監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
交通事故ではすべての損害が確定した後、示談交渉を行うのが一般的です。当然ながら、示談交渉がまとまらなければ示談金を受け取ることはできません。
交通事故の示談交渉にかかる期間は、2ヶ月~1年程度が目安となります。しかし、なかには「早く示談を終わらせたい」、「早く示談金を受け取りたい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
では、示談を早く終わらせることは出来るのでしょうか?
この記事では、事故別の示談交渉の期間や、示談交渉で時間がかかる理由などについて解説していきます。
目次
示談交渉には何日くらいかかる?事故別の期間目安
示談交渉による解決までの期間は、以下のように大きく分けることができます。
- 示談交渉の準備期間
損害が確定するまでの期間です。
- 示談交渉開始から示談成立までの期間
この期間は、どの程度事実に争いがあるかによって異なります。
ここからは、事故態様別に①、②の期間の目安とその理由について解説していきます。
物損事故の場合
物損事故とは、被害者に怪我がなく、車両など「物」のみが損害を受けた事故のことです。物損事故の事故発生から示談成立までにかかる期間は、一般的に2ヶ月~3ヶ月程度でしょう。
物損事故では、損害額を確定するために車の修理費や買替費用の見積もりを出す必要があり、これらの見積書が出るまでにおよそ1ヶ月程度かかるでしょう。物損事故の場合は、示談交渉が比較的スムーズに進む場合が多く、1ヶ月以内に示談が成立することも少なくありません。
しかし、なかには過失割合や修理の必要性などが争点となり、示談成立まで2ヶ月~それ以上かかるケースもあります。
人身事故の場合
物損事故に対して、被害者が怪我をしている事故を「人身事故」と言います。そして、人身事故の場合では、「怪我が完治した場合」と「後遺障害が残った場合」で、示談成立までの期間が大きく異なります。
- 怪我が完治した場合
怪我が完治した場合は、治療が終了した時点ですべての損害が確定しているため、示談交渉を開始することができます。怪我が完治した場合は、後遺障害が残った場合より、請求する示談金の費目が少ないため、治療終了時から半年程度で示談成立することが多いでしょう。
- 後遺障害が残った場合
後遺障害が残った場合は、後遺障害等級認定申請をおこなって、結果が出た時点ですべての損害が確定し、示談交渉を開始します。示談期間の目安は後遺障害等級の認定を受けてから半年~1年程度となるでしょう。しかし、後遺障害等級の結果に納得がいかず、「異議申立て」をした場合は、さらに時間がかかります。
死亡事故の場合
死亡事故の場合、葬儀を終えた段階で全ての損害が確定し、示談交渉を開始します。しかし、一般的には、四十九日の法要を終えてから相手方保険会社が示談交渉を開始するケースが多いでしょう。
被害者が亡くなってしまった死亡事故の場合、「死亡慰謝料」や「死亡逸失利益」は高額になる傾向にあります。また、家族がなくなってしまった遺族の気持ちもあるため、示談交渉は長期化しやすく、事故発生から示談成立までは1年~1年半程度が目安となります。
当て逃げ、ひき逃げの場合
当て逃げ、ひき逃げの場合は、そもそも損害を請求する加害者が誰なのかを特定する必要があり、示談交渉を進めることが難しい場合が多いです。
また、加害者が事故現場から逃げているということは、自分の責任を正しく理解していないことも考えられ、示談交渉に応じない可能性もあります。さらに、示談交渉に応じたとしても、なるべく自分の損害を少なくしようと示談金の金額で争いになる場合もあるでしょう。
そのため、当て逃げ、ひき逃げのケースは、通常よりも解決までに時間を要することが予想されます。
交通事故の示談成立には時効があります。詳しくは以下のページをご覧ください。
交通事故の示談の時効についてまずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
示談にかかる期間を短くできないの?時間がかかる理由は?
示談交渉にかかる期間を短くしたい場合、相手の提案する示談案に合意すれば、早く終わらせることができます。
しかし、示談を早く終わらせたいからという理由で早期に合意することはおすすめできません。
まず、相手方保険会社が提示する金額は、被害者が本来受け取るべき金額ではないことが多く、低額となります。安易に合意してしまえば、適切な示談金を受け取れなくなる可能性が高くなってしまいます。
では、なぜ示談は時間がかかるのでしょうか。原因を探っていきましょう。
示談に時間がかかる理由
示談に時間がかかる理由として、「互いの主張が一致しないから」という点が挙げられます。
被害者側は、当然、適切な示談金を受け取るための主張を重ねるでしょう。しかし、加害者側は少しでも支払いを減らすために、被害者とは異なる主張をします。
その主張のぶつかり合いで示談が進まなくなってしまうのです。
例えば、事故の責任割合を表す過失割合は、当事者が事故の様子から話し合って決めるものです。
しかし、加害者側保険会社は、加害者からの話をもとに過失割合を設定していることも多く、被害者側に多くの過失がついている場合もあります。
過失割合は、その割合分示談金が減額されるものです(過失相殺)。そのため、過失割合についてお互いの主張が対立し、示談が長引くことも多くあります。
詳しくは以下のページもご覧ください。
交通事故の示談交渉が進まない原因と対処法自分で示談交渉をしようとしたら期間はどれくらいかかる?
被害者の方がご自身で示談交渉を行う場合は、前述した期間の目安よりも長引く可能性が高くなります。
まず、加害者側保険会社は交渉のプロであり、被害者の方を「交渉の素人」として見てくるでしょう。その結果、適切でない金額で言いくるめられるおそれや、こちらの主張を聞き入れてもらえないおそれがあります。
交通事故の被害者といっても、加害者側保険会社にとっては自社の損失を少なくすることが第一であり、被害者の気持ちに寄り添った提案をしてくれるわけではありません。
早く示談を終わらせたい場合には、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
詳しくは以下のページもご覧ください。
交通事故の示談交渉は自分でできる?交通事故の示談は弁護士にお任せください
交通事故の示談交渉には、交通事故や法律の専門知識と巧みな交渉術が必要となります。
少しでも示談交渉の期間を短くしたい、適正額で示談金を受け取りたいとお考えの場合は、私たちにご相談ください。
私たちには、交通事故に精通した弁護士が多数在籍しております。交通事故の示談交渉にも慣れていますので、法的な観点から主張・立証していき、巧みな交渉術でスムーズに示談を進められる可能性が高まります。
また、弁護士はあなたの代理人となって示談交渉を行いますので、加害者側保険会社とのやり取りから解放され、仕事や家事・育児に専念することができます。
交通事故の示談交渉について少しでもお悩みの場合は、私たちに一度お話をお聞かせください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)