遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

相続問題

遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

身近な人が亡くなり、残された親族で起きる遺産を巡る争いは当事者間でうまく収めることは困難です。
そのような遺産争いを終わらせる有効な手段が遺産分割調停です。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が相続人の間に入って、各相続人の言い分を聞き、法的見地から見た公平な遺産分割を図る手続きです。
第1調停期日と最後の調停期日を除き、家庭裁判所にて、当事者が同時に調停室に入ることはなく、原則として一人一人の主張を順に調停委員が聴取し、利害の調整が進められます。

遺産分割調停の流れ

必要書類を集める

遺産分割調停の申立てをするには、「申立書」の他に状況に応じた添付書類が必要となります。

例えば、被相続人が出生してから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類や、相続人全員の戸籍謄本、不動産の登記簿謄本や預金通帳の写しといった、遺産に関する資料が代表的なものです。

そのほかにも、相続人と被相続人の関係や遺産の状況次第で必要になる書類があり亜ます。

相続人全員の住所が必要なことに注意が必要

遺産分割調停を起こす際、一部の相続人を除外することはできません。
一部の相続人だけで勝手に遺産分割を行うことが許されないからです。
そのため、申立の段階で、全相続人の住所を申立書に記載し、調停に関する書類が全相続人に届いて、参加できるようする必要があります。

未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要

相続人の中に未成年や認知症患者等、一人では自分が受け取る遺産について判断をすることが困難である人がいる場合、その人のために代理人が選任される必要があります。
遺産分割調停は、全相続人から見て公平に行われる必要があるので、このような制限があります。

管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

遺産分割調停を申し立てる際、申立先となることができる裁判所は限られています。
相続人全員で合意ができるのであれば、その合意に基づいて合意された裁判所に調停を申し立てられます。
合意がない場合、申立人以外の相続人の住所を管轄する裁判所に提起する必要があります。

申し立てにかかる費用

遺産分割調停を申し立てる際、申立人は大きく二つの費用を収める必要があります。
まず、亡くなった方一人の遺産の分割を求める場合には、1200円分の収入印紙が必要です。
他方、親族のお1人が亡くなって、その相続関係が整理されないまま相続人の一人が亡くなる等、複数の相続を同時に処理する場合には被相続人の人数毎に1200円の費用が掛かります。

また、連絡用の郵便切手を一定の価額分、納める必要があります。
必要となる郵便切手代は裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所にご確認ください。

2週間程度で家庭裁判所から呼出状が届く

申立書及び添付書類に不備がない場合には、申立書や呼出状を入れた封筒が申立人以外の相続人に発送されます。
家庭裁判所の状況次第で前後することはありますが、申し立てた日から大体2週間程度で書類が届くことが多いです。

調停での話し合い

調停当日になりますと、原則として相続人が1人ずつ調停室に入り、言い分を調停委員に述べる機会が与えられます。調停委員は、各当事者が言い分を整理し、対立点を明確化し、全相続人が合意できる案がないかを模索します。

1回の調停でまとまらない場合には、複数回調停が開催され、利害の調整を行い続け、合意の成立を目指します。もっとも、合意の可能性がない、と判断される場合には調停が不成立となって終了する場合もあります。

調停成立

調停で話し合った結果、一定の合意に達することができた場合、合意内容が裁判所で調停調書という形でまとめられます。
この調停調書の内容通り、きちんと遺産が分割される場合には問題はありません。
ただ、相続人の中に合意を守らず、遺産を勝手に持ち出した者がいる場合、調停調書での合意であれば、裁判所の強制執行手続きにより、合意の内容通りの遺産分割を達成するという手段がとれる可能性があります。

成立しなければ審判に移行する

上述のように、調停委員は各相続人の言い分を聞いて、利害の調整を図りますが、毎度うまくいくわけではありません。一部もしくは全相続人の対立が激しく、合意が成立する見込みがない場合には調停が不成立となります。
その場合、調停は自動的に審判という手続きに移行します。
審判手続では、調停にあった話合いの側面がなくなり、裁判官が法的に妥当な遺産分割を定めることになります。

調停不成立と判断されるタイミング

調停が不成立となる決まった回数はありません。
もっとも、同じ争点について解決できない期間が長引くと、合意の成立の見込みが低いと判断される可能性が高まります。
その一方で、早期に審判移行をしてほしいと望む相続人がいたとしても、すぐに調停を不成立にすることもできないのです。

遺産分割調停にかかる期間

遺産分割調停は1、2カ月に1回程度のペースで行われるのが通常です。
そして、1度の調停でとれる時間も限られています。

そのため、相続人間で互いに譲歩がうまくできず、調停期日が何回も開かれることとなる場合ですと、終了まで1年以上かかるケースもあります。

遺産分割調停のメリット

遺産分割調停は、第三者である調停委員が間に入ることによって次のようなメリットがあります。

冷静に話合いを行うことができる

どうしても、揉めている相手と直接顔を合わせて話し合いをしてしまうと、互いに感情的になってしまうものです。その結果、問題の解決に意味のない時間が増えてしまいます。
調停では、同時に意向が異なる相続人を部屋に入れることが基本的にはないので、冷静に互いの言い分が主張され、解決されることが期待できます。

遺産分割を進めることができる

遺産分割協議を延々とやっても解決をしないことは珍しくありません。
調停手続きを用いれば、一定間隔で期日が入りますので解決に向け、各相続人が自身の主張を整理して準備するようになることが期待できます。
また、非協力的な相続人がいたとしても、調停不成立の際には裁判官が審判手続によって遺産を分割する審判を出すので、解決が全くされない事態は避けられます。

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遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停にはメリットがありますが、同時に調停手続ならではのデメリットがあります。

希望通りの結果になるとは限らない

当事者の言い分を調停委員が聞きますが、あくまでも相続人の利害調整をした結果、合意が成立しないと遺産分割調停が成立しません。合意を成立させるには各相続人が一定の譲歩をする必要があるのが通常ですので、期待する分割方法とは異なる形の遺産分割となるかもしれません。

長期化する恐れがある

遺産分割調停が1,2カ月に1回のペースで開催されるため、早期に調停がまとまらない限り、半年、一年と多くが決まらないまま進行してしまうことがあります。
特に相続人が多かったり、遺産となる財産が多かったりする場合には合意ができずに調停が長期化することも少なくありません。

基本的に法定相続分の主張しかできない

遺産分割調停において、調停委員は、法律に従った遺産分割方法を原則としてとらえています。
そのため、法定相続分を超えるような主張を展開しても、その方向で調停委員が他の相続人を説得してくれる可能性は非常に低いです。

遺産分割調停で取り扱えないもの

被相続人の遺産を確認すると、一部の相続人が勝手に被相続人の預貯金を引き出していることがあります。これを「使途不明金」と呼びますが、遺産分割の対象となるかどうかはっきりしない使途不明金については、基本的には、調停では取り扱ってもらえません。
使途不明金について解決を望む場合には、訴訟などの別手続を検討せざるを得ないでしょう。
また、遺言の有効・無効という問題は調停では取り扱えません。
遺産分割調停はあくまでも遺産の分け方についての手続ですので、そもそも遺言の分け方を指定する遺言の有効性については調停で決定することが想定されていません。
遺言の有効性について争いたい場合には、遺言無効確認訴訟などを検討することになります。

遺産分割調停を欠席したい場合

遺産分割調停が開催される日にどうしても都合が合わない場合、欠席をすること自体はできます。ただ、相続人が一人でも欠席してしまうと、遺産分割調停を実質的に進めることができなくなり、欠席が相次ぐと、不成立となって審判手続に移行する可能性があります。
審判手続では欠席しても、裁判官が判断を下してしまうので、そうなるまでの調停段階で欠席し続けることはあまりお勧めできません。
本人が直接、出席できないとしても、弁護士を代理人に立てて、代理人に出席してもらうことは可能です。欠席を続けるよりは、代理人を立てられないか検討することが好ましいです。

遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合

遺産分割調停の呼出を無視して、その後も調停に参加をしない者がいる場合、調停が成立する見込みがないものとして調停が不成立となります。
その代わり、審判手続きが開始し、裁判官が遺産分割の審判を出すことになるので、ご自身の利益を守るためにも呼出状を無視することはお勧めできません。

遺産分割調停は弁護士にお任せください

遺産分割調停を開始する時点で、必要書類の収集から一苦労であることが多いです。
また、平日に毎回調停期日に出頭することも、仕事や子育ての関係で難しい場合もあるかと思われます。
弁護士に依頼し、書類収集から申立、申立以降も代理人として出頭してもらえるメリットがあります。
また、調停委員に対して話す内容を整理したり、逆に調停委員から述べられている内容が不当でないかについて助言をもらえるメリットもございます。
遺産分割調停を開始すべきか悩んでいる場合、遺産分割調停を起こされてその対応に悩んでいる場合、まずは弁護士にご相談下さい。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。