監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
「法定相続人」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。法定相続人は、その名の通り、相続が発生したときに問題になります。では、法定相続人とは、何でしょうか。以下では、法定相続人について、解説していきます。
法定相続人とは
法定相続人とは、読んで字のごとく、法律で定められた相続人のことをいいます。民法では、886条以下に法定相続人について規定しています。誰が法定相続人に該当するかは、相続人調査を行い確定していきます。
法定相続人の範囲
法定相続人となりうるのは、被相続人の配偶者、子供、親兄弟、祖父母、孫、ひ孫、甥姪です。以上に挙げた人々は、法定相続人になりうる人であり、必ず相続人になるわけではありません。以下で、法定相続人となる場合をあげていきます。
配偶者は必ず相続人になる
被相続人が死亡した時点で配偶者がいれば、その配偶者は必ず法定相続人となります(民法890条)。配偶者については、他の法定相続人と異なり、特別な配慮がされています。
子供がいる場合
子どもがいる場合、配偶者と子どもが相続人となります。その際、配偶者が遺産の半分について権利を有し、子どもは、残り半分を、頭数で割ることになります。やはり、配偶者は、相続割合でも優遇されています。
子供がいない場合
子どもがいない場合、被相続人の両親か祖父母といった、直系尊属がご存命の場合、配偶者とご両親らが遺産を分けることになります。この場合、子どもがいる場合とは異なり、配偶者は遺産の3分の2について権利を有します。
一方、ご両親ら、直系尊属がご存命でない場合も、ご兄弟、又は、甥姪がいれば、配偶者と、ご兄弟又は甥姪が相続人となります。この場合、配偶者は、遺産の4分の3について、法定相続分を有します。
子供がいるが離婚している場合の法定相続人は?
離婚した場合、配偶者はいない扱いになります。そのため、子どもだけがいる状態と同じになります。子どもだけの場合、ご両親ら直系尊属や、ご兄弟らには、相続権はなく、子どもたちだけで相続します。
死別などで配偶者がいない場合の法定相続人は誰か
配偶者がいない場合、子どもや孫がいれば、子どもや孫が法定相続人となります。子どもや孫がいない場合、両親などの直系尊属が法定相続人となります。両親ら直系尊属が亡くなっている場合、兄弟や甥姪が法定相続人となります。
独身の場合の法定相続人は誰か
独身の場合、結婚はしなくともシングルマザーやシングルファーザーのような状況で、子どもがいる場合はありますので、結局は、配偶者がいない場合と同じとなります。
兄弟・姉妹は法定相続人になるか
上述しているように、兄弟姉妹は、被相続人に子どもや孫がいないか、既に全員死亡している場合で、かつ、直系尊属全員が死亡している場合です。そのため、法定相続人になりますが、なる確率は低いといえます。
甥・姪は法定相続人になるか
甥姪も、上述のように法定相続人になりえます。もっとも、これは、代襲相続が発生した場合です。代襲相続とは、法定相続人が相続前に死亡したり、相続欠格事由がある場合に、当該法定相続人の子どもに相続権が移る制度です。つまり、被相続人が死亡する前に、兄弟姉妹が死亡したり、相続欠格事由にあたる行為をしていたときは、甥姪に代襲相続が発生し、法定相続人になります。
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孫は法定相続人になるか
上述のように、代襲相続が発生した場合に孫も法定相続人になります。しかも、甥姪の場合と異なり、再代襲相続が発生しますので、ひ孫も法定相続人になりえます。
養子は法定相続人になるか
養子も、もちろん法定相続人になります。しかも、特別養子縁組でない場合、養子に出した親の子でもあるため、双方で法定相続人になります。
法定相続人かどうかは、血のつながりではなく、法律上のつながりで判断されるためです。
相続には順位があり、全員が相続できるわけではない
上述のように、全員が法定相続人となるわけではありません。すべてにおいて、配偶者が優先し、子どもがいれば、配偶者の次に優先して法定相続人となります。両親ら直系尊属は、子どもや孫、ひ孫がいないときに初めて法定相続人となります。そして、兄弟姉妹、甥姪は、被相続人の子どもら直系卑属、両親ら直系尊属がいないときに初めて相続人となります。
法定相続人がいない場合
では、上述した法定相続人がいないときはどうなるのでしょうか。
法定相続人がいない場合、まず、相続人の捜索の公告が出されます(958条)。それでも、法定相続人が発見できない場合、特別縁故者が請求すれば、財産の全部又は一部を受け取れる場合があります(958条の3)。そのような手続きを経て、なお、遺産が残った場合、その遺産は国庫に帰属し、国の物になります(959条)。
法定相続人についてお困りなら弁護士にご相談ください
誰が法定相続人となるのかについて、相続の場面では問題になることが多々あります。法定相続人となるかどうかは、相続できるかどうかに直結するからです。法定というだけあって、これらの問題には、高度な法的視点が必要になる場合があります。そのため、法定相続人について、ご質問があれば、弁護士にまずはご相談をした方がよいでしょう。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)