監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
寄与分とは、被相続人の財産を維持したり増加させたりするために、特別に貢献した相続人がいた場合には、遺産分割の際に、その貢献した度合いに応じて認められる法定相続分に上乗せした相続分の増額分をいいます。
本ページでは、この寄与分を請求するにあたり期間制限があるのか、2019年の民法改正時に新しく創設された特別寄与料について解説します。
目次
まずは知っておきたい「寄与分」の意味
寄与分とは、家業を手伝ったり、介護を行ったり、金銭の給付をしたりするなどして、被相続人の財産を維持したり増加させたりする特別の貢献をした場合に、遺産分割の際にその貢献度を上乗せして分割の方法を決めることが出来るものです。
もっとも、これは、法律で定められている相続人(法定相続人)が行った貢献度合いに限られています。
寄与分が認められるための要件
寄与分とは寄与分は、だれでも認められるものではなく、条件があります。
①法定相続人であること
いくら被相続人の財産の維持増加に貢献したとしても、被相続人の法定相続人でなければ、認められません。
②財産が維持・増加していること、財産の維持・増加と因果関係があること
被相続人の財産の増加に貢献している必要があります。
③期待を超える貢献があること
親族間では通常相互に協力することが想定されていますので、この通常考えられる貢献を超えた特別の貢献をしている必要があります。
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寄与分に時効はあるのか?
寄与分の請求をするにあたって、時効はありませんので、過去の寄与分を主張することも可能です。
ただし、寄与分は遺産分割の協議をする中で主張をしますが、遺産分割協議が完了するとその遺産分割の内容を後から覆すことはできないので、寄与分の主張を遺産分割協議が完了した後に求めることはできなくなります。
そのため、寄与分の請求に時効はないものの、実質的には遺産分割協議中に請求をしないといけません。
昔の寄与分が認められにくいのは本当?
寄与分の主張は、時効がないので、過去にさかのぼって主張をすることは可能です。
もっとも、あまり昔の寄与分を主張しようとすると、その詳しい内容を覚えていなかったり、貢献の内容を客観的に示す資料がなかったりして、その立証が難しくなり、寄与分が認められにくくなる危険があります。そのため、寄与分を主張するのであれば、その資料や記録は残しておいた方が良いですし、寄与の内容はなるべく早めに主張をすることをお勧めします。
「特別寄与料」には期限があるため注意!
2019年7月1日施行の民法改正にあたり、特別寄与料という制度が新たに創設されました。法定相続人ではない者が、被相続人の財産の維持、増加に貢献した場合に、その貢献を考慮するための制度です。特別寄与料を求めるためには、①被相続人の相続人ではない、②無償で労務を提供したこと、③②によって被相続人の財産の維持、増加に特別に寄与したことが要件となります。
この特別寄与料という制度は、寄与分とは異なり、主張における期間制限があり、注意が必要です。
特別寄与料の消滅時効
特別寄与料には、特別寄与者が「相続の開始及び相続人を知った時」から「6か月」経過したときに消滅時効となります。消滅時効とは、権利を有していても、一定期間行使しないことでその権利が消滅してしまう制度ですので、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月経過したときには、特別寄与料を請求する権利があったとしても、その主張をすることが出来なくなります。
特別寄与料の除斥期間
特別寄与料の請求には、消滅時効の他に、「相続開始の時か」ら1年を経過したときに除斥期間となります。除斥期間は、法律で定められている期間を経過すると、当然にその権利が消滅する制度で、消滅時効とは異なり、この期間を伸長することはできません。そのため、「相続の開始」から1年を経過すると、特別寄与料を請求することは完全にできなくなってしまいます。
寄与分を主張するためのポイント
寄与分は、遺産分割の内容にも大きく影響を与えるものですので、なるべくはやい段階で主張をする必要があります。そして、共同相続人間で、当該寄与分について争いがない場合に問題はないですが、争いが発生することを想定して、その根拠となる証拠を集める必要があります。
弁護士にご相談、ご依頼いただければ、寄与分の的確な主張や証拠収集のサポート、証拠に基づく寄与分に関する主張を行うことが出来ます。
寄与分を請求する流れ
寄与分を主張する方法寄与分は、遺産分割協議の中で取り決めを行うことになります。
遺産分割は、まずは、共同相続人間で遺産分割協議を行います。当事者間の遺産分割協議で合意ができない場合には、裁判所で行う遺産分割調停を申し立て、調停内で協議を行います。調停でも合意ができない場合には、裁判官が判断する遺産分割審判の中で判断をすることになります。
寄与分も、この手続きの流れの中で行うことになります。
よくある質問
遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?
遺産分割協議は、法的安定性の観点から、一度協議が成立した後に遺産分割協議をやり直すことはできません。例外的に、共同相続人の全員がやり直すことに合意をした場合、遺産分割協議において相続人が騙されたり脅迫されたりした場合など限定されています。
寄与分は、遺産分割協議の中で主張をするため、限定的な場合を除いて、遺産分割協議が成立した後には寄与分の主張をすることはできません。
特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?
特別寄与料の消滅時効は、時効の完成猶予、時効の更新等を行うことで時効の延長をすることは可能です。他方で、特別寄与料の除斥期間は、当然に権利が消滅するので、時効を延長することはできません。
夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?
特別寄与料は、被相続人の相続人であることが要件です。夫の親の妻は、被相続人の相続人ではないので、寄与分は認められません。
他方で、特別寄与料の請求あれば、妻は、被相続人の相続人ではありませんが、被相続人の親族にあたるため、請求することが出来ます。
夫の妻が配偶者の親の介護をすることはよくあるものの、その貢献が評価されないのでは不公平であることから、新設された特別寄与料の制度が設けられました。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。
寄与分には時効はありませんが、証拠収集が可能な段階で集めておく必要や記憶喚起の必要があることから、なるべく早めに主張した方が良いですし、証拠の収集などその準備も早めに進める必要があります。
新設された特別寄与料には、消滅時効だけでなく、時効の延長が認められない除斥期間も定められているので、相続の開始を知った場合には速やかに対応する必要があります。
寄与分も特別寄与料も、早め早めの対応が大切ですので、相続財産への貢献があると考えておられる方はお早めに弁護士へのご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)