相続放棄しても生命保険は受け取れる?税金に関する注意点も解説

相続放棄しても生命保険は受け取れる?税金に関する注意点も解説

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

相続放棄をした場合、相続人は初めから相続人ではなかったことになりますので、被相続人の資産も負債も証明しないのが原則です。しかし、生命保険金については、相続放棄をしたとしても受け取ることは可能です。ただし、被相続人の生命保険の契約内容によっては、相続放棄によって受け取ることができなくなるケースもあり、保険の契約内容をよく確認する必要があります。
また、相続放棄をしたとしても、生命保険金を受領するのであれば、相続税などの税金の負担が生じる場合もありますので注意が必要です。

相続放棄しても生命保険(死亡保険金)は受け取れる?

相続放棄とは、相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を受け継がずに放棄する手続きです。そのため、相続放棄をした場合、相続人は被相続人が有していた権利を主張することはできなくなるのが原則です。

もっとも、生命保険金は、相続によって被相続人の遺産を受け継ぐことではなく、保険契約に基づき受取人固有の権利として受け取ることであり、相続とは直接的な関係がないことから、相続放棄による影響を受けません。
つまり、生命保険の受取人が誰に指定されているかによって、相続放棄をした後に生命保険金を受け取ることができるかどうかが変わってくることになります。

相続放棄とは

相続放棄しても生命保険が受け取れるケース

民法上では生命保険は相続財産には含まれず、保険金受取人の固有の財産と扱われることになりますので、相続放棄したとしても、保険金受取人として固有の権利に影響が生じることはありません。
そのため、生命保険の受取人に相続人が指定されている必要がありますが、受取人に指定されていれば、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができるということになります。
また、受取人として指定されていなくても、保険契約の約款上、「法定相続人を受取人とする」と定めている場合も同様です。法定相続人が複数いる場合には、それぞれの相続人の法定相続分に従って、それぞれの相続人が生命保険金に対して固有の権利を有することになります。

相続放棄すると生命保険が受け取れないケース

相続放棄をしても生命保険金を受け取るためには、保険金受取人に指定されている必要がありますので、受取人が被相続人になっている場合には、相続人は、「被相続人が生命保険金を受け取る権利」を相続するにとどまり、「受取人固有の権利」を主張することができません。
そのため、相続人が受取人に指定されていない場合、相続放棄をしてしまえば、相続財産に対する権利を放棄することになるわけですので、生命保険金を受け取ることはできません。
また、被相続人が契約者となっている生命保険の解約返戻金が存在する場合にも、解約返戻金は相続財産の一部として扱われることになりますので、相続放棄をすると受け取ることができないという結論になります。

生命保険を受け取ってしまったら相続放棄できない?

相続人が受取人に指定されている生命保険を受け取ったとしても、受取人固有の権利を主張したに過ぎませんので、相続放棄をすることはできます。
他方で、被相続人が受取人に指定されている生命保険は、被相続人に相続財産に含まれるものですので、相続人が子の生命保険金を受け取った場合には相続について単純承認をしたとみなされることになり、相続放棄ができなくなるのが原則です。
そのため、被相続人が受取人に指定されている生命保険金を受領してしまった後に、被相続人名義の多額の負債が発覚した場合には、相続放棄をするためには、保険金受領時点で債務の存在を知らなかったことなどの立証をする必要があります。

受け取っても相続放棄に影響しない財産について

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相続放棄後の生命保険にも相続税がかかる

相続開始時、民法上は、被相続人に帰属していたすべての権利義務が相続財産となる一方、相続税法上は、民法上の相続財産に加えて、被相続人が死亡したことにより発生し、相続人が受け取った相続財産に類似した財産(=みなし相続財産)も含めて相続財産と扱われます。
生命保険金は受取人固有の権利ですので、民法上の相続財産には該当しませんが、被相続人の死亡によって発生する権利であって、相続税法上のみなし相続財産には該当します。
そのため、相続放棄をした場合も、保険金受取人として生命保険金を受領した相続人に対しては、相続税法上のみなし相続財産を受領したものとして相続税が課されます。

相続放棄した本人は非課税枠が使えない

生命保険金には、遺族の生活の保障という目的を持つことから、相続税法上、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。遺族の生活保障の実現に趣旨があるわけですので、非課税枠は「相続人」が生命保険金を受け取る場合に限って利用することができます。
相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は初めから「相続人」ではなかったことになり、保険金受取人固有の立場で生命保険金を受領しますので、「相続人」として生命保険金を受領することにならないことから、非課税額を利用することはできません。

また、相続放棄をした相続人も相続放棄をしていない相続人の非課税金額を計算する際の法定相続人の人数には含めることができます。
例えば、法定相続人が配偶者と子の2人で双方が生命保険金の受取人に指定されていた場合、子のみが相続放棄をしたとすると、子は受取人として生命保険金を受領できるものの、非課税枠の適用は受けられません。他方で、配偶者には「500万円×2人=1000万円」まで非課税枠の適用があり、保険金が4000万円だとすると、相続税の対象となるのは3000万円までという計算になります。

相続放棄しても基礎控除は適用される

相続税には、生命保険金に対する非課税枠とは別に基礎控除の精度があります。基礎控除の枠は、「3000万+600万円×法定相続人の数」となります。基礎控除には相続放棄をした相続人も含めて法定相続人に数を計算することができます。

そして、相続放棄をした場合でも、基礎控除の適用を受けることはできますので、受領した生命保険金が基礎控除額の範囲内であれば、相続税はかからず、相続税の申告も不要です。
例えば、法定相続人が配偶者と子の2人で双方が生命保険金の受取人に指定されていた場合、配偶者と子ともに相続放棄をしたとすると、どちらも生命保険金の非課税枠の適用は受けられません。他方で、「3600万円+600万円×2人=4800万円」の基礎控除の適用がありますので、保険金が8000万円だとすると、配偶者と子のそれぞれの取り分は4000万円でなり、基礎控除の枠内に収まることになる結果、相続税がかからないことになります。

贈与税や所得税が課税されるケースも

被相続人を被保険者とする生命保険の場合でも、契約者と受取人がどうなっているかによっては、相続税ではなく、贈与税や所得税が課税されることになります。
まず、被保険者は被相続人、契約者が相続人以外の第三者、受取人が相続人という場合、生命保険金は「生きている別の人が相続放棄した人への贈与をしたもの」とみなすことになり、相続放棄をしたうえで生命保険金を受領した相続人に贈与税がかかることになります。
また、被保険者が被相続人、契約者が相続人、受取人が契約者と同一の相続人という場合、生命保険金は一時所得か雑所得して計上されることになり、相続放棄をしたうえで生命保険金を受領した相続人に所得税がかかることになります。

相続放棄で死亡退職金・遺族年金の受け取りはどうなる?

生命保険金以外にも、相続放棄をしたとしても、受け取ることができる財産はあります。例えば、香典や御霊前は、死者への弔意、遺族への慰めなどの目的があり、相続財産には含まれないことから、相続放棄をしても受け取ることができます。それでは、死亡退職金や遺族年金は相続放棄をしたとしても、相続人が受け取ることができるのかどうか、以下に解説していきます。

死亡退職金

死亡退職金は、本来被相続人に支給されるはずであった退職金を、被相続人の家族などが受け取ることができる制度です。
死亡退職金の受取人が法律や会社の退職金規定等の内規で定められている場合、生命保険金と同じような扱いとなり、相続財産に含まれないことに結果、死亡退職金の受取人とされた相続人は相続放棄をしたとしても、死亡退職金を受け取ることができます。
他方で、死亡退職金の受取人が被相続人本人になってる場合や死亡退職金の受取人が指定されてない場合には、死亡退職金は相続財産の一つとして扱われますので、相続放棄をすると受け取ることができなくなります。
なお、受取人について明確な規定がないとしても、死亡退職金に関する支給規定が、専ら被相続人の収入に依拠して生活していた遺族への保障を目的としている場合には、死亡退職金は相続財産に含まれないと判断されることもあります。

遺族年金

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者であった方が死亡したときに遺族が受けることができる年金です。遺族年金は、被相続人に生活を支えてもらっていた遺族に対する補償を趣旨とするものであることから、相続財産には含まれません。
そのため、相続放棄をした相続人も遺族年金を受け取ることができます。

相続放棄と生命保険に関する判例

平成10年12月22日福岡高裁宮崎支部決定では、生命保険金の請求について、「本件保険金請求権は、保険契約の効力が発生した被相続人死亡と同時に、相続人たるべき者である抗告人らの固有財産となり、被保険者である被相続人の相続財産より離脱しているものと解すべきである」としたうえで、「抗告人らのした熟慮期間中の本件保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は、抗告人らの固有財産に属する権利行使をして、その保険金を受領したものに過ぎず、被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから、これら抗告人らの行為が民法921条1号本文に該当しないことは明らかである。」と判示しており、生命保険金の受領した行為が単純承認には当たらず、生命保険金を受領した相続人も相続放棄をすることができるという判断をしています。

よくある質問

受取人指定なしの生命保険の場合、相続順位はどうなりますか?

受取人の指定がない生命保険の場合、法定の相続順位によって受取人が決まることになります。
相続順位は以下の表のとおり、子→親→兄弟姉妹という順位になっており、被相続人に配偶者がいる場合には、該当する順位の相続人と配偶者が同順位に立つことになります。

第1順位 子(死亡している場合は孫)
第2順位 親(死亡している場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)

他方で、被相続人が法的に有効な遺言書を残して死亡した場合には遺言書の記載内容に従って生命保険金の受取人が指定されることになります。

相続放棄しても入院給付金を受け取ることはできますか?

入院給付金の受取人を配偶者や子にしている場合、。受取人として指定された配偶者や子は、相続人としてではなく受取人固有の権利として入院給付金を受領することになります。
そのため、入院給付金が相続財産に含まれないことになりますので、相続人が相続放棄をしたとしても、入院給付金は受け取ることが可能です。

被相続人が借金を残していた場合、受け取った生命保険は差し押さえの対象になりますか?

生命保険金は受取人固有の権利として受領するものであって、相続財産に含まれるものではありませんので、被相続人が借金を残していたとしても、債権者は受取人が受領済みの生命保険金を差し押さえの対象とすることはできません。
他方で、解約返戻金のある生命保険金については、被相続人の死亡前に債権者が解約返戻金請求権を差し押さえている場合があり、この場合、債権者は差し押さえた解約返戻金請求権の取り立てをするために保険会社に解約権の行使をすることができます。

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相続放棄時の生命保険について不明点があれば、弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄をした場合、原則としては、被相続人の資産も負債も引き継ぐことはありません。
もっとも、生命保険金は受取人固有の権利として扱われるため、例外的に相続放棄をしても受け取ることができます。

ただし、保険契約の被保険者、契約者、受取人が誰であるかによっては相続放棄と生命保険金の受け取りを両立できない場合があるうえ、税金の取り扱いも変わってきます。
生命保険金は多くの場合、相当高額であり、生命保険金を適切に取り扱うことが相続手続きにおいては非常に重要となってきます。本来受け取ることができる権利を失ってしまったり、受け取ることができると誤解したばかりに相続放棄ができなくなったりしてしまうリスクを避ける必要もあります。
相続放棄は3カ月という短い熟慮期間内に適切な判断を求められる点もありますので、生命保険金がある相続に関して、お早めに相続事件の取り扱いの多い弁護士にご相談ください。

土地などの不動産を相続する場合、相続後に固定資産税の支払いや不動産の管理などをしなければなりません。遺産を相続するつもりがなく、こうした負担も負いたくない場合には、相続放棄をする必要があります。
今回は、遺産に土地などの不動産がある場合に、相続放棄しないことのリスクや、相続放棄をする際の注意点をご紹介していきます。

土地や建物などの不動産は相続放棄できるのか?

遺産の中に、土地・建物・空き家などの不動産があり、遺産を相続するメリットよりもデメリットの方が大きいと判断した場合には、相続放棄をすることによって、不動産の相続を免れることができます。
相続放棄を行うと、相続権は次順位の法定相続人に移ります。法定相続人とは、民法で相続権が認められた相続人のことで、相続順位も法律で決まっています(民法886条~895条参照)。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったとみなされるので、固定資産税を支払う必要がなくなります。また、基本的には、相続人として不動産を管理する責任からも免れることができます。

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相続放棄せずに土地を所有し続けるリスクとは?

相続放棄をせずに土地を所有し続けた場合のリスクは、以下のようなものがあります。

固定資産税を支払わなければならない

相続放棄をしなかった場合は、遺産を相続したことになり、相続財産だった土地の所有者になります。土地の所有者になれば、その土地にかかる固定資産税を毎年支払わなければなりません。土地は資産価値のある財産であり、所有者に納税義務があるからです。
不要な土地や使っていない土地でも、所有者になれば固定資産税を払い続けなければなりません。固定資産税は、所有者である限り毎年払わなければならないので、その負担は小さいとは言えません。

空き家問題と固定資産税について

近年、所有者の分からない、管理のされていない空き家が多数発生し、社会問題になっています。そのため、平成26年に「空家等対策特別措置法」が成立しました。この法律により、相続した空き家を放置し続けると、「特定空家」に指定されてしまいます。そうなると、行政機関から改善のための指導や勧告がされ、改善がされない場合は、過料の制裁や建物解体の行政代執行などがされる可能性があります。また、「特定空家」に指定されると、税制上の優遇措置を受けることができなくなり、最大で通常の6倍の固定資産税を払わなければなりません。

共有名義にするとトラブルに発展することも

相続人が複数いる場合、不動産を相続人たちの共有名義とすることがあります。共有にすれば負担も分担できるのではないかとも考えられますが、固定資産税をどのように負担するのかという問題や、誰が実際に不動産を管理するのか、管理のために発生した経費をどう清算するのかといった点で、トラブルが発生するリスクがあります。
また、不動産を売却する際には、共有者全員の同意が必要です。そのため、共有にすることで、将来不動産を簡単に処分できなくなってしまうというリスクも抱えることになります。

土地を相続放棄する際の注意点

これらの負担を避けるために、土地の相続を放棄するという方法があります。しかし、土地の相続放棄には、いくつか注意しなければならないポイントがあります。

土地だけ相続放棄することはできない

必要がないからといって、他の財産を相続して、土地だけを相続放棄することはできません。相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされるので、その他の財産に関する相続権もなくなるからです。
そのため、土地の相続放棄をする場合は、相続財産の中に預貯金などの本来プラスになる財産があったとしても、それらを相続することはできなくなってしまいます。

相続放棄しても土地の管理義務は残る

また、相続放棄したからといって、土地の管理を一切しなくても良くなるわけではありません。
相続放棄によって所有権を放棄しても、他の相続人又は清算人に引き渡すまでの間、自己の財産に対するものと同一の注意をもって、その財産を管理しなければなりません(民法940条1項)。例えば、近隣住民が土地や建物の損壊や崩落によって被害を受けないように、土地建物を管理する責任は残り続けるということです。

土地の名義変更を行うと相続放棄できなくなる

相続放棄をする前に、土地の名義変更などの手続を行わないように注意しなければなりません。
相続放棄の判断に迷っている間に、土地の名義変更などの土地の処分行為を行ってしまうと、相続をしたものとみなされます。これを、単純承認といいます(民法921条1号)。
単純承認をしたと認められると、その後相続放棄をする意思があったとしても、相続放棄ができなくなってしまうので注意してください。

相続放棄には3ヶ月の期限がある

相続放棄をするためには、自分が相続人になったのを知った時から、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをしなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、相続を承認したとみなされて、相続放棄ができなくなってしまいます。
ただし、3か月の間に遺産の調査が終わらず、相続放棄の判断をすることが難しい場合には、裁判所にこの期間を延長してもらうように申請することができます。延長期間は、通常1~3か月程度認められるので、この間に追加の調査を行う必要があります。

相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄した土地はどうなるのか?

法定相続人が全員相続放棄をした場合は、相続されなかった土地は国庫、つまり国に帰属することになっています。しかし、全員が相続放棄をしたからといって、すぐに国庫に帰属するわけではありません。検察官や利害関係人らの申立てによって、相続財産を管理する「相続財産清算人」が選任され、債務の清算を行った後に、残った土地を国庫に帰属させます。相続財産清算人の選任を申し立てるためには、申立ての手続や、費用の負担をしなければいけないので、簡単に利用できる制度ではありません。
こうした問題を踏まえて、令和5年4月27日から、「相続土地国庫帰属法」が施行されます。一定の条件を満たした場合には、相続した土地の所有権を放棄して、国庫に帰属させることができます。

土地を相続放棄する手続きの流れ

土地の相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続放棄の申立てを行います。申立てを行うには、申述書に加えて、戸籍謄本等の必要書類を添付する必要がありますが、戸籍謄本の取寄せには時間がかかるので注意してください。
その後、家庭裁判所から届いた質問状などの書類に回答し、返送します。家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届いたら、相続放棄の手続は完了です。

相続放棄の手続き方法と注意点

相続放棄以外で土地を手放す方法はある?

土地以外に、預貯金などのプラスの財産が多い場合等、相続放棄をしたくないケースもあります。そのような場合には、遺産を相続したうえで、土地だけを手放すという方法もあります。
もっとも、一旦遺産を相続するため、土地の名義変更が必要になることにはご注意ください。

売却する

まず、土地の処分方法として、売却という方法が一般的です。ただし、土地がある場所が田舎であったり、古い家屋が立っていたりすると、なかなか買い手がつかないということもあります。
こうした場合には、価格を下げて売りに出したり、費用はかかりますが建物を壊して更地にしたりしたうえで買い手を探します。また、自力で買い手を見つけることが困難な場合には、不動産会社に仲介を依頼したり、空き家バンクに登録したりすることで、専門家のネットワークを介して広く買い手を募ることになります。

寄付する

次に、土地を寄付するという方法があります。寄付の相手としては、①自治体、②個人、③法人が候補になります。
注意しなければならないのは、個人や法人に寄付する場合には、土地を贈与したとみなされて、寄付をした者に贈与税が課されるという点です。

土地活用を行う

自分では使い道のない土地でも、賃貸などの土地活用を行うことも考えられます。
例えば、土地の上に建物を建築して賃貸に出したり、トランクルームを設置して貸し出したりすることで、継続的に収入を得ることができます。
そのため、土地を処分してしまう前に、立地調査をして、これらのような使い道がないか検討してみるのも良いでしょう。

土地の相続放棄に関するQ&A

被相続人から生前贈与された土地を相続放棄できますか?

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に、特定の財産を贈与することを指します。
生前贈与は、文字通り、被相続人が生前に行った贈与行為なので、相続とは直接関係がありません。そのため、生前贈与を受けた場合でも、相続放棄することはできます。
なお、生前贈与に対しては贈与税がかかるため、贈与を受けた側は申告が必要となります。

土地の共有持分のみを相続放棄することは可能ですか?

複数人で土地を共有するとき、自分が持つ土地の割合を、共有持分といいます。相続の際に、自分の共有持分だけを相続放棄して、他の遺産を相続することはできません。なぜなら、相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされるため、土地以外の遺産についても相続人としての資格がなくなってしまうからです。
もし、土地の共有持分だけを相続放棄して、その他の預貯金だけを相続したいという事情があるなら、他の相続人とそのような遺産分割協議をするという方法もあります。

農地を相続放棄した場合、管理義務はどうなりますか?

農地を相続放棄した場合、所有権を放棄したからといって、土地に関する負担を一切免れるわけではありません。
相続放棄をした場合でも、次の相続人等が農地を管理できるようになるまで、自分の土地に対する注意と同一の注意をもって、農地を管理し続けなければなりません(民法940条1項)。

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土地を相続放棄するかどうかで迷ったら、一度弁護士にご相談ください。

相続放棄をすれば、固定資産税などを負担する義務はなくなりますが、土地の管理義務は一定期間残ります。また、相続放棄をすることのメリットやデメリットは、十分に遺産を調査しなければ分からないうえに、3か月という短い間に判断しなければなりません。
弁護士に任せていただければ、遺産の調査や検討期間の延長などの手続を全て代わりに行ったうえで、相続放棄すべきか否かのご提案をすることができます。相続放棄は一度受理されてしまうと撤回ができないので、ご自身で対応して問題が発生する前に、まずは弁護士にご相談ください。

離婚をするにあたりまずは別居をしたいという方は多いでしょう。もっとも、子どもがいる場合には連れて出ていくべきか悩むかと思います。離婚後子どもの親権は獲得したいといった場合、別居の際に子どもを連れて家を出た方が良いのか、子どもを置いて行くべきなのか、有利に働くか不利に働くかわからない…以下では、親権獲得のためにどのような判断をするのが適切かについて、わかりやすく解説していきます。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

離婚後に親権が欲しければ、子どもを連れて別居を始めた方がいいとよく言われます。この話は、いつどんな場合にもあてはまるとは限りません。以下、わかりやすく解説していきます。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

子ども連れて家を出たとしても、直ちに有利になるわけではありません。もっとも、子どもを看ている親のもとで問題なく生活ができていれば、その状態を維持した方がよいとの心証を持たれます。これを、現状維持の原則といいます。よって、子どもが監護親の元で問題なく生活を続け、その期間が長期にわたる場合、結果的に親権獲得には有利になります。

子供を勝手に連れて別居した場合

別居をする際、子どもを連れ去ることにはリスクが伴います。必ずしも連れ去れば有利になるとは限らず、違法な連れ去りとして不利になることもあります。
子どもを連れて出たことが違法にあたるかは、別居に至る経緯や理由により判断されます。違法な場合には、法的な手段によって子どもを取り戻されてしまうこともあります。

監護者指定について

別居中から離婚までの間、父と母どちらが子どもの監護親として適格であるかについては、審判を申し立てることにより、家庭裁判所に判断してもらうことができます。
監護権とは、子供と生活を共にし、その子供の世話や教育を行う権利・義務をいい、親権の一部にあたります。監護権者は子どもと同居しながら育てることができ、親権者と同じであるケースがほとんどです。
子どもを連れ去られた場合、できる限り早く監護者指定審判の申立てをしましょう。

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別居中の面会交流について

別居期間中、子どもの同居親に対し、面会交流調停を申し立てることもできます。非同居親による子どもへの暴力のおそれ等の事情がない限り、抽象的にですが、面会交流はほとんど認められます。
単に会わせたくないという感情的な理由では、子どもの精神衛生に配慮がなく、監護親として不適格とされる可能性もあります。子どもとの面会交流には寛容であることが望ましいです。

子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

別居を開始するとしても、これまで専業主婦やパート等をしていた場合、固定収入がなく新居を賃借できないケースも多いかと思います。そこで、実家に行くことで、賃料の負担をクリアできるため新しい仕事も探しやすくなります。
また、自分以外に両親等がいてくれるため、子どもの世話を手伝ってもらい養育のサポートを得られたりするので、安定した環境で子育てができ、親権獲得に有利になることも多いです。

住民票の異動

別居を機に引越しをした場合、住民票は移すようにしましょう。
法律上、決められていることはもちろんですが、子どもの転校のために必要になります。また、新たな転居先で子どもを保育園に通わせる場合、保育園と同じ市内の住民であることが要件であれば、やはり住民票の異動が必要です。
もっとも、相手方のDVが原因で別居をするときは、新居を知られないようDV等支援措置を利用しましょう。配偶者であっても、住民票の閲覧を制限することができます。

親権者となるための条件

離婚後、子どもの親権者になるためには、子どもの財産や監護についての観点から、子どもにとって利益になることが必要です。特に以下の点を重視して、親権者として適格かを判断されます。

①従前の監護実績があること
②今後の子の養育方針及び養育環境が整っていること
③住居や収入面等で子の生活に支障のないこと
④配偶者の他方に監護養育させることが適当でないこと
⑤子が一方の親との生活を望む意向を示していること

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

母親が別居をするにあたり、子どもを自宅に置いていった場合、父親の下で子どもが十分に生活できる実績を積むことができれば、親権の獲得にとって父親に有利になることもあります。
もっとも、父親のモラハラやDVがひどく、逃げるようにして母親が家を出たといった場合、子どもの監護養育において父親が適格であるとはいえないので、有利にはなりません。
また、自宅に残っている子どもに対し、きちんと身の回りの世話をできなければ、かえって監護能力が低いと判断されることもあります。親権獲得のためには、適切な生活環境を子どもに与え信頼が得られるよう、日々努力することが1番でしょう。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子どもが一定の年齢に達していると、親権者を決めるにあたり、子どもの意向が強く考慮されます。
その年齢として、15歳が基準とされていますが、小学校高学年位になると意向を尊重される可能性が高くなる傾向にあります。
もっとも、これは子ども自身で考えることができるようになっていることが前提です。親の方から自分を選ぶように子どもに働きかけたりすることは不適切な行動であると捉えられます。このような場合には、かえって親権獲得に不利になることもあるので、子どもにプレッシャーをかけるような言動はしないようにしましょう。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

母親は主として子どもの監護を行ってきているケースが多いため、かつては、子どもを連れて別居を開始すれば、親権獲得に圧倒的に有利とされていました。
現在は、必ずしもそうとはいえません。夫のDVやモラハラが原因で子どもを連れ逃げるように家を出たケースは別ですが、夫に何も告げずに子どもを連れて家を出ていくことには否定的な見解も多く見られます。
不仲であっても夫婦が婚姻関係にある以上、子どもは父母の共同親権の下にあります。そのため、夫の意向を無視することは必ずしも有利になりません。また、連れ去った方法も倫理に反したりすれば、監護の適性に疑いがかかるので、できる限り相手方に告げて別居をするのが望ましいといえます。

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別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

離婚を決意しても、離婚後に親権を獲得できず子どもと離れ離れになるのではないかと不安になる方も少なくないでしょう。
親権獲得のためには、家庭裁判所がどのような考え方をしているか把握したうえで、準備をすることが大切です。無用に感情的に動くことのないよう、法律の専門家である弁護士にまずは相談することをおすすめします。今やるべき事、やってはいけない事を丁寧にアドバイスし、不安を軽減しながら前に進むお手伝いをさせていただきます。

夫(妻)の浮気によって、精神的苦痛を受けたならば、本人または浮気相手に対して、慰謝料を請求できる可能性があります。
また、過去の浮気についても慰謝料を請求することができますが、時効が成立していると、慰謝料請求ができなくなる場合があるため、注意が必要です。
本記事では、浮気の慰謝料請求と時効の仕組み、時効を止める方法などについて解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

浮気の慰謝料請求についての詳細は、以下のページもあわせてご覧ください。

浮気による慰謝料について

浮気(不倫)の慰謝料請求には時効がある!

浮気(不倫)の慰謝料請求には法律上の時効があり、「被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」または「不法行為の時から20年間行使しないとき」には、時効によって、慰謝料請求権が消滅します(民法724条)。
つまり、「浮気の事実および浮気相手の存在を知った日から3年」経過すると、時効が成立し、慰謝料請求ができなくなります。

また、「配偶者が浮気をした日から20年」経過した場合も、時効が成立し、慰謝料の請求ができなくなってしまいます。
浮気の慰謝料請求には一定の期限があるため、浮気に気がついた場合は、なるべく早めに慰謝料請求に向けた行動を開始するのが望ましいでしょう。

浮気相手への慰謝料請求の時効は?

浮気(不倫)相手にも、浮気によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが可能です。
ただし、浮気相手への慰謝料請求権は、「浮気の事実および浮気相手の存在を知った日から3年」経過すると、時効により消滅します。

この「浮気相手の存在を知った日」とは、浮気相手の氏名や住所などを特定した日を意味します。
また、浮気相手の氏名や住所などが特定できなくても、「浮気が始まった日から20年」経過すると、時効により、慰謝料請求権が消滅します。
したがって、浮気相手に慰謝料を請求するためには、時効に注意するとともに、浮気の証拠だけでなく、浮気相手の素性も把握しておく必要があるといえます。

慰謝料請求の時効はいつから起算する?

浮気(不倫)による慰謝料は、「不貞行為に対する慰謝料」と「離婚に対する慰謝料」と2種類に分けられ、以下のとおり、それぞれ時効の起算日が異なるため注意が必要です。

①不貞行為に対する慰謝料 不貞行為および浮気相手の存在を知った日から3年で時効成立
②離婚に対する慰謝料 夫婦が離婚した日から3年で時効成立

例えば、配偶者の不貞が原因で離婚した場合、不貞が行われてから5年ほど経過していたとしても、離婚から3年以内であれば、配偶者に対して、離婚に対する慰謝料を請求することが可能ということになります。

なお、浮気相手に対して、不貞行為に対する慰謝料の請求は可能ですが、離婚に対する慰謝料の請求は基本的に認められていないため、注意が必要です。離婚に対する慰謝料は、配偶者の様々な行為により離婚せざるを得なくなったことを不法行為と捉えているため、行為主体は配偶者であり、浮気相手ではないためです。

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浮気の慰謝料請求の時効を止める5つの方法

さまざまな事情により、気がついたら慰謝料請求の時効が迫っていたというケースも少なくないでしょう。このような場合、どのようにして慰謝料請求の時効を止めればよいのでしょうか?
浮気の慰謝料請求の時効を止める制度として、「時効の更新」と「時効の完成猶予」があります。
それぞれの内容は以下のとおりです。

  • 時効の更新
    一定の更新事由(確定判決や債務の承認など)が生じた場合に、時効の進行がリセットされ、また新たにゼロから時効が進行する制度
  • 時効の完成猶予
    時効の進行は止まらないものの、一定の完成猶予事由(催告など)が生じた場合には、一定期間、時効が完成しなくなる制度

これらの具体的な方法について、以下で解説していきます。

①裁判で請求する

裁判所に対して慰謝料請求の訴訟を提起すると(裁判を起こすと)、裁判が終わるまでの間、時効の完成が猶予されます(民法147条1項1号)。
その後、判決が出て、浮気による慰謝料請求権が確定されると、時効が更新され(同法147条2項)、さらに時効期間が10年延長されることになります(同法169条1項)。
つまり、判決が出るまでの間に時効をむかえても問題はなく、裁判が終わるまでは時効は成立しません。
また、判決が出た後に、相手が慰謝料を支払わなかったとしても、10年以内であれば、差押えなどの措置をとることが可能です。
ただし、裁判所によって裁判が却下されたり、ご自身で裁判を途中で取り下げたりした場合は、その時から6ヶ月間時効の完成は猶予されますが、その後の時効の更新・延長は行われないため、注意が必要です。

②内容証明郵便を送付する

催告(権利者が義務者に対して義務の履行を求める意思の通知)を行うと、6ヶ月間時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
催告の方法として最もよく使われているのが内容証明郵便です。
例えば、不倫相手に内容証明郵便を送り、慰謝料請求を行うと、その時点から6ヶ月間は、時効が完成しないことになります。内容証明郵便とは、書面を送った日時や内容、当事者等について日本郵便が証明してくれる文書のことです。相手に慰謝料請求した事実を証拠として残すことができ、また、相手に心理的プレッシャーをかけられる等のメリットがあります。
ただし、この方法は1回だけしか行えず、一時的な対処法となります。内容証明を送っても、相手が支払ってくれなければ、6ヶ月間の猶予はすぐ終了してしまいます。
そのため、内容証明で時効完成猶予をする方法は、すぐに裁判を起こせない場合の時間稼ぎとして利用するのが望ましいでしょう。

③債務を承認させる

債務の承認とは、債務者本人が債務の存在を認めることです。
例えば、不倫相手や配偶者が「不倫による慰謝料を支払います」などと発言すれば、金額は未定であっても、債務を承認したことになります。
債務の承認があったときは、時効が更新されるため、時効の進行がリセットされ、また新たにゼロから時効が進行することになります(民法152条1項)。
なお、不倫相手や配偶者が慰謝料の一部を支払ったり、不貞慰謝料の支払義務自体は認めたうえで慰謝料の減額を求めたり、慰謝料の支払期限の延長を求めたりしたような場合も、「債務を承認した」と判断されます。
債務の承認は口頭でも成立しますが、口約束の場合は、後で言った・言わないの問題が生じるおそれがあります。そのため、慰謝料を支払うこと、不倫に対する慰謝料の支払い義務を承諾することなどを明記し、署名・捺印した示談書を作成しておくのが望ましいでしょう。また、作成した示談書を公正証書にしておくと、より安心です。

④協議を行う旨の合意をする

相手と話し合い、慰謝料の支払いについて協議を行う旨の合意が書面(電磁的記録も含む)により行われた場合は、以下のいずれか早い時までの間は、時効の完成が猶予されます(民法151条1項)。

①その合意があった時から1年を経過した時
②その合意において定められた協議期間(1年未満に限る)を経過した時
③どちらかが協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をしたときは、その通知の時から6ヶ月後を経過した時

つまり、「慰謝料の支払いについて話し合いを続けます」という約束を書面の形で残せば、時効の完成が一定期間猶予されることになります。

⑤仮処分・仮差押え・差押えを行う

仮処分 金銭債権以外の債権を保全するために、債務者の財産の処分を禁止する制度
仮差押え 金銭債権を保全するために、債務者の財産の処分を禁止する制度
差押え 債務者が必要な支払いをしない場合、債務者の財産の処分を禁止する手続き

裁判所より、仮処分・仮差押えの申立てが認められた場合は、仮処分・仮差押えが完了した日から6ヶ月間については時効の完成が猶予されます(民法149条)。

また、確定判決や公正証書などをもとに、差押え等の強制執行を行った場合、その手続きが終了するまでの間は、時効の完成が猶予され(同法148条1項)、差押えが終了した後、さらに時効が更新されることになります(同条2項)。
ただし、強制執行を取り下げた場合は、手続き終了後6ヶ月間は時効の完成が猶予されますが、時効更新の効果は生じずに、時効期間についてはリセットはされません。

民法改正による慰謝料請求権の時効への影響

2020年4月に民法が改正され、慰謝料請求権の時効についても変更されました。
変更点は主に以下の2点となります。

①時効中断の再構成
新民法は、時効の進行を止める制度の内容・効果をより明確にするため、旧民法の「時効中断」「時効停止」という概念を改め、「時効の更新」「時効の完成猶予」という概念に整理しました。

②除斥期間の廃止
不倫など不法行為があった日から20年間経過すると、慰謝料請求権等が消滅する規定(民法724条2号)が、「除斥期間」から「消滅時効」に変更されました。
旧民法の「除斥期間」では、20年経過すると、被告が何ら時効に関する主張をせずとも、慰謝料請求権が消滅していました。

改正により、「消滅時効」に変更されたことで、時効の完成を猶予したり、時効の進行を更新して0に戻したりすることが可能となりました。つまり、慰謝料を請求できる範囲が広がったことを意味します。

時効が過ぎた後では慰謝料を請求できない?

時効が過ぎた後でも、浮気相手や配偶者が任意で慰謝料の支払いに応じるのであれば、慰謝料を請求することが可能です。時効経過後に慰謝料を受けとることは、法律上何の問題もありません。
ただし、時効が過ぎたということで焦りを感じ、相手を脅迫したり、あまりに高額な金額を請求したりしてしまうと、刑事事件などのトラブルなどに発展してしまうおそれがあるため注意が必要です。
なお、不貞行為に対する慰謝料の時効が過ぎていても、離婚に対する慰謝料については、離婚から3年以内であれば請求可能となっていますので、忘れずに請求するようにしましょう。

時効で浮気の慰謝料を取り逃がさないためのポイント

時効で浮気の慰謝料を取り逃さないようにするためには、なるべく早く慰謝料請求に向けた行動を開始することが必要です。
まず、慰謝料請求の時効が成立する前に、不倫の事実を証明する証拠を集めなければなりません。
また、時効が迫っている場合は、すぐに時効を止めるための措置をとる必要があります。
ただし、これらの判断には法的知識が必要とされ、特に時効期間の計算は複雑であるため、被害者個人で行うのは困難でしょう。

そのため、浮気の慰謝料を時効成立前に受け取りたいと思われるのであれば、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
弁護士に任せれば、慰謝料請求に有効な不倫の証拠の集め方等についてのアドバイス、時効を阻止するための最適な措置(催告、裁判など)を講じることが可能です。

浮気の慰謝料の時効に関するQ&A

浮気の慰謝料の時効についてよくある質問をご紹介します。

5年前の浮気を最近知ったのですが、浮気相手に慰謝料を請求することは可能ですか?

5年前の浮気であるため、慰謝料請求の「配偶者が浮気をした時から20年」の時効はまだ成立していません。
ただし、「不貞行為および浮気相手の存在を知った日から3年」が経過すると、時効により、慰謝料請求ができなくなります。
不貞行為および浮気相手の名前・住所を特定した日から3年が経過していないのであれば、浮気相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

10年前の浮気が発覚したのですが、既に離婚しています。元夫に慰謝料を請求することはできますか?

10年前の浮気であるため、「配偶者が浮気をした時から20年」の時効はまだ成立していません。
不貞行為および浮気相手の名前・住所を特定した日から3年が経過していないのであれば、元夫に対して、不貞行為に対する慰謝料を請求できる可能性があります。

時効を止めるために裁判を起こしたいのですが、相手の居場所が分かりません。何か対処法はありますか?

相手の居場所が分からない場合は、「公示送達」という方法によって、裁判を起こすことが可能です。
裁判所に公示送達の申し立てを行うと、裁判所の掲示板に訴状等が掲示され、掲示が開始されてから2週間経過すると、相手への送達が完了したとみなされます。これによって、相手が行方不明の場合でも、裁判を起こして、時効の完成を阻止することが可能です。

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浮気の慰謝料請求は早い段階で行う必要があります。まずは弁護士にご相談下さい。

浮気の慰謝料については、まず時効が成立していないか注意する必要があります。
仮に時効が迫っている場合は、早急に時効の完成を阻止する手続をとる必要がありますが、時効を止めるには様々な手段があり、どの手段を選択するべきかの見極めは難しい作業です。
また、浮気の慰謝料を請求する場合は、「不貞の事実があったこと」を、証拠にもとづき主張・立証する必要があるため、被害者お一人で対応することは困難でしょう。

この点、弁護士に依頼すれば、これらをすべてカバーすることが可能です。
また、浮気の証拠の集め方についても、法律のプロの視点からアドバイスできます。
浮気の慰謝料請求でお悩みの場合は、ぜひ離婚問題に精通する弁護士が所属する、弁護士法人ALGにご相談ください。

保険会社より事故の慰謝料を提示されたとき、「これは本当に妥当な金額なの?」と疑問を持たれた方は多くいらっしゃると思います。
しかし、「交通事故を数多く扱っているプロだから妥当な金額を提示しているだろう」、「よくコマーシャルなどで聞く名前の保険会社が言うのだから間違いないだろう」と思って、なんとなく提示金額を受け入れていませんか?

実は、交通事故の慰謝料の算定基準には、3つの基準があり、同じ事故の慰謝料でも、どの基準を選ぶかにより、慰謝料の相場が変わります。
相手方の保険会社より提示された額が、実際には妥当な金額ではなかったという可能性は大いにあります。
本記事では、算定基準別の慰謝料の相場、適正な相場で慰謝料を獲得するためのポイントなどについて、説明していきたいと思います。
慰謝料額の相場について気になっている方はぜひご覧ください。

算定方法によって慰謝料の相場は大きく変わる

慰謝料の算定基準には、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準の3つの基準があります。同じ慰謝料でも、どの基準を選ぶかにより、慰謝料の金額が変わります。
自賠責基準は被害者を最低限救済するための基準であるため、被害者側に過失が無い事故では、最も低額となります。次に任意保険基準ですが任意保険基準は各保険会社が独自に設定する基準で、非公表であり、自賠責基準とほぼ同額か多少高い程度と言われています。

ぜひ知っていただきたいのは、3つ目の基準である弁護士基準です。弁護士基準は過去の交通事故問題の裁判例をもとに作られた基準で、弁護士が代理人となって示談交渉する場合や裁判などにおいて用いられる基準であり、3つの基準の中で、最も高額になります。
具体的には、「損害賠償額算定基準」(通称:赤本)という本に弁護士基準額が記載されています。

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実際に慰謝料の相場を比較してみよう

それでは、具体例をもとに、3つの算定基準により慰謝料相場にどの程度の差が出るのか、比較していきたいと思います。

怪我をした場合の慰謝料相場

下記の具体例をそれぞれの算定基準にあてはめ、慰謝料相場を算出してみたいと思います。(例)入院1ヶ月(30日)、通院3ヶ月(90日)、実通院日数40日

① 自賠責基準
入院1か月、通院3か月で治療期間が120日になるため、自賠責基準での入通院慰謝料の相場は、51万6000円となります。
自賠責基準での慰謝料の計算方法は、

  • 4300円×対象日数=入通院慰謝料

とされているのですが、実際は非常に特殊な計算となっています。

対象日数は、原則的には治療期間となりますが、実際に入院及び通院した日数(実通院日数)が治療期間の2分の1に達しない場合は、計算方法が異なり、実通院日数×2をした日数となります。
分かりにくいと思いますので、

  • 入院期間+通院期間(治療期間)
  • (入院期間+通院期間の中で実際に入院、通院した日数)×2

を比較し、小さい方の数に4300円を掛けると考えてください。
※2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、4200円×対象日数を適用します

②任意保険基準
任意保険基準は非公表ですが、以前使用されていた慰謝料算定表(旧基準)を参照すると、入院1ヶ月、通院3ヶ月の入通院慰謝料額は60万4000円とされており、現在もこれに近い金額を設定する保険会社が多いとされています。

③弁護士基準
弁護士基準では、通常の怪我(別表Ⅰ)と軽症(別表Ⅱ)に分かれた「慰謝料算定表」を参照し、入院期間と通院期間の交わる部分が入通院慰謝料です。
入院1ヶ月、通院3ヶ月で、

  • 通常の怪我(骨折など)➡別表Ⅰより115万円
  • 軽症(他覚所見のないむちうちなど)➡別表Ⅱより83万円

となります。
よって、上記例の場合、弁護士基準の慰謝料額が最も高額になります。

通常の怪我の場合【別表Ⅰ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 AB 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286
むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合【別表Ⅱ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A’B’ 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

引用元:「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」

軽傷(擦り傷、打撲等)の慰謝料相場

擦り傷程度の軽傷でも、被害者にとって怖い思いをしたことに変わりありません。
怪我の治療のために通院をしたならば、たとえ通院日数が少なかったとしても、慰謝料を請求することが可能です。

例えば、擦り傷を負い、通院1ヶ月、実通院日数10日の場合、自賠責基準による慰謝料は、4300円×2×10日=8万6000円となります。また、弁護士基準による慰謝料は、算定表の別表Ⅱを参照すると、19万円となります。

後遺障害が残った場合の慰謝料相場

後遺障害が残った場合の慰謝料相場は、下記表のとおり、後遺障害等級別に定められています。
自賠責基準よりも弁護士基準による慰謝料の方が高額になります。なお、任意保険基準は非公表ですが、自賠責基準より多少高い金額を設定する保険会社が多いです。

(後遺障害慰謝料の相場)
後遺障害等級自賠責基準弁護士基準
1級1,150万円
(1,650万円)
2,800万円
2級998万円
(1,203万円)
2,370万円
3級861万円1,990万円
4級737万円1,670万円
5級618万円1,400万円
6級512万円1,180万円
7級419万円1,000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

複数の後遺障害が残った場合の慰謝料相場は?

複数の後遺障害が残った場合、4級と5級など、複数の後遺障害等級が認定される可能性があります。その場合、認定された等級を併合し、併合後の等級に応じた後遺障害慰謝料を請求することになります。後遺障害等級の併合のルールは下記のとおりです。

①5級以上の後遺障害が2つ以上→最も重い等級を3級繰り上げ
②8級以上の後遺障害が2つ以上→最も重い等級を2級繰り上げ
③13級以上の後遺障害が2つ以上→最も重い等級を1級繰り上げ
④14級の後遺障害が2つ以上→14級のまま

死亡事故の慰謝料相場

自賠責基準による死亡慰謝料は、被害者本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料の合計額です。
死亡慰謝料を請求できる権利をもつ遺族は、被害者の父母、配偶者、子となります。
なお、下記表は被害者本人と遺族を合わせた死亡慰謝料の合計額になります。

【自賠責基準】
遺族扶養家族なし扶養家族あり
1名950万円1150万円
2名1050万円1250万円
3名以上1150万円1350万円
【弁護士基準】
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他2000万~2500万円

弁護士基準の相場がこんなに高額なのはなぜ?

算定基準別の慰謝料相場をみて、弁護士基準の相場がなぜ高額なのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。弁護士基準は過去の交通事故事件の裁判例をもとに作られた一応の目安の基準であり、被害者にとっての「一応の相場」といえます。すなわち、弁護士基準が高額なのではなく、他の基準が低いということになります。

弁護士基準で慰謝料を獲得したい場合、どうしたらいい?

事故の被害者が弁護士基準の相場で慰謝料を獲得するためには、どうすればいいのでしょうか。適正な慰謝料を請求するためのポイントをいくつか挙げたいと思います。

弁護士へ依頼をする

適正な慰謝料を獲得するためには、弁護士基準により、慰謝料を算定することが必要です。
弁護士基準で慰謝料を請求したい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士が介入すれば、弁護士基準での賠償に相手方が応じる可能性が高くなるでしょう。

通院中の人ができること

適正な慰謝料を請求するためには、怪我の治療に必要な範囲で、適切な通院頻度を保つことが必要です。通院頻度が低すぎたり、もしくは、高すぎたり、症状固定の時期が早かったりすると、入通院慰謝料が低額になり、後遺障害等級認定の際にも不利になるおそれがあるからです。
また、後遺症が残りそうな場合は、後遺障害等級認定を見据えた治療や検査を受けておくことも必要になるでしょう。

適正な通院頻度を保つ

適正な通院頻度は、怪我の状態や治療状況などにより異なります。仕事や家事でなかなか通院できないという方もいらっしゃるかもしれませんが、主治医と相談しながら、怪我の治療に必要な範囲で、適切な通院頻度を保つことが必要です。
例えば、交通事故で最も多いとされる、むち打ち症の場合は、主治医の指示のもと、週2~3回、1ヶ月に10日程度、怪我が完治または症状固定まで通院することをおすすめします。
なお、過剰に通院日数が多いと、治療の必要性を疑われ、治療が早期に打ち切られたり、通院日数としてカウントされなかったりという可能性もあるので注意が必要です。

後遺障害等級を認定してもらう

後遺症について、自賠責保険の後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料の請求が可能になります。後遺障害等級が上級になるほど慰謝料も増額するため、いかなる等級に認定されるかが重要になります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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弁護士なら、適正な慰謝料相場に向けて様々な場面でサポートが可能です

これまで、慰謝料の相場についてみてきましたが、弁護士基準を適用すると、大半のケースで慰謝料が増額することがお分かりいただけたと思います。
しかし、被害者自身で弁護士基準による慰謝料を計算し、保険会社に提示したとしても、「これは裁判で使う基準です」などと言われ、拒否される可能性が高いでしょう。

一方、弁護士が示談対応する場合は、基本的には弁護士基準での交渉となるため、高い基準である弁護士基準での賠償金額になる可能性が高まりますので、適正な慰謝料を請求したい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士が介入すれば、慰謝料の計算や示談交渉、必要な資料の収集や手続きなどを代行して行いますし、慰謝料請求に必要な通院頻度や検査のアドバイス、後遺障害診断書作成の際のサポートなどをすることも可能です。
慰謝料の請求についてお困りの場合は、交通事故問題に精通した弁護士が所属する弁護士法人ALGまでお問い合わせください。

寄与分とは、被相続人の財産を維持したり増加させたりするために、特別に貢献した相続人がいた場合には、遺産分割の際に、その貢献した度合いに応じて認められる法定相続分に上乗せした相続分の増額分をいいます。
本ページでは、この寄与分を請求するにあたり期間制限があるのか、2019年の民法改正時に新しく創設された特別寄与料について解説します。

まずは知っておきたい「寄与分」の意味

寄与分とは、家業を手伝ったり、介護を行ったり、金銭の給付をしたりするなどして、被相続人の財産を維持したり増加させたりする特別の貢献をした場合に、遺産分割の際にその貢献度を上乗せして分割の方法を決めることが出来るものです。
もっとも、これは、法律で定められている相続人(法定相続人)が行った貢献度合いに限られています。

寄与分が認められるための要件

寄与分とは

寄与分は、だれでも認められるものではなく、条件があります。

①法定相続人であること
いくら被相続人の財産の維持増加に貢献したとしても、被相続人の法定相続人でなければ、認められません。

②財産が維持・増加していること、財産の維持・増加と因果関係があること
被相続人の財産の増加に貢献している必要があります。

③期待を超える貢献があること
親族間では通常相互に協力することが想定されていますので、この通常考えられる貢献を超えた特別の貢献をしている必要があります。

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寄与分に時効はあるのか?

寄与分の請求をするにあたって、時効はありませんので、過去の寄与分を主張することも可能です。
ただし、寄与分は遺産分割の協議をする中で主張をしますが、遺産分割協議が完了するとその遺産分割の内容を後から覆すことはできないので、寄与分の主張を遺産分割協議が完了した後に求めることはできなくなります。
そのため、寄与分の請求に時効はないものの、実質的には遺産分割協議中に請求をしないといけません。

昔の寄与分が認められにくいのは本当?

寄与分の主張は、時効がないので、過去にさかのぼって主張をすることは可能です。
もっとも、あまり昔の寄与分を主張しようとすると、その詳しい内容を覚えていなかったり、貢献の内容を客観的に示す資料がなかったりして、その立証が難しくなり、寄与分が認められにくくなる危険があります。そのため、寄与分を主張するのであれば、その資料や記録は残しておいた方が良いですし、寄与の内容はなるべく早めに主張をすることをお勧めします。

「特別寄与料」には期限があるため注意!

2019年7月1日施行の民法改正にあたり、特別寄与料という制度が新たに創設されました。法定相続人ではない者が、被相続人の財産の維持、増加に貢献した場合に、その貢献を考慮するための制度です。特別寄与料を求めるためには、①被相続人の相続人ではない、②無償で労務を提供したこと、③②によって被相続人の財産の維持、増加に特別に寄与したことが要件となります。
この特別寄与料という制度は、寄与分とは異なり、主張における期間制限があり、注意が必要です。

特別寄与料の消滅時効

特別寄与料には、特別寄与者が「相続の開始及び相続人を知った時」から「6か月」経過したときに消滅時効となります。消滅時効とは、権利を有していても、一定期間行使しないことでその権利が消滅してしまう制度ですので、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月経過したときには、特別寄与料を請求する権利があったとしても、その主張をすることが出来なくなります。

特別寄与料の除斥期間

特別寄与料の請求には、消滅時効の他に、「相続開始の時か」ら1年を経過したときに除斥期間となります。除斥期間は、法律で定められている期間を経過すると、当然にその権利が消滅する制度で、消滅時効とは異なり、この期間を伸長することはできません。そのため、「相続の開始」から1年を経過すると、特別寄与料を請求することは完全にできなくなってしまいます。

寄与分を主張するためのポイント

寄与分は、遺産分割の内容にも大きく影響を与えるものですので、なるべくはやい段階で主張をする必要があります。そして、共同相続人間で、当該寄与分について争いがない場合に問題はないですが、争いが発生することを想定して、その根拠となる証拠を集める必要があります。
弁護士にご相談、ご依頼いただければ、寄与分の的確な主張や証拠収集のサポート、証拠に基づく寄与分に関する主張を行うことが出来ます。

寄与分を請求する流れ

寄与分を主張する方法

寄与分は、遺産分割協議の中で取り決めを行うことになります。
遺産分割は、まずは、共同相続人間で遺産分割協議を行います。当事者間の遺産分割協議で合意ができない場合には、裁判所で行う遺産分割調停を申し立て、調停内で協議を行います。調停でも合意ができない場合には、裁判官が判断する遺産分割審判の中で判断をすることになります。
寄与分も、この手続きの流れの中で行うことになります。

よくある質問

遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?

遺産分割協議は、法的安定性の観点から、一度協議が成立した後に遺産分割協議をやり直すことはできません。例外的に、共同相続人の全員がやり直すことに合意をした場合、遺産分割協議において相続人が騙されたり脅迫されたりした場合など限定されています。
寄与分は、遺産分割協議の中で主張をするため、限定的な場合を除いて、遺産分割協議が成立した後には寄与分の主張をすることはできません。

特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?

特別寄与料の消滅時効は、時効の完成猶予、時効の更新等を行うことで時効の延長をすることは可能です。他方で、特別寄与料の除斥期間は、当然に権利が消滅するので、時効を延長することはできません。

夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?

特別寄与料は、被相続人の相続人であることが要件です。夫の親の妻は、被相続人の相続人ではないので、寄与分は認められません。
他方で、特別寄与料の請求あれば、妻は、被相続人の相続人ではありませんが、被相続人の親族にあたるため、請求することが出来ます。
夫の妻が配偶者の親の介護をすることはよくあるものの、その貢献が評価されないのでは不公平であることから、新設された特別寄与料の制度が設けられました。

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寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。

寄与分には時効はありませんが、証拠収集が可能な段階で集めておく必要や記憶喚起の必要があることから、なるべく早めに主張した方が良いですし、証拠の収集などその準備も早めに進める必要があります。
新設された特別寄与料には、消滅時効だけでなく、時効の延長が認められない除斥期間も定められているので、相続の開始を知った場合には速やかに対応する必要があります。
寄与分も特別寄与料も、早め早めの対応が大切ですので、相続財産への貢献があると考えておられる方はお早めに弁護士へのご相談ください。

相続における寄与分とは、複数の相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別な貢献をした人(寄与者)がいた場合、遺産分割にあたって、その寄与者が取得できる遺産を増額させる制度です。
寄与分として認められる行為には主に5つの類型があります。この記事では、そのうちの「家事従事型」と呼ばれる類型について解説します。

家事従事型の寄与分とはどんなもの?

家事=炊事洗濯ではない。家事従事型の具体例

家事従事型の「家事」とは、炊事洗濯といった意味ではなく、「家業」や「事業」を意味します。
具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 農業を営む父の手伝いを、長期間にわたってほぼ毎日無償で行い、農地からの収穫を維持できるようにした。
  • 母が開業したブティックにおいて無償で勤務して経営を支え、売り上げの大幅な増加に貢献した。
  • 配偶者が経営する診療所で、週5日ほぼ無給で医師として勤めた。

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寄与分を認めてもらう要件

寄与分が認められるための要件は、以下のとおりです。
①相続人自らの寄与があること、②当該寄与行為が特別の寄与に当たること、③被相続人の遺産が維持または増加したこと、④寄与行為と被相続人の遺産の維持または増加の間に因果関係があること。

家事従事型の独自の要件

寄与分の一般的な要件に加えて、家事従事型で求められる要件は以下のとおりです。

  • 無償ないしこれに近い状態で行われていること(無償性)
    提供した労務に見合うだけの報酬が支払われていた場合は、寄与分として認められません。
  • 労務の提供が長期間継続していること(継続性)
    一時的な手伝いではなく、一定期間継続する必要があります。
  • 労務の内容がかなりの負担を要するものであること(専従性)
    専業であることまでは求められませんが、片手間ではできず、一定の負担を要する労務である必要があります。

通常の手伝いをした程度では認められない

相続人が、ただ単に被相続人の営む農業や商工業などの手伝いをしたことがあるという程度では、寄与分が認められる可能性は、非常に低いです。
そもそも、親族間には民法上の扶養義務があるため、通常の手伝いや身の回りの世話をしたという程度では、親族としての扶養義務を果たしたにすぎないと評価されてしまい、寄与分は認められません。

「特別の寄与」として寄与分が認められるか否かを判断するためには、被相続人との関係(夫婦、親子、兄弟姉妹等)、労務の提供の内容、これに伴う報酬の有無及び内容等を具体的に検討する必要があります。

家事従事型の寄与分を主張するためのポイント

家事従事型の寄与分を主張するためのポイントとしては、以下のような項目が挙げられます。

  • 労務を提供するようになった経緯
  • 労務の具体的内容、時期、頻度、1日のうち労務に充てた時間
  • 被相続人との同居の有無(同居していた場合、生活費等は誰が負担していたか)

これらの事情を総合的に考慮して、「特別の寄与」があったか否かを判断することとなります。

こういったものが証拠になります

家事従事型の寄与分を主張する際には、以下のようなものが証拠となり得ます。

労務の実態が分かる資料:
労務の内容を裏付ける日記、業務日報、タイムカード、電子メール、他の従業員の供述等
無償性(又はこれに近い状況)を裏付ける確定申告書、給与明細書、預貯金通帳等

被相続人の財産の推移が分かる資料:
被相続人の確定申告書、領収書、預貯金通帳、会計帳簿等

家事従事型の寄与分に関する裁判例

家事従事型の寄与分については、具体的な事情を考慮する必要があります。以下、裁判例をご紹介します。

相続人以外の寄与分が認められた裁判例

東京高裁平成22年9月13日決定
被相続人Aは,相続人Bの妻であるCが嫁いで間もなく脳梗塞で倒れ、半身となりました。
CによるAの入院期間中の看護、その死亡前の介護は、本来家政婦などを雇って当たらせることを相当とする事情の下で行われ、それ以外の期間についても入浴の世話や食事及び日常の細々とした介護が13年余りの長期間にわたって継続して行われました。こうしたCによるAの介護は、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、Bの履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価することが相当と判示し、寄与分を認めました。

家事従事型の寄与分が認められなかった裁判例

札幌高等裁判所 平成27年7月28日決定
相続人Bは、被相続人Aの求めに応じて被相続人の経営していた簡易郵便局に夫婦で勤め、2人で月25万円から35万円の給与を得ていましたが、この給与は、当時の賃金センサスによると、大卒46歳時の平均給与の半分にも満たない低い金額でした。
しかし、Aが引退するまでの間の業務主体はAであったこと、給与水準は事業の内容・企業の形態・規模・労働者の経験・地位等の諸条件によって異なること、B夫婦はAと共に住んでおり、家賃や食費はAが支出していたことをも考慮すると、Bは郵便局の事業に従事したことにより相応の給与を得ていたというべきであると判断され、寄与分は認められませんでした。

家事従事型の寄与分の額はどのように決めるか知りたい

家事従事型の寄与分額は、基本的に、以下のような算式で求めた金額が目安となります。
寄与者が通常得られたであろう年間の給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数-現実に得た給付
「寄与者が通常得られたであろう年間の給付額」は、相続開始時(被相続人が亡くなったとき)における、家業と同種同規模の事業に従事する、寄与者と同年齢層の年間給与額を基準にします。実際には、賃金センサス等を参考にすることが多いです。
また、寄与者が被相続人と同居しており、家賃や食費を支払わずに済んでいた場合、被相続人から利益を得ていたとみなされるため、その分が「生活費控除割合」に換算され、控除されます。さらに、少額であっても現実に給付を得ていたようであれば、その分についても控除されます。
ただし、寄与分を決める際には、寄与の時期や方法、程度、相続財産の額といった一切の事情が考慮されるため、上記の計算式によって算出した額からさらに調整される可能性があります。

家事従事型の寄与分に関するQ&A

夫の飲食店を無償で手伝っていたが離婚しました。寄与分は認められますか?

寄与分が認められるのは、法定相続人(民法で定められた相続人)に限られます。被相続人の配偶者であれば必ず法定相続人になれますが、相続開始時にすでに離婚していた場合は、法定相続人とは認められません。そのため、過去にどんなに負担の大きい労務を無償で提供していたとしても、離婚した人には寄与分が認められないどころか、相続権もないので、一切の遺産を受け取ることができません。

長男の妻として農業を手伝っていました。寄与分は主張できるでしょうか。

被相続人の長男の妻(被相続人の子の配偶者)は法定相続人ではないため、寄与分は認められません。
ただし、無償で農業を手伝うことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、相続人に対し特別寄与料(民法1050条1項)の支払を請求できる可能性があります。

夫の商店を手伝いながら、ヒット商品の開発にも成功しました。寄与分を多くもらうことはできますか?

単に被相続人の事業を手伝うだけでなく、ヒット商品を開発するなどして、被相続人の財産の維持又は増加に大きく貢献したような場合、その貢献の程度に応じて寄与分が認められる可能性があります。
ただし、寄与分の具体的な金額については、その貢献の程度や、遺産の総額に左右されます。

父の整体院を給与無しで手伝っていました。小遣いを月4万円もらっていたのですが、寄与分は請求できるのでしょうか?

被相続人の整体院を無給で手伝うことが日常的であり、長期間にわたっていた場合、その整体院従業員の標準的な賃金に相当する額が、寄与分として認められる可能性があります。
ただし、小遣いを月4万円もらっていたという点については、その総額が現実に得た給付額として控除されます。

父の会社に従業員として勤めて経営を支えていた場合、寄与分は認められますか?

寄与分が認められる被相続人の事業とは、基本的には個人事業を想定しており、被相続人が設立した法人や、取締役等を務める法人を含まないのが原則です。法律上、個人と法人は別人格として扱われるため、会社内での従業員としての貢献は、被相続人の財産に対する貢献ではなく、会社の財産の維持・増加に貢献したものと評価されます。したがって、この場合は、寄与分は認められにくいものと考えられます。

無給で手伝っていましたが、たまの外食や旅行等に行く場合は費用を出してもらっていました。
寄与分の主張はおかしいと言われましたが、もらうことはできないのでしょうか。

親族であれば、たまの外食や旅行等にかかる費用を、割り勘にせずに一部の人のみが負担することもあり得るものです。そのため、被相続人の事業を無給で日常的に手伝っている者が、被相続人にときどき外食代や旅行代等を支払ってもらっていたという程度であれば、寄与分額の算定で控除すべき対象と評価される可能性は低いと考えられます。
ただし、被相続人と同居し、家賃や食費をほぼ被相続人が負担していたような場合は、寄与者の利益として控除となるでしょう。

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ご自身のケースが寄与分として認められるか、弁護士へ相談してみませんか?

これまで述べてきたように、寄与分が認められるための要件を満たすことができるかどうかといった点や、具体的な主張・立証方法については、なかなか判断が困難な面があります。
しかし、寄与分は、 相続人が被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与・貢献をした場合に、その相続人が取得できる遺産を増額させるという制度であり、公平の見地から認められているものです。あなたがこれまで被相続人のために尽くされたのであれば、その努力は正しく評価されるべきです。
寄与分について判断に迷ったり悩んだりしたときは、是非、弁護士にご相談ください。

夫婦が離婚するとき、2人で積み上げた財産を分ける「財産分与」という手続を行います。

では、離婚時には支払われていない退職金は、財産分与の対象となるのでしょうか。長期間勤めた場合、一般的に退職金は高額になることから、退職金を分与するか否かは、離婚時の大きな懸念点になります。

今回は、退職金が財産分与の対象になるのか、また、対象になるとしてどのように分配されるのかについてご紹介していきます。

退職金は財産分与の対象になる?

結論から言うと、退職金は財産分与の対象になります。なぜなら、退職金は、給与の後払い的な性格があるからです。働いた対価である給与を、働いている間にもらうか、退職後にもらうかで、給与としての性質に差はないと言えます。

ただし、財産分与は夫婦で積み上げた財産の清算ですから、退職金の全額が財産分与の対象となるわけではありません。財産分与の対象となるのは、働いていた期間と、結婚していた期間が重なる部分に限られます。

自己都合かどうかによる影響はあるか

離婚時に自己都合退職したと仮定して退職金を計算する場合、定年まで勤めて退職金を受け取る場合と比べ、金額は低くなります。定年まで長期間を残して離婚する場合、確実に定年退職基準の退職金を受け取れるかは分かりません。そのため、財産分与の基準時点である別居開始日に自己都合退職したとして退職金を計算するのが一般的です。

ただし、熟年離婚する場合など、定年まであまり期間がない場合には、定年退職時を基準に計算することもあります。

退職金を財産分与するときの計算方法

退職金をどのように財産分与するかについて、すでに退職金が支払われている場合と、まだ退職金が支払われていない場合では計算方法が異なります。そのため、それぞれのパターンに分けてご紹介します。

すでに支払われている退職金について

すでに退職金が支払われている場合、通常は銀行口座等に入金され、預貯金の形で残っていることが多いでしょう。この場合は、預貯金として財産分与の対象になります。
婚姻期間に退職金が支払われたとしても、実際に分与の対象となるのは、その内の婚姻期間に相当する部分だけです。

具体的な計算方法は、分与される退職金=支給される退職金×婚姻期間÷就業期間 となります。
ただし、財産分与の対象となる共有財産は、別居時に存在している財産だけです。そのため、別居時までに受け取った退職金が消費されていた場合、財産分与できる退職金はないことになります。

まだ支払われていない将来の退職金について

すでに説明したように、現時点で退職金が支払われていない場合、将来定年まで勤めあげて退職金を受け取れるかは決まっていません。そのため、離婚時点において、定年までの期間が長く、定年退職金を受け取ることが確実とは言えない場合には、現時点で自己都合退職したとして、退職金を算定するのが一般的です。

他方、定年までの期間が短く、定年退職金を受け取る可能性が高い場合には、定年退職すると仮定して計算することもあり得ます。この場合、将来受け取るはずの金額の前渡しを受けることになりますから、その分の利息が差し引かれることになります。
ただし、婚姻期間中に別居していた場合、その期間は夫婦で財産を形成したとは言えませんから、財産分与の対象から外れることもあり得ます。

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退職金の請求方法

話し合い

まだ同居している場合、話合いによって退職金の分与を決めることになるでしょう。分与を求める側としては、相手が退職金を受け取る予定があるのか、また、退職金をどのように計算するのかを聞いておく必要があります。

別居している場合、LINEやメール等で交渉するか、直接話し合う場合は第三者の目がある場所が良いでしょう。話合いがまとまったら、話合いの内容を公正証書に残しておくと、後々のトラブルを回避しやすくなります。

離婚調停での話し合い

話合いがまとまらなければ、調停手続に移行することになります。
これから離婚をする段階であれば、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、離婚と一緒に財産分与についても協議することができます。

すでに離婚しており、財産分与のみを協議したい場合には、財産分与請求調停を申し立てることになります。調停では、調停委員という第三者を交えて話し合うため、当事者同士の話合いと比べて、客観的かつ冷静に協議することが期待できます。
調停を申し立てるためには、申立書、戸籍謄本、夫婦の収入に関する資料等を揃える必要があります。

調停のあとは離婚裁判

離婚調停でも協議がまとまらなければ、離婚裁判によって決めることになります。
当事者だけの協議や調停委員を交えた調停と違い、裁判は、証拠に基づいて裁判官が判断を下す手続です。そのため、退職金の財産分与を求める側が、自分の主張が認められるように証拠を集め、提出することになります。

財産分与で退職金がもらえる割合

財産分与の割合は、預貯金や退職金など、財産の種類に関係なく基本的に2分の1ずつです。これは、一方が専業主婦で、婚姻期間中一切収入がなかったような場合でも変わりません。なぜなら、専業主婦として家庭内の仕事を負担したことによって、夫婦の財産の形成に貢献したという点では同じだからです。

退職金の仮差押

相手が受け取った退職金が、知らない間に使われることを防ぐために、「仮差押え」という手続をとることができます。

よく似た言葉に差押えというものがありますが、こちらは、すでに裁判で勝訴判決をもらっている場合等に、相手の所有している財産を強制的に確保することです。
これに対して、仮差押えとは、将来財産分与する際の財産を確保しておくために、今ある財産の処分を禁止する手続です。
これは、調停とは別途裁判所に申立てを行う必要があります。

仮差押の方法

仮差押えを行うためには、裁判所に仮差押えの申立てをする必要があります。

申立てをする際には、「どのような権利を保全するのか」、「なぜ保全する必要があるのか」という事情を説明する必要があります。なぜ保全する必要があるのかという理由については、今仮差押えをしないと相手に浪費されてしまい、将来財産分与をするときまで財産が残っていないということを具体的に説明しなければなりません。説明のために、裁判官と面接をする場合もあります。

また、仮差押えの手続を取るためには、仮差押えの対象となる財産の2割から3割を担保金として納めなければならないことには注意してください。

退職金についてのQ&A

夫が公務員の場合、退職が10年以上先でも財産分与してもらえるの?

公務員の場合、倒産のおそれが基本的にはなく、退職金が支給されることはほぼ確実です。また、変動の幅も少なく、金額についての予測可能性も高いため、退職が10年以上先でも、退職金が財産分与の対象となる可能性が高いです。

もらえる予定の退職金を財産分与で前払いしてもらうことは可能?

相手が公務員や、大企業に勤めている場合など、退職金をもらうのが確実といえるときには、財産分与を前払いでもらうことも可能です。
反対に、相手が中小企業に勤めていて、退職金が支給されることが確実とは言えない場合には、前払いでもらうことは難しくなります。
また、相手の資力が十分でない場合には、離婚時に支払ってもらうことは困難ですから、将来退職金が支払われたときに支払うという合意をすることも考えられます。その場合は、公正証書などの形に残して、確実に支払いが行われるようにした方が良いでしょう。

別居中に相手に退職金がでていることがわかりました。財産分与できますか?

別居中でも、婚姻関係が続いていた場合は、別居期間中に支払われた退職金も財産分与の対象になり得ます。
しかし、財産分与は、婚姻期間中に共同で積み上げた財産が対象です。そして、別居期間は、婚姻期間には含まれません。そのため、退職金のうち、別居期間の占める割合部分については、財産分与の対象とはならないので、ご注意ください。

共働きの夫婦が離婚するときも退職金は財産分与の対象ですか?

共働きの夫婦でも、退職金が財産分与の対象にならないというわけではありません。そのため、夫婦両方に退職金が支払われる場合には、退職金を合算した金額が財産分与の対象になります。ただし、この場合も確実に支給されるかという点を考慮し、婚姻期間に相当する部分のみが財産分与の対象になるので、片方だけに退職金が支払われる場合と比べて計算が複雑になる可能性があります。

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退職金は財産分与の判断が難しいので弁護士に相談して確認してもらいましょう

退職金の金額は、一般的に高額になることが多いです。また、まだ退職金が支払われていない場合は、「退職金が確実に支払われるのか、財産分与の対象になるのはいくらなのか」という点が争われることも多く、交渉は難航します。
弁護士であれば、退職金の調査、相手との交渉、裁判所での主張等の手続を代わりに引き受けることで、適切な財産分与を行うことができます。離婚では、一方的に不利な条件で合意してしまわないように、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、必要な交渉や調査を依頼してください。弁護士法人ALGでは、経験豊富な弁護士が、ご要望に合わせた解決方法をご提案いたします。

「付き合っていた頃は優しかったのに、結婚後に豹変し、何かにつけて暴力をふるう相手。別れたいけど、仕返しが怖い・・」
配偶者からDVを受け、離婚を考えている方はいらっしゃいませんか?
どんな理由であれ、配偶者からのDVは許されません。

DVの被害を受けているならば、まずは身の安全を確保したうえで、第三者を介した離婚を目指すべきです。ただし、DV加害者と離婚する場合は、証拠集めなど事前の準備と適切な手順を踏むことが必要となります。何も準備せずに別居や離婚交渉を始めると、ご自身に不利な結果となる可能性があるため注意が必要です。
この記事では、DV加害者と離婚するために知っておくべきことについて解説していきます。

DV加害者と離婚する方法

DV加害者と安全に離婚するためにとるべき手順や注意点について、以下でご説明します。

まずは身を守るために別居する

DV加害者へ離婚を切り出す前に、まずはご自身の身を守るためにも別居しましょう。同居したまま離婚を切り出すと、逆上されて暴力を振るわれる可能性があるからです。
なお、別居の準備は、相手に感づかれないよう進める必要があります。

接近禁止命令の発令を検討する

別居後も、身の危険を感じる場合は、裁判所から相手に「接近禁止命令」を発令してもらうという方法があります。
接近禁止命令とは、DV加害者による被害者身辺へのつきまとい、住居や勤務先周辺でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令です。違反した者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため、暴力は辞めようという心理が相手に働くことが期待されます。
裁判所に接近禁止命令を申し立てる場合は、事前に警察署や相談支援センターに相談するか、もしくは公証役場で宣誓供述書を作成する必要があります。そのうえで、DV被害の証拠も提出しなければなりません。例えば、ケガの写真、医師の診断書、DVの音声・動画データ記録などが挙げられます。

DVシェルターは一時的にしか使えない

DV被害者が一時的に避難できるDVシェルターもあります。しかし、DVシェルターは、生命や身体への危険があるなど、緊急性が認められる場合でないと入居できません。
また、DVシェルターは一時的な保護施設であるため、入居できる期間は、基本的に数日から2週間程度となります。
身の安全を守りながら相手と離婚するには、別居状態の継続が必要となります。そのため、DVシェルターを利用する場合は、シェルターを出た後にすぐ住める場所を確保しておくことが望ましいでしょう。

DVの証拠を集める

DV加害者は外面が良く、世間体を気にして離婚を拒否する者が多いため、夫婦間の離婚の話し合いは難航することが予想されます。協議や調停で合意できなければ、離婚裁判へと進むことになります。
裁判で、DVによる離婚と慰謝料の支払いを認めてもらうには、DVを受けていたことを証明する証拠の提出とその立証が必要となります。具体的には、以下のような証拠を集めなければなりません。

診断書

医師による診断書は、DVの有力な証拠になり得ます。
配偶者の暴力によりケガをした場合や、度重なる暴言を受けて過呼吸やうつ病等になった場合は、早めに外科や心療内科などの病院を受診し、医師に診断書の作成を依頼しましょう。
診断書には、「受診日」「傷病名」「ケガを負った経緯」「ケガの症状や程度」「要治療期間」などを記載してもらいます。ケガが複数ある場合は、ケガの大小にかかわらず、すべてのケガを医師に申告することが必要です。また、必ず医師に「DVにより負ったケガ」であることを伝えましょう。DVの話をするのは気が引けるかもしれませんが、DVが原因であることが診断書に記載されれば、証拠としてより有効な診断書になるからです。

怪我の写真

DVにより負ったケガの写真も、有力な証拠となり得ます。自分自身のケガであることを証明するため、顔とケガを一緒に写した写真と、ケガの部分を拡大して写した写真、いずれも撮って残しておきましょう。また、後から見た時に、いつ何を撮ったのか判断できるよう、写真に日付や写真の内容を説明するメモを添付しておくと良いでしょう。
さらに、新聞やテレビ画面など、撮影日の証拠となるものを一緒に撮ると、証拠としての有効性が高まります。ただし、デジタルカメラを使うと加工を疑われる場合があるため、使い捨てカメラなどのフィルムカメラで撮影するのが望ましいでしょう。

音声・動画

DV行為を受けているときの音声・動画データも、有効な証拠になり得ます。
この場合、被害者と加害者が誰なのか、はっきりとわかる内容で記録することが重要です。
例えば、両方の姿が映っている動画や、互いの名前を呼ぶ声が入った音声などの記録が挙げられます。
なお、DV行為中にとっさに録音することは困難ですから、あらかじめ、服のポケットの中など相手に気づかれない所にICレコーダー等を忍ばせて、いざという時に使うことをおすすめします。常時録音にしておくという方法もあります。

DVを受けたことが記載してある日記

DVの証明として、日記をつけておくことをおすすめします。日記には、「DVを受けた日時や場所」「DVの内容」「ケガの症状」等について、具体的に書いておきましょう。また、日記の内容を後から書き直してはいけません。証拠としての有効性が低くなるからです。
ただし、日記だけではDVの証拠として不十分です。あくまで、日記は、写真や音声・動画データ、診断書などの証拠を補てんするためのものであるとご理解下さい。

警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録

DVを受けた際には、警察や配偶者暴力相談支援センター、女性センター等の公的支援機関に相談しましょう。
これらの相談記録は、DVを受けていたことの有効な証拠となるだけでなく、接近禁止命令の申立てやシェルターの利用にも必要とされているからです。

経済的DVを受けている場合

経済的DVとは、相手の金銭的な自由を奪い、経済的・精神的に追い詰める行為のことです。経済的DVの例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 収入があるのに、相手に生活費を全く又はほとんど渡さない
  • 相手に専業主婦(主夫)であることを強要し、外で働かせない
  • 特別の理由なく一切働かない
  • ギャンブルや趣味など浪費のために借金を繰り返す
  • 相手に対し、お金の使い道を必要以上にチェックし、自由に使わせることを認めない

また、経済的DVの証拠になるものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 生活費が振り込まれていないことが分かる銀行通帳
  • 加害者の浪費が分かるクレジットカードの利用明細書
  • 加害者の借金の契約書や督促状
  • 「生活費を支払うつもりはない」など、お金に関する加害者の暴言が録音された音声

離婚の手続きを進める

離婚する場合、まずは夫婦間で離婚について協議し、話し合いがまとまらない場合は、離婚調停を申し立て、調停委員を介した話し合いを行います。調停で合意できなかった場合は、裁判を起こし、裁判所に離婚や離婚条件についての判断をゆだねることになります。
しかし、DVを理由とする離婚の場合は、相手と話し合うこと自体が難しく、相手が離婚に応じないケースも多いため、調停、裁判へと進む可能性が高いといえます。

相手が離婚してくれない場合

相手が離婚に応じない場合は、まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員の仲介のもとに話し合いを進めていきます。調停を有利に進めるには、DVの証拠を準備し、DVの被害の実情を訴え、調停委員を味方につけることが役立ちます。
また、調停が不成立となった場合は、離婚裁判へと進むことになります。裁判で離婚を認めてもらうには、相手のDV行為が法定離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)にあてはまることを、客観的な証拠にもとづき立証しなければなりません。
これらの作業には法的知識が必要とされるため、ご自身だけで調停・裁判を戦うのは難しいといえます。有利な条件で離婚したいならば、法律の専門家である弁護士を介入させることをおすすめします。

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DVで離婚するときは慰謝請求ができる

DVで離婚する場合、DVの証拠があれば、相手に慰謝料を請求できる可能性があります。
DV離婚の慰謝料の相場は、50万~300万円程度となります。
ただし、具体的な慰謝料額は、以下のような点を考慮し、総合的に判断されます。

  • DVの回数・頻度・期間
  • DVによるケガの症状や程度
  • 夫婦の婚姻期間の長さ
  • 養育が必要な子供の有り無し・人数
  • DV被害者の落ち度(浮気をした、喧嘩を吹っ掛けたなど)
  • DVによりうつ病、パニック障害になった

親権をDV加害者にとられる可能性はある?

DV加害者が配偶者にDVを行っていたとしても、子供に対してDVを行っていないのであれば、DV加害者に親権をとられる可能性はあります。なぜなら、離婚後の親権は「子供との関係が良好で、かつ子供の世話を中心的にしている方」に認められることが多いからです。そのため、DV加害者に親権を取られないようにするためには、相談者も積極的に育児に参加するなどの努力が必要となります。
ただし、子供にもDV被害が及んでいる場合は、子供の健全な成長を妨げるリスクがあるため、相談者が親権をとる可能性が高くなります。

DVで離婚した場合でも面会交流はしなければいけない?

DVによって離婚した場合でも、DV加害者が子供に対してDVを行っていなかったのであれば、面会交流は認められるのが基本です。しかし、面前DV(子供が見ている前で行われるDV)のトラウマで、子供がDV加害者に恐怖感を抱き、面会交流を拒否しているような場合は、子供への精神的ダメージを考慮し、面会交流を拒否できる可能性があります。
なお、面会交流について、DV加害者と争いになった場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てるという方法があります。

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DV加害者と離婚したい場合は弁護士にご相談ください

DV加害者と離婚する場合、夫婦間だけで話し合いを進めると、相手が離婚を拒否したり、逆上されて暴力を振るわれたりする可能性があるため、注意が必要です。
そのため、DVによる離婚を目指したいのであれば、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士は、接近禁止命令の申立て、DVの証拠集め、DV加害者との交渉、調停への同席や裁判の出廷など、様々な状況においてサポートを行い、有利な条件で離婚できるよう尽力することが可能です。
弁護士法人ALGは、これまで数多くの離婚問題を解決してきました。DV被害から抜け出し、人生の新たなスタートを踏み切れるよう全面的にバックアップいたしますので、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。

交通事故による損害賠償において、「慰謝料」という言葉を耳にしたことはありませんか。
これは、事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償のことを指し、治療費などと同様、賠償金の一部になりますので、加害者に請求することが可能です。
慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準と3つの基準があり、同じ事故の慰謝料でも、どの基準を選ぶかにより、金額が変わります。
ここでは、自賠責基準と弁護士基準を用いて、具体例を使いながら、慰謝料額にどの程度の差が出るのか、確認していきます。

慰謝料の計算方法は算定基準により異なる

慰謝料の算定基準には以下3つの基準があります。同じ事故の慰謝料でも、どの基準を採用するかにより、慰謝料の金額が変わります。

①自賠責基準
自賠責基準は被害者を最低限救済するための基準なので、最も低い基準となることが多いです。

②任意保険基準
保険会社が独自に設定する基準で、非公表であり、自賠責基準とほぼ同額か多少高い程度と言われています。

③弁護士基準
過去の交通事故問題の裁判例をもとに作られた基準で、3つの基準の中で最も高い基準になります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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入通院慰謝料の計算方法

入通院慰謝料とは、事故によりケガを負い、入院や通院を強いられた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことをいいます。具体的にどのように計算されるのか、自賠責基準と弁護士基準を用いて、基準別の計算方法を解説します。

自賠責保険基準の計算方法

自賠責基準の場合、入通院慰謝料の計算式は下記のとおりとなります。

4300円×対象日数(※)=入通院慰謝料

※①入院期間+通院期間(入通院期間)と②入院期間+通院期間の中で実際に入院、通院した日数×2を比較し、小さい方の日数を対象日数とします。
※2020年3月31日以前に発生した事故の場合は4200円×対象日数を適用します。

入院10日間・通院期間6ヶ月(180日)のうち90日通院した場合の計算例

下記例を、自賠責基準の計算式にあてはめてみましょう。

(例)入院10日間・通院期間6ヶ月(180日)のうち90日通院した場合

①(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)
入院期間+通院期間は190日、実際に入院、通院した日数は10日+90日=100日となります。
190日<100日×2ですので、190日を対象日数とします。
よって、入通院慰謝料は4300円×190日=81万7000円となります。

②(2020年3月31日以前に発生した事故の場合)
入通院慰謝料は4200円×190日=79万8000円となります。

弁護士基準の計算方法

弁護士基準による入通院慰謝料は、「慰謝料算定表」を参照し、通院日数ではなく、怪我をして通院を開始した日から完治または症状固定日までの通院期間に基づき、算定します。

算定表には2種類あり、以下のように使い分けます。

  • 骨折や脱臼など通常の怪我の場合→別表Ⅰ
  • 他覚所見のないむちうち症や打撲など軽傷の場合→別表Ⅱ

【算定表の使い方】
30日を1月と換算し、入院期間と通院期間が交差する部分の金額が、入通院慰謝料の金額となります。
なお、入院期間や通院期間が1ヶ月未満の場合や、日数を月数に換算し端数が出る時は、日割り計算をし、慰謝料額を算定します。

※ただし、この算定表はあくまで目安です。通院頻度、怪我の部位や程度、治療内容などにより、慰謝料額が増減する可能性がありますので、注意が必要です。

むちうち等の軽傷と重傷の場合で参考にする表が異なる

それでは、算定表を使い、実際に計算の流れをみてみましょう。

  • 骨折など重傷の場合

    (例)骨折、入院10日間・通院期間6ヶ月(180日)のうち90日通院した場合
    ①骨折など重傷の場合は、別表Ⅰを参照します。

    ②入院期間+通院期間は190日となり、190日をひと月30日で換算すると、6ヶ月と10日になります。

    ③まず、別表Ⅰの縦列の通院期間の6月の部分をみると、116万円であることが確認できます。

    ④次に、7月の124万円から6月の116万円を控除したものに、10日/30日を乗じ、端数10日分の金額を出し、2つを合算します。

    6ヶ月分の通院慰謝料  116万円
    10日分の通院慰謝料 (124万円-116万円)×10日/30日≒2万6667円
    190日分の通院慰謝料 116万円+2万6667円=118万6667円

    ⑤上記190日分の通院慰謝料には、入院日数10日分の通院慰謝料が重複してしまっているので、その分を控除します。さらに、10日分の入院慰謝料を加算します。
    118万6667円-(28万円×10日/30日)+(53万円×10日/30日)=127万円

    ⑥よって、入通院慰謝料は127万円となります。

  • 他覚所見のないむち打ち症など軽傷の場合

    ①むち打ち症など軽傷の場合は、別表Ⅱを使い、上記①の例と同様の方法で計算を行います。

    6月分の通院慰謝料  89万円
    10日分の通院慰謝料 (97万円-89万円)×10日/30日≒2万6667円
    190日分の通院慰謝料 89万円+2万6667円=91万6667円

    ②上記190日分の通院慰謝料から入院日数10日分の通院慰謝料の重複分を控除し、入院慰謝料10日分を加算します。

    91万6667円-(19万円×10/30)+(35万円×10/30)=97万円

    ③よって、入通院慰謝料は97万円となります。

表の期間以上の入院・通院があった場合

慰謝料算定表は15ヶ月までしか記載されておりませんので、16ヶ月以降の入院・通院があった場合は、15ヶ月から14ヶ月の差額分の慰謝料を、月毎に加算していくことになります。
具体例をもとに慰謝料計算の流れをみてみます。

①重傷で、入院のみ16ヶ月行った場合
まず、別表Ⅰの横列の入院期間の15月の部分をみると、340万円であることが確認できます。
次に、15月の340万円から14月の334万円を控除し、その差額分を15月の340万円に加算します。
340万円+(340万円-334万円)=346万円
よって、入通院慰謝料は346万円となります。

②重傷で、通院のみ16ヶ月行った場合
別表Ⅰの縦列の通院期間の15月の部分をみると、164万円であることが確認できます。次に、15月の164万円から14月の162万円を控除し、その差額分を15月の164万円に加算します。
164万円+(164万円-162万円)=166万円
よって、入通院慰謝料は166万円となります。

通院日数が少ない場合

【自賠責基準】
実際に通院した日数を2倍した日数が通院期間の日数に満たない場合は、実通院日数×2が慰謝料算定の基準となりますので、実通院日数が少なくなると、慰謝料が減額される可能性があります。

【弁護士基準】
通院期間が長期でも、実際に通院した日数が少ない場合には、怪我の症状や通院頻度等をふまえ、重傷の場合は実通院日数の3.5倍程度、他覚所見のないむち打ち症など軽傷の場合は実通院日数の3倍程度が慰謝料算定のための通院期間とされる場合があります。

リハビリの通院について

事故によりケガを負い、リハビリが必要になる場合があります。このリハビリのための通院は、入通院慰謝料の算定のための通院期間に含まれます。
ただし、症状固定後にリハビリで通院した場合、その部分の通院は、基本的には、通院期間に含まれません。なお、症状固定とは、これ以上治療やリハビリを続けても、症状の改善が見込めない状態になったことをいいます。
しかし、症状固定後であっても、リハビリをしないと症状が悪化する等の事情がある場合には、例外的に通院期間に含まれる場合があります。保険会社との交渉次第になりますので、争いになった場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
なお、症状固定後、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受ければ、後遺障害慰謝料を請求することが可能になります。

後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料とは、事故により後遺障害が残ってしまった場合の精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。後遺症について、自賠責保険の定める後遺障害等級認定を受けた場合に、請求可能となります。

自賠責基準の後遺障害慰謝料

自賠責基準による後遺障害慰謝料は、下記表のとおり、等級に応じ金額が定められています。
なお、介護を要するものとは

①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常にまたは随時介護を要するもの
②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常にまたは随時介護を要するもの

のことをいいます。上記の場合で、常に介護が必要な場合は1級、随時介護が必要な場合は2級と区別されています。
(2020年4月1日以降に発生した事故における後遺障害慰謝料)

後遺障害等級自賠責基準
1級(介護を要するもの)1650万円
2級(介護を要するもの)1203万円
1級1150万円
2級998万円
3級861万円
4級737万円
5級618万円
6級512万円
7級419万円
8級331万円
9級249万円
10級190万円
11級136万円
12級94万円
13級57万円
14級32万円

弁護士基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準による後遺障害慰謝料額は、下記表のとおりです。自賠責基準による後遺障害慰謝料より、弁護士基準の方が高額になることが確認できます。
※下記の金額はあくまで基準であり、被害者の事情や加害者の対応、事故状況などにより、金額が増減しますので、注意が必要です。

後遺障害等級弁護士基準
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

死亡事故慰謝料の計算方法

死亡慰謝料とは、事故により被害者が亡くなられてしまった場合の精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。具体的には、遺族の人数や被害者の家族内での立場などに基づき、慰謝料の金額が決定されます。

自賠責保険基準の死亡慰謝料

自賠責基準では、被害者本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料があり、以下の合計額が死亡慰謝料となります。
死亡慰謝料を請求できる権利をもつ遺族は、被害者の父母(養父母を含む)、配偶者、子(養子、認知した子、胎児を含む)です。

  • 被害者本人には400万円
  • 遺族には、遺族の人数が1人なら550万円、2人なら650万円、3人以上なら750万円が支払われ、被害者に被扶養者がいる場合にはさらに200万円が加算される

弁護士基準死亡慰謝料

弁護士基準による死亡慰謝料は、被害者の家族内での立場に基づき、下記表のとおり相場が定められています。

例)
被害者が一家の支柱であった場合の慰謝料額は2800万円、母親や配偶者など一家の支柱に準ずる場合は2500万円、独身の男女や子供などの場合は2000~2500万円が相場となります。

※下記表の金額はあくまで目安であり、被害者の年齢や収入、社会的地位、家庭環境などにより、金額が変動する可能性があるので、注意が必要です。

被害者死亡慰謝料
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他(独身の男女、子供、幼児等)2000万~2500万円

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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交通事故の慰謝料計算は弁護士にお任せください

交通事故に遭った際に受け取れる慰謝料には種類があり、計算方法も様々です。
しかし、事故に遭うと、怪我の治療のために通院したり、後遺障害が残り日常の生活が不便になったりと、慰謝料の計算や相手方保険との交渉まで気が回らない方が多いのではないでしょうか。
さらには、適正な慰謝料額を受け取れるよう、治療の段階から注意すべき点が多くあるとは思いもよらなかった方もいらっしゃるでしょう。

弁護士であれば、慰謝料の計算や示談交渉、必要な資料の収集や手続きなどを代行して行いますし、治療中の段階であれば、慰謝料請求に必要な通院回数や検査、後遺障害等級認定申請に必要な資料などのアドバイスをすることも可能です。

慰謝料の請求についてお困りの場合は、まずは、お気軽に、交通事故に詳しい弁護士が多数所属する弁護士法人ALGまでお問い合わせください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。