を意識するようになります。裁判を起こされたら、保険会社としても弁護士を雇う、敗訴したら高額な慰謝料を支払う必要があるなど、余計な労力やコストがかかってしまいます。そのため、被害者が弁護士に依頼すると、裁判を起こさずとも、保険会社が弁護士基準に近い金額で慰謝料の支払いに応じるというケースが多々あります。

相談のタイミングが早いほどメリットが大きい

正しい金額の慰謝料をもらうには、できる限り早く、弁護士に依頼することが重要です。
慰謝料の金額はケガの重さだけでなく、通院期間や通院頻度、治療の内容などをもとに算定されるため、通院の仕方が重要となります。

例えば、ケガの治療中に弁護士に依頼すれば、適切な通院頻度や治療の受け方のアドバイス、後遺症が残った場合に備えて受ける検査のアドバイス等が受けられるため、慰謝料の減額を防ぎ、適正な慰謝料を受けとれる可能性が高まります。
また、示談交渉や保険関係の書類の準備など、面倒な手続きを弁護士に頼むことができるため、余計な手間がかからず、治療に専念できるというメリットもあります。

後遺障害等級認定の申請についてサポートを受けられる

治療を続けても完治せず、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請することが通例です。後遺障害等級認定を受けると、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益をもらえるようになるため、賠償金額が跳ね上がります。

弁護士であれば、この賠償金額を大きく左右する「後遺障害等級認定の申請」のトータルサポートをすることが可能です。例えば、認定を受けるために必要な検査・治療、「後遺障害診断書」に書くべき内容についてアドバイスすることが可能です。さらに、主治医が作成した後遺障害診断書の内容を確認し、不備や誤りがあれば、主治医に追加記載や修正を求めるなどの対応をとることもできます。

なお、後遺障害等級が非該当となってしまった場合でも、弁護士に異議申立てを依頼すれば、求める等級認定を受けられる可能性があります。

弁護士費用特約があれば弁護士費用を自己負担なしで依頼できる

弁護士費用特約とは、加害者との示談交渉を弁護士に依頼するとき、被害者が負担することになる弁護士費用を、保険会社が負担してくれる特約です。

自動車保険などに主に付けられる特約で、一般的には、着手金や報酬金などの弁護士費用は300万円まで、法律相談料は10万円まで、保険会社が負担してくれます。
重いケガや死亡事故でない限り、一般的に300万円の上限額超えることがないため、この特約を使えば、事故の被害者は、実質上0円で示談交渉を弁護士に依頼できることになります。
自分の自動車保険だけでなく、家族の自動車保険、火災保険、医療保険などにも特約が付いている可能性があるため、まずは調査することをおすすめします。

もらい事故の慰謝料に関するQ&A

もらい事故に遭いました。怪我なしで物損のみですが慰謝料は請求できますか?

ケガがなく物損のみの事故では、基本的に、慰謝料を請求することはできません。
慰謝料は、事故によって受けた精神的苦痛に対する補償ですが、物損事故では、壊れた車や物の補償を受ければ、同時に精神的苦痛もなくなるため、別途で慰謝料を支払う必要はないと考えられているからです。

そのため、物損事故で請求できるものは、車の修理費や買替費用、代車費用、事故で破損した物の修理費などに限定されます。
ただし、家族の一員であったペットが亡くなってしまった、車が突っ込んだことで自宅が倒壊してしまったようなケースでは、精神的苦痛が特別に大きいと判断され、例外的に慰謝料が認められる場合があります。

物損事故についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

物損事故とは

もらい事故の慰謝料と休業損害は別々に請求できますか?

慰謝料と休業損害は、どちらも損害賠償金の一部であるため、別々に請求することが可能です。
休業損害とは、事故によるケガの治療のため、仕事を休んだことで減った収入をいいます。
被害者の収入や休業日数をもとに金額が決められるのが基本です。収入がない専業主婦(主夫)であっても、家事労働には経済的価値があると考えられているため、請求できる可能性があります。
ただし、休業損害を請求するには、仕事を休んだことと、交通事故との因果関係を証明する必要があり、示談交渉でも争いになりやすいため注意が必要です。例えば、保険会社が「もうけがは治っているから、この日は仕事を休む必要はなかった」と主張し、休業日数の一部を対象外としてしまうおそれもあります。慰謝料、休業損害いずれも十分な賠償を受けたいのであれば、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。

休業損害の詳細については、以下の記事をご覧ください。

交通事故の休業損害とは

もらい事故に遭ったら弁護士にご相談ください

「もらい事故だから、慰謝料のことで心配する必要はない」という考えは誤解です。
むしろ、「もらい事故だからこそ、慰謝料が低額におさえられる可能性がある」と考えるべきでしょう。
それは、前述のとおり、被害者に過失がない場合は、被害者自身で、保険会社と示談交渉を行う必要があるからです。

保険会社の担当者は、これまで数多くの交渉に関わっているため、十分な知識と経験を持っています。
そのため、専門知識のない被害者が、個人で、保険会社と対等に交渉を行うのは困難です。
この点、交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、保険会社の担当者と対等な立場で対応してくれます。また、弁護士基準での増額交渉も行えるため、慰謝料の増額も期待できます。
弁護士法人ALGでは無料相談も受けつけておりますので、もらい事故でお悩みの方は、ぜひご相談下さい。

相続放棄をした場合、相続人は初めから相続人ではなかったことになりますので、被相続人の資産も負債も証明しないのが原則です。しかし、生命保険金については、相続放棄をしたとしても受け取ることは可能です。ただし、被相続人の生命保険の契約内容によっては、相続放棄によって受け取ることができなくなるケースもあり、保険の契約内容をよく確認する必要があります。
また、相続放棄をしたとしても、生命保険金を受領するのであれば、相続税などの税金の負担が生じる場合もありますので注意が必要です。

相続放棄しても生命保険(死亡保険金)は受け取れる?

相続放棄とは、相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を受け継がずに放棄する手続きです。そのため、相続放棄をした場合、相続人は被相続人が有していた権利を主張することはできなくなるのが原則です。

もっとも、生命保険金は、相続によって被相続人の遺産を受け継ぐことではなく、保険契約に基づき受取人固有の権利として受け取ることであり、相続とは直接的な関係がないことから、相続放棄による影響を受けません。
つまり、生命保険の受取人が誰に指定されているかによって、相続放棄をした後に生命保険金を受け取ることができるかどうかが変わってくることになります。

相続放棄とは

相続放棄しても生命保険が受け取れるケース

民法上では生命保険は相続財産には含まれず、保険金受取人の固有の財産と扱われることになりますので、相続放棄したとしても、保険金受取人として固有の権利に影響が生じることはありません。
そのため、生命保険の受取人に相続人が指定されている必要がありますが、受取人に指定されていれば、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができるということになります。
また、受取人として指定されていなくても、保険契約の約款上、「法定相続人を受取人とする」と定めている場合も同様です。法定相続人が複数いる場合には、それぞれの相続人の法定相続分に従って、それぞれの相続人が生命保険金に対して固有の権利を有することになります。

相続放棄すると生命保険が受け取れないケース

相続放棄をしても生命保険金を受け取るためには、保険金受取人に指定されている必要がありますので、受取人が被相続人になっている場合には、相続人は、「被相続人が生命保険金を受け取る権利」を相続するにとどまり、「受取人固有の権利」を主張することができません。
そのため、相続人が受取人に指定されていない場合、相続放棄をしてしまえば、相続財産に対する権利を放棄することになるわけですので、生命保険金を受け取ることはできません。
また、被相続人が契約者となっている生命保険の解約返戻金が存在する場合にも、解約返戻金は相続財産の一部として扱われることになりますので、相続放棄をすると受け取ることができないという結論になります。

生命保険を受け取ってしまったら相続放棄できない?

相続人が受取人に指定されている生命保険を受け取ったとしても、受取人固有の権利を主張したに過ぎませんので、相続放棄をすることはできます。
他方で、被相続人が受取人に指定されている生命保険は、被相続人に相続財産に含まれるものですので、相続人が子の生命保険金を受け取った場合には相続について単純承認をしたとみなされることになり、相続放棄ができなくなるのが原則です。
そのため、被相続人が受取人に指定されている生命保険金を受領してしまった後に、被相続人名義の多額の負債が発覚した場合には、相続放棄をするためには、保険金受領時点で債務の存在を知らなかったことなどの立証をする必要があります。

受け取っても相続放棄に影響しない財産について

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相続放棄後の生命保険にも相続税がかかる

相続開始時、民法上は、被相続人に帰属していたすべての権利義務が相続財産となる一方、相続税法上は、民法上の相続財産に加えて、被相続人が死亡したことにより発生し、相続人が受け取った相続財産に類似した財産(=みなし相続財産)も含めて相続財産と扱われます。
生命保険金は受取人固有の権利ですので、民法上の相続財産には該当しませんが、被相続人の死亡によって発生する権利であって、相続税法上のみなし相続財産には該当します。
そのため、相続放棄をした場合も、保険金受取人として生命保険金を受領した相続人に対しては、相続税法上のみなし相続財産を受領したものとして相続税が課されます。

相続放棄した本人は非課税枠が使えない

生命保険金には、遺族の生活の保障という目的を持つことから、相続税法上、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。遺族の生活保障の実現に趣旨があるわけですので、非課税枠は「相続人」が生命保険金を受け取る場合に限って利用することができます。
相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は初めから「相続人」ではなかったことになり、保険金受取人固有の立場で生命保険金を受領しますので、「相続人」として生命保険金を受領することにならないことから、非課税額を利用することはできません。

また、相続放棄をした相続人も相続放棄をしていない相続人の非課税金額を計算する際の法定相続人の人数には含めることができます。
例えば、法定相続人が配偶者と子の2人で双方が生命保険金の受取人に指定されていた場合、子のみが相続放棄をしたとすると、子は受取人として生命保険金を受領できるものの、非課税枠の適用は受けられません。他方で、配偶者には「500万円×2人=1000万円」まで非課税枠の適用があり、保険金が4000万円だとすると、相続税の対象となるのは3000万円までという計算になります。

相続放棄しても基礎控除は適用される

相続税には、生命保険金に対する非課税枠とは別に基礎控除の精度があります。基礎控除の枠は、「3000万+600万円×法定相続人の数」となります。基礎控除には相続放棄をした相続人も含めて法定相続人に数を計算することができます。

そして、相続放棄をした場合でも、基礎控除の適用を受けることはできますので、受領した生命保険金が基礎控除額の範囲内であれば、相続税はかからず、相続税の申告も不要です。
例えば、法定相続人が配偶者と子の2人で双方が生命保険金の受取人に指定されていた場合、配偶者と子ともに相続放棄をしたとすると、どちらも生命保険金の非課税枠の適用は受けられません。他方で、「3600万円+600万円×2人=4800万円」の基礎控除の適用がありますので、保険金が8000万円だとすると、配偶者と子のそれぞれの取り分は4000万円でなり、基礎控除の枠内に収まることになる結果、相続税がかからないことになります。

贈与税や所得税が課税されるケースも

被相続人を被保険者とする生命保険の場合でも、契約者と受取人がどうなっているかによっては、相続税ではなく、贈与税や所得税が課税されることになります。
まず、被保険者は被相続人、契約者が相続人以外の第三者、受取人が相続人という場合、生命保険金は「生きている別の人が相続放棄した人への贈与をしたもの」とみなすことになり、相続放棄をしたうえで生命保険金を受領した相続人に贈与税がかかることになります。
また、被保険者が被相続人、契約者が相続人、受取人が契約者と同一の相続人という場合、生命保険金は一時所得か雑所得して計上されることになり、相続放棄をしたうえで生命保険金を受領した相続人に所得税がかかることになります。

相続放棄で死亡退職金・遺族年金の受け取りはどうなる?

生命保険金以外にも、相続放棄をしたとしても、受け取ることができる財産はあります。例えば、香典や御霊前は、死者への弔意、遺族への慰めなどの目的があり、相続財産には含まれないことから、相続放棄をしても受け取ることができます。それでは、死亡退職金や遺族年金は相続放棄をしたとしても、相続人が受け取ることができるのかどうか、以下に解説していきます。

死亡退職金

死亡退職金は、本来被相続人に支給されるはずであった退職金を、被相続人の家族などが受け取ることができる制度です。
死亡退職金の受取人が法律や会社の退職金規定等の内規で定められている場合、生命保険金と同じような扱いとなり、相続財産に含まれないことに結果、死亡退職金の受取人とされた相続人は相続放棄をしたとしても、死亡退職金を受け取ることができます。
他方で、死亡退職金の受取人が被相続人本人になってる場合や死亡退職金の受取人が指定されてない場合には、死亡退職金は相続財産の一つとして扱われますので、相続放棄をすると受け取ることができなくなります。
なお、受取人について明確な規定がないとしても、死亡退職金に関する支給規定が、専ら被相続人の収入に依拠して生活していた遺族への保障を目的としている場合には、死亡退職金は相続財産に含まれないと判断されることもあります。

遺族年金

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者であった方が死亡したときに遺族が受けることができる年金です。遺族年金は、被相続人に生活を支えてもらっていた遺族に対する補償を趣旨とするものであることから、相続財産には含まれません。
そのため、相続放棄をした相続人も遺族年金を受け取ることができます。

相続放棄と生命保険に関する判例

平成10年12月22日福岡高裁宮崎支部決定では、生命保険金の請求について、「本件保険金請求権は、保険契約の効力が発生した被相続人死亡と同時に、相続人たるべき者である抗告人らの固有財産となり、被保険者である被相続人の相続財産より離脱しているものと解すべきである」としたうえで、「抗告人らのした熟慮期間中の本件保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は、抗告人らの固有財産に属する権利行使をして、その保険金を受領したものに過ぎず、被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから、これら抗告人らの行為が民法921条1号本文に該当しないことは明らかである。」と判示しており、生命保険金の受領した行為が単純承認には当たらず、生命保険金を受領した相続人も相続放棄をすることができるという判断をしています。

よくある質問

受取人指定なしの生命保険の場合、相続順位はどうなりますか?

受取人の指定がない生命保険の場合、法定の相続順位によって受取人が決まることになります。
相続順位は以下の表のとおり、子→親→兄弟姉妹という順位になっており、被相続人に配偶者がいる場合には、該当する順位の相続人と配偶者が同順位に立つことになります。

第1順位 子(死亡している場合は孫)
第2順位 親(死亡している場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)

他方で、被相続人が法的に有効な遺言書を残して死亡した場合には遺言書の記載内容に従って生命保険金の受取人が指定されることになります。

相続放棄しても入院給付金を受け取ることはできますか?

入院給付金の受取人を配偶者や子にしている場合、。受取人として指定された配偶者や子は、相続人としてではなく受取人固有の権利として入院給付金を受領することになります。
そのため、入院給付金が相続財産に含まれないことになりますので、相続人が相続放棄をしたとしても、入院給付金は受け取ることが可能です。

被相続人が借金を残していた場合、受け取った生命保険は差し押さえの対象になりますか?

生命保険金は受取人固有の権利として受領するものであって、相続財産に含まれるものではありませんので、被相続人が借金を残していたとしても、債権者は受取人が受領済みの生命保険金を差し押さえの対象とすることはできません。
他方で、解約返戻金のある生命保険金については、被相続人の死亡前に債権者が解約返戻金請求権を差し押さえている場合があり、この場合、債権者は差し押さえた解約返戻金請求権の取り立てをするために保険会社に解約権の行使をすることができます。

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相続放棄時の生命保険について不明点があれば、弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄をした場合、原則としては、被相続人の資産も負債も引き継ぐことはありません。
もっとも、生命保険金は受取人固有の権利として扱われるため、例外的に相続放棄をしても受け取ることができます。

ただし、保険契約の被保険者、契約者、受取人が誰であるかによっては相続放棄と生命保険金の受け取りを両立できない場合があるうえ、税金の取り扱いも変わってきます。
生命保険金は多くの場合、相当高額であり、生命保険金を適切に取り扱うことが相続手続きにおいては非常に重要となってきます。本来受け取ることができる権利を失ってしまったり、受け取ることができると誤解したばかりに相続放棄ができなくなったりしてしまうリスクを避ける必要もあります。
相続放棄は3カ月という短い熟慮期間内に適切な判断を求められる点もありますので、生命保険金がある相続に関して、お早めに相続事件の取り扱いの多い弁護士にご相談ください。

土地などの不動産を相続する場合、相続後に固定資産税の支払いや不動産の管理などをしなければなりません。遺産を相続するつもりがなく、こうした負担も負いたくない場合には、相続放棄をする必要があります。
今回は、遺産に土地などの不動産がある場合に、相続放棄しないことのリスクや、相続放棄をする際の注意点をご紹介していきます。

土地や建物などの不動産は相続放棄できるのか?

遺産の中に、土地・建物・空き家などの不動産があり、遺産を相続するメリットよりもデメリットの方が大きいと判断した場合には、相続放棄をすることによって、不動産の相続を免れることができます。
相続放棄を行うと、相続権は次順位の法定相続人に移ります。法定相続人とは、民法で相続権が認められた相続人のことで、相続順位も法律で決まっています(民法886条~895条参照)。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったとみなされるので、固定資産税を支払う必要がなくなります。また、基本的には、相続人として不動産を管理する責任からも免れることができます。

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相続放棄せずに土地を所有し続けるリスクとは?

相続放棄をせずに土地を所有し続けた場合のリスクは、以下のようなものがあります。

固定資産税を支払わなければならない

相続放棄をしなかった場合は、遺産を相続したことになり、相続財産だった土地の所有者になります。土地の所有者になれば、その土地にかかる固定資産税を毎年支払わなければなりません。土地は資産価値のある財産であり、所有者に納税義務があるからです。
不要な土地や使っていない土地でも、所有者になれば固定資産税を払い続けなければなりません。固定資産税は、所有者である限り毎年払わなければならないので、その負担は小さいとは言えません。

空き家問題と固定資産税について

近年、所有者の分からない、管理のされていない空き家が多数発生し、社会問題になっています。そのため、平成26年に「空家等対策特別措置法」が成立しました。この法律により、相続した空き家を放置し続けると、「特定空家」に指定されてしまいます。そうなると、行政機関から改善のための指導や勧告がされ、改善がされない場合は、過料の制裁や建物解体の行政代執行などがされる可能性があります。また、「特定空家」に指定されると、税制上の優遇措置を受けることができなくなり、最大で通常の6倍の固定資産税を払わなければなりません。

共有名義にするとトラブルに発展することも

相続人が複数いる場合、不動産を相続人たちの共有名義とすることがあります。共有にすれば負担も分担できるのではないかとも考えられますが、固定資産税をどのように負担するのかという問題や、誰が実際に不動産を管理するのか、管理のために発生した経費をどう清算するのかといった点で、トラブルが発生するリスクがあります。
また、不動産を売却する際には、共有者全員の同意が必要です。そのため、共有にすることで、将来不動産を簡単に処分できなくなってしまうというリスクも抱えることになります。

土地を相続放棄する際の注意点

これらの負担を避けるために、土地の相続を放棄するという方法があります。しかし、土地の相続放棄には、いくつか注意しなければならないポイントがあります。

土地だけ相続放棄することはできない

必要がないからといって、他の財産を相続して、土地だけを相続放棄することはできません。相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされるので、その他の財産に関する相続権もなくなるからです。
そのため、土地の相続放棄をする場合は、相続財産の中に預貯金などの本来プラスになる財産があったとしても、それらを相続することはできなくなってしまいます。

相続放棄しても土地の管理義務は残る

また、相続放棄したからといって、土地の管理を一切しなくても良くなるわけではありません。
相続放棄によって所有権を放棄しても、他の相続人又は清算人に引き渡すまでの間、自己の財産に対するものと同一の注意をもって、その財産を管理しなければなりません(民法940条1項)。例えば、近隣住民が土地や建物の損壊や崩落によって被害を受けないように、土地建物を管理する責任は残り続けるということです。

土地の名義変更を行うと相続放棄できなくなる

相続放棄をする前に、土地の名義変更などの手続を行わないように注意しなければなりません。
相続放棄の判断に迷っている間に、土地の名義変更などの土地の処分行為を行ってしまうと、相続をしたものとみなされます。これを、単純承認といいます(民法921条1号)。
単純承認をしたと認められると、その後相続放棄をする意思があったとしても、相続放棄ができなくなってしまうので注意してください。

相続放棄には3ヶ月の期限がある

相続放棄をするためには、自分が相続人になったのを知った時から、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをしなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、相続を承認したとみなされて、相続放棄ができなくなってしまいます。
ただし、3か月の間に遺産の調査が終わらず、相続放棄の判断をすることが難しい場合には、裁判所にこの期間を延長してもらうように申請することができます。延長期間は、通常1~3か月程度認められるので、この間に追加の調査を行う必要があります。

相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄した土地はどうなるのか?

法定相続人が全員相続放棄をした場合は、相続されなかった土地は国庫、つまり国に帰属することになっています。しかし、全員が相続放棄をしたからといって、すぐに国庫に帰属するわけではありません。検察官や利害関係人らの申立てによって、相続財産を管理する「相続財産清算人」が選任され、債務の清算を行った後に、残った土地を国庫に帰属させます。相続財産清算人の選任を申し立てるためには、申立ての手続や、費用の負担をしなければいけないので、簡単に利用できる制度ではありません。
こうした問題を踏まえて、令和5年4月27日から、「相続土地国庫帰属法」が施行されます。一定の条件を満たした場合には、相続した土地の所有権を放棄して、国庫に帰属させることができます。

土地を相続放棄する手続きの流れ

土地の相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続放棄の申立てを行います。申立てを行うには、申述書に加えて、戸籍謄本等の必要書類を添付する必要がありますが、戸籍謄本の取寄せには時間がかかるので注意してください。
その後、家庭裁判所から届いた質問状などの書類に回答し、返送します。家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届いたら、相続放棄の手続は完了です。

相続放棄の手続き方法と注意点

相続放棄以外で土地を手放す方法はある?

土地以外に、預貯金などのプラスの財産が多い場合等、相続放棄をしたくないケースもあります。そのような場合には、遺産を相続したうえで、土地だけを手放すという方法もあります。
もっとも、一旦遺産を相続するため、土地の名義変更が必要になることにはご注意ください。

売却する

まず、土地の処分方法として、売却という方法が一般的です。ただし、土地がある場所が田舎であったり、古い家屋が立っていたりすると、なかなか買い手がつかないということもあります。
こうした場合には、価格を下げて売りに出したり、費用はかかりますが建物を壊して更地にしたりしたうえで買い手を探します。また、自力で買い手を見つけることが困難な場合には、不動産会社に仲介を依頼したり、空き家バンクに登録したりすることで、専門家のネットワークを介して広く買い手を募ることになります。

寄付する

次に、土地を寄付するという方法があります。寄付の相手としては、①自治体、②個人、③法人が候補になります。
注意しなければならないのは、個人や法人に寄付する場合には、土地を贈与したとみなされて、寄付をした者に贈与税が課されるという点です。

土地活用を行う

自分では使い道のない土地でも、賃貸などの土地活用を行うことも考えられます。
例えば、土地の上に建物を建築して賃貸に出したり、トランクルームを設置して貸し出したりすることで、継続的に収入を得ることができます。
そのため、土地を処分してしまう前に、立地調査をして、これらのような使い道がないか検討してみるのも良いでしょう。

土地の相続放棄に関するQ&A

被相続人から生前贈与された土地を相続放棄できますか?

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に、特定の財産を贈与することを指します。
生前贈与は、文字通り、被相続人が生前に行った贈与行為なので、相続とは直接関係がありません。そのため、生前贈与を受けた場合でも、相続放棄することはできます。
なお、生前贈与に対しては贈与税がかかるため、贈与を受けた側は申告が必要となります。

土地の共有持分のみを相続放棄することは可能ですか?

複数人で土地を共有するとき、自分が持つ土地の割合を、共有持分といいます。相続の際に、自分の共有持分だけを相続放棄して、他の遺産を相続することはできません。なぜなら、相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされるため、土地以外の遺産についても相続人としての資格がなくなってしまうからです。
もし、土地の共有持分だけを相続放棄して、その他の預貯金だけを相続したいという事情があるなら、他の相続人とそのような遺産分割協議をするという方法もあります。

農地を相続放棄した場合、管理義務はどうなりますか?

農地を相続放棄した場合、所有権を放棄したからといって、土地に関する負担を一切免れるわけではありません。
相続放棄をした場合でも、次の相続人等が農地を管理できるようになるまで、自分の土地に対する注意と同一の注意をもって、農地を管理し続けなければなりません(民法940条1項)。

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土地を相続放棄するかどうかで迷ったら、一度弁護士にご相談ください。

相続放棄をすれば、固定資産税などを負担する義務はなくなりますが、土地の管理義務は一定期間残ります。また、相続放棄をすることのメリットやデメリットは、十分に遺産を調査しなければ分からないうえに、3か月という短い間に判断しなければなりません。
弁護士に任せていただければ、遺産の調査や検討期間の延長などの手続を全て代わりに行ったうえで、相続放棄すべきか否かのご提案をすることができます。相続放棄は一度受理されてしまうと撤回ができないので、ご自身で対応して問題が発生する前に、まずは弁護士にご相談ください。

離婚をするにあたりまずは別居をしたいという方は多いでしょう。もっとも、子どもがいる場合には連れて出ていくべきか悩むかと思います。離婚後子どもの親権は獲得したいといった場合、別居の際に子どもを連れて家を出た方が良いのか、子どもを置いて行くべきなのか、有利に働くか不利に働くかわからない…以下では、親権獲得のためにどのような判断をするのが適切かについて、わかりやすく解説していきます。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

離婚後に親権が欲しければ、子どもを連れて別居を始めた方がいいとよく言われます。この話は、いつどんな場合にもあてはまるとは限りません。以下、わかりやすく解説していきます。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

子ども連れて家を出たとしても、直ちに有利になるわけではありません。もっとも、子どもを看ている親のもとで問題なく生活ができていれば、その状態を維持した方がよいとの心証を持たれます。これを、現状維持の原則といいます。よって、子どもが監護親の元で問題なく生活を続け、その期間が長期にわたる場合、結果的に親権獲得には有利になります。

子供を勝手に連れて別居した場合

別居をする際、子どもを連れ去ることにはリスクが伴います。必ずしも連れ去れば有利になるとは限らず、違法な連れ去りとして不利になることもあります。
子どもを連れて出たことが違法にあたるかは、別居に至る経緯や理由により判断されます。違法な場合には、法的な手段によって子どもを取り戻されてしまうこともあります。

監護者指定について

別居中から離婚までの間、父と母どちらが子どもの監護親として適格であるかについては、審判を申し立てることにより、家庭裁判所に判断してもらうことができます。
監護権とは、子供と生活を共にし、その子供の世話や教育を行う権利・義務をいい、親権の一部にあたります。監護権者は子どもと同居しながら育てることができ、親権者と同じであるケースがほとんどです。
子どもを連れ去られた場合、できる限り早く監護者指定審判の申立てをしましょう。

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別居中の面会交流について

別居期間中、子どもの同居親に対し、面会交流調停を申し立てることもできます。非同居親による子どもへの暴力のおそれ等の事情がない限り、抽象的にですが、面会交流はほとんど認められます。
単に会わせたくないという感情的な理由では、子どもの精神衛生に配慮がなく、監護親として不適格とされる可能性もあります。子どもとの面会交流には寛容であることが望ましいです。

子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

別居を開始するとしても、これまで専業主婦やパート等をしていた場合、固定収入がなく新居を賃借できないケースも多いかと思います。そこで、実家に行くことで、賃料の負担をクリアできるため新しい仕事も探しやすくなります。
また、自分以外に両親等がいてくれるため、子どもの世話を手伝ってもらい養育のサポートを得られたりするので、安定した環境で子育てができ、親権獲得に有利になることも多いです。

住民票の異動

別居を機に引越しをした場合、住民票は移すようにしましょう。
法律上、決められていることはもちろんですが、子どもの転校のために必要になります。また、新たな転居先で子どもを保育園に通わせる場合、保育園と同じ市内の住民であることが要件であれば、やはり住民票の異動が必要です。
もっとも、相手方のDVが原因で別居をするときは、新居を知られないようDV等支援措置を利用しましょう。配偶者であっても、住民票の閲覧を制限することができます。

親権者となるための条件

離婚後、子どもの親権者になるためには、子どもの財産や監護についての観点から、子どもにとって利益になることが必要です。特に以下の点を重視して、親権者として適格かを判断されます。

①従前の監護実績があること
②今後の子の養育方針及び養育環境が整っていること
③住居や収入面等で子の生活に支障のないこと
④配偶者の他方に監護養育させることが適当でないこと
⑤子が一方の親との生活を望む意向を示していること

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

母親が別居をするにあたり、子どもを自宅に置いていった場合、父親の下で子どもが十分に生活できる実績を積むことができれば、親権の獲得にとって父親に有利になることもあります。
もっとも、父親のモラハラやDVがひどく、逃げるようにして母親が家を出たといった場合、子どもの監護養育において父親が適格であるとはいえないので、有利にはなりません。
また、自宅に残っている子どもに対し、きちんと身の回りの世話をできなければ、かえって監護能力が低いと判断されることもあります。親権獲得のためには、適切な生活環境を子どもに与え信頼が得られるよう、日々努力することが1番でしょう。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子どもが一定の年齢に達していると、親権者を決めるにあたり、子どもの意向が強く考慮されます。
その年齢として、15歳が基準とされていますが、小学校高学年位になると意向を尊重される可能性が高くなる傾向にあります。
もっとも、これは子ども自身で考えることができるようになっていることが前提です。親の方から自分を選ぶように子どもに働きかけたりすることは不適切な行動であると捉えられます。このような場合には、かえって親権獲得に不利になることもあるので、子どもにプレッシャーをかけるような言動はしないようにしましょう。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

母親は主として子どもの監護を行ってきているケースが多いため、かつては、子どもを連れて別居を開始すれば、親権獲得に圧倒的に有利とされていました。
現在は、必ずしもそうとはいえません。夫のDVやモラハラが原因で子どもを連れ逃げるように家を出たケースは別ですが、夫に何も告げずに子どもを連れて家を出ていくことには否定的な見解も多く見られます。
不仲であっても夫婦が婚姻関係にある以上、子どもは父母の共同親権の下にあります。そのため、夫の意向を無視することは必ずしも有利になりません。また、連れ去った方法も倫理に反したりすれば、監護の適性に疑いがかかるので、できる限り相手方に告げて別居をするのが望ましいといえます。

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別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

離婚を決意しても、離婚後に親権を獲得できず子どもと離れ離れになるのではないかと不安になる方も少なくないでしょう。
親権獲得のためには、家庭裁判所がどのような考え方をしているか把握したうえで、準備をすることが大切です。無用に感情的に動くことのないよう、法律の専門家である弁護士にまずは相談することをおすすめします。今やるべき事、やってはいけない事を丁寧にアドバイスし、不安を軽減しながら前に進むお手伝いをさせていただきます。

夫(妻)の浮気によって、精神的苦痛を受けたならば、本人または浮気相手に対して、慰謝料を請求できる可能性があります。
また、過去の浮気についても慰謝料を請求することができますが、時効が成立していると、慰謝料請求ができなくなる場合があるため、注意が必要です。
本記事では、浮気の慰謝料請求と時効の仕組み、時効を止める方法などについて解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

浮気の慰謝料請求についての詳細は、以下のページもあわせてご覧ください。

浮気による慰謝料について

浮気(不倫)の慰謝料請求には時効がある!

浮気(不倫)の慰謝料請求には法律上の時効があり、「被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」または「不法行為の時から20年間行使しないとき」には、時効によって、慰謝料請求権が消滅します(民法724条)。
つまり、「浮気の事実および浮気相手の存在を知った日から3年」経過すると、時効が成立し、慰謝料請求ができなくなります。

また、「配偶者が浮気をした日から20年」経過した場合も、時効が成立し、慰謝料の請求ができなくなってしまいます。
浮気の慰謝料請求には一定の期限があるため、浮気に気がついた場合は、なるべく早めに慰謝料請求に向けた行動を開始するのが望ましいでしょう。

浮気相手への慰謝料請求の時効は?

浮気(不倫)相手にも、浮気によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが可能です。
ただし、浮気相手への慰謝料請求権は、「浮気の事実および浮気相手の存在を知った日から3年」経過すると、時効により消滅します。

この「浮気相手の存在を知った日」とは、浮気相手の氏名や住所などを特定した日を意味します。
また、浮気相手の氏名や住所などが特定できなくても、「浮気が始まった日から20年」経過すると、時効により、慰謝料請求権が消滅します。
したがって、浮気相手に慰謝料を請求するためには、時効に注意するとともに、浮気の証拠だけでなく、浮気相手の素性も把握しておく必要があるといえます。

慰謝料請求の時効はいつから起算する?

浮気(不倫)による慰謝料は、「不貞行為に対する慰謝料」と「離婚に対する慰謝料」と2種類に分けられ、以下のとおり、それぞれ時効の起算日が異なるため注意が必要です。

①不貞行為に対する慰謝料 不貞行為および浮気相手の存在を知った日から3年で時効成立
②離婚に対する慰謝料 夫婦が離婚した日から3年で時効成立

例えば、配偶者の不貞が原因で離婚した場合、不貞が行われてから5年ほど経過していたとしても、離婚から3年以内であれば、配偶者に対して、離婚に対する慰謝料を請求することが可能ということになります。

なお、浮気相手に対して、不貞行為に対する慰謝料の請求は可能ですが、離婚に対する慰謝料の請求は基本的に認められていないため、注意が必要です。離婚に対する慰謝料は、配偶者の様々な行為により離婚せざるを得なくなったことを不法行為と捉えているため、行為主体は配偶者であり、浮気相手ではないためです。

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浮気の慰謝料請求の時効を止める5つの方法

さまざまな事情により、気がついたら慰謝料請求の時効が迫っていたというケースも少なくないでしょう。このような場合、どのようにして慰謝料請求の時効を止めればよいのでしょうか?
浮気の慰謝料請求の時効を止める制度として、「時効の更新」と「時効の完成猶予」があります。
それぞれの内容は以下のとおりです。

  • 時効の更新
    一定の更新事由(確定判決や債務の承認など)が生じた場合に、時効の進行がリセットされ、また新たにゼロから時効が進行する制度
  • 時効の完成猶予
    時効の進行は止まらないものの、一定の完成猶予事由(催告など)が生じた場合には、一定期間、時効が完成しなくなる制度

これらの具体的な方法について、以下で解説していきます。

①裁判で請求する

裁判所に対して慰謝料請求の訴訟を提起すると(裁判を起こすと)、裁判が終わるまでの間、時効の完成が猶予されます(民法147条1項1号)。
その後、判決が出て、浮気による慰謝料請求権が確定されると、時効が更新され(同法147条2項)、さらに時効期間が10年延長されることになります(同法169条1項)。
つまり、判決が出るまでの間に時効をむかえても問題はなく、裁判が終わるまでは時効は成立しません。
また、判決が出た後に、相手が慰謝料を支払わなかったとしても、10年以内であれば、差押えなどの措置をとることが可能です。
ただし、裁判所によって裁判が却下されたり、ご自身で裁判を途中で取り下げたりした場合は、その時から6ヶ月間時効の完成は猶予されますが、その後の時効の更新・延長は行われないため、注意が必要です。

②内容証明郵便を送付する

催告(権利者が義務者に対して義務の履行を求める意思の通知)を行うと、6ヶ月間時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
催告の方法として最もよく使われているのが内容証明郵便です。
例えば、不倫相手に内容証明郵便を送り、慰謝料請求を行うと、その時点から6ヶ月間は、時効が完成しないことになります。内容証明郵便とは、書面を送った日時や内容、当事者等について日本郵便が証明してくれる文書のことです。相手に慰謝料請求した事実を証拠として残すことができ、また、相手に心理的プレッシャーをかけられる等のメリットがあります。
ただし、この方法は1回だけしか行えず、一時的な対処法となります。内容証明を送っても、相手が支払ってくれなければ、6ヶ月間の猶予はすぐ終了してしまいます。
そのため、内容証明で時効完成猶予をする方法は、すぐに裁判を起こせない場合の時間稼ぎとして利用するのが望ましいでしょう。

③債務を承認させる

債務の承認とは、債務者本人が債務の存在を認めることです。
例えば、不倫相手や配偶者が「不倫による慰謝料を支払います」などと発言すれば、金額は未定であっても、債務を承認したことになります。
債務の承認があったときは、時効が更新されるため、時効の進行がリセットされ、また新たにゼロから時効が進行することになります(民法152条1項)。
なお、不倫相手や配偶者が慰謝料の一部を支払ったり、不貞慰謝料の支払義務自体は認めたうえで慰謝料の減額を求めたり、慰謝料の支払期限の延長を求めたりしたような場合も、「債務を承認した」と判断されます。
債務の承認は口頭でも成立しますが、口約束の場合は、後で言った・言わないの問題が生じるおそれがあります。そのため、慰謝料を支払うこと、不倫に対する慰謝料の支払い義務を承諾することなどを明記し、署名・捺印した示談書を作成しておくのが望ましいでしょう。また、作成した示談書を公正証書にしておくと、より安心です。

④協議を行う旨の合意をする

相手と話し合い、慰謝料の支払いについて協議を行う旨の合意が書面(電磁的記録も含む)により行われた場合は、以下のいずれか早い時までの間は、時効の完成が猶予されます(民法151条1項)。

①その合意があった時から1年を経過した時
②その合意において定められた協議期間(1年未満に限る)を経過した時
③どちらかが協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をしたときは、その通知の時から6ヶ月後を経過した時

つまり、「慰謝料の支払いについて話し合いを続けます」という約束を書面の形で残せば、時効の完成が一定期間猶予されることになります。

⑤仮処分・仮差押え・差押えを行う

仮処分 金銭債権以外の債権を保全するために、債務者の財産の処分を禁止する制度
仮差押え 金銭債権を保全するために、債務者の財産の処分を禁止する制度
差押え 債務者が必要な支払いをしない場合、債務者の財産の処分を禁止する手続き

裁判所より、仮処分・仮差押えの申立てが認められた場合は、仮処分・仮差押えが完了した日から6ヶ月間については時効の完成が猶予されます(民法149条)。

また、確定判決や公正証書などをもとに、差押え等の強制執行を行った場合、その手続きが終了するまでの間は、時効の完成が猶予され(同法148条1項)、差押えが終了した後、さらに時効が更新されることになります(同条2項)。
ただし、強制執行を取り下げた場合は、手続き終了後6ヶ月間は時効の完成が猶予されますが、時効更新の効果は生じずに、時効期間についてはリセットはされません。

民法改正による慰謝料請求権の時効への影響

2020年4月に民法が改正され、慰謝料請求権の時効についても変更されました。
変更点は主に以下の2点となります。

①時効中断の再構成
新民法は、時効の進行を止める制度の内容・効果をより明確にするため、旧民法の「時効中断」「時効停止」という概念を改め、「時効の更新」「時効の完成猶予」という概念に整理しました。

②除斥期間の廃止
不倫など不法行為があった日から20年間経過すると、慰謝料請求権等が消滅する規定(民法724条2号)が、「除斥期間」から「消滅時効」に変更されました。
旧民法の「除斥期間」では、20年経過すると、被告が何ら時効に関する主張をせずとも、慰謝料請求権が消滅していました。

改正により、「消滅時効」に変更されたことで、時効の完成を猶予したり、時効の進行を更新して0に戻したりすることが可能となりました。つまり、慰謝料を請求できる範囲が広がったことを意味します。

時効が過ぎた後では慰謝料を請求できない?

時効が過ぎた後でも、浮気相手や配偶者が任意で慰謝料の支払いに応じるのであれば、慰謝料を請求することが可能です。時効経過後に慰謝料を受けとることは、法律上何の問題もありません。
ただし、時効が過ぎたということで焦りを感じ、相手を脅迫したり、あまりに高額な金額を請求したりしてしまうと、刑事事件などのトラブルなどに発展してしまうおそれがあるため注意が必要です。
なお、不貞行為に対する慰謝料の時効が過ぎていても、離婚に対する慰謝料については、離婚から3年以内であれば請求可能となっていますので、忘れずに請求するようにしましょう。

時効で浮気の慰謝料を取り逃がさないためのポイント

時効で浮気の慰謝料を取り逃さないようにするためには、なるべく早く慰謝料請求に向けた行動を開始することが必要です。
まず、慰謝料請求の時効が成立する前に、不倫の事実を証明する証拠を集めなければなりません。
また、時効が迫っている場合は、すぐに時効を止めるための措置をとる必要があります。
ただし、これらの判断には法的知識が必要とされ、特に時効期間の計算は複雑であるため、被害者個人で行うのは困難でしょう。

そのため、浮気の慰謝料を時効成立前に受け取りたいと思われるのであれば、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
弁護士に任せれば、慰謝料請求に有効な不倫の証拠の集め方等についてのアドバイス、時効を阻止するための最適な措置(催告、裁判など)を講じることが可能です。

浮気の慰謝料の時効に関するQ&A

浮気の慰謝料の時効についてよくある質問をご紹介します。

5年前の浮気を最近知ったのですが、浮気相手に慰謝料を請求することは可能ですか?

5年前の浮気であるため、慰謝料請求の「配偶者が浮気をした時から20年」の時効はまだ成立していません。
ただし、「不貞行為および浮気相手の存在を知った日から3年」が経過すると、時効により、慰謝料請求ができなくなります。
不貞行為および浮気相手の名前・住所を特定した日から3年が経過していないのであれば、浮気相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

10年前の浮気が発覚したのですが、既に離婚しています。元夫に慰謝料を請求することはできますか?

10年前の浮気であるため、「配偶者が浮気をした時から20年」の時効はまだ成立していません。
不貞行為および浮気相手の名前・住所を特定した日から3年が経過していないのであれば、元夫に対して、不貞行為に対する慰謝料を請求できる可能性があります。

時効を止めるために裁判を起こしたいのですが、相手の居場所が分かりません。何か対処法はありますか?

相手の居場所が分からない場合は、「公示送達」という方法によって、裁判を起こすことが可能です。
裁判所に公示送達の申し立てを行うと、裁判所の掲示板に訴状等が掲示され、掲示が開始されてから2週間経過すると、相手への送達が完了したとみなされます。これによって、相手が行方不明の場合でも、裁判を起こして、時効の完成を阻止することが可能です。

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浮気の慰謝料請求は早い段階で行う必要があります。まずは弁護士にご相談下さい。

浮気の慰謝料については、まず時効が成立していないか注意する必要があります。
仮に時効が迫っている場合は、早急に時効の完成を阻止する手続をとる必要がありますが、時効を止めるには様々な手段があり、どの手段を選択するべきかの見極めは難しい作業です。
また、浮気の慰謝料を請求する場合は、「不貞の事実があったこと」を、証拠にもとづき主張・立証する必要があるため、被害者お一人で対応することは困難でしょう。

この点、弁護士に依頼すれば、これらをすべてカバーすることが可能です。
また、浮気の証拠の集め方についても、法律のプロの視点からアドバイスできます。
浮気の慰謝料請求でお悩みの場合は、ぜひ離婚問題に精通する弁護士が所属する、弁護士法人ALGにご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。