交通事故の過失割合で揉める原因と対処法

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交通事故の過失割合で揉める原因と対処法

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

交通事故の示談交渉では過失割合で揉めやすく、示談交渉が難航してしまうことも少なくありません。被害者・加害者双方が自分の過失割合を主張するだけでは示談交渉はまとまらないため、過失割合で揉めた場合の対処法を知っておくことで、有利に示談交渉を進めることができるでしょう。

この記事では、交通事故の過失割合で揉める理由や、特に揉めやすい4つのパターンと対処法について解説していきます。ぜひご参考ください。

交通事故の過失割合で揉める理由とは?

交通事故の過失割合で揉める理由には、以下のようなものが考えられます。

  • 損害賠償の金額に影響するため
  • 警察は過失割合に関与しないため
  • 事故状況の食い違いがあるため

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

損害賠償の金額に影響するため

過失割合で揉める大きな理由として、「被害者の過失分は損害賠償金が減額される(過失相殺)」という点が挙げられます。

【例】
・過失割合9(加害者)対1(被害者)の場合→10%損害賠償金から減額される
・過失割合8(加害者)対2(被害者)の場合→20%損害賠償金から減額される

このように、被害者の過失割合が大きくなれば過失相殺される割合も大きくなり、受け取れる損害賠償金が少なくなってしまいます。反対に、加害者側は被害者の過失割合が大きくなればなるほど、支払う損害賠償金を少なく済ますことができます。そのため、被害者・加害者双方にとって譲れない点となります。

警察は過失割合に関与しないため

「過失割合を決めるのは警察」と思われている方も少なくないでしょう。しかし、実際には被害者と加害者が事故の状況から話し合って過失割合を決定します。一般的には、双方の保険会社や代理人弁護士が示談交渉で話し合って決めていきます。

もっとも、事故の状況は被害者側、加害者側で認識が異なることも多く、双方の主張の食い違いが揉める原因となります。

事故状況の食い違いがあるため

事故の状況は、事故の両当事者間で大きく食い違うことがあります。交通事故では、警察が被害者と加害者に事故の話を聞き、「実況見分調書」が作成されます。しかし、大きな事故で被害者が意識不明であったり、救急車で運ばれたりすれば、加害者から聞いた話だけで実況見分調書が作成されてしまいます。

こうした事情から、被害者の思う事故状況とは異なる内容となってしまうケースもあるのです。入院や治療で実況見分などに立ち会えなかった場合は、後日警察が持ってくる実況見分調書をよく確認し、自分の意見をきちんと伝えるようにしましょう。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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過失割合について揉めやすい4つのパターン

過失割合について揉めやすい4つのパターンとその対処法について見ていきましょう。

①交通事故に関する証拠が不足している

過失割合は事故状況により決まるため、以下のようなものが重要な状況証拠となります。

【交通事故状況を示す証拠】

  • ドライブレコーダーの記録
  • 事故現場付近の監視カメラの記録
  • 目撃者の証言
  • 事故直後に撮影した事故現場、車などの写真
  • 事故の実況見分調書
  • 交通事故証明書

当事者であっても、事故の瞬間を正確に認識しているとはいえないため、このような証拠がないと双方の言い分に食い違いが生じ、過失割合について揉めやすくなります。

証拠が無い場合の対処法

証拠がない場合は、目撃者の証言や取得可能な書類をできる限りそろえることが重要です。また、自分の車にはドライブレコーダーを搭載していなくても、相手の車に搭載している場合もあるため、提出を求めましょう。

以下の書類はご自身で揃えることが可能なものです。ご確認ください。

〈実況見分調書〉
警察が事故現場で当事者立会いのもと、事故現場の状況や発生状況を調査して内容をまとめた刑事記録。

〈供述調書〉
警察が事故当事者から事故状況について聞き取った内容を記録したもの。

〈診断書〉
怪我の大きさや負傷した箇所から事故状況をある程度推測することが可能。

〈車両修理見積書〉
車両の損傷具合や損傷個所から事故状況をある程度推測できる。

②損害賠償額が大きい

交通事故の被害が大きいと、それだけ請求できる費目も多くなり、損害賠償額が大きくなる傾向にあります。例えば、過失割合9(加害者)対1(被害者)の事故だとしても、損害賠償額が100万円の事故と1000万円の事故では、以下のように被害者が受け取れる損害賠償金が大きく変動します。

  • 損害賠償金が100万円の場合 ⇒被害者が受け取れる金額:90万円
  • 損害賠償金が1000万円の場合 ⇒被害者が受け取れる金額:900万円

このように、損害が大きい事故では加害者側の支払金額も増えるため、少しでも自社の損失を減らそうと、相手方保険会社は被害者の過失割合を大きく主張してくる可能性があります。

損害賠償額が大きい場合の対処法

損害賠償額の大きい事故の場合は、以下の順に対応しましょう。

  1. 相手方保険会社に過失割合や損害賠償金の根拠を聞く

    示談交渉では、一般的に相手方保険会社から過失割合や損害賠償額が記載された示談案が提示されます。その内容を確認し、以下の点について書面で回答を求めましょう。
    ・過失割合をどのように出したのか
    ・どのような過去の判例を参考にしたのか

  2. 弁護士に確認する

    相手方保険会社から書面で回答をもらったら、弁護士にそれが正しいのか確認してもらいましょう。交通事故に詳しい弁護士に確認してもらうことで、相手の根拠が適切であるかどうかの判断ができ、過失割合を修正できる可能性が高まります。

③どちらが悪いか判断がしにくい

当事者双方に過失がある場合は、どちらの過失が大きいか判断が難しいことがあります。例えば、以下のようなケースです。

  • 同一方向に走行していた車同士が同時に車線変更しようとして衝突した事故
  • 信号機もなく道路幅も同じ交差点での出会い頭の事故
  • 双方が赤信号で交差点に進入し、衝突した事故

このように、過失割合が判断しにくい場合、話し合いが平行線となり過失割合について話し合いがまとまらないことも少なくありません。

判断がしにくい場合の対処法

過失割合について判断がしにくい場合には、少しでも証拠を集めることが大切です。具体的には、以下のように事故の状況が分かる証拠を集めましょう。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 目撃者の証言
  • 実況見分調書 など

それでも過失割合について双方で話が平行線の場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

④駐車場内での事故

駐車場内で起きた事故は、過失割合について揉めやすくなる傾向にあります。

なぜなら、過失割合を参考にする書籍である「別冊判例タイムズ38号」に記載されている事故の類型は道路上を想定しているからです。そのため、駐車場で起きた事故の過失割合を決める際に参考にする判例が不十分となり、揉めやすくなってしまいます。

駐車場内の事故の対処法

駐車場内で起きた事故では正確な過失割合の算定が難しいため、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。こうしたケースは、似たような事故における判例をいくつか探し、総合的に過失割合を判断していくことになります。

しかし、被害者の方が判例を探したり、総合的に過失割合を判断したりすることは難しいでしょうし、なにより相手方保険会社が受け入れないことも考えられます。交通事故に詳しい弁護士であれば、法的な観点から、「別冊判例タイムズ38号」に記載のない事故態様であっても、適切な過失割合を相手方に主張することができます。

交通事故の過失割合で揉めた場合はどうする?

これまで過失割合で揉めやすい4パターンの対処法についてみてきましたが、それでも解決できない場合、過失割合で揉めていたままでは示談交渉が前に進みません。そこで、その他の代表的な対処法について詳しく解説していきます。

保険会社へ苦情を申し入れる

加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉の相手は保険会社の担当者となります。

保険会社は交通事故の対応を数多く行っていることから、強引に被害者の過失割合を多めに主張してくるケースもあります。あまりにも相手方保険会社が高圧的であったり、話し合いに応じないような場合には、相手方保険会社のカスタマーサービスセンターやそんぽADRに連絡しましょう。

また、相手方保険会社に不満があるからといって、加害者本人に連絡することは避けましょう。余計に話がこじれてしまい、深刻なトラブルに発展しかねません。

ADRを利用する

ADRとは、裁判外で交通事故の紛争について解決を図る機関のことで、あっせん、調停、仲裁などの手続きがあります。交通事故の代表的なADR機関は次のとおりです。

  • 日弁連交通事故相談センター
  • 交通事故紛争処理センター
  • 自賠責保険・共済紛争機構

ADRは無料で利用することができ、担当の弁護士が当事者同士の紛争が解決するようサポートしてくれます。しかし、ADRはあくまでも第三者機関であり、必ずしも被害者だけの味方ではないことに注意しましょう。

調停や裁判で解決する

調停とは、調停委員を介し話し合いによって紛争の解決を図る手続きです。調停を行うメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 早期解決が見込める
  • 第三者に間に入ってもらえる
  • 公平な解決が期待できる
  • 強制執行が可能

ADRや調停といった第三者機関を利用しても紛争が解決しない場合は裁判を提起する方法があります。裁判では、当事者が証拠をもとに事実の有無を確定させて裁判所が判決を下すことで紛争を解決させます。そのため、裁判では主張を裏付ける客観的な証拠が何より大切です。

妥協案として片側賠償を提案する

双方でどうしても過失割合について合意できない場合は、「片側賠償」とすることも考えられます。

【片側賠償とは?】

双方に過失があるものの、一方だけが損害賠償責任を負うという示談方法です。例えば、過失割合9(加害者)対1(被害者)と提示されていても、被害者が過失0を譲らない場合に、双方協議のうえで、過失割合を9(加害者)対0(被害者)とすることです。

実際に損害賠償額はどのように変動するのか、以下の例を用いて比較してみましょう。

【例.被害者の損害総額:300万円、加害者の損害総額:50万円】

〈過失割合10(加害者)対0(被害者)の場合〉

  • 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×100%=300万円
  • 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×0%=0円
  • 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、300万円-0円=300万円を受け取れる

〈過失割合9(加害者)対1(被害者)の場合〉

  • 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×90%=270万円
  • 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×10%=5万円
  • 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、270万円-5万円=265万円を受け取れる

〈過失割合9(加害者)対0(被害者)の場合〉

  • 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×90%=270万円
  • 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×0%=0円
  • 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、270万円-0円=270万円を受け取れる

弁護士に相談・依頼する

過失割合で揉めている場合は、弁護士への相談をおすすめします。交通事故に詳しい弁護士に相談することで、以下のようなメリットを受けられるでしょう。

  • 適正な過失割合を算定・主張できる

    交通事故や法律の専門家である弁護士であれば、過去の判例や事故類型から適正な過失割合の算定・主張ができるため、相手方が提示する過失割合を変更できる可能性があります。

  • 過失割合の根拠を十分に準備できる

    過失割合について交渉する場合には、事故状況を示す証拠や類似事故の判例、専門書の記載などを提示する必要があります。弁護士であれば被害者の方が集めにくい証拠を集めることが可能です。

  • 交渉を任せられる

    過失割合の交渉では、適切な過失割合を把握していること、証拠を十分に揃えていることに加え、交渉力があることも重要です。その点、弁護士は交渉のプロであることから、過失割合について法的知識をもとに主張・立証していきます。

交通事故を弁護士に依頼すべき6つのメリット

交通事故の過失割合について揉めた場合は、お早めに弁護士にご相談ください

交通事故の過失割合は示談交渉のなかでも争点になりやすく、被害者の方ご自身で相手方保険会社と交渉していくのは難しいでしょう。相手方保険会社は交渉のプロであり、自社の損失を少しでも減らしたいため、被害者側の過失を大きく見積もってくる場合もあります。

交通事故に詳しい弁護士であれば、相手方が提示する過失割合が正しいのか精査ができ、間違っている場合は法的な観点から適正な過失割合を主張・立証していくことが可能です。

私たち弁護士法人ALGは、交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。ご相談者様の代理人として相手方保険会社と交渉し、適切な過失割合に修正できるよう尽力いたします。過失割合についてお悩みやお困り事がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。