監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
離婚時に取り決めた養育費の額について、後になって相手方から減額を求められることがあります。
本記事では、実際に相手方から減額を持ち掛けられた場合にどうすべきか、その対応方法や、養育費の減額が認められる場合と認められない場合の違い等についてご説明します。
目次
養育費の減額請求は拒否できる?
養育費の取り決めをした場合、その後、養育費の支払い義務者が一方的に養育費を減額することや、支払いを止めることは認められませんが、 養育費の取決め後に、それぞれの生活状況や収入等について変更があった場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
相手方から養育費減額の話があった場合、必ずしも承諾しなければならない訳ではありませんが、合意できない場合には、相手方から養育費減額調停を申し立てられることがあり得ます。
そのため、減額の申し出に対して拒否する場合には、相手方の言い分をよく把握した上で、対応策を考える必要があります。
養育費の減額が認められる条件
養育費の支払いは、子が経済的に自立するまで長期間続くことから、その間に、当事者の収入や生活状況等に変化が生じることが起こり得ます。
そのため、離婚時に養育費の金額が取り決められていたとしても、 離婚の際に取り決めたときには予測できなかった事情の変更があり、これを考慮しなければ著しく公平を害する場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法
養育費の減額について、相手方から交渉を持ち掛けられた場合、まずは相手方と養育費の金額について話し合うことになります。その話合いの中で、相手方の言い分を把握しながら対応策を検討します。
相手方が、養育費減額調停を裁判所に申し立てた場合には、さらに調停への対応を考えていく必要があります。
連絡を無視せず話し合う
相手方から養育費の減額を求めて話合いを要求された場合、まずは法的にその減額請求が妥当なのかどうかを検討し、対応を考えていく必要があります。
法的に減額請求が認められないと考えられる場合には、話合いを拒絶するという対応も一つの手段となり得ます。
他方で、法的に減額請求が妥当といえる場合は、話合いを無視して相手方から調停を申立てられてしまうより、むしろ話合いで進めた方が、減額幅を抑えた金額で合意できる可能性があります。
したがって、相手方からの連絡を完全に無視するのではなく、 話合いにより相手方の主張する事情をよく聞いた上で、対応を検討していくべきです。
生活が苦しいことを証明する
養育費の減額は、養育費の支払いをする側の事情だけではなく、養育費を受け取る側の事情も踏まえて判断されることになります。
養育費を支払う側の収入が減少していたとしても 、養育費をもらう側の収入も減少し、生活が苦しいという場合には、そのことを証明することで、養育費の減額を回避できる可能性があります。
調停で調停委員を味方につける
養育費減額調停を申し立てられた場合は、調停で調停委員を味方につけることも重要です。
調停委員は、当事者の間に入って話合いを調整する立場にありますので、調停委員を味方につけることができれば、こちらにとって有利な条件で相手方を説得してもらえる可能性があります。
また、最終的に、裁判官に対し、養育費の減額を認めないというこちらの主張の正当性を説得しなければなりませんが、通常、裁判官には、調停委員を通して事情が伝えられますので、その意味でも、 まずは調停委員をこちらの味方につけることが重要です。
折り合いをつけ減額幅を減らすのも1つの手
相手方の主張について法的な根拠があり、反論が難しい場合には、減額を完全に拒否するのではなく、その減額幅を抑えられるように交渉することも一つの手といえます。
相手方は、生活が苦しい状況であるからこそ減額を求めているという場合も多く、調停で時間をかけるよりも、早い段階で養育費の減額が見込めるのであれば、多少減額の幅を小さくしてでも合意したいと考えることもあり得ます。
そのため、早期解決のための譲歩として、 一定の減額を受け入れることとして金額を提示していくことも検討すべきでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
養育費の減額拒否に関するQ&A
養育費の減額請求を拒否したら、勝手に減額されました。残りを回収できますか?
公正証書や調停調書において養育費の金額を定めている場合、義務者の一存で勝手に減額することはできず、減額する場合は協議や審判で内容を変更する必要があります。
そのため、勝手に減額されたことで生じた未払分については、強制執行を申し立てることにより回収することができます。
他方、単に協議書を作成していたにすぎない場合や口頭での合意のみであったりした場合は、強制執行をすることはできません。
その場合には、減額に応じる代わりに、未払分はしっかり払ってもらうなど、強制執行以外の方法で回収することを試みる必要があります。
再婚を理由に養育費が減らされるのは納得できません。私はシングルで頑張っているのに…。減額拒否できますか?
相手方が再婚をしたことで、その扶養をすべき家族が増えたことは、法的には養育費の減額が認められる事情変更にあたる可能性があります。
しかし、再婚相手の収入によっては、扶養しなければならない家族が増えたとはいえない場合もあり、減額を拒否できることもあります。
再婚の予定があるので養育費を減らしたいといわれましたが相手が本当にいるのか疑問です。拒否できますか?
再婚相手の有無については、義務者の戸籍謄本等から確認することが可能です。
相手方が戸籍謄本等を示さない場合には、再婚相手の存在について不明ということで、減額を拒否することが考えられます。
なお、減額調停が申し立てられた場合には、調停委員からも、戸籍謄本等、再婚したことが証明できる資料を提出するよう求めることが多く、相手方が資料を提出しない場合は、減額を拒否しやすくなるといえます。
算定表通りの金額なのに、支払いが苦しいから養育費を減らしたいといわれました。拒否できますか?
離婚時に算定表を用いて金額を決めている場合、それは離婚当時の収入や子の人数等を前提として決めたものです。
そのため、相手方が養育費支払いについて苦しいと主張する理由が、離婚当時の収入よりも収入が下がったか、扶養家族が増えたといった事情によるものであるならば、裁判所は養育費減額を認める可能性が高いといえますので、その場合は減額を拒否することは難しいと思われます。
養育費の減額請求を拒否できるかは弁護士にご相談ください
相手方からの減額請求が法的に根拠のあるものか否か、反論しうるものであるか否かを判断するには、専門的な知識や経験が求められます。
そのため、相手方から養育費の減額を求められた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)