監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
離婚調停でどのように振舞えばいいのか、わからない方も多いでしょう。
言いたいことを、言いたいように伝えたばかりに、調停委員に悪い印象を持たれ、調停が自分の不利なように進んでしまうといったことは避けた方が良いでしょう。以下では、調停の場ですべきでない言動について解説していきます。
目次
離婚調停でしてはいけない不利な発言
離婚調停でしてはいけない発言は、以下のとおり様々です。
意識して離婚調停に臨まなければ、つい、過度に相手を貶めるような発言をしてしまったり、自分の考えていることを全て話すなど手の内を見せてしまい、譲歩せざるを得ない状況を作ってしまうことがあります。
調停の場は、調停委員という第三者を介した話合いの場なので、カウンセリングや思いを吐露する場でないことは心に留めておきましょう。
①相手の悪口や批判
離婚調停をするぐらいですから、相手に対して言いたいことや恨み辛みもあるでしょう。
しかし、それを調停という場でそのまま調停員にぶつけることは避けた方が良いです。人に対し、負の感情を抱きやすい、感情的になりやすく冷静な話し合いができないといった印象を持たれてしまいます。
そうすると、調停委員に耳を傾けてもらったり、自分に有利なように話し合いを進めることも難しくなってしまいます。
本当に必要なことを適切に伝えられるよう心掛けるようにしましょう。
②矛盾する発言
以前の自分の主張と矛盾するような発言をすることもやめましょう。
例えば、相手はケチなためお金の管理を細かくしてくると言ったかと思えば、高額なものは全て相手が購入していた、というような主張です。
事実を自分の考えに沿って正しく伝えられるよう、思ったことをそのまま口にしないことが大切です。予め伝えたいことをまとめておくとこのような矛盾は避けやすいです。
③固執しすぎる発言
一般的に通りにくい主張を通そうとしたり、絶対にこれだけは譲りたくないという内容が説得的なものでなかったりすると、調停委員からも呆れられてしまいます。
親権など強く争わなければならない条件以外は、そこまで言うなら、もう調停で話し合うのは無理なので訴訟でやってください。」など言われないように、一定程度は譲歩するようにしましょう。
④譲歩しそうだと思われる発言
固執しすぎないことが大切であるとは言いましたが、ここまでなら譲歩するだろうと相手から悟られるような発言はしないようにしましょう。
例えば、「ここまでの金額ならもらえなくても仕方ないかなと思っています。」、「正直、早く離婚を成立させたいといった気持ちが1番強いので他は諦めます。」といったような発言です。
相手から、お金をあまり支払わなくても済むぞ、などと付け込まれてしまうので、交渉の場であることを忘れないようにしましょう。
⑤他の異性との交際などをほのめかす発言
調停の場で、離婚を求める理由や相手との婚姻関係継続が困難な理由を聞かれた際、交際中の異性や再婚予定があることを説明してしまう人がいます。
たしかに、夫婦関係が破綻した後であれば、異性との交際も不貞行為にはなりませんが、離婚理由がこの本人にあるのではないか、実は以前から交際が続いており、不貞していたのではないか、といった印象を持たれる可能性があります。
不用意な発言で不利な状況にならないようにするため、このような発言は極力避けるべきです。
⑥相手に直接交渉するといった発言
調停委員を介すため、上手くニュアンスが伝わっていないのではないかと不安になり、つい「もう自分で相手に話してみます!」と強気に発言する人がいますが、これは望ましくありません。
相手を攻撃するのではないか、なんとしてでもお金を取ろうとするのではないか、と調停委員から警戒され不利な方向に話し合いが進んでしまうかもしれません。思うようにいかなくても、相手と直接交渉をしようとするのは避けましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停で聞かれること
聞かれる内容 | |
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申立人 | ・なぜ離婚をしたいのか ・相手方との話し合いはできたのか ・離婚にあたりどのような条件を提示したいのか ・離婚後の生活をどのように考えているか ・(子どもがいる場合)親権は欲しいと考えているか |
相手方 | ・離婚に応じる意思はあるか ・条件次第では離婚に応じる場合、どのような条件を求めるか ・(子どもがいる場合)親権は絶対に争いたいか |
離婚調停中にしてはいけない行動
離婚調停に段階が進んでいるのであれば、調停委員や弁護士を介して冷静に交渉を進めなければなりません。それにもかかわらず、身勝手な行動をとることによって、信頼を失うだけでなく違法行為をしてしまったことにより、本来得られるはずだったものまで失ってしまうことがあります。
思い通りに進めたいあまり、身勝手な行動を取らないよう気を付けましょう。
①配偶者以外との交際や同棲
夫婦関係が破綻しており、修復が困難な状況であっても、離婚が成立するまでは、異性と交際することは控えましょう。
不貞行為を疑われて慰謝料請求をされる可能性や不誠実と見られて有利に交渉を進めることが難しくなるかもしれません。
②相手に直接連絡する
相手に電話をかけたり、LINEやメールを送って直接連絡を取ろうとすることは控えましょう。直接交渉ができないからこそ、調停に進んでいるので、あまりしつこく接触しようとすると、警察に通報されるといったことも考えられます。
冷静に物事を伝えられなければ、相手にも響かずかえって不利な結果になってしまいますので、気を付けましょう。
③離婚調停を欠席する
離婚調停を無断で欠席することは、絶対にしないようにしましょう。
話し合いを諦めたことになってしまい、想定よりも不利な結果になる可能性もあります。
場合によっては、5万円以下の過料が設定されますので、都合が悪いときには期日の日程調整をお願いするなどして、出席するようにしましょう。
④子供を勝手に連れ去る
親権を取れないのではないかとたまりかねて、子どもの学校帰りや面会交流中に、子ども連れ去ってしまう人がいます。このような行為は、誘拐と解される違法行為なのでしてはいけません。
また、身勝手な行動を取る人という印象を持たれ、調停員から警戒された結果、自分に有利な結果に繋がらない可能性もあります。
離婚調停を有利にすすめるためのポイント
離婚調停を有利に進めるためには、①感情的にならない、②自分の主張に固執しすぎない、③事実を冷静に説明できるようにする、ことが重要です。
伝えたいことがたくさんあるとしても、自分の不満や主張を調停委員にぶつけてしまうと話合いも進みません。有責配偶者であっても、冷静に話し合いをできると結果的に悪くない条件に落ち着くこともあります。
また、提出を求められた資料に関しては、拒否せず期限までにきちんと提出するようにしましょう。誠実な態度を示せると、調停委員にも話が伝わりやすくなります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停で不利な発言をしないようまずは弁護士にご相談ください
離婚調停は初めての経験で、何をすればいいのか、どのような準備が必要なのか、わからない方がほとんどだと思います。わからないまま離婚調停に臨んでしまうと、相手には代理人がいるのに自分だけいないばかりに、不利な結論であることに気付かず合意してしまうことも少なくありません。
根拠に基づいて適切な主張をすることが重要なので、法律の専門家である弁護士に、どのように話し合いを進めて行けばいいのか法的アドバイスを求める方が良い結論に繋がりやすいでしょう。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)