監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
配偶者が不倫(法的には、「不貞行為」といいます。)をしたとき、配偶者に離婚や慰謝料を請求するだけではなく、不貞相手にも慰謝料を請求することができます。円満だった夫婦関係や家族を壊した相手ですから、不貞相手にも慰謝料を請求したいと考えることでしょう。
以下では、どのようにして不貞相手に慰謝料を請求するのか、慰謝料を請求するためには何が必要なのかを解説します。
目次
不倫相手に慰謝料請求できる条件
不貞相手に慰謝料を請求するためには、配偶者と不貞相手との間に肉体関係があること、配偶者が結婚していることを不貞相手が知っていたこと、時効が経過していないこと、不貞行為を証明する証拠があること、などの条件があります。
肉体関係があった
慰謝料を請求するためには、配偶者と不貞相手の間に、性交渉を伴う肉体関係があることが必要です。性交渉を伴う肉体関係があることで、平穏な夫婦関係が壊され、精神的苦痛を受けるからです。そのため、メールを送る、二人だけで食事に行く、デートに行く、というだけでは、不貞行為と認められることが少ないです。
ただし、性交渉がない場合でも、抱き合ったり、キスをしたりした場合は、平穏な夫婦関係を破壊したとして、低額ながら慰謝料が認められることがあります。
客観的な証拠がある
不貞相手に慰謝料を請求しても、不貞行為を否定することは珍しくないため、不貞行為の客観的証拠が必要となることが多いです。
客観的な証拠とは、性交渉があったことを推測させるメール、ラブホテルに出入りする写真、ラブホテルの領収証、性交渉の様子を撮影した動画や音声です。
まだ証拠がないのであればどのような証拠が必要なのか、証拠をもっているのなら今ある証拠で足りるのか、自信がない場合は弁護士に相談してみましょう。
時効が過ぎていない
不貞行為を知った時から3年が経過してしまうと、消滅時効(民法724条1号)といって、不貞関係があったことが事実でも、慰謝料を請求することができなくなってしまいます。配偶者の不貞行為を知った時は、弁護士に相談して、時効期間が経過しないように、何をすればよいのか確認しましょう。
故意・過失がある
交際相手が既婚者であると不貞相手が知っていた、注意を尽くせば知ることができたことが必要です。交際相手が既婚者であると知っているか、注意を尽くせば既婚者であると知ることができた場合には、不貞行為をやめることができるからです。
不倫相手に慰謝料請求できないケース
不貞行為についての証拠があり、時効期間が過ぎていない場合でも、不貞行為が行われた時点で夫婦関係が破綻していた場合には、不貞行為により侵害される平穏な夫婦関係がないため、慰謝料を請求することはできません。
家庭内別居していただけでは、夫婦関係が破綻していたとは認められませんが、具体的な離婚の話合いをしていた、家庭裁判所で離婚調停を行っていたような場合には、不貞行為当時、夫婦関係が破綻していたと評価される可能性が高いです。
離婚しない場合、不倫相手だけに慰謝料請求できる?
配偶者と離婚しない場合でも、不貞相手だけに慰謝料を請求することはできます。
ただし、不貞相手だけに慰謝料を請求する場合、離婚する場合と比べて慰謝料が低額になることや、後ほど説明するように、不貞相手から求償権を行使されることがあるのでご注意ください。
不倫相手に請求する慰謝料の相場は?
不貞行為に対する慰謝料の相場は、離婚しなかった場合は数十万円から100万円程度、離婚した場合は、100万円から300万円程度となることが多いです。
不貞行為の回数や期間だけでなく、不貞行為の結果、どのような影響が生じたかによっても、不貞慰謝料の金額は変わってきます。
不倫相手に慰謝料請求する際に必要なもの
不倫の証拠
すでに説明したように、不貞相手に慰謝料を請求するためには、不貞行為の証拠が必要です。証拠がない場合は、探偵などの調査会社に証拠の収集を依頼することもできますが、調査費用は高額になりやすく、結果的に慰謝料よりも調査費用の方が高くなることもありえます。
弁護士に相談すれば、必要な証拠を相談しながら進めることができます。
相手の氏名、住所または勤務先
慰謝料を請求するためには、相手の氏名と住所を知っておくことが必要です。相手の住所が分からなければ、内容証明郵便を送ったり、裁判を起こしたりすることができないからです。
相手の電話番号など、断片的な情報しか分からない場合も、弁護士に依頼すれば、弁護士会を通じて、相手の氏名や住所を把握することができる可能性もありますので、相手の連絡先が分からないと諦めずに、まず弁護士にご相談ください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
不倫相手に慰謝料を請求する方法
相手と直接交渉する
慰謝料の支払いを求めて、不貞相手と直接交渉することもできますが、この方法はおすすめできません。やはり支払わない、その場では慰謝料を払うと言われても、後日、脅されて慰謝料を払うと言ったが本心ではなかったなど、トラブルになりやすいからです。
また、不貞相手と直接話すことで感情的になってしまい、自分に不利な発言をしてしまうこともあるので、交渉は書面で行うか、代理人に任せましょう。
内容証明郵便で請求する
慰謝料を請求する際は、内容証明郵便を送るのがよいでしょう。相手と直接会うことを回避できることや、送った書面の内容や受け取った日時が郵便局に記録されるため、慰謝料を請求したことの証拠となり、後日交渉や裁判となった時に有利に働くことがあります。
また、通常の郵便よりも費用はかかりますが、こちらの慰謝料請求が本気なのだというプレッシャーを相手に与えることができます。
調停・裁判で請求する
相手との話合いが難航する場合は、裁判所に調停を申し立てたり、裁判を起こしたりすることができます。
調停とは、裁判所で調停委員を交えて行われる話合いの手続きで、当事者だけではこじれてしまう交渉を、調停委員を介することで冷静に進めることが期待できます。調停が成立すると、調停調書という書類が作られ、相手が合意した慰謝料を払わない時は、強制的に取り立てることができます。
交渉や調停では相手が慰謝料の支払いに応じない場合は、裁判を提起することが考えられます。裁判では、証拠をもとに、慰謝料の請求が認められるか、慰謝料の金額はいくらになるのかを、裁判官が判断します。
不倫相手に慰謝料請求する場合の注意点
不倫相手から「求償権」を行使される可能性がある
離婚はせずに不貞相手に慰謝料を請求する場合、不貞相手から配偶者への求償に注意する必要があります。
慰謝料を支払った不貞相手は、「求償」といって、支払った慰謝料の一部をあなたの配偶者に請求することができます。慰謝料を支払う原因を作った責任は、配偶者と不貞相手の両方にあり、2人で1つの責任を負うことになるからです。
例えば、不貞相手から慰謝料200万円が支払われた場合、不貞相手はあなたの配偶者には半分の100万円を請求することができます。そのため、夫婦全体で見れば、不貞相手からは100万円しか回収できなかったことになります。
ダブル不倫の場合は慰謝料が相殺される可能性がある
既婚者同士の不貞行為、いわゆるダブル不倫の場合、不貞相手から慰謝料を取ることができても、不貞相手の配偶者があなたの配偶者に慰謝料を請求することで、結果的に慰謝料が相殺されることがあります。
離婚する場合は、元配偶者が慰謝料を請求されても関係はありませんが、離婚せずに不貞相手だけに慰謝料請求する場合、2つの夫婦間で慰謝料が回るだけになることもあります。
不倫相手が慰謝料を払わない場合の対処法
不貞相手が不貞を認めていても、慰謝料を払うお金がないと言って、慰謝料を支払わないことがあります。その場合は、慰謝料の減額や分割払いなどを検討して、できる限り慰謝料を回収できるように交渉してみましょう。
分割払いで合意した場合には、後日慰謝料の支払いがストップした場合に備えて、公正証書を作成しておくと、分割払いの条件に違反した場合に、再度交渉したり、裁判を提起したりしなくとも、強制執行ができるようになります。
不倫相手に対してやってはいけない事
不貞相手が慰謝料を支払わないからと言って、不貞相手を恫喝したり、暴力を振るったりしてはいけません。不貞相手から逆に慰謝料を請求されたり、刑事責任を問われたりすることになりかねません。
また、不貞行為を勤務先に報告したり、SNSに投稿したりすることも、名誉棄損として、損害賠償請求されたり、刑事処罰の対象にされたりするので、注意しましょう。
不倫相手への慰謝料請求に関するQ&A
不倫相手が複数いた場合、全員に慰謝料請求することは可能でしょうか?
複数の不貞相手に、それぞれ慰謝料請求することは可能です。
ただし、個別に交渉する場合、解決まで時間がかかることと、不貞相手に請求できる慰謝料が倍増するわけではないことに注意してください。
離婚した後でも不倫相手に慰謝料を請求することはできますか?
離婚後でも不貞相手に慰謝料請求することは可能です。離婚後に不貞行為を知った場合や、離婚が済んでから慰謝料を請求することもあるでしょう。
ただし、すでにご説明したように、不貞相手に慰謝料を請求するためには、不貞行為を知ってから3年という期間制限があるので、時効が過ぎてしまわないように注意しましょう。
不倫相手への慰謝料請求をお考えなら弁護士にご相談ください
不貞相手と直接慰謝料の交渉をすると、時間や労力がかかるうえに、大きな精神的負担もかかります。
慰謝料交渉の代理を弁護士に任せることで、迅速かつ精神的な負担なく解決することができます。
また、弁護士に相談すれば、慰謝料を請求するために必要な証拠の精査だけでなく、優秀な調査会社を紹介することで、必要な証拠を、適切な費用で集めることができます。
弁護士法人ALGでは、経験豊富な弁護士に加え、優れた調査会社を併設しているため、証拠の収集から慰謝料の交渉まで、ワンストップで対応することができます。不貞相手への慰謝料請求にお悩みの方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)