親権とは | 親権を決める流れと獲得のポイント

離婚問題

親権とは | 親権を決める流れと獲得のポイント

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

離婚する際に決めるべきことはいろいろありますが、なかでも「親権」についてはしっかりと決めておく必要があります。取り決めの内容によっては、離婚後、子供と一緒に暮らせなくなってしまう可能性がありますし、親権者が決まらないままでは、そもそも離婚することもできないからです。

ところで、親権とはどのような権利なのか、きちんと理解できていますか?
「親権について決める」といっても、具体的にどういった内容をどのように決めるべきなのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
今回は親権に関する基礎知識について、親権を獲得するためのポイントや取り決める際の注意点などを中心に解説していきます。

親権とは

親権とは、子供の身のまわりの世話や教育、財産の管理などをする親の権利・義務をいいます。親子関係は生涯変わりありませんが、親権者が必要となるのは“未成年の子供”に限られます。
日本では、結婚している間、父母である夫婦は共同で親権を行使します(民法818条3項)。これを「共同親権」といいます。しかし、離婚後は「単独親権」となるので、親権者となった父母のどちらかしか親権を行使できなくなります(同法819条1項、2項)。
親権は子供の成長に関わる重大な権利・義務なので、離婚時に必ず「親権者をどちらにするか」を決めなければなりません。

なお、親権の内容は、財産管理権身上監護権に分けられます。以降、詳しくみていきましょう。

親権の種類

財産管理権

財産管理権とは、子供の財産に関する権利です。
具体的には、子供の財産を管理する権利と、財産に関する子供の法律行為を代理する権利を指します。
財産管理権によって、親権者は、例えば子供の預貯金口座の通帳を預かったり、出入金記録を把握したりすることができます。また、アパートの賃貸借契約やスマートフォンの利用契約を子供に代わって締結すること、または本人が契約する旨に同意することなども、財産管理権の一環として行うことができます。

なお、財産管理権を行使する親権者は、同時に子供の財産を守り、子供を保護する義務も負うと考えられています。

身上監護権

身上監護権とは、子供の心身の成長のために、身の回りの世話や教育をする権利です。単に「監護権」と呼ばれることもあります。
身上監護権の内容は、次のように分けることができます。

  • 監護教育権…子供を健やかに成長させるために必要な措置をとる権利
  • 居所指定権…子供の住む場所を指定する権利
  • 懲戒権…監護や教育に必要な範囲で子供にしつけをする権利
  • 職業許可権…子供にアルバイト等をすることを認める権利
  • 身分行為の代理権…子供が結婚や養子縁組等をする際に同意する権利、または代わりに契約を締結する権利

監護権を持つ親は、この権利に基づいて子供を保護し、成長を助ける義務も負うことになります。

親権と監護権について

監護権は親権の一部に含まれるので、基本的に「親権者(親権を持つ人)=監護権者(監護権を持つ人)」となります。
しかし、親権から監護権を切り離して、それぞれの権利を父母で分けて持つことも可能です。この場合、親権者は財産管理権を、監護権者は身上監護権をそれぞれ持つことになります。

ただし、親権と監護権の切り離しは、子供にとって本当にメリットがあるのか、混乱や葛藤を生まないかをよく考えたうえで、子供の利益を第一に行うべきだと考えられています。
例えば、子供の面倒をみるのは母親の方が適しているものの、浪費癖があるなど財産管理能力に大きな問題があるケースなどでは、監護権者を母親・親権者を父親といったように権利を切り離すメリットがあるでしょう。

親権が有効なのはいつまでか

親権は、基本的に子供が成人するまで行使することができます。
つまり、2021年7月時点では、子供が満20歳になるまでということになります。

ただし、2022年4月からは成年年齢が18歳に引き下げられるので、親権の有効期間は、子供が満18歳になるまでに短縮されます。

離婚の際に親権を決める流れ

親権をどちらが持つか決めるにあたっては、まずは夫婦で話し合います。
話し合いで決着がつかない場合は、離婚調停を申し立て、中立的な立場の調停委員を介して親権について話し合います。調停の中では、父母のどちらがより親権者として適任なのかを判断するために、必要に応じて、家庭裁判所調査官による調査が行われることもあります。
しかし、調停でも親権について合意できず不成立に終わった場合は、離婚裁判を提起して、最終的な判断を裁判所に委ねることになります。

親権獲得のためのポイント

親権獲得に向けて有利に事を進めるためにも、次のポイントをアピールすることをおすすめします。

・十分な監護能力があること
子供を養育できるだけの十分な監護能力があると認めてもらうためにも、心身ともに健康であること、家事ができ、経済観念にも問題がないことなどをアピールすると良いでしょう。

・監護実績があること

これまで子供の世話を適切にしてきた実績があれば、今後もしっかりと監護できる可能性が高いと判断されるため、親権を獲得するうえで有利になります。

・離婚後も子供を適切に養育できる環境を用意できること
子供と一緒に過ごす時間を長くとれるか、仕事などで忙しい場合には代わりに面倒をみてくれる監護補助者がいるかといった点も重視されます。有利な事情がある場合はアピールしましょう。

・子供との関係性が良好であること
日頃から子供と十分なコミュニケーションをとっており、適切な親子関係が築けていることも、親権を決める際に有利な事情となります。また、子供がある程度の年齢であれば、子供自身の意向も尊重されます。

父親が親権を取得することは可能?

父親でも親権を獲得することは可能です。 とはいえ、特に幼い子供は母性を感じさせる存在と暮らした方が健やかな成長につながると考える「母性優先の原則」があるため、一般的に、母親と比べて父親は親権を獲得しにくいといわれています。

しかし、親権者は「父親」か「母親」かではなく、より子供の福祉に適うのはどちらかという観点で決めるべきです。
したがって、母親より父親を親権者とした方が子供の健全な成長につながるとアピールできれば、親権を獲得できる可能性が高まるでしょう。
例えば、以下のような主張が効果的といえます。

  • 現在まで主に父親が子供の世話をしてきたこと
  • 子供が父親の方によりなついていること
  • 離婚後の監護能力や意欲も十分にあること 等

無職でも親権を獲得したい場合

専業主婦(主夫)だった方など、無職の方も親権を獲得できます。

そもそも親権者は、父母のうち、より子供にとって利益になる方を選ぶべきだと考えられています。 具体的には、これまでの監護実績や子供との関係性などが判断材料となりますが、父母の経済力はあまり重視されません。なぜなら、子供が自立するまでにかかる費用は父母で分担するべきだと考えられているので、無職の方が親権を獲得した場合、もう一方から養育費を支払ってもらえるからです。
このように、無職の方の経済面でのマイナスは、養育費を受け取ることである程度は補うことができます。

また、一人親家庭には複数の公的な扶助制度があります。こうした制度による補助金と養育費を合わせれば、子供を養育しながら暮らしていくことは十分にできると考えられるため、無職の方でも親権を獲得できる可能性は十分にあります。

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親権を決める際に注意すべきこと

安易に決めると後々の変更は困難です

一度決めた親権者を変更するには、家庭裁判所による親権者変更調停・審判の手続きを取らなければなりません。つまり、父母の話し合いだけで変更することはできなくなりますので、離婚時に、親権者について安易に決めることは避けるべきです。

また、親権者変更調停を申し立てたとしても、親権者の変更が必ず認められるとは限りません。
親権者の決定と同様、親権者の変更は子供の利益を第一に考えて行われるべきなので、子供の現在の生活環境を変えてでも親権者を変更すべき理由や必要性がなければ認められません。

したがって、下記のようなケースでなければ親権者の変更は難しいでしょう。

  • 子供が親権者から虐待や育児放棄などを受けているケース
  • 親権者が亡くなった、行方不明になった、または重病にかかったケース
  • 子供自身が親権者の変更を希望しているケース
  • 養育状況が大きく変わったケース

親権獲得後の養育環境で、親権停止・喪失する場合も

親権について決めた後であっても、子供の養育状況によっては、親権を一時停止したり(親権の停止)、喪失させたり(親権の喪失)することができます。それぞれの概要は以下のとおりです。

親権の停止
2年を超えない範囲で期限を設けて、親権を行使できないようにすることをいいます。
親権者が子供の進学や自立を邪魔しているなど、親権の行使が困難・不適当で、子供の利益を害しているときに「親権停止の審判」を申し立てることで、認められる可能性があります。

親権の喪失
親権者から親権を失わせることをいいます。
親権者が育児放棄や虐待をしているなど、親権の行使が著しく困難・不適当で、子供の利益が著しく害されているときに「親権喪失の審判」を申し立てることで、認められる可能性があります。

なお、親権の停止・喪失を請求できるのは、子供本人、子供の親族、検察官、児童相談所長などです(平成23年民法改正により)。

子を連れた勝手な別居は不利になる場合も

親権者を決める際には監護実績が重視されるので、“子供と一緒に暮らしている”という事実は、親権を獲得するうえで基本的に有利な判断材料となります。 しかし、夫婦で話し合いもせずに勝手に子供を連れて別居したような場合、「違法な連れ去り」と判断され、かえって不利な立場になってしまう危険があります。

例えば、別居している子供を通学路で待ち伏せして連れ去る、別居中に行った面会交流の際に子供を帰さないといった強引な方法での連れ去りは、違法と判断される可能性が高いでしょう。

一方、自分や子供を配偶者の暴力から守るために子供を連れて別居する行為は、子どもの利益を守る正当な理由があるとして、親権者の決定にあたって不利に働くことはないと考えられます。

親権を獲得できなかった場合の養育費について

親権者でなくとも、子供が自立するまでの養育にかかる費用は負担する必要があります。これを「養育費」といいます。
養育費には、子供の衣食住にかかる費用のほか、学費、習い事の費用、病院代、お小遣いなど、子供が生活するうえで必要になる費用全般が含まれます。

養育費を支払う義務は、親権のように、子供が成人したら当然に消えるわけではありません。あくまで“子供が自立するまで”は支払い続ける必要があります。
例えば、子供が高校卒業後に就職するようなケースでは、20歳未満でも自立したと考えられる一方、大学進学するケースでは、少なくとも大学を卒業するまでは自立していないと考えられるでしょう。
このように、養育費について取り決める際には、子供の進学の可能性等を考慮する必要があります。

親権が取れなかった側の面会交流について

離婚後に親権者ではなくなったとしても、「面会交流」によって、子供と交流することはできます。
面会交流とは、離れて暮らす親子が交流することをいいます。交流の手段はさまざまで、直接会ったり、時には宿泊をしたりするケースもあれば、手紙やメールのやりとり、電話やオンライン通話などで交流を図るケースもあります。

ただし、離婚時に面会交流のルールを細かく取り決めておかなければ、後々トラブルになって子供と会えなくなってしまうおそれがあります。親権を獲得できなかった場合を想定して、面会交流についてもきちんと話し合っておくことが大切です。

親権問題は弁護士に相談して入念な準備をしましょう

父母がどちらも親権者になることを希望する場合、激しい争いになってしまうことも珍しくありません。だからといって、離婚をすることに重点をおいて安易に妥協して親権者を決めることは避けるべきです。なぜなら、一度決めた親権者は簡単には変更できないからです。

親権を獲得されたい方は、ぜひ親権問題に強い弁護士にご相談ください。
弁護士は、ご相談者様の事情を丁寧に聴き取ったうえで、親権を獲得するために最良な方法を提案することができます。また、弁護士が代理人となって協議に臨むことで、冷静にお互いの主張を伝えられるようになるので、話し合いがスムーズに進む可能性があります。

特に弁護士法人ALGには、親権問題をはじめ、多数の離婚問題を取り扱った弁護士が在籍しています。親権問題でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士とスタッフが対応させていただきます。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。