DVで離婚する場合の慰謝料相場と請求方法

離婚問題

DVで離婚する場合の慰謝料相場と請求方法

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

配偶者からの暴力や暴言、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)を理由に離婚する場合、DVを行ってきた相手に慰謝料を請求できる可能性があります。相手が怖くて慰謝料なんて請求できない、とにかく早く縁を切りたい、と思っている場合でも、離婚後の生活を経済的に安定させるためには、しっかり慰謝料を請求するべきです。

この記事では、

  • DVによる離婚の慰謝料の相場
  • DVによる慰謝料を請求するために必要なもの
  • DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ

などについて、分かりやすく説明いたします。

DVで離婚する場合の慰謝料相場はいくら?

DVによる慰謝料の相場は、100万円前後となることが多いと言われています。ただし、DVがあれば必ず100万円の慰謝料が認められるわけではなく、DVの程度などによって、慰謝料が数十万円程度しか認められないこともあれば、300万円という高額の慰謝料が認められることもあります。

慰謝料が高額になる要素

DVの回数が多い、期間が長い、暴力による怪我や心的外傷(PTSD)など結果が重い、という場合は、慰謝料が高額になりえます。DVが日常的・継続的に行われ、長期間の入院が必要になった場合には、慰謝料が高額になることが多いです。

また、婚姻期間が長かったり、未成年の子どもが多かったりすると、離婚による影響が大きいということで、慰謝料が高くなる傾向にあります。

慰謝料を請求するにはDVの証拠が必要

慰謝料を請求するには、DVの証拠を集めておく必要があります。証拠がなければ、相手が「DVなんてしていない」と否定した場合に、相手や裁判官を説得することができないからです。DVの証拠としては、以下のようなものが有効と考えられています。

  • DV中の音声や動画
  • DVによるケガを撮影した写真
  • ケガを負って治療したときの診断書
  • 相手が壊した室内の壁や家具などの写真
  • 警察など公的機関へ相談した記録
  • DVを受けた日時や内容を詳細に記録したメモや日記

DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ

①話し合いで請求する

まずは、当事者間で、直接慰謝料を請求することができます。ただし、暴力を振るってくる相手に、面と向かって話し合うのは危険です。安全な場所に別居したうえで、電話やメールなどで、慰謝料を請求する意思を伝えましょう。

また、過去に受けたDVを思い出し、相手に直接慰謝料を請求することに、恐怖感や拒否感を感じることもあります。そのため、弁護士に交渉の代理人を依頼することで、過度な負担なく、相手に慰謝料の請求をすることができます。

②離婚調停を申し立てる

相手への恐怖から直接交渉することはできない、また、交渉しても話合いが折り合わなかったという場合には、裁判所に離婚調停を申し立て、離婚調停の中で話し合うこともできます。

離婚調停では、調停委員をとおして相手と話合いを行うので、相手と顔を合わせる必要がありません。また、第三者である調停委員が、客観的な立場から、相手に慰謝料を支払う必要性を話してくれるので、相手が自分の非を認めて、慰謝料の支払いに応じる可能性があります。

③離婚裁判で請求する

離婚調停でも相手が慰謝料の支払いに応じない場合、慰謝料を請求するためには、裁判(離婚裁判)を起こす必要があります。離婚裁判では、裁判官がDVの事実を認めて、慰謝料の支払いを命じる判決を出せば、相手は慰謝料を支払わなければいけません。

離婚裁判で重要なのは、DVの証拠です。裁判官に慰謝料の請求を認めてもらうためには、相手がDVを行った証拠が必要です。慰謝料を請求したいと考えているなら、別居前からDVの証拠を集めておくとよいでしょう。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

離婚後に慰謝料請求する場合は時効に注意

離婚をした後でも、相手に慰謝料を請求することはできます。相手から離れることを優先して、慰謝料を請求せずに離婚してしまった場合でも、後から慰謝料を請求することはできるので、一度、弁護士に相談することをお勧めします。

ただし、慰謝料の請求には期間制限があり、離婚から3年が経過すると、時効により、慰謝料を請求することができなくなります。時効の成立まで時間がない場合は、内容証明郵便を送ることで、時効の成立が6か月猶予されます。

相手がDVの慰謝料を支払わない場合の対処法

話合いや裁判で慰謝料の金額が決まった場合でも、相手が正当な理由なく慰謝料を支払わなくなることがあります。以下では、相手が決められた慰謝料を支払わない場合の対処法を説明します。

履行勧告・履行命令

裁判所に履行勧告、履行命令を求めることが考えられます。

履行勧告とは、家庭裁判所が慰謝料の支払いの有無を調査したうえで、債務者に、慰謝料を支払うように、電話や書面で催促してくれる制度です。あくまで、支払いをするよう勧めるだけなので、勧告に従わない場合のペナルティはありません。

履行命令は、期限までに慰謝料を支払うよう、家庭裁判所が命令を出すもので、正当な理由なく命令に従わない場合、10万以下の過料が課されることがあります。履行勧告と比べると、強制力はありますが、制裁が高額とは言えないので、履行命令に従わない人もいます。

強制執行

履行勧告や履行命令よりも強力な手続きとして、強制執行があります。

慰謝料の支払いを命じる内容の、裁判所で作成された調停調書、審判調書、和解調書、判決書がある場合、また、慰謝料を支払わないときには強制執行を受け入れることが書かれた公正証書が作成されている場合、相手方の給料や預金を強制的に差し押さえて、慰謝料の支払いにあてることができます。

DVを行う配偶者への慰謝料請求は弁護士への依頼がおすすめ

DVを行ってきた配偶者に、慰謝料を支払うように交渉することは、心理的な抵抗が大きいでしょう。弁護士に依頼をすれば、弁護士が代わりに相手と交渉してくれますし、調停や裁判などの複雑な手続きも任せることができます。

また、慰謝料を請求する前に相談すれば、慰謝料を請求するために有効な証拠についてアドバイスをして、その後の慰謝料請求を、より有利に進めることができます。

弁護士法人ALGの解決事例

相手が不貞行為(浮気)をしていたうえ、依頼者にDVを行っていました。交渉で受任したところ、相手は離婚を拒否し、慰謝料の減額まで要求してきました。そこで、弁護士が、相手には慰謝料を支払う法的義務があり、慰謝料を支払わないのであれば、調停や裁判まで行うことを主張しました。

弁護士が粘り強く交渉した結果、相手は離婚と慰謝料の支払いに応じました。裁判まで進めば、慰謝料を増額できる可能性はありましたが、ご依頼者様が早期解決を希望されたため、裁判で増額を求めることはせず、交渉で解決しました。

DVの慰謝料に関するQ&A

一度の暴力でも慰謝料請求できますか?

一度の暴力でも、慰謝料を請求することはできます。ただ、日常的に暴力が行われていない場合、十分な証拠が集められていないことが多く、証拠がなければ、慰謝料の請求が認められないか、慰謝料請求を認めたとしても金額は低くなってしまいます。

暴力が一度しか行われなかったのであれば、暴力が行われた経緯や、暴力の結果、怪我やトラウマでどのような精神的苦痛を受けたかについて、できる限り証拠を集めて、丁寧に主張と立証をする必要があります。

夫が物に当たることを理由に慰謝料を請求できますか?

身体に対する直接的な暴力がなくとも、物に当たる、暴言を吐くといった間接的な暴力も、慰謝料の原因になります。

ただ、身体に対する暴力と比較すると、怪我や精神的苦痛の程度が小さいと評価されるため、慰謝料の金額が低くなる又は慰謝料が認められない傾向にあります。そのため、直接的な暴力がない場合、どうすれば慰謝料を請求することができるのか、一度弁護士にご相談ください。

DVの慰謝料請求は弁護士にご相談下さい

DVを行う配偶者に、直接慰謝料を請求するのは、相手を刺激するおそれがあり、非常に危険です。

弁護士にご相談いただければ、必要な証拠の集め方、別居の時期や別居先に関するアドバイスを行いながら、安全に交渉することができます。また、交渉がまとまらず、調停や裁判を行う場合でも、経験豊富な弁護士が代わりに手続きを進めることで、負担を軽くすることができます。

早期に、離婚問題の経験豊富な弁護士にご相談いただければ、何ができるか、どうすればよいかということについて、適切なアドバイスを行うことができます。DVでお悩みの方は、まずは一度、弁護士法人ALGにご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。