貯金・預金の相続に必要な手続き

貯金・預金の相続に必要な手続き

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

亡くなった人が遺した財産に預貯金が含まれている可能性は高いです。

しかし、預貯金を自由に引き出せるようにしておくと、その後の相続トラブルを招くこと等から、名義人が亡くなったことを把握すると、金融機関は口座を凍結してしまいます。

そこで、この記事では、口座の凍結を解除する方法や預貯金を相続する場合の注意点、相続手続きの流れ等について解説します。

亡くなった人の口座は凍結される

被相続人が亡くなったことを、被相続人が口座を開設している金融機関が把握すると、その口座は凍結されることになります。

口座が凍結されてしまうと、金額を変更させる手続きが基本的にできなくなってしまいます。そのため、入出金や解約だけでなく、引き落としすること自体もできなくなります。

被相続人の口座を生前と同じように利用できるようにするためには、金融機関で凍結を解除する手続きを行う必要があります。

凍結を解除するには

口座の凍結を解除するためには、金融機関ごとに凍結解除の手続きを行う必要があります。

凍結解除の手続きは、遺言書や遺産分割協議書等の必要書類を集めて行います(詳しくは後述いたします)。

預貯金を放置したらどうなる?

凍結された口座の預貯金を放置すると、その口座は休眠口座となります。

【休眠口座とは】
最後の取引から10年以上、入出金等が行われていない口座です。この期間について、相続が発生したタイミングは影響しません。

2009年1月以降に最後の取引が行われた口座については、預金保険機構に移管されて公益活動に利用されます。

窓口で手続きを行えば休眠口座を復活させることができますが、最近利用されていない口座から手数料を取る金融機関があるため、残高が減ってしまうおそれがあります。

預貯金を相続する場合の注意点

預貯金を相続する場合には、以下のような点に注意しましょう。

  1. 遺産分割手続きが完了するまで口座からお金を引き出さない
  2. 平日の日中しか手続きができない
  3. 銀行ごとに書式が違う

これらの注意点について、次項より解説します。

遺産分割手続きが完了するまで口座からお金を引き出さない

相続財産の預貯金は、遺産分割協議が成立するまで手を付けないようにしましょう。これは、金融機関が口座名義人の死亡の事実を把握して、口座が凍結される前であっても同じです。

口座が凍結されていなければ、ATM等を利用して預貯金を引き出すことが可能です。そのため、金融機関に被相続人が亡くなった事実を知られる前に預貯金を引き出そうとする人がいます。

しかし、預貯金を勝手に引き出すと、遺産隠しを疑われて相続トラブルの原因となるおそれがあります。

また、被相続人が多額の借金等をしていたことが判明した場合に、相続放棄が認められなくなるおそれもあります。

なお、相続が発生する直前に預貯金を引き出すケースもありますが、そのような「直前引き出し」は預貯金を現金に換えただけなので、その現金は基本的に相続財産となります。

そのため、現金は遺産分割の対象や、相続税の課税対象となります。

直前引き出しをした現金を申告しないと脱税になる危険もあるため注意しましょう。

平日の日中しか手続きができない

口座の凍結解除手続きを相続人が自分で行うためには、金融機関の窓口の営業時間内に手続きを行う必要があります。一般的な銀行では、窓口の営業は平日の午前9時から午後3時までです。

なお、ゆうちょ銀行については、平日の午前9時から午後4時まで窓口を営業しています。

また、一部の銀行では、窓口の営業時間を延長したり、土日も営業したり、郵送での手続きを受け付けているケースがありますので、金融機関へ直接確認すると良いでしょう。

銀行ごとに書式が違う

口座の凍結解除のためには、遺産分割協議書または遺言書等の書類が必要であることは共通している場合が多いものの、金融機関ごとに独自の手続き書類が用意されている場合があります。

書式を入手するためには、基本的に各金融機関の支店等に出向く必要があります。なお、書式を郵送してもらえる場合等もあります。事前に金融機関に確認することをお勧めいたします。

銀行等の金融機関で行う相続手続の流れ

金融機関で行う相続手続きは、主に以下のような流れで進みます。

  1. 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る(口座が凍結される)
  2. 必要書類を準備する
  3. 払戻し等の手続を行う

この流れについて、次項より解説します。

1. 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る

預貯金を相続するためには、口座のある金融機関に名義人がなくなったことを伝えます。伝える方法として、窓口で直接伝える方法や電話で伝える方法、WEBサイトで伝える方法等があります。

名義人が亡くなったことを伝えると、金融機関は口座を凍結します。凍結後は公共料金や通信料等の引き落としができなくなるので、なるべく事前に引き落とし口座を変更しておくようにしましょう。

2. 必要書類を準備する

預貯金を相続するために必要な書類は、遺言書があるか否かによって変わります。また、各金融機関が用意している「相続手続依頼書」の提出等が必要となります。

なお、相続手続依頼書は、各金融機関において「相続届」等の名称で書式が用意されています。

相続手続依頼書には、基本的に相続人全員による署名押印が必要です。通常の場合、押印には実印を用いて印鑑証明書を添付します。

遺言書がある場合

遺言書がある場合、預貯金を相続する権利がある人は遺言書を確認すればわかるケースが多いので、主に以下のような書類を提出します。

  • 遺言書
  • 検認調書または検認証明書(検認が必要な場合)
  • 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
  • 預貯金の相続人の印鑑証明書
  • 被相続人の通帳等
  • 相続手続依頼書

遺言書がない場合

遺言書がなく、遺産分割協議書を作成したケースでは、遺産分割協議書を提出する必要があります。

また、相続人全員が手続きに関わっていることを証明するために、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要となります。

遺言書はないが、遺産分割協議書がある場合

遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合、相続人全員が決めた相続人を明らかにするために遺産分割協議書を提出する必要があります。

この場合には、主に以下のような書類を提出することになります。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の通帳等
  • 相続手続依頼書
遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合であっても、預貯金の払い戻しを受けることは可能です。
主な必要書類は以下のとおりです。

  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の通帳等
  • 相続手続依頼書(相続人全員)

3. 払戻し等の手続

すべての手続きを終わらせると、被相続人名義の預貯金口座は、解約されて払い戻しとなるか、口座の名義が変更されます。

払い戻しの場合、必要書類を提出してから2週間~1ヶ月程度かかります。払い戻しの入金は、相続手続依頼書で指定した口座に行われます。

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貯金・預金の相続に関するQ&A

銀行預金の相続に期限はありますか?

銀行預金の相続について、明確な期限は設けられていません。しかし、なるべく早く相続手続きを行うのが望ましいです。

なぜなら、銀行預金を10年以上放置すると休眠口座になってしまうだけでなく、放置されている口座には管理手数料が生じることもあるからです。

さらに、債権は基本的に5年で消滅時効を援用できるようになることから、5年以上放置した預金口座については銀行が消滅時効を援用するリスクを否定できなくなります。

今のところ、そのような事例はないようですが、絶対にないことだとは言えないため注意しましょう。

生活保護を受けているのですが、貯金を相続したら保護は打ち切られてしまいますか?

生活保護の受給者であっても、被相続人の預貯金を相続することはできます。そして、預貯金を相続したとしても、生活保護が必ず打ち切られるわけではありません。

例えば、生活保護費の1ヶ月分に届かない程度の預貯金を相続しても、そのまま生活保護を受給できる可能性があります。

また、生活保護費の6ヶ月分程度以下の預貯金を相続した場合には、生活保護が停止されるものの打ち切られない可能性があります。

ただし、生活保護費の6ヶ月分を上回るような預貯金を相続すると、生活保護が打ち切られるおそれがあります。

なお、預貯金を相続したときには、福祉事務所等に届け出ましょう。また、事情があって相続放棄したい場合には、ケースワーカー等に事前に相談することが望ましいでしょう。

相続人は自分だけです。相続手続きせず口座を使っていても良いですか?

相続手続きを行っていない預貯金口座からお金を引き出すことは、相続人が一人であっても、リスクがあるのでおすすめできません。

なぜなら、預貯金は金融機関が名義人から預かっているお金なので、名義人でない人が無断でお金を引き出すと、少なくとも形式的には詐欺や窃盗に該当するおそれがあるからです。

また、金融機関は名義人以外の利用を禁止している場合が多いので、相続人がお金を引き出すと契約違反になるおそれがあります。

相続する貯金がどこの銀行にあるか分からない場合はどうしたらいいですか?

被相続人の預金がある金融機関が分からない場合には、通帳やカード等を探して調べる方法があります。

また、被相続人の自宅等に金融機関からのはがきがある場合、パソコンやスマートフォンにメールが届いている場合等もあるため確認しましょう。

他にも、近所にある金融機関等で手続きを行えば、口座を開設していないか確認できることがあります。

なお、近年は店舗のないインターネットバンキング等もありますが、パソコンの接続履歴やスマートフォンのアプリ等を確認することによって口座を把握できる可能性があります。

貯金の相続手続きをするなら、弁護士への相談・依頼がおすすめです

準備をする時間がない状況で被相続人が亡くなってしまうと、口座の凍結により生活に支障が生じるおそれがあります。

そのような場合には、すぐに凍結解除の手続きを行う必要がありますが、遺産分割協議がすぐにまとまるとは限りません。

そこで、預貯金の相続について困っている場合には、すぐに弁護士にご相談ください。弁護士であれば、早く交渉をまとめるためのアドバイスが可能です。

また、お金がすぐに必要な場合等では、仮払いの手続きについてもお手伝いいたします。

離婚時に取り決めた養育費の額について、後になって相手方から減額を求められることがあります。

本記事では、実際に相手方から減額を持ち掛けられた場合にどうすべきか、その対応方法や、養育費の減額が認められる場合と認められない場合の違い等についてご説明します。

養育費の減額請求は拒否できる?

養育費の取り決めをした場合、その後、養育費の支払い義務者が一方的に養育費を減額することや、支払いを止めることは認められませんが、 養育費の取決め後に、それぞれの生活状況や収入等について変更があった場合には、養育費の減額が認められる可能性があります

相手方から養育費減額の話があった場合、必ずしも承諾しなければならない訳ではありませんが、合意できない場合には、相手方から養育費減額調停を申し立てられることがあり得ます。

そのため、減額の申し出に対して拒否する場合には、相手方の言い分をよく把握した上で、対応策を考える必要があります。

養育費の減額が認められる条件

養育費の支払いは、子が経済的に自立するまで長期間続くことから、その間に、当事者の収入や生活状況等に変化が生じることが起こり得ます。

そのため、離婚時に養育費の金額が取り決められていたとしても、 離婚の際に取り決めたときには予測できなかった事情の変更があり、これを考慮しなければ著しく公平を害する場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。

養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法

養育費の減額について、相手方から交渉を持ち掛けられた場合、まずは相手方と養育費の金額について話し合うことになります。その話合いの中で、相手方の言い分を把握しながら対応策を検討します。

相手方が、養育費減額調停を裁判所に申し立てた場合には、さらに調停への対応を考えていく必要があります。

連絡を無視せず話し合う

相手方から養育費の減額を求めて話合いを要求された場合、まずは法的にその減額請求が妥当なのかどうかを検討し、対応を考えていく必要があります。

法的に減額請求が認められないと考えられる場合には、話合いを拒絶するという対応も一つの手段となり得ます。

他方で、法的に減額請求が妥当といえる場合は、話合いを無視して相手方から調停を申立てられてしまうより、むしろ話合いで進めた方が、減額幅を抑えた金額で合意できる可能性があります。

したがって、相手方からの連絡を完全に無視するのではなく、 話合いにより相手方の主張する事情をよく聞いた上で、対応を検討していくべきです。

生活が苦しいことを証明する

養育費の減額は、養育費の支払いをする側の事情だけではなく、養育費を受け取る側の事情も踏まえて判断されることになります。

養育費を支払う側の収入が減少していたとしても 、養育費をもらう側の収入も減少し、生活が苦しいという場合には、そのことを証明することで、養育費の減額を回避できる可能性があります

調停で調停委員を味方につける

養育費減額調停を申し立てられた場合は、調停で調停委員を味方につけることも重要です。

調停委員は、当事者の間に入って話合いを調整する立場にありますので、調停委員を味方につけることができれば、こちらにとって有利な条件で相手方を説得してもらえる可能性があります。

また、最終的に、裁判官に対し、養育費の減額を認めないというこちらの主張の正当性を説得しなければなりませんが、通常、裁判官には、調停委員を通して事情が伝えられますので、その意味でも、 まずは調停委員をこちらの味方につけることが重要です。

折り合いをつけ減額幅を減らすのも1つの手

相手方の主張について法的な根拠があり、反論が難しい場合には、減額を完全に拒否するのではなく、その減額幅を抑えられるように交渉することも一つの手といえます。

相手方は、生活が苦しい状況であるからこそ減額を求めているという場合も多く、調停で時間をかけるよりも、早い段階で養育費の減額が見込めるのであれば、多少減額の幅を小さくしてでも合意したいと考えることもあり得ます。

そのため、早期解決のための譲歩として、 一定の減額を受け入れることとして金額を提示していくことも検討すべきでしょう。

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養育費の減額拒否に関するQ&A

養育費の減額請求を拒否したら、勝手に減額されました。残りを回収できますか?

公正証書や調停調書において養育費の金額を定めている場合、義務者の一存で勝手に減額することはできず、減額する場合は協議や審判で内容を変更する必要があります。

そのため、勝手に減額されたことで生じた未払分については、強制執行を申し立てることにより回収することができます。

他方、単に協議書を作成していたにすぎない場合や口頭での合意のみであったりした場合は、強制執行をすることはできません。

その場合には、減額に応じる代わりに、未払分はしっかり払ってもらうなど、強制執行以外の方法で回収することを試みる必要があります。

再婚を理由に養育費が減らされるのは納得できません。私はシングルで頑張っているのに…。減額拒否できますか?

相手方が再婚をしたことで、その扶養をすべき家族が増えたことは、法的には養育費の減額が認められる事情変更にあたる可能性があります。

しかし、再婚相手の収入によっては、扶養しなければならない家族が増えたとはいえない場合もあり、減額を拒否できることもあります。

再婚の予定があるので養育費を減らしたいといわれましたが相手が本当にいるのか疑問です。拒否できますか?

再婚相手の有無については、義務者の戸籍謄本等から確認することが可能です。

相手方が戸籍謄本等を示さない場合には、再婚相手の存在について不明ということで、減額を拒否することが考えられます。

なお、減額調停が申し立てられた場合には、調停委員からも、戸籍謄本等、再婚したことが証明できる資料を提出するよう求めることが多く、相手方が資料を提出しない場合は、減額を拒否しやすくなるといえます。

算定表通りの金額なのに、支払いが苦しいから養育費を減らしたいといわれました。拒否できますか?

離婚時に算定表を用いて金額を決めている場合、それは離婚当時の収入や子の人数等を前提として決めたものです。

そのため、相手方が養育費支払いについて苦しいと主張する理由が、離婚当時の収入よりも収入が下がったか、扶養家族が増えたといった事情によるものであるならば、裁判所は養育費減額を認める可能性が高いといえますので、その場合は減額を拒否することは難しいと思われます。

養育費の減額請求を拒否できるかは弁護士にご相談ください

相手方からの減額請求が法的に根拠のあるものか否か、反論しうるものであるか否かを判断するには、専門的な知識や経験が求められます。

そのため、相手方から養育費の減額を求められた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

被相続人が遺した財産(相続財産)を相続できる人は民法によって決められています。

しかし、相続財産を受け取る権利を有する人が遺言書を偽造する等の悪事を行った場合にまで、相続を認めるのは不適切です。

そこで、民法には、一定の行為をした人の相続権を自動的に失わせるための「相続欠格」という制度が設けられています。

この記事では、相続欠格の概要や要件、似た制度である「相続人廃除」との違い等について解説します。

相続欠格とは

相続欠格とは、本来であれば相続人になる予定だった人が、一定の要件に該当すると自動的に相続権を失う制度です。相続欠格になった人を 相続欠格者といいます。

相続欠格者は、相続できないだけでなく、遺言書による贈与(遺贈)を受けることもできません。

どんな場合に相続欠格になるの?

相続欠格になる要件は、以下のように定められています。

  1. 被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした
  2. 被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた
  3. 詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや撤回・取り消し・変更することを妨害した
  4. 詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回・取り消し・変更させたりした
  5. 遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した
これらの要件について、次項より解説します。

被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした

被相続人や前順位の相続人、同順位の相続人を故意に殺害して刑罰を受けた人は相続欠格者になります。これは、未遂に終わった場合についても同様です。

例えば、自分の父親である被相続人を故意に殺害した場合には相続欠格になります。

ただし、故意に殺害した場合に限られるため、傷害致死については相続欠格に該当しません。また、執行猶予が満了した場合については刑罰を受けたことになりません。

被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた

被相続人が殺害されたことを知っていて、捜査機関に告発や告訴をしなかった人が相続欠格者になります。

例えば、被相続人である父親を、自分の兄が殺害したと知っていた場合、捜査機関に告発や告訴をしない場合には相続欠格者になります。

ただし、以下のような人は相続欠格者になりません。

  • 是非を判断する能力がなかった人
  • 被相続人を殺害した人が配偶者または直系血族である人

「是非を判断する能力がなかった人」とは、幼い子供や、認知症等により判断力を失っていた人のことです。

また、被相続人を殺害した人が配偶者や直系血族であった人が除外されているのは、告発や告訴をするのが難しいと考えられているからです。

詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや撤回・取り消し・変更することを妨害した

被相続人が遺言書を作成しようとしている、あるいは作成した遺言書を撤回等しようとしているときに、詐欺や脅迫によってそれを妨害した場合には相続欠格者になります。

例えば、被相続人が長男に全財産を相続させる旨の遺言書を作成しようとしているときに、二男が脅迫して遺言書を作成させないと、二男は相続欠格者になります。

ただし、不当な利益を得ることを目的にしていなかった場合には、相続欠格にならない可能性があります

詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回・取り消し・変更させたりした

被相続人に対する詐欺や脅迫によって遺言書を無理やり作成させたり、作成した遺言書を撤回等させたりした場合には相続欠格者になります。

【具体例】
長女が被相続人を脅迫して、自分に全財産を相続させる旨の遺言書を作成させると相続欠格者になる。

ただし、必ずしも不当な利益を得ることが目的でないのであれば、相続欠格にはならない可能性もあります。

遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した

被相続人の遺言書を偽造したり、作成されていた遺言書を書き換えたりした人は相続欠格者になります。

例えば、被相続人の死後に、長男が実家を片づけていたところ遺言書を発見し、誰にも知らせずに開封して内容をみると、全財産を長女に相続させる旨が記載されていたため破棄した場合、長男は相続欠格者になります。

なお、不当な利益を得ることが目的でなければ相続欠格者にならないと考えられているため、被相続人が遺言書への押印を忘れていたために押印したとしても、書き換え等には該当せず相続欠格者にならない可能性があります

相続欠格者がいる場合、相続順位はどうなる?

相続欠格者は相続人として扱われないため、同順位の相続人等がいなければ、次順位の相続人が相続することになります。

例えば、被相続人に子供が1人だけいる場合、その子供が相続欠格者になり、その子供の子供(被相続人の孫)がいない場合には被相続人の両親等が相続します。

しかし、被相続人の子供が相続欠格者になったとしても、その子供の子供がいる場合には代わりに相続することが可能です。これを 代襲相続といいます。

相続順位・代襲相続については、以下のページでも解説しています。あわせてご覧ください。

相続順位について詳しく見る 代襲相続について詳しく見る

相続欠格であることは戸籍に表記されない

相続欠格者がいる場合であっても、戸籍にはその旨が記載されません。

そのため、相続欠格者を除いた法定相続人の全員による遺産分割協議を行ったとしても、相続人が不足しており無効ではないかと疑われてしまいます。

そこで、相続登記等の手続きを行うために、相続欠格者であることを証明するための書類を作成して提出しなければなりません。

相続欠格者がいる場合の相続手続き

相続欠格者であることを証明するためには、本人が作成して署名押印した「相続欠格証明書」に印鑑証明書を添付する方法があります。

しかし、相続欠格者が自分の相続欠格を認めていない場合には、裁判等によって相続欠格者であることを証明する必要があります。

相続欠格と相続人廃除の違い

相続欠格と似た概念として、相続人廃除という制度がありますが、相続欠格と相続人廃除は、適用される対象や、適用までの流れ等が違います。

相続欠格は被相続人の殺害や遺言書の偽造等によって適用されますが、相続人廃除は以下の要件に該当すると適用されることがあります。

  • 被相続人を虐待した
  • 被相続人に対して極度の侮辱をした
  • その他の著しい非行をした

また、相続欠格が法律に定められている事由に該当すれば自動的に適用されるのに対して、相続人廃除は被相続人による家庭裁判所への請求、または遺言書による遺言執行者からの請求によって家庭裁判所によって審理されて適用されます。

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相続欠格に関するQ&A

相続欠格者が、遺言書に書いてあるのだから遺産をもらえるはずだと言っています。従わなければならないのでしょうか?

基本的に従う必要はありません。なぜなら、相続欠格者は相続権を失うため、遺言書によって相続させることもできなくなるためです。

また、遺贈についても、相続欠格者は受け取る権利を失います。

ただし、被相続人が遺言書によって相続欠格者の相続権を回復させることは認められるという考えもあります。この点については、法律に明文の規定がないため議論されています。

相続欠格者から遺留分を請求されました。無視していいですか?

相続欠格者による遺留分の請求であっても、無視するのは望ましいことではないので、請求権がないことを伝えた方が良いでしょう。

なぜなら、請求を無視すれば裁判等によって請求されてしまうおそれがあるため、その対応に手間や費用がかかるからです。

なるべく早い時点で、請求者が相続欠格者であるため遺留分についても失っており、請求する権利がないことを伝えるようにしましょう。

なお、裁判による請求を無視すると、敗訴して支払い義務が生じるおそれがあるため、その点についても注意しましょう。

遺産分割後に遺言書の偽造が判明しました。やり直しはできますか?

偽造された遺言書は無効なので、遺産分割後であってもやり直すことができます。

遺産分割をやり直す場合には、偽造でない遺言書の内容に従うか、相続人全員による遺産分割協議を行います。このとき、遺言書を偽造した人は相続欠格者になるので相続権を失います。

なお、時間が経過することによって無効であった遺言書が有効になることはないので、数年前に遺産分割をしていたとしてもやり直すことになります。

相続人の一人が嘘を吹き込み、遺言書を書き直させたようなのですが、証拠がないと言われてしまいました。諦めるしかないのでしょうか?

たとえ、誰かが嘘を吹き込んで遺言書を書き直させたとしても、証拠がなければ遺言書を無効にするのは極めて難しいでしょう。

ただし、遺言書に形式的なミスがある場合や、被相続人が認知症を発症していた場合等では無効にできる可能性があります。

また、遺言書によって遺留分が侵害されているケースについては、遺留分侵害額請求によって侵害された遺留分を他の相続人等から取り戻すことができます。

相続欠格者がいます。相続税の基礎控除額に影響しますか?

相続欠格者がいる場合、相続税の基礎控除額に影響します。基本的には減額されますが、増額されるケースも存在します。

相続税の基礎控除額は、以下の式によって計算します。

【基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)】

相続欠格者は法定相続人の数から除外されるため、基本的には基礎控除額は減額されることになります。

しかし、相続欠格者に子供がいる場合には、その子供が代わりに相続する「代襲相続」が発生するため、相続欠格者の子供が2人以上であれば基礎控除額が増える可能性があります。

なお、相続人廃除についても相続欠格と同様に扱われますが、相続放棄についてはなかったものとして扱われます。

なぜなら、相続放棄は相続人の意思のみによって行えるので、相続税の金額に影響させると、税金が個人の意思によって左右されてしまうことになるからです。

相続欠格証明書を書いてもらえない場合は、諦めて遺産分割するしかないのでしょうか?

相続欠格者が相続欠格証明書の作成に応じてくれない場合には、相続欠格者ではない相続人全員が原告となり、相続欠格者を被告として「相続権存否確認請求訴訟」を提起し被告が相続欠格者であることを確定させます。

その後、相続人全員による遺産分割協議を行い、「遺産分割協議書」を作成して判決書を添付すれば、相続登記等の手続きを進めることが可能となります。

相続欠格に関する問題は弁護士にご相談ください

遺言書の偽造等、不正を行った人がいる場合には、相続させたくないと思うのは当然のことでしょう。しかし、不正を行った人が、積極的にその事実を認めるケースは少ないと考えられます。

そこで、相続欠格者に相続させたくないと思っている方は弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、相続権存否確認請求訴訟を視野に入れながら、なるべく相続欠格者を説得できるようなアドバイスができます。

また、相続欠格を証明するのが難しい状況であっても、遺言書の無効等、他の理由によって争う可能性についても併せて検討します。

離婚を検討している方の中には、離婚後の生活についての経済的な不安から、なかなか別居に踏み切れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

法律上、夫婦は、自分と同程度の生活を相手にも保持させる義務を負っており、これは別居中でもかわりません。

そして、夫婦共働きの場合でも、双方の収入から算出した婚姻費用を請求することが可能です。

今回は、婚姻費用とは何なのかという基本的な点から、共働きの場合の婚姻費用の相場や、相手が婚姻費用を支払ってくれない場合の対処法などを解説いたします。

共働きでも婚姻費用の分担義務はある

夫婦が両方とも働いていて、それぞれが自身の収入だけで生活できているとしても、収入の高い方は、低い方に毎月一定の金額を婚姻費用として渡す必要があります。

婚姻費用というと、一方が専業主婦(夫)の場合のみ、生活費として渡すというイメージがあるかもしれません。

しかし、法律上、相手に収入がある場合は婚姻費用の支払を免除されるわけではなく、双方の収入をもとに婚姻費用を計算し、収入の高い方は低い方に決まった婚姻費用を支払う必要がある のです。

そもそも婚姻費用とは?

法律は、夫婦は収入や資産などの一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担する、と定めています(民法760条)。

そのため、夫婦は一方がその分担義務を果たさない場合は、相手の配偶者は婚姻費用を請求することができます。

夫婦は、相手に対して、自分と同程度の生活水準を維持させる義務を負っています。

そのため、収入の高い配偶者は、相手にも自分と同じ程度の生活をさせるため に、婚姻費用を支払う必要があるのです。

共働きの場合の婚姻費用の相場はどれくらい?

婚姻費用の金額は、双方の収入、給料をもらっているか自営業者か、子どもがいる場合は人数・年齢、どちらが監護をしているかで決まります。

婚姻費用の具体的な金額は、上記の事情が分かれば、裁判所が公表している標準算定表と見比べれば、おおよその金額を計算することができます。

例えば、夫婦共に会社員で、夫の年収が700万円、妻の収入が400万円、妻が5歳の子どもを監護している場合、夫が妻に支払う婚姻費用は月額約9万4000円 となります。

婚姻費用を払ってくれない場合の対処法

婚姻費用を払ってもらうためには、まずは夫婦で話し合って合意することになりますが、話し合いでは金額が決まらないことや、そもそも相手と直接話す自体に抵抗があるということもあります。

そのような場合は、家庭裁判所に 婚姻費用分担調停 という調停を申し立てることで、裁判所の関与のもとで、話し合いを進めることができます。

調停でも話し合いがつかない場合は、調停から審判という手続きに移り、最終的に裁判官が適正な婚姻費用を判断します。

調停や審判で婚姻費用の金額が決まったにもかかわらず、相手が婚姻費用を支払わない場合は、相手の財産や給料を差し押さえることができます

共働き夫婦の婚姻費用に関するQ&A

共働きの妻が生活費を出さないのですが、払わせることはできますか?

夫婦の収入や、どちらが子を監護しているかという事情次第 では、妻側に婚姻費用を請求することが可能です。

例えば、妻の方が高い場合、あるいは、子は一人暮らししているが仕送りなどを全て夫がしていて事実上夫が監護しているような場合には、妻側に婚姻費用を請求する余地があります。

共働きですが、育休中です。婚姻費用は収入0の欄を見ればよいのでしょうか?

育休中でも、育児休業給付金などの手当を受け取っている場合は、これを収入として扱うことが一般的です。

育児休業給付金などを収入とみなす場合、働いて給料を受け取るのと同じように経費がかかるわけではありません。

そのため、実際に受け取った金額よりも、少し高い金額を収入として婚姻費用を計算することになります。

この場合、計算方法が複雑になるため、具体的な金額を知りたい方は弁護士に相談していただくのが良いと思います

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共働き夫婦の婚姻費用でお悩みなら弁護士にご相談ください

共働きの場合でも、夫婦の収入や子の人数や監護状況によっては、婚姻費用の支払義務や、婚姻費用を請求する権利が発生します。

算定表に当てはめれば、おおよその婚姻費用を計算することはできますが、家庭によっては算定表の金額をそのまま用いることが不公平になることがあります。

婚姻費用は、夫婦が離婚するまで毎月発生するものなので、別居期間が長くなるほどその影響は大きくなります。

適切な婚姻費用を計算することは、離婚を進めていくうえで重要なこと です。

婚姻費用でお悩みの方は、まずは一度、弁護士にご相談ください。

被相続人が亡くなったとき、相続財産に不動産が含まれていると争いになりやすいです。

なぜなら、不動産は高額である場合が多く、相続財産の高い割合を占めるケースがあるからです。

このような特徴から、不動産は分配が難しく、評価額について意見が対立するおそれもあります。

また、不動産を相続すると相続登記を行わなければならず、税金もかかります。

そこで、この記事では、不動産の分配方法や相続登記、税金、相続したくない不動産がある場合の対応等について解説します。

相続した不動産はどうやって分ければ良いの?

相続財産に含まれている不動産の分け方には、主に以下の4種類があります。

  1. 換価分割
  2. 現物分割
  3. 代償分割
  4. 共有分割

ただし、被相続人が遺言書を作成していた場合には、その内容に従って分配することができます。

これらの分け方等について、次項より解説します。

遺言書があるなら内容を確認しましょう

被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、基本的には遺言書の内容に従って相続財産を分配します。

この場合、不動産も遺言書の内容に従って分配すれば問題ありません。

ただし、相続財産の分配が偏っていると、兄弟姉妹以外の法定相続人にとって最低限の取り分である「遺留分」を侵害してしまい、 遺留分侵害額請求 が行われるおそれがあります。

このとき、遺留分に相当する金銭を支払うことができれば、問題ありません。

また、相続人全員で遺産分割協議を行えば、遺言書とは異なる方法で相続財産を分配することも可能です。

相続人のうち、誰か1人でも合意できなければ、遺言書の内容に従うことになります

遺産分割協議については以下のページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

遺産分割協議について詳しく見る

売却・現金化して相続人で分ける(換価分割)

換価分割とは、不動産等の相続財産を売却して金銭に換えてしまい、その金銭を分配する遺産分割方法です。

金銭は分配しやすいため、最も公平な分配が可能だと考えられます。

ただし、不動産を売却するのは被相続人ではなく相続人なので、売却するために不動産の相続登記を行う必要があります。

また、売却手続きのためには、売買契約が成立するまでの時間と、仲介手数料等の費用がかかります

各相続人が相続財産をそのままの形で相続する(現物分割)

現物分割とは、各相続人が相続財産をそのままの形で相続する遺産分割方法です。

例えば、1筆の土地を文筆して2筆として、1筆ずつ各相続人が取得するという分け方や、土地は分筆などせずそのまま長男に、その代わり株式はそのまま長女に分配するという分け方を指します。

ただし、不動産は長男、株式は長女に分けるというような分割をした場合、それぞれの取得する価値に実際には差が生じてしまうことが多いため、その差額を埋めるために金銭等の給付を行う(代償分割を併用する)ということも多い です。

相続する人がほかの相続人にお金を払う(代償分割)

代償分割とは、不動産等の相続財産を一部の相続人が相続して、代わりとなる金銭等を支払う遺産分割方法です。

例えば、相続人が被相続人の長女と二女であり、唯一の相続財産である2000万円の不動産を長女が相続する場合、二女に1000万円の金銭等を支払います。

また、相続人は被相続人の妻と長女、二女であり、唯一の相続財産である2000万円の不動産を妻が相続する場合、長女と二女に500万円ずつ金銭等を支払います。

代償分割は、公平な分割が可能であり、実家等の相続財産をそのままの形で残すことができます。

ただし、相続財産の評価額で争いになりやすいです。また、代償金にできる現金や預貯金等がないと成立しにくい です。

複数の相続人で共有する(共有分割)

共有分割とは、不動産等の相続財産を共有する形で分配する遺産分割方法です。

共有分割であれば、公平な分割になり、実家等の財産がそのままの形で残り、売却手続き等の負担がありません。

ただし、後でトラブルになることが多いため、共有分割はおすすめできません。なぜなら、共有者の1人でも反対すると、不動産全部を売却することはできないからです。

さらに、共有者の1人でも亡くなってしまうと、さらに相続が発生して共有者が増えてしまうため、ますます売却等をすることが難しくなってしまいます。

そのため、共有分割は基本的に行わない ようにしましょう。

不動産の相続には名義変更が必要

相続登記はいつまでにやればいい?

相続登記については2024年4月1日より以下のとおり義務化されました。

  1. 相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない
  2. 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければならない

義務化以前に相続が開始している不動産についても、3年の猶予期間は設けられていますが、義務化の対象です。

期限までに相続登記を行わなければ、10万円以下の過料に処せられるおそれがあるため、不動産を相続したら、早めに登記の申請をするようにしましょう。

また、相続税の申告については、自己のために相続が開始されたと知ったときから10ヶ月以内に行わなければなりません

相続登記を行っていなかったとしても、相続した不動産は課税対象になりますのでご注意ください。

相続登記に必要な書類

相続登記に必要な書類は、遺言書がある場合とない場合で異なります。

それぞれの場合について、必要な書類は以下のとおりです。

【遺言書がある場合】

  • 遺言書
  • 登記申請書
  • 被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本
  • 不動産の相続人の戸籍謄本(被相続人の死亡後のもの)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産の相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書

【遺言書がない場合】

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書(相続人全員が実印によって押印したもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡後のもの)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産の相続人の住民票

提出先

相続登記の必要書類は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。

相続する不動産が各地にあるケース等では、すべての不動産について、管轄している各法務局へ提出 しなければなりません。

管轄は、法務局のサイトで確認することができます。

不動産の相続時に発生する税金

相続税

不動産等の財産を相続し、相続財産の評価額が相続税の基礎控除額を上回った場合には、基本的に相続税が発生します。

不動産だけについて相続税を計算することはありません。

相続税の基礎控除額は、以下の式によって計算します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

登録免許税

登録免許税とは、登記を行うときに支払う税金です。不動産を相続や売買、贈与等した場合にかかります。

相続登記を行うときには、基本的に不動産の固定資産税評価額×0.4% で算出できる金額を登録免許税として納めます。

なお、登録免許税を納めるときには、税額が3万円以下であればその税額に相当する収入印紙を登記申請書に貼付します。

税額が3万円を超える場合には、事前に税務署等で支払いを行い、領収証書を添付することになっています。

相続したくない不動産はどうすればいい?

例えば、相続財産に含まれている山を管理できない場合や、実家が遠方にあって老朽化している場合等、相続人にとって不動産が要らないケースでは相続放棄する方法があります。

ただし、相続放棄すると不動産以外の財産を受け取ることもできなくなります。

そのため、相続財産に高額な預貯金が含まれているケース等では相続放棄したくないかもしれません。

また、相続放棄した時点で被相続人の不動産を占有している場合には、管理義務が生じるおそれがあります。

そこで、 相続土地国庫帰属法 によって定められた制度により、要らない土地を国に引き取ってもらう方法が考えられます。

ただし、この制度を利用するためには、主に以下のような条件が揃う必要があります。

  • 建物が存在しない
  • 抵当権等の担保権が設定されていない
  • 有害物質で汚染されていない
  • 所有権の争いがない
  • 管理等を困難にする物が地上や地下に存在しない
  • 管理に過大な労力や費用等がかからない

相続放棄について、詳しくは以下の各ページをご覧ください。

相続放棄について詳しく見る

不動産の相続に関するQ&A

父が亡くなったのですが、不動産の名義人が祖父になっていました。この場合、私たちは相続できないのでしょうか?

不動産の登記名義人が祖父になっていた場合には、まだ祖父の相続について遺産分割が終了していない可能性があります。

その場合には、祖父の相続人(祖父の相続人が既に死亡している場合には、更にその人の相続人)全員で遺産分割を完了させる必要があります。

その遺産分割の結果、祖父の相続人(既に死亡している)の子である自分たちが、その不動産を取得できることはあります。

場合によっては相続人が多数となり、大変な手間がかかることもありますが、そのまま放置していても問題が悪化するだけであるため、早めに遺産分割を完了させることをお勧めします。

なお、祖父が生きており、不動産も祖父のものである場合には、基本的にその不動産を父親から相続することはできません。

父親が祖父から不動産を譲られていた場合には、贈与等による所有権移転登記を行ってから相続登記しましょう

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不動産の相続は弁護士へ依頼するのがおすすめ

不動産の相続は、金額が大きいためにトラブルになりやすいと言えます。

分配方法が難しいことや、評価額について意見が対立すること等により、相続人間の対立が発生するおそれもあります。

特に、相続財産の大部分を不動産が占めている場合等では注意が必要です。

そこで、不動産の相続を巡って対立が発生したときには弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、よりトラブルになりにくい分配方法や、不動産の評価方法等についてアドバイスできます。

また、自身の死後に相続人が対立することを防ぐための遺言書の作成や、不動産の相続に伴う手続き等についても相談していただけます。

交通事故に遭ってむちうち等の怪我をした場合、症状を緩和するために「整骨院」に通いたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、“整骨院に通院すると慰謝料が減額されてしてしまう”という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

この記事では、交通事故で負った怪我の治療で整骨院に通う場合に慰謝料はどうなるのか、整骨院に通院する際の注意点などについて解説していきます。

整骨院に通院しても慰謝料はもらえる

結論から言うと、整骨院に通ったからといって慰謝料がもらえなくなるということはありません

ただし、整骨院で施術を行っているのは医師ではなく柔道整復師であり、医療行為ではありません。

そのため、医師の診察を受けずに整骨院にしか通っていなければ、「治療に必要な施術」と認められず、慰謝料が適正額支払われない可能性もあります。

怪我の治療のために整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の医師の診察を受け、整骨院に通いたいことを相談したうえで通うようにしましょう。

「整骨院への通院は慰謝料が半額になる」は本当?

整骨院に通院したら慰謝料が半額になるというルールはありません。

しかし、医師のいる整形外科へはほとんど通院せずに、整骨院ばかり通っていると「医学的な観点から必要な治療を受けたわけではない」と判断されるおそれがあります。

そうすると、相手方保険会社からの慰謝料提示額が、適切な頻度で整形外科に通院して医師による治療を受けていた場合よりも、半額程度に減額されてしまう可能性もあります。

整骨院にも通う場合は、医師に判断を仰いで、整形外科へも定期的に通うようにしましょう。

交通事故で整骨院に通院した場合の入通院慰謝料の相場

交通事故の慰謝料を算定するには以下の3つの基準があり、自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準の順に金額が高くなります

ここでは、自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料相場を計算してみましょう。任意保険基準については、算定表が非公開であるため割愛させていただきます。

以下の表の相場は整形外科と整骨院を併用して通院し、交通事故により、頚椎捻挫や腰椎捻挫のむちうちを負った場合とします。

例:通院期間5ヶ月(150日)・実通院日数50日の場合

自賠責基準 弁護士基準
43万円 79万円
慰謝料相場について詳しく見る

整骨院に通院したい場合の注意点

整骨院に通院したい場合は、気を付けるべきポイントがいくつかあります。

  1. 病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
  2. 保険が適用される治療かどうかを確認する
  3. 病院(整形外科)にも通院する

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る

交通事故で怪我を負った場合、治療費や慰謝料を相手方に請求することができますが、怪我の治療として必要だと医学的に認められた部分にのみ請求が可能です。

整骨院での治療は医療行為ではないため、整形外科の担当医に整骨院への通院の許可を得ていない場合は、怪我の治療として医学的な観点から必要な治療ではないと判断されてしまう可能性があり、治療費や慰謝料が適正額支払われないおそれもあります。

このような事態にならないためにも、整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の担当医の了承を得るようにしましょう(医師の了承があっても適正額が支払われないこともあるため、最低限医師の了承は必要です)。

保険が適用される治療かどうかを確認する

交通事故で負った怪我の治療費は、基本的に相手方保険会社が病院へ直接支払う任意一括対応をしてもらえます。

しかし、この対応は打ち切られることもあり、その場合は自費で支払い、後から治療費として請求する手順になります。

自費で通院する場合は、健康保険が利用できるかどうかで負担額が大きく変わるため、健康保険が適用されるかどうかを通院前に整骨院へ確認しておきましょう。

病院(整形外科)にも通院する

適切な慰謝料を受け取るためには、医学的に怪我の治療のために必要な医療行為を行ったことを証明する「診断書」を相手方保険会社に提出する必要があります。

しかし、整骨院では診断書を発行することはできず、医学的に治療が必要な怪我を負ったことが認められない可能性があります。

治療費や慰謝料について争いになった場合、医師が整骨院に通うよう指示したかが重要なポイントとなります。

整骨院に通院する場合でも、定期的に整形外科を受診し、医師の診察を受けましょう。

後遺障害が残りそうな場合も整形外科への通院が重要になる

治療を続けていても怪我が良くも悪くもならず、後遺症として残った場合は、後遺障害等級認定の申請をすることができます。

後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を新たに請求でき、示談金が大きく増額するでしょう。

しかし、後遺障害等級認定は、基本的に書類審査のみであり、医師が作成する「後遺障害診断書」が非常に重要です。

後遺障害診断書には、事故時の症状、治療による経過などを書く必要があり、それまで整骨院にしか通っていなければ書く材料がなく、後遺障害診断書の作成を断られたり、内容が不十分な後遺障害診断書しか作成されなかったりする場合もあります。

そのため、治療開始から継続して整形外科にも通院することが大切です。

整骨院への通院と慰謝料に関するQ&A

整骨院に毎日通えば、その分慰謝料はもらえるのでしょうか?

入通院慰謝料は、通院すればするほど増額するものではありません。弁護士基準は、基本的には通院日数ではなく通院期間で計算することになるため、通院日数を増やすことが当然に慰謝料額を増額させるわけではありません

また、毎日通院することは、早めに治療費打ち切りにあったり、過剰診療と判断され慰謝料が減額されてしまう可能性もあります。

どのくらい通院するべきかは整形外科の医師の診察を受け、判断を仰ぎましょう。

保険会社に、整骨院への通院は治療費として認めないと言われてしまいました。医師の許可は取っているのですが、どうしたらいいでしょうか?

医師の許可を取っている場合は、その旨を相手方保険会社に伝えましょう。その際、医師が許可したことが分かる書面や整骨院への紹介状などがあるとその根拠になります。

それでも相手方保険会社が整骨院への通院を治療費として認めない場合は、裁判で争うことも考えられます。

ただし、裁判でも接骨院の治療費の全部または一部が否定されることはあるので注意は必要です。

裁判は非常に被害者の方の負担になってしまうので、弁護士に相談することをおすすめします。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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整骨院に通院した場合の治療費や慰謝料の請求は弁護士へご相談ください

交通事故の怪我の治療のために整骨院に通う際は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。

しかし、ポイントを抑えていても、相手方保険会社から治療費や慰謝料が適正額支払われるか不安に思うことでしょう。

事故による怪我の治療で整骨院に通ってもいいか、不安な方は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

交通事故に強い弁護士だからこそ、不利にならない示談や、慰謝料増額のポイントを心得ています。

また、弁護士は代理人として相手方保険会社に対応できるため、治療費打ち切りや慰謝料額で争いになった場合でも法的な観点から主張・立証していくことができます。

交通事故について少しでもお悩みの方は、まずは私たちに一度ご相談ください。

交通事故に遭うと、被害者は加害者へ損害賠償を請求することができます。
これを損害賠償請求権といいますが、事故の種類によって時効があり、いつでも治療費や慰謝料を請求できるわけではない点に注意が必要です。
では、時効を迎えそうになっているにもかかわらず、被害者はただ待つしかできないのでしょうか?

本記事では、時効の計算方法や、時効を迎えそうな場合の被害者側にできる対処法について解説していきます。
時効を過ぎてしまうと、被害者は大きな不利益を被ることになりますので、特に注意が必要です。この記事を読んでいただき、しっかりと理解を深めておくとよいでしょう。

交通事故の損害賠償請求は3年または5年で時効となる

交通事故の被害者には、加害者に対し損害賠償を請求できる権利=損害賠償請求権が与えられます。
交通事故の示談そのものに期限はないものの、この損害賠償請求権には時効があり、事故の種類によってそれぞれ定められています。

物損事故の場合は3年、人身事故や死亡事故の場合は5年と定められており、時効の期間が過ぎてしまうと損害賠償請求権を失ってしまい、加害者へ損害賠償を請求できなくなってしまいます。
そのため、まずは時効がいつなのかを事前に確認しておくことが重要です。

時効のスタートはいつから?

時効は、事故の種類によって期間と起算日が異なります。
基本的には下記表のとおりですが、人身事故においては後遺障害の申請をしたかどうかで起算日が異なります。

後遺障害の申請を行っている場合は、症状固定日の翌日から5年が期限と定められていますので、注意しましょう。

事故の種類 時効
物損事故 事故日の翌日から3年
人身事故※傷害のみの場合 事故日の翌日から5年
死亡事故 死亡日の翌日から5年
当て逃げ・ひき逃げ※人身事故の場合 加害者が判明した日から5年

当て逃げやひき逃げなどについては、加害者が判明しているかどうかで時効の期間が異なります。
加害者が判明していない場合、時効は事故の翌日から20年と定められており、途中で加害者が判明した場合などは、判明した日から物損事故なら3年、人身事故なら5年となっています。

※事故発生日が令和2年3月31日より前の場合は、改正前の民放が適用されるため、人身事故と死亡事故の時効は3年となります。

交通事故示談で時効が近い場合の注意点

時効が近いからといって、示談を急ぐことはやめておきましょう。
期限が迫ると焦りが生じてくるものですが、基本的に、一度示談して示談書(免責証書)を取り交わしてしまうと、やり直すことはできません。

しかし、時効を延長する方法がいくつかあります。
延長することができれば、時間的な余裕が生まれます。
もちろん、時効を覚えておく必要はありますが、延長できるということも念頭に置いておきましょう。

では、どのような延長方法があるのか、一つ一つ解説していきます。

交通事故の時効を延長する方法は?

時効を延長するためには、被害者側がアクションを起こす必要があります。
いくつか方法はありますが、主なアクションは以下のとおりです。

① 催告をする(請求書を送付する)
② 加害者に債務を認めてもらう
③ 裁判を起こす
④ 強制執行の手続きを行う

被害者が与えられた損害賠償請求権の時効までに示談が成立しなかった場合は、「時効の完成猶予」と「時効の更新」により時効を延長することができます。

主な方法である①~④について、具体的に解説していきます。

請求書を送付する(催告)

加害者側に請求書を送付することを、催告といいます。
なお、送付する際は普通郵便などではなく、必ず内容証明郵便を使用して配達完了したことを郵便局に証明してもらいます。

請求書を送付することで、「被害者は加害者に対し、損害賠償請求をする意思があること」を示すことができ、催告のときから6ヶ月間、時効完成が猶予されます。
ただし、催告は複数回できるわけでなく、一度しかできません。
そのことから、一般的には裁判の準備中に時効を迎えてしまいそうな場合などに行われたりします。

加害者に債務を認めてもらう

加害者から、被害者に対して損害賠償を支払うことの債務を認めてもらえれば、加害者が債務を認めた日が時効の起算点となり、時効が更新されます。
加害者が以下のような行動をとった場合に、債務を承認したと認められます。

●債務を承認する旨を書面に記す
●被害者に対して示談金額を提示する
●損害賠償金の一部を被害者へ支払う

なお、加害者ではなく、加害者側の任意保険会社に債務を認めてもらうことでも時効が更新されます。

裁判を起こす

裁判を起こした場合、裁判が終わるまで時効の完成が猶予されます。
「裁判によって判決の確定」または「判決が下されるまでに和解が成立した後」に、止まっていた時効のカウントが再スタートします。
※図のようなイメージです。

裁判を起こす

具体的には、裁判所へ訴状を提出した日から、時効がストップします。
ただし、裁判所が訴状を受け付けても、訴えが却下された場合には、当然時効は中断しません。

加害者側から不誠実な対応をされ続け、時効が迫ってきてしまった場合は、裁判を起こした方が早く示談成立できる可能性があります。

強制執行の手続きを行う

裁判所へ強制執行の申立ておよび手続きを行うと、決定後に加害者の財産を差し押さえることができます。差し押さえた加害者の財産から、「強制的に損害賠償金を支払ってもらう」という結果になります。

加害者の財産=換金できそうなものを差し押さえ、基本的には生活に欠かせない家財道具(衣服、寝具など)以外を差し押さえます。
この強制執行の手続きが完了するまでは、時効の完成が猶予されます。
ただし、手続き完了後は、「3.3裁判を起こす」と同様、改めて時効のカウントが再スタートします。

示談が進まない場合の対処法

「加害者や加害者の任意保険会社との示談交渉が思うように進まず、時間だけが過ぎてしまい疲弊する」といった状況に陥る場合もあるでしょう。
そういった示談が進まない場合は、ADR(交通事故紛争処理センター)の利用など、第三者に介入してもらうと早期解決につながりやすくなります。

ADRとは、裁判を起こさずに、加害者側と被害者側の間に入って、示談成立までのサポートをおこなってくれる機関です。中立的な立場で判断してくれるため、示談が進まない場合はADRの利用を検討するとよいでしょう。

示談が進まない場合の対処法については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。

交通事故の示談交渉が進まない原因と対処法について詳しく見る

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交通事故で時効が気になる場合は弁護士にご相談ください

弁護士法人ALGでは、時効の手続きをする場合、基本的には「3.1請求書を送付する(催告)」方法と「3.2加害者もしくは加害者の任意保険会社に債務を認めてもらう」方法から試します。
なぜならば、裁判を起こす場合は無料で起こすことはできず、ある程度費用がかかるからです。

そのため、まずはあまり費用がかからない催告と債務を認めてもらう方法から始めており、内容証明書の作成や加害者との交渉などもすべて弁護士で対応しております。
時効を延長させる手続きは、一筋縄ではいかないケースもあります。
そのような場合でも、弁護士であればできる限り費用を抑えつつ、臨機応変に対応することができます。

早期解決したいのに、思うように進まない、時効も迎えてしまいそう‥
時効を迎えてしまうのに、まだ解決の見通しが立たない・・
など、時効の手続きで不安を抱かれている方は、ぜひ一度弁護士への相談・依頼をご検討ください。

夫婦間に子どもがいる場合、離婚する際には親権者を決める必要がありますが、別居後、離婚までの間子どもを監護する当事者を決める制度として、「監護者指定」という手続きがあります。

一般的に、監護者に指定された父母が離婚後も親権者に選ばれることが多いため、監護者に指定されるか否かは、親権者となるうえで極めて重要です。
今回は、「監護者指定」について説明をしていきます。

監護者指定とは

監護者指定とは、別居している夫婦のうち、どちらが子どもの面倒を実際に見るかを決める手続きです。
離婚前は両親双方が親権を持っていることになりますが、別居している場合は実際に子どもと暮らすことができるのはどちらか一方だけです。

そのため、どちらが子どもと暮らすかを争う場合、離婚に先立って監護者を決めるために監護者指定という手続きを利用します。

親権者指定と監護者指定の違いについて

親権者指定とは、離婚後に親権を行使する親を決めることです。これに対し、監護者指定とは、主に離婚前に子どもを監護する親を決める手続きです。
また、親権者は父母の一方しか指定されないのに対し、監護者は祖父母などの第三者が指定されることも可能です。

親権者と監護権者は分ける場合がある

親権は、「身上監護権」と「財産管理権」に分けられます。身上監護権とは子どもの身の回りの世話をする権利であり、財産管理権とは子どもの財産を管理したり、法律行為の代理をしたりする権利です。
通常、親権者と監護権者は一致しますが、例えば、監護している親の財産管理に不安がある場合などは、監護者と親権者を分離して指定することもあります。

親権者と監護権者が実際に分けられた判例

実際に、福岡家裁平成26年12月4日審判では、親権と監護権を持つ母親が面会交流の取決めを守らないため、父親に親権者を変更し、親権と監護権が分離しました。
ただし、この事件は、親権者である母親に、取り決められた面会交流への協力を促すことを目的とされたものであって、親権者と監護権者を分離することは極めて例外的なケースです。

監護者指定の判断基準

監護者指定の判断基準は、大きく親側の事情と子ども側の事情に分けられます。
親側の事情としては、これまでの監護状況、父母の年齢・健康状態・監護補助者などの監護能力、監護者に指定された場合に面会交流に協力する意向があるか、などの事情が考慮されます。

子ども側の事情としては、年齢、本人の意思などが挙げられます。子どもの意思は、年齢が高いほど尊重される傾向にあります。
また、監護者に指定された結果、引越しの必要が生じ、子どもの環境が変化するかどうかも考慮されます。

子供の年齢によって監護者を判断する場合もある

子どもの年齢によって、監護者の判断に与える影響は変わります。
子どもの年齢が15歳以上の場合は子どもの意見を聴取しなければならず、15歳に達していなくとも、10歳頃になれば比較的子どもの意見が優先される傾向にあります。

他方、子どもが幼稚園・保育園に通っている場合や乳幼児の場合には、母親が主に監護を担っていることが多く、母親が監護者に指定されることが多いです。

離婚時・離婚後の監護者指定の流れ

離婚時に監護者を指定する場合は、親権者の指定と合わせて決定することが可能です。監護者は、当事者の合意のみで決定することができますが、離婚届には親権者しか記載する欄がありません。そのため、親権者とは別途監護者を指定する際は、書面で明確にする必要があります。

他方で、離婚後に監護者を指定する場合、家庭裁判所に監護者指定を求める申立てが必要です。ただし、子どもに対する虐待や育児放棄など親権者の監護に問題がある場合でない限り、親権者と監護者の分離を裁判所が認めることはほとんどありません。

監護者の指定調停

家庭裁判所では、監護者指定調停という手続きを通して、どちらを監護者にするかを話合いで決めることができます。

指定調停を申し立てるためには

監護者指定調停の申立ては、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。管轄については、裁判所のホームページによって確認することができます。

申立てのためには、申立書や戸籍謄本などの書類に加え、子ども一人につき1200円の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。申立書については、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

監護者指定調停の流れ

監護者指定調停では、当事者同士が面と向かって話合いを行うことはありません。申立人と相手が交互に調停室に入り、調停委員を通してそれぞれの意見を伝えます。調停委員を通して話し合いを重ね、どちらを監護者とするのか合意を図っていきますが、話し合いで合意に至ることが難しい場合には、調停は不成立となり、審判に移行して裁判官に判断を委ねます。

別居中でも監護者指定することはできます

別居中の夫婦は双方親権を持っている状況ですが、一方のみを監護者に指定することは可能です。
むしろ、離婚後の親権者を決める前哨戦として、別居中の監護権者が争われることが多いです。

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監護者指定審判の流れ

監護者指定調停が不成立となった場合に審判に移行することもありますが、調停を経ずに監護者指定審判を申し立てることもできます。

監護者指定審判では、書面や資料によって自分が監護者に相応しいことを主張するとともに、調査官という専門家がどちらを監護者にすべきかという調査をし、これらの資料を基に裁判官がどちらを監護者にすべきかを決定します。

どのくらいの期間がかかるのか

審判によって監護者が決まるまでに、およそ半年程度がかかります。この間に監護実績が積まれてしまうと、その後親権を獲得することが難しくなってしまうため、急を要する場合は、監護者指定審判とは別に、保全手続きを申し立てる必要があります。

審判後の流れについて

それまで監護をしていなかった側が監護者に指定された場合、指定された監護者は子どもの引き渡しを求めることができます。相手が子どもの引き渡しに応じない場合は、裁判所の執行官が相手の自宅まで行き、強制的に子どもの引き渡しを求める直接強制などの手続きを利用することができます。

監護者指定審判の即時抗告について

審判の結果に納得がいかない場合、即時抗告という不服申し立てをすることができます。審判書を受け取ってから2週間以内に申立てをすることで、高等裁判所が一審の家庭裁判所の判断を変更するかどうか検討します。

監護者指定・子の引き渡しの審判前には保全処分をする

監護者指定審判の判断が出るまでにはおよそ半年ほどかかるため、虐待や育児放棄など子どもの身体や健康に危険が及ぶ場合には、「保全処分」という手続きも併せて申し立てることで、早急に引渡しを求めることが必要です。

保全処分が認められれば、その後の監護者指定審判でも監護者に指定される可能性が高いですが、単に早く子どもに会いたいというだけでは、緊急性がないとして保全処分は却下されることが大半です。

よくある質問

監護者指定審判では父親と母親はどちらが有利ですか?

性別によって有利不利が左右されるわけではありませんが、一般的に母親が監護の多くの部分を担うことが多いため、監護者指定審判でも母親が監護者に指定されることが多いのが実情です。
ただ、近年では在宅勤務や家事をする父親が増えてきたため、監護へのかかわり方や子どもの意向次第では、父親が監護者に指定される可能性も十分あります。

子供が配偶者に連れ去られた場合、監護者はどちらになりますか?

子どもの連れ去りは、監護者を指定するうえでは不利に働くことが多いです。特に、それまでの監護実績がない側が連れ去った場合、刑事罰に問われることもあります。反対に、それまで子どもを監護していた側が子どもを連れていった場合や相手のDVがある場合などは、子どもを連れ去ったことに正当な理由があるとして、連れ去った側が監護者に指定されます。
また、裁判所は監護の継続性も重視しているため、連れ去り後に長期間が経過して子どもが現在の環境になじんでいる場合には、連れ去った側を監護者に指定することもあります。

監護者指定がされて面会交流後に子どもが連れ去られた場合は今後も面会交流をしないといけませんか?

監護者指定後の面会交流の最中に子どもが連れ去られた場合、面会交流禁止の申立てをすることができます。
ただ、子どもにとって、面会交流は双方の親からの愛情を感じることができる貴重な機会であるため、第三者機関の利用を検討するといいかもしれません。

祖父母が監護者になることはできますか?

監護者には両親以外の第三者がなることもできるため、祖父母が監護者になることもできます。両親が育児放棄をしているなど監護者に相応しくない場合には、祖父母が監護者になることも検討する必要があるでしょう。
ただし、法律上は祖父母が裁判所に監護者指定の申立てをすることはできないため、養子縁組をしておくなど事前の準備が必要になります。

調停離婚と監護者指定の調停は同時に申立てることができますか?

離婚調停と監護者指定の調停を同時に申し立てることは可能です。ただし、監護者の指定は親権者指定の前哨戦という側面があるため、先に監護者を決定してから、離婚調停の中で親権者を決めていくことが多いです。

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離婚後に親権者となるためには、離婚前の別居段階で監護者に指定されることが極めて重要です。しかし、どのような要素が監護者を決めるうえで重要になるのか、どのような監護態勢を整えることが監護者となるために重要なのか、裁判所の考え方や膨大な裁判例を検討する必要があるため、専門家である弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

離婚を考えているが、離婚後も子どもと一緒に暮らしたい、子どもと離れたくないと思っている方は、是非一度弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

相続人の1人が多額の生前贈与を受けていた場合等、被相続人が亡くなったときに残っている財産を等分にしたら不公平だと感じるケースがあります。このようなケースでは、生前贈与を「特別受益」として扱い、持ち戻しを行うことによって公平な相続を実現できます。

この記事では、特別受益の概要や、特別受益として扱われる贈与などの範囲、特別受益の計算方法等について解説します。

特別受益とは

特別受益とは、相続人が被相続人から特別に受け取った財産のことです。特別受益を考慮せずに被相続人が亡くなったときの相続財産を分配すると、特別受益のあった相続人だけが得をすることになるため、相続財産の一部を受け取ったものとして扱うことになっています。

特別受益がある場合には、それを相続財産に加えて法定相続分や遺留分を計算し、特別受益のあった相続人の取り分から差し引きます。この処理を「特別受益の持ち戻し」といいます。

対象者

特別受益の対象者は、相続分の計算については法定相続人に限定されます。そのため、被相続人の友人や、法定相続人ではない兄弟姉妹等は対象者になりません。しかし、遺留分の計算については第三者等であっても持ち戻しの対象者になります。

上記の内容をまとめると、特別受益の対象者は以下のとおりです。

相続分を計算するときの持ち戻し 法定相続人のうち、被相続人から遺贈や生前贈与等を受けた人
遺留分を計算するときの持ち戻し 第三者等も含めて、被相続人から遺贈や生前贈与等を受けた人

特別受益と遺留分の違い

特別受益 相続分を公平にするために、遺贈や生前贈与等を相続財産の一部として扱うもの
遺留分 相続財産を受け取る可能性が高かった人の生活を保障するために、兄弟姉妹以外の法定相続人に与えられる相続財産の最低限の取り分

特別受益と遺留分がどのようなものかについて、表にまとめたのでご覧ください。
遺留分を計算するときには特別受益を考慮します。しかし、通常の生活費や教育費、医療費等は特別受益として扱われません。
通常の範囲を超えた、多額の借金の肩代わり等については特別受益として扱われることがあります。

特別受益の時効

相続人が相続分を決めるときには、特別受益に時効はありません。そのため、数十年前に行った生前贈与等についても持ち戻しの対象となります。

ただし、被相続人が持ち戻しを行わない意思を遺言書等で示した場合には、基本的に持ち戻しは行いません。また、過去の生前贈与等について立証できなければ、持ち戻しは認められないおそれがあります。

一方で、遺留分を計算するときには、相続が発生するまでの10年以内に行われた生前贈与等が持ち戻しの対象となります。なお、遺留分については、被相続人が持ち戻しを行わない意思を示していても無効となります。

特別受益の範囲(対象となる贈与)

特別受益の対象となる贈与等として、主に以下のようなものが挙げられます。

①遺贈
②生活費の援助
③不動産の贈与
④結婚に関する贈与
⑤養子縁組のための費用
⑥学費

これらの贈与等について、次項より解説します。

遺贈

遺贈とは、遺言書によって相続財産を贈与することです。遺贈する相手が法定相続人であっても、相続権のない第三者等であっても問題ありません。また、法人等に遺贈することも可能です。
遺贈は、基本的にすべてが特別受益の対象となります。

生活費の援助

生活費の援助は、特別受益に該当しないケースもあります。なぜなら、扶養のための金銭援助等については特別受益に該当しないからです。
どの程度の金額であれば扶養の範囲内なのかは、被相続人の収入や財産等によって変動します。

不動産の贈与

相続人の1人にだけ不動産を贈与した等の事情があれば、特別受益に該当する可能性があります。
また、相続人の1人だけを、被相続人が所有していた不動産に住まわせていたケース等では、家賃に相当する金額等について特別受益だと認められることがあります。

一方で、相続人の1人だけが被相続人と同居していた場合は、特別受益だと認められないことが多いので注意しましょう。

結婚に関する贈与

結婚のための持参金や支度金等は、特別受益に該当する可能性があります。ただし、結婚式を挙げるための費用等を被相続人が支出しても、特別受益にならない場合があります。
持参金や支度金、挙式費用等が特別受益になるかは、被相続人の収入や財産等について検討して、扶養の範囲内だと認められるかによります。

養子縁組のための費用

被相続人の子供が養子になるとき等に渡す財産については、特別受益に該当する可能性があります。しかし、被相続人の収入や財産等によっては特別受益から除外されることもあります。

学費

学費は扶養の範囲内であるケースが多いため、特別受益に該当しない確率が高いといえます。そのため、学費を特別受益だと主張するためには、以下のような点について慎重に検討する必要があります。

  • 他の兄弟姉妹が受けた教育の水準
  • 被相続人が各相続人の進学等について差を設けた理由
  • 被相続人の学歴
  • 学費を支払ってもらった相続人が進学や留学等をした目的
  • 被相続人の収入や財産

4特別受益の計算方法

特別受益に該当する生前贈与等がある場合、特別受益を受けた相続人と受けなかった相続人の相続分は以下のとおりです。

【特別受益を受けた相続人】
相続分=(相続財産+特別受益)×相続割合 -特別受益

【特別受益を受けなかった相続人】
相続分=(相続財産+特別受益)×相続割合

特別受益の計算例

ここで、特別受益がある場合の計算例について解説します。

【事例】

  • 相続財産:1000万円
  • 相続人:妻、長男、長女
  • 相続割合は法定相続分に従う(妻1/2、長男1/4、長女1/4)
  • 長男のみ大学の学費のため200万の援助あり

このような事例において、長男の大学の学費を特別受益とするか否かは、基本的に当事者の合意によって決められます。
特別受益として考慮した場合と考慮しなかった場合について、各相続人の相続分を表にまとめたのでご覧ください。

相続人 特別受益を考慮しない場合の相続分 特別受益を考慮する場合の相続分
1000万円×1/2=500万円 (1000万円+200万円)×1/2=600万円
長男 1000万円×1/4=250万円 (1000万円+200万円)×1/4-200万円=100万円
長女 1000万円×1/4=250万円 (1000万円+200万円)×1/4=300万円

特別受益の相続税の計算方法

特別受益のうち生前贈与は、被相続人が亡くなる前の7年以内に行った贈与を除いて相続税の課税対象ではありません。しかし、遺贈や死因贈与等は課税対象となります。

また、被相続人が亡くなる前の3年以内に行った贈与は、贈与税の非課税枠(年間で110万円)の範囲内であっても相続税の課税対象になります。さらに、被相続人が亡くなる前の4~7年以内に行った贈与については、2027年以降に相続税の課税対象となる期間が発生することになります。

なお、相続開始前の7年以内の贈与が完全に課税対象となるのは2031年以降であり、その後についても被相続人が亡くなる前の4~7年以内の贈与については100万円まで非課税となります。

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特別受益についてわからないことがあれば弁護士にご相談ください

生前贈与等が行われたために不公平だと思う場合には、特別受益の持ち戻しを主張することによって公平な相続を実現できる可能性があります。
しかし、相手方が反発すると、激しい争いに発展するおそれがあります。また、財産が贈与されたように見えても、それが特別受益に当たるかが確実にはわからないケースもあります。

そこで、特別受益について主張したい場合には、事前に弁護士へご相談ください。弁護士であれば、持ち戻しについて主張できるかを判断できる可能性が高いだけでなく、その他の主張するべき点についても検討できます。

親族等との争いは、相手方が赤の他人である場合よりも激しくなることもあるので、なるべく準備を整えて臨むようにしましょう。

遺産分割協議を行っている間に、相続人がなくなってしまうこともあります。本ページでは、そのような場合遺産分割協議を進めるうえで気をつけるべきことや注意点、その後の相続税申告について解説していきます。

数次相続とは

数次相続とは、亡くなった方の遺産分割協議が完了しない間に、相続人のうちの一人がなくなってしまい、その人の相続も発生してしまうことをいいます。
当初亡くなった人の遺産分割協議を行うことを一次相続、遺産分割協議をしている間に相続人がなくなりその人の相続の行うことを二次相続といいます。

数次相続の具体例

数次相続の具体例をあげます。
祖父がなくなり遺産分割協議をしている間に(一次相続)、父が亡くなった場合(二次相続)や、父が亡くなり遺産分割協議をしている間(一次相続)に母が亡くなった場合(二次相続)などがあります。

数次相続はどこまで連鎖する?

遺産分割協議が完了しないとその人の相続手続きが終了しないため、数次相続は、相続人がいる限り相続が続いていくことになります。何代まで続いたら相続は終了とするなどといった法律で定められていないので、相続が終わることはありません。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続と似た概念として、代襲相続というものがあります。
代襲相続は、本来法定相続人となる人が相続開始する前に亡くなってしまったなどの理由で相続人となることができなくなったため、その法定相続人の相続人が代わりに相続人として当事者となることです。

例えば、祖父の死亡前に、祖父の法定相続人である父が亡くなったため、祖父の相続には父の子(私)が相続人として協議を行うことになります。
法定相続人の死亡が、相続開始前であるのが代襲相続、相続開始後であるのが数次相続となります。

相次相続と数次相続の違い

数次相続と似た概念として、相次相続というものがあります。
相続税法上の相次相続控除は、10年以内に2回以上の相続が発生した場合、相続税の負担を一定額控除するものです。これは、短期間で相続が発生すると、同じ財産に対して、課税することになり、税金負担が重くなることを防止するためのものです。

そのため、亡くなった時点で、遺産分割協議が完了しているのが相次相続、遺産分割協議が未了なのが数次相続となります。

数次相続の場合の相続手続き

遺産分割協議が完了する前に、法定相続人が亡くなった場合には数次相続となりますが、その際の手続きを確認しましょう。

相続人を確定させる

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますので、まず相続人は誰なのかを確定させる必要があります。相続人を確定させるためには、亡くなった人の戸籍謄本を取得して、だれが相続人に該当するのかを確認します。

遺産分割協議を行う

相続人の確定ができたら、相続人全員と遺産分割協議を行います。誰がどの財産を取得するのかを確定させます。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議がまとまった際には、後々のトラブルを回避するため、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名捺印をもらいましょう。

数次相続の場合には、亡くなった人が複数いることになります。通常、遺産分割協議書を1通作成するのですが、亡くなった人によって相続人が異なりますし、財産も異なるので、遺産分割協議も複雑な内容となることが多いです。混乱を避けるためにも、亡くなった人ごとに遺産分割協議書を作成することをお勧めします。

数次相続における登記手続き

登記は、権利関係が移動した場合にはその移動ごとに登記を移転させるのが原則です。そのため、一次相続の相続登記、二次相続の相続登記を行った後に、遺産分割協議で取り決めた内容での相続登記をすることになります。

もっとも、相続登記をするときの当事者で遺産分割協議を行ったのであれば、一つ一つの登記をすることが煩雑になることもあるため、中間の相続人が単独相続である場合には、一次相続、二次相続の登記を省略し、遺産分割協議で取り決めた内容で相続登記をすることができます。

数次相続において相続放棄する場合

数次相続の場合でも、通常の相続の通り、相続人は相続放棄をすることが可能です。
もっとも、相続放棄をすると相続人ではなくなります。
二次相続を放棄すると、二次相続の被相続人の相続人ではなくなる関係で、一次相続の相続人でもなくなります。

他方で、一次相続については相続放棄しても、二次相続の被相続人の相続人である地位は失わないので、二次相続は相続人として遺産分割協議を行うことは可能です。

数次相続の注意点

基礎控除額に変更なし

相続税の税額の算出にあたり、相続税の基礎控除額があります。具体的には、(3000万円+600万円×法定相続人の数)です。数次相続の場合には、法定相続人の数が増え、控除金額は多くなるように思えますが、法定相続人の人数は、被相続人の相続が発生した時点での法定相続人の人数で計算するので、増えることはありません。

相続税の申告と納税義務が引き継がれる

相続税の申告義務がある者が、申告する前に亡くなった場合、申告義務や納税義務が消滅するのではなく、その相続人が相続税の申告及び納税義務を承継します。そのため、相続人は、申告、納税を行わなければなりませんので、注意が必要です。

相続税の申告期限は延長になる

相続税の申告期限前に相続が開始した場合には、二位相続の相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に、届出をすることになり、その意味で相続税の申告期限は延長されます。

相次相続控除が受けられる

先の記載した通り、相続から10年以内に再度相続が発生した場合に、10年以内に2回以上の相続が発生した場合、相続税の負担を一定額控除するものです。数次相続の場合も、要件を満たせば相次相続控除の適用を受けることができますので、確認する必要があります。

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数次相続は複雑なので弁護士にご相談ください

遺産分割協議を行う際には、相続人や相続財産の確定をすることが必要ですが、数次相続の場合には、一次相続の場合に比べて相続人が増えますし、相続人が増えることで遺産分割協議も難航することが考えられます。また、遺産分割協議が整ったとしても、その後の登記や税申告などを想定して遺産分割協議書の作成をした方が良い場合も多いです。

数次相続の場合には、相続人の確定や協議の進め方など、通常の相続に加えて複雑になることが多いですので、ぜひ弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。