監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
未成年者であっても相続人になることはできます。一方で、いくら未成年者が相続人であっても、未成年者は単独では遺産分割協議を行うことはできませんので注意が必要です。
目次
未成年者は原則、遺産分割協議ができない
未成年者は制限行為能力者と呼ばれ、遺産分割協議を単独で行うことができません。
共同相続人の中に未成年者がいる場合は、親権者や未成年後見人が、未成年相続人の法定代理人として遺産分割協議を行わなければなりません。
成年年齢の引き下げについて(2022年4月1日以降)
2022年4月1日から成年年齢の引き下げがなされます。
具体的には、
① 2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方
→2022年4月1日に成年
② 2004年4月2日生まれ以降の方
→18歳の誕生日に成年
となります。
成人になるのを待って遺産分割協議してもいい?
成人になるのを待って遺産分割協議を行うことも選択肢の一つですが、例えば相続税については、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から原則として10か月以内に申告をしなければならない等、手続上、期間制限があるものもあり、注意が必要です。
相続人に未成年者がいる場合は法定代理人が必要
相続人の中に未成年者がいる場合、どうすれば円滑に遺産分割協議ができるのでしょうか。
法定代理人になれるのは親権者(親)
未成年相続人の代わりに遺産分割協議ができる者としてまず挙げられるのは、法定代理人である親権者です。
両親が双方健在なら、両親双方が親権者です。
親も相続人の場合は特別代理人の選任が必要
注意しないといけないのは、未成年者とともに親も相続人となっている場合です。
この場合、親が未成年者の取り分を少なくして、自分の取り分を多くしようとすればできる状態ですので、未成年者を親が代理することはできません。
原則として、未成年者を代理する特別代理人という特殊な代理人を選任する必要があります。
もっとも法定相続分以上を未成年者に渡すというように、通常であれば、未成年者が損をするとはいいにくいようなケースでは、親が未成年者を法定代理することが許される場合があります。
親がいない場合は未成年後見人を選任する
未成年者に親権者である親がいない場合、未成年後見人を選任する必要があります。
未成年者の相続人が複数いる場合は、人数分の代理人が必要
未成年の相続人が複数いる場合は、まとめて1名の代理人が就任することはできません。
これを認めると、ある未成年者を犠牲にして、別の未成年者に多く分割することができてしまい、公平ではないからです。
この場合は、人数分の代理人が必要となります。
特別代理人の選任について
親権者と未成年者が共に共同相続人の場合は、親権者が未成年者を犠牲にして自分の利益を得ようとする可能性を否定できないため、未成年者のために特別代理人の選任が必要となる場合があります。
特別代理人とは
親権者とは別に、未成年者の代わりに遺産分割協議をする代理人を指します。
申立てに必要な費用
特別代理人のひとりあたり800円分の収入印紙が必要です。
必要な書類
- 未成年者の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の住民票
等です。
この他にも不動産の売却等を伴うのであれば、不動産登記簿が必要です。
申し立ての流れ
親権者が、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人の選任を請求します。
具体的には、特別代理人選任申立書を提出します。
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未成年後見人の選任について
未成年者に親権を行うものがいない場合には、家庭裁判所は申立てにより、未成年後見人を選任します。
未成年後見人とは
未成年者の法定代理人の一種で、未成年者の身の回りの世話や財産の管理、契約等を行う人をいいます。
申立てに必要な費用
未成年者1人につき、収入印紙800円分が必要となります。
必要な書類
- 申立書
- 申立事情説明書
- 親族関係図
- 財産目録
- 相続財産目録
- 収支予定表
- 未成年後見人候補者事情説明書
などです。
申し立ての流れ
未成年者の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行います。
未成年後見人選任の申立書(裁判所)未成年の相続人が既婚者の場合は代理人が不要
未成年者といっても、既に婚姻している場合には、基本的には成人として取り扱われるため、代理人が不要となります。
親が未成年の相続人の法定代理人になれるケース
以下のような例です。
親が相続放棄をした場合
親が相続放棄をする場合は、相続をめぐって子と利害が対立することはないと考えられるため、親が未成年者の法定代理人として遺産分割協議を行うことができます。
片方の親がすでに亡くなっており、未成年者が代襲相続人になった場合
両親の内の一方が既に亡くなっており、未成年者が代襲相続人となる場合、存命の片親は基本的には相続人になりませんので、子を代理して遺産分割協議を行うことができます。
未成年者を含む遺産分割協議を弁護士に依頼するメリット
未成年者を含む遺産分割協議にあたっては、留意すべき点が多数あり、場合によってはせっかくまとめた遺産分割協が無意味となってしまいかねません。
相続人に未成年者が含まれる場合には一度弁護士に相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)