交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

交通事故に遭うと、被害者は加害者へ損害賠償を請求することができます。
これを損害賠償請求権といいますが、事故の種類によって時効があり、いつでも治療費や慰謝料を請求できるわけではない点に注意が必要です。
では、時効を迎えそうになっているにもかかわらず、被害者はただ待つしかできないのでしょうか?

本記事では、時効の計算方法や、時効を迎えそうな場合の被害者側にできる対処法について解説していきます。
時効を過ぎてしまうと、被害者は大きな不利益を被ることになりますので、特に注意が必要です。この記事を読んでいただき、しっかりと理解を深めておくとよいでしょう。

交通事故の損害賠償請求は3年または5年で時効となる

交通事故の被害者には、加害者に対し損害賠償を請求できる権利=損害賠償請求権が与えられます。
交通事故の示談そのものに期限はないものの、この損害賠償請求権には時効があり、事故の種類によってそれぞれ定められています。

物損事故の場合は3年、人身事故や死亡事故の場合は5年と定められており、時効の期間が過ぎてしまうと損害賠償請求権を失ってしまい、加害者へ損害賠償を請求できなくなってしまいます。
そのため、まずは時効がいつなのかを事前に確認しておくことが重要です。

時効のスタートはいつから?

時効は、事故の種類によって期間と起算日が異なります。
基本的には下記表のとおりですが、人身事故においては後遺障害の申請をしたかどうかで起算日が異なります。

後遺障害の申請を行っている場合は、症状固定日の翌日から5年が期限と定められていますので、注意しましょう。

事故の種類 時効
物損事故 事故日の翌日から3年
人身事故※傷害のみの場合 事故日の翌日から5年
死亡事故 死亡日の翌日から5年
当て逃げ・ひき逃げ※人身事故の場合 加害者が判明した日から5年

当て逃げやひき逃げなどについては、加害者が判明しているかどうかで時効の期間が異なります。
加害者が判明していない場合、時効は事故の翌日から20年と定められており、途中で加害者が判明した場合などは、判明した日から物損事故なら3年、人身事故なら5年となっています。

※事故発生日が令和2年3月31日より前の場合は、改正前の民放が適用されるため、人身事故と死亡事故の時効は3年となります。

交通事故示談で時効が近い場合の注意点

時効が近いからといって、示談を急ぐことはやめておきましょう。
期限が迫ると焦りが生じてくるものですが、基本的に、一度示談して示談書(免責証書)を取り交わしてしまうと、やり直すことはできません。

しかし、時効を延長する方法がいくつかあります。
延長することができれば、時間的な余裕が生まれます。
もちろん、時効を覚えておく必要はありますが、延長できるということも念頭に置いておきましょう。

では、どのような延長方法があるのか、一つ一つ解説していきます。

交通事故の時効を延長する方法は?

時効を延長するためには、被害者側がアクションを起こす必要があります。
いくつか方法はありますが、主なアクションは以下のとおりです。

① 催告をする(請求書を送付する)
② 加害者に債務を認めてもらう
③ 裁判を起こす
④ 強制執行の手続きを行う

被害者が与えられた損害賠償請求権の時効までに示談が成立しなかった場合は、「時効の完成猶予」と「時効の更新」により時効を延長することができます。

主な方法である①~④について、具体的に解説していきます。

請求書を送付する(催告)

加害者側に請求書を送付することを、催告といいます。
なお、送付する際は普通郵便などではなく、必ず内容証明郵便を使用して配達完了したことを郵便局に証明してもらいます。

請求書を送付することで、「被害者は加害者に対し、損害賠償請求をする意思があること」を示すことができ、催告のときから6ヶ月間、時効完成が猶予されます。
ただし、催告は複数回できるわけでなく、一度しかできません。
そのことから、一般的には裁判の準備中に時効を迎えてしまいそうな場合などに行われたりします。

加害者に債務を認めてもらう

加害者から、被害者に対して損害賠償を支払うことの債務を認めてもらえれば、加害者が債務を認めた日が時効の起算点となり、時効が更新されます。
加害者が以下のような行動をとった場合に、債務を承認したと認められます。

●債務を承認する旨を書面に記す
●被害者に対して示談金額を提示する
●損害賠償金の一部を被害者へ支払う

なお、加害者ではなく、加害者側の任意保険会社に債務を認めてもらうことでも時効が更新されます。

裁判を起こす

裁判を起こした場合、裁判が終わるまで時効の完成が猶予されます。
「裁判によって判決の確定」または「判決が下されるまでに和解が成立した後」に、止まっていた時効のカウントが再スタートします。
※図のようなイメージです。

裁判を起こす

具体的には、裁判所へ訴状を提出した日から、時効がストップします。
ただし、裁判所が訴状を受け付けても、訴えが却下された場合には、当然時効は中断しません。

加害者側から不誠実な対応をされ続け、時効が迫ってきてしまった場合は、裁判を起こした方が早く示談成立できる可能性があります。

強制執行の手続きを行う

裁判所へ強制執行の申立ておよび手続きを行うと、決定後に加害者の財産を差し押さえることができます。差し押さえた加害者の財産から、「強制的に損害賠償金を支払ってもらう」という結果になります。

加害者の財産=換金できそうなものを差し押さえ、基本的には生活に欠かせない家財道具(衣服、寝具など)以外を差し押さえます。
この強制執行の手続きが完了するまでは、時効の完成が猶予されます。
ただし、手続き完了後は、「3.3裁判を起こす」と同様、改めて時効のカウントが再スタートします。

示談が進まない場合の対処法

「加害者や加害者の任意保険会社との示談交渉が思うように進まず、時間だけが過ぎてしまい疲弊する」といった状況に陥る場合もあるでしょう。
そういった示談が進まない場合は、ADR(交通事故紛争処理センター)の利用など、第三者に介入してもらうと早期解決につながりやすくなります。

ADRとは、裁判を起こさずに、加害者側と被害者側の間に入って、示談成立までのサポートをおこなってくれる機関です。中立的な立場で判断してくれるため、示談が進まない場合はADRの利用を検討するとよいでしょう。

示談が進まない場合の対処法については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。

交通事故の示談交渉が進まない原因と対処法について詳しく見る

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交通事故で時効が気になる場合は弁護士にご相談ください

弁護士法人ALGでは、時効の手続きをする場合、基本的には「3.1請求書を送付する(催告)」方法と「3.2加害者もしくは加害者の任意保険会社に債務を認めてもらう」方法から試します。
なぜならば、裁判を起こす場合は無料で起こすことはできず、ある程度費用がかかるからです。

そのため、まずはあまり費用がかからない催告と債務を認めてもらう方法から始めており、内容証明書の作成や加害者との交渉などもすべて弁護士で対応しております。
時効を延長させる手続きは、一筋縄ではいかないケースもあります。
そのような場合でも、弁護士であればできる限り費用を抑えつつ、臨機応変に対応することができます。

早期解決したいのに、思うように進まない、時効も迎えてしまいそう‥
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など、時効の手続きで不安を抱かれている方は、ぜひ一度弁護士への相談・依頼をご検討ください。

夫婦間に子どもがいる場合、離婚する際には親権者を決める必要がありますが、別居後、離婚までの間子どもを監護する当事者を決める制度として、「監護者指定」という手続きがあります。

一般的に、監護者に指定された父母が離婚後も親権者に選ばれることが多いため、監護者に指定されるか否かは、親権者となるうえで極めて重要です。
今回は、「監護者指定」について説明をしていきます。

監護者指定とは

監護者指定とは、別居している夫婦のうち、どちらが子どもの面倒を実際に見るかを決める手続きです。
離婚前は両親双方が親権を持っていることになりますが、別居している場合は実際に子どもと暮らすことができるのはどちらか一方だけです。

そのため、どちらが子どもと暮らすかを争う場合、離婚に先立って監護者を決めるために監護者指定という手続きを利用します。

親権者指定と監護者指定の違いについて

親権者指定とは、離婚後に親権を行使する親を決めることです。これに対し、監護者指定とは、主に離婚前に子どもを監護する親を決める手続きです。
また、親権者は父母の一方しか指定されないのに対し、監護者は祖父母などの第三者が指定されることも可能です。

親権者と監護権者は分ける場合がある

親権は、「身上監護権」と「財産管理権」に分けられます。身上監護権とは子どもの身の回りの世話をする権利であり、財産管理権とは子どもの財産を管理したり、法律行為の代理をしたりする権利です。
通常、親権者と監護権者は一致しますが、例えば、監護している親の財産管理に不安がある場合などは、監護者と親権者を分離して指定することもあります。

親権者と監護権者が実際に分けられた判例

実際に、福岡家裁平成26年12月4日審判では、親権と監護権を持つ母親が面会交流の取決めを守らないため、父親に親権者を変更し、親権と監護権が分離しました。
ただし、この事件は、親権者である母親に、取り決められた面会交流への協力を促すことを目的とされたものであって、親権者と監護権者を分離することは極めて例外的なケースです。

監護者指定の判断基準

監護者指定の判断基準は、大きく親側の事情と子ども側の事情に分けられます。
親側の事情としては、これまでの監護状況、父母の年齢・健康状態・監護補助者などの監護能力、監護者に指定された場合に面会交流に協力する意向があるか、などの事情が考慮されます。

子ども側の事情としては、年齢、本人の意思などが挙げられます。子どもの意思は、年齢が高いほど尊重される傾向にあります。
また、監護者に指定された結果、引越しの必要が生じ、子どもの環境が変化するかどうかも考慮されます。

子供の年齢によって監護者を判断する場合もある

子どもの年齢によって、監護者の判断に与える影響は変わります。
子どもの年齢が15歳以上の場合は子どもの意見を聴取しなければならず、15歳に達していなくとも、10歳頃になれば比較的子どもの意見が優先される傾向にあります。

他方、子どもが幼稚園・保育園に通っている場合や乳幼児の場合には、母親が主に監護を担っていることが多く、母親が監護者に指定されることが多いです。

離婚時・離婚後の監護者指定の流れ

離婚時に監護者を指定する場合は、親権者の指定と合わせて決定することが可能です。監護者は、当事者の合意のみで決定することができますが、離婚届には親権者しか記載する欄がありません。そのため、親権者とは別途監護者を指定する際は、書面で明確にする必要があります。

他方で、離婚後に監護者を指定する場合、家庭裁判所に監護者指定を求める申立てが必要です。ただし、子どもに対する虐待や育児放棄など親権者の監護に問題がある場合でない限り、親権者と監護者の分離を裁判所が認めることはほとんどありません。

監護者の指定調停

家庭裁判所では、監護者指定調停という手続きを通して、どちらを監護者にするかを話合いで決めることができます。

指定調停を申し立てるためには

監護者指定調停の申立ては、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。管轄については、裁判所のホームページによって確認することができます。

申立てのためには、申立書や戸籍謄本などの書類に加え、子ども一人につき1200円の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。申立書については、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

監護者指定調停の流れ

監護者指定調停では、当事者同士が面と向かって話合いを行うことはありません。申立人と相手が交互に調停室に入り、調停委員を通してそれぞれの意見を伝えます。調停委員を通して話し合いを重ね、どちらを監護者とするのか合意を図っていきますが、話し合いで合意に至ることが難しい場合には、調停は不成立となり、審判に移行して裁判官に判断を委ねます。

別居中でも監護者指定することはできます

別居中の夫婦は双方親権を持っている状況ですが、一方のみを監護者に指定することは可能です。
むしろ、離婚後の親権者を決める前哨戦として、別居中の監護権者が争われることが多いです。

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監護者指定審判の流れ

監護者指定調停が不成立となった場合に審判に移行することもありますが、調停を経ずに監護者指定審判を申し立てることもできます。

監護者指定審判では、書面や資料によって自分が監護者に相応しいことを主張するとともに、調査官という専門家がどちらを監護者にすべきかという調査をし、これらの資料を基に裁判官がどちらを監護者にすべきかを決定します。

どのくらいの期間がかかるのか

審判によって監護者が決まるまでに、およそ半年程度がかかります。この間に監護実績が積まれてしまうと、その後親権を獲得することが難しくなってしまうため、急を要する場合は、監護者指定審判とは別に、保全手続きを申し立てる必要があります。

審判後の流れについて

それまで監護をしていなかった側が監護者に指定された場合、指定された監護者は子どもの引き渡しを求めることができます。相手が子どもの引き渡しに応じない場合は、裁判所の執行官が相手の自宅まで行き、強制的に子どもの引き渡しを求める直接強制などの手続きを利用することができます。

監護者指定審判の即時抗告について

審判の結果に納得がいかない場合、即時抗告という不服申し立てをすることができます。審判書を受け取ってから2週間以内に申立てをすることで、高等裁判所が一審の家庭裁判所の判断を変更するかどうか検討します。

監護者指定・子の引き渡しの審判前には保全処分をする

監護者指定審判の判断が出るまでにはおよそ半年ほどかかるため、虐待や育児放棄など子どもの身体や健康に危険が及ぶ場合には、「保全処分」という手続きも併せて申し立てることで、早急に引渡しを求めることが必要です。

保全処分が認められれば、その後の監護者指定審判でも監護者に指定される可能性が高いですが、単に早く子どもに会いたいというだけでは、緊急性がないとして保全処分は却下されることが大半です。

よくある質問

監護者指定審判では父親と母親はどちらが有利ですか?

性別によって有利不利が左右されるわけではありませんが、一般的に母親が監護の多くの部分を担うことが多いため、監護者指定審判でも母親が監護者に指定されることが多いのが実情です。
ただ、近年では在宅勤務や家事をする父親が増えてきたため、監護へのかかわり方や子どもの意向次第では、父親が監護者に指定される可能性も十分あります。

子供が配偶者に連れ去られた場合、監護者はどちらになりますか?

子どもの連れ去りは、監護者を指定するうえでは不利に働くことが多いです。特に、それまでの監護実績がない側が連れ去った場合、刑事罰に問われることもあります。反対に、それまで子どもを監護していた側が子どもを連れていった場合や相手のDVがある場合などは、子どもを連れ去ったことに正当な理由があるとして、連れ去った側が監護者に指定されます。
また、裁判所は監護の継続性も重視しているため、連れ去り後に長期間が経過して子どもが現在の環境になじんでいる場合には、連れ去った側を監護者に指定することもあります。

監護者指定がされて面会交流後に子どもが連れ去られた場合は今後も面会交流をしないといけませんか?

監護者指定後の面会交流の最中に子どもが連れ去られた場合、面会交流禁止の申立てをすることができます。
ただ、子どもにとって、面会交流は双方の親からの愛情を感じることができる貴重な機会であるため、第三者機関の利用を検討するといいかもしれません。

祖父母が監護者になることはできますか?

監護者には両親以外の第三者がなることもできるため、祖父母が監護者になることもできます。両親が育児放棄をしているなど監護者に相応しくない場合には、祖父母が監護者になることも検討する必要があるでしょう。
ただし、法律上は祖父母が裁判所に監護者指定の申立てをすることはできないため、養子縁組をしておくなど事前の準備が必要になります。

調停離婚と監護者指定の調停は同時に申立てることができますか?

離婚調停と監護者指定の調停を同時に申し立てることは可能です。ただし、監護者の指定は親権者指定の前哨戦という側面があるため、先に監護者を決定してから、離婚調停の中で親権者を決めていくことが多いです。

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離婚後に親権者となるためには、離婚前の別居段階で監護者に指定されることが極めて重要です。しかし、どのような要素が監護者を決めるうえで重要になるのか、どのような監護態勢を整えることが監護者となるために重要なのか、裁判所の考え方や膨大な裁判例を検討する必要があるため、専門家である弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

離婚を考えているが、離婚後も子どもと一緒に暮らしたい、子どもと離れたくないと思っている方は、是非一度弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

相続人の1人が多額の生前贈与を受けていた場合等、被相続人が亡くなったときに残っている財産を等分にしたら不公平だと感じるケースがあります。このようなケースでは、生前贈与を「特別受益」として扱い、持ち戻しを行うことによって公平な相続を実現できます。

この記事では、特別受益の概要や、特別受益として扱われる贈与などの範囲、特別受益の計算方法等について解説します。

特別受益とは

特別受益とは、相続人が被相続人から特別に受け取った財産のことです。特別受益を考慮せずに被相続人が亡くなったときの相続財産を分配すると、特別受益のあった相続人だけが得をすることになるため、相続財産の一部を受け取ったものとして扱うことになっています。

特別受益がある場合には、それを相続財産に加えて法定相続分や遺留分を計算し、特別受益のあった相続人の取り分から差し引きます。この処理を「特別受益の持ち戻し」といいます。

対象者

特別受益の対象者は、相続分の計算については法定相続人に限定されます。そのため、被相続人の友人や、法定相続人ではない兄弟姉妹等は対象者になりません。しかし、遺留分の計算については第三者等であっても持ち戻しの対象者になります。

上記の内容をまとめると、特別受益の対象者は以下のとおりです。

相続分を計算するときの持ち戻し 法定相続人のうち、被相続人から遺贈や生前贈与等を受けた人
遺留分を計算するときの持ち戻し 第三者等も含めて、被相続人から遺贈や生前贈与等を受けた人

特別受益と遺留分の違い

特別受益 相続分を公平にするために、遺贈や生前贈与等を相続財産の一部として扱うもの
遺留分 相続財産を受け取る可能性が高かった人の生活を保障するために、兄弟姉妹以外の法定相続人に与えられる相続財産の最低限の取り分

特別受益と遺留分がどのようなものかについて、表にまとめたのでご覧ください。
遺留分を計算するときには特別受益を考慮します。しかし、通常の生活費や教育費、医療費等は特別受益として扱われません。
通常の範囲を超えた、多額の借金の肩代わり等については特別受益として扱われることがあります。

特別受益の時効

相続人が相続分を決めるときには、特別受益に時効はありません。そのため、数十年前に行った生前贈与等についても持ち戻しの対象となります。

ただし、被相続人が持ち戻しを行わない意思を遺言書等で示した場合には、基本的に持ち戻しは行いません。また、過去の生前贈与等について立証できなければ、持ち戻しは認められないおそれがあります。

一方で、遺留分を計算するときには、相続が発生するまでの10年以内に行われた生前贈与等が持ち戻しの対象となります。なお、遺留分については、被相続人が持ち戻しを行わない意思を示していても無効となります。

特別受益の範囲(対象となる贈与)

特別受益の対象となる贈与等として、主に以下のようなものが挙げられます。

①遺贈
②生活費の援助
③不動産の贈与
④結婚に関する贈与
⑤養子縁組のための費用
⑥学費

これらの贈与等について、次項より解説します。

遺贈

遺贈とは、遺言書によって相続財産を贈与することです。遺贈する相手が法定相続人であっても、相続権のない第三者等であっても問題ありません。また、法人等に遺贈することも可能です。
遺贈は、基本的にすべてが特別受益の対象となります。

生活費の援助

生活費の援助は、特別受益に該当しないケースもあります。なぜなら、扶養のための金銭援助等については特別受益に該当しないからです。
どの程度の金額であれば扶養の範囲内なのかは、被相続人の収入や財産等によって変動します。

不動産の贈与

相続人の1人にだけ不動産を贈与した等の事情があれば、特別受益に該当する可能性があります。
また、相続人の1人だけを、被相続人が所有していた不動産に住まわせていたケース等では、家賃に相当する金額等について特別受益だと認められることがあります。

一方で、相続人の1人だけが被相続人と同居していた場合は、特別受益だと認められないことが多いので注意しましょう。

結婚に関する贈与

結婚のための持参金や支度金等は、特別受益に該当する可能性があります。ただし、結婚式を挙げるための費用等を被相続人が支出しても、特別受益にならない場合があります。
持参金や支度金、挙式費用等が特別受益になるかは、被相続人の収入や財産等について検討して、扶養の範囲内だと認められるかによります。

養子縁組のための費用

被相続人の子供が養子になるとき等に渡す財産については、特別受益に該当する可能性があります。しかし、被相続人の収入や財産等によっては特別受益から除外されることもあります。

学費

学費は扶養の範囲内であるケースが多いため、特別受益に該当しない確率が高いといえます。そのため、学費を特別受益だと主張するためには、以下のような点について慎重に検討する必要があります。

  • 他の兄弟姉妹が受けた教育の水準
  • 被相続人が各相続人の進学等について差を設けた理由
  • 被相続人の学歴
  • 学費を支払ってもらった相続人が進学や留学等をした目的
  • 被相続人の収入や財産

4特別受益の計算方法

特別受益に該当する生前贈与等がある場合、特別受益を受けた相続人と受けなかった相続人の相続分は以下のとおりです。

【特別受益を受けた相続人】
相続分=(相続財産+特別受益)×相続割合 -特別受益

【特別受益を受けなかった相続人】
相続分=(相続財産+特別受益)×相続割合

特別受益の計算例

ここで、特別受益がある場合の計算例について解説します。

【事例】

  • 相続財産:1000万円
  • 相続人:妻、長男、長女
  • 相続割合は法定相続分に従う(妻1/2、長男1/4、長女1/4)
  • 長男のみ大学の学費のため200万の援助あり

このような事例において、長男の大学の学費を特別受益とするか否かは、基本的に当事者の合意によって決められます。
特別受益として考慮した場合と考慮しなかった場合について、各相続人の相続分を表にまとめたのでご覧ください。

相続人 特別受益を考慮しない場合の相続分 特別受益を考慮する場合の相続分
1000万円×1/2=500万円 (1000万円+200万円)×1/2=600万円
長男 1000万円×1/4=250万円 (1000万円+200万円)×1/4-200万円=100万円
長女 1000万円×1/4=250万円 (1000万円+200万円)×1/4=300万円

特別受益の相続税の計算方法

特別受益のうち生前贈与は、被相続人が亡くなる前の7年以内に行った贈与を除いて相続税の課税対象ではありません。しかし、遺贈や死因贈与等は課税対象となります。

また、被相続人が亡くなる前の3年以内に行った贈与は、贈与税の非課税枠(年間で110万円)の範囲内であっても相続税の課税対象になります。さらに、被相続人が亡くなる前の4~7年以内に行った贈与については、2027年以降に相続税の課税対象となる期間が発生することになります。

なお、相続開始前の7年以内の贈与が完全に課税対象となるのは2031年以降であり、その後についても被相続人が亡くなる前の4~7年以内の贈与については100万円まで非課税となります。

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特別受益についてわからないことがあれば弁護士にご相談ください

生前贈与等が行われたために不公平だと思う場合には、特別受益の持ち戻しを主張することによって公平な相続を実現できる可能性があります。
しかし、相手方が反発すると、激しい争いに発展するおそれがあります。また、財産が贈与されたように見えても、それが特別受益に当たるかが確実にはわからないケースもあります。

そこで、特別受益について主張したい場合には、事前に弁護士へご相談ください。弁護士であれば、持ち戻しについて主張できるかを判断できる可能性が高いだけでなく、その他の主張するべき点についても検討できます。

親族等との争いは、相手方が赤の他人である場合よりも激しくなることもあるので、なるべく準備を整えて臨むようにしましょう。

遺産分割協議を行っている間に、相続人がなくなってしまうこともあります。本ページでは、そのような場合遺産分割協議を進めるうえで気をつけるべきことや注意点、その後の相続税申告について解説していきます。

数次相続とは

数次相続とは、亡くなった方の遺産分割協議が完了しない間に、相続人のうちの一人がなくなってしまい、その人の相続も発生してしまうことをいいます。
当初亡くなった人の遺産分割協議を行うことを一次相続、遺産分割協議をしている間に相続人がなくなりその人の相続の行うことを二次相続といいます。

数次相続の具体例

数次相続の具体例をあげます。
祖父がなくなり遺産分割協議をしている間に(一次相続)、父が亡くなった場合(二次相続)や、父が亡くなり遺産分割協議をしている間(一次相続)に母が亡くなった場合(二次相続)などがあります。

数次相続はどこまで連鎖する?

遺産分割協議が完了しないとその人の相続手続きが終了しないため、数次相続は、相続人がいる限り相続が続いていくことになります。何代まで続いたら相続は終了とするなどといった法律で定められていないので、相続が終わることはありません。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続と似た概念として、代襲相続というものがあります。
代襲相続は、本来法定相続人となる人が相続開始する前に亡くなってしまったなどの理由で相続人となることができなくなったため、その法定相続人の相続人が代わりに相続人として当事者となることです。

例えば、祖父の死亡前に、祖父の法定相続人である父が亡くなったため、祖父の相続には父の子(私)が相続人として協議を行うことになります。
法定相続人の死亡が、相続開始前であるのが代襲相続、相続開始後であるのが数次相続となります。

相次相続と数次相続の違い

数次相続と似た概念として、相次相続というものがあります。
相続税法上の相次相続控除は、10年以内に2回以上の相続が発生した場合、相続税の負担を一定額控除するものです。これは、短期間で相続が発生すると、同じ財産に対して、課税することになり、税金負担が重くなることを防止するためのものです。

そのため、亡くなった時点で、遺産分割協議が完了しているのが相次相続、遺産分割協議が未了なのが数次相続となります。

数次相続の場合の相続手続き

遺産分割協議が完了する前に、法定相続人が亡くなった場合には数次相続となりますが、その際の手続きを確認しましょう。

相続人を確定させる

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますので、まず相続人は誰なのかを確定させる必要があります。相続人を確定させるためには、亡くなった人の戸籍謄本を取得して、だれが相続人に該当するのかを確認します。

遺産分割協議を行う

相続人の確定ができたら、相続人全員と遺産分割協議を行います。誰がどの財産を取得するのかを確定させます。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議がまとまった際には、後々のトラブルを回避するため、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名捺印をもらいましょう。

数次相続の場合には、亡くなった人が複数いることになります。通常、遺産分割協議書を1通作成するのですが、亡くなった人によって相続人が異なりますし、財産も異なるので、遺産分割協議も複雑な内容となることが多いです。混乱を避けるためにも、亡くなった人ごとに遺産分割協議書を作成することをお勧めします。

数次相続における登記手続き

登記は、権利関係が移動した場合にはその移動ごとに登記を移転させるのが原則です。そのため、一次相続の相続登記、二次相続の相続登記を行った後に、遺産分割協議で取り決めた内容での相続登記をすることになります。

もっとも、相続登記をするときの当事者で遺産分割協議を行ったのであれば、一つ一つの登記をすることが煩雑になることもあるため、中間の相続人が単独相続である場合には、一次相続、二次相続の登記を省略し、遺産分割協議で取り決めた内容で相続登記をすることができます。

数次相続において相続放棄する場合

数次相続の場合でも、通常の相続の通り、相続人は相続放棄をすることが可能です。
もっとも、相続放棄をすると相続人ではなくなります。
二次相続を放棄すると、二次相続の被相続人の相続人ではなくなる関係で、一次相続の相続人でもなくなります。

他方で、一次相続については相続放棄しても、二次相続の被相続人の相続人である地位は失わないので、二次相続は相続人として遺産分割協議を行うことは可能です。

数次相続の注意点

基礎控除額に変更なし

相続税の税額の算出にあたり、相続税の基礎控除額があります。具体的には、(3000万円+600万円×法定相続人の数)です。数次相続の場合には、法定相続人の数が増え、控除金額は多くなるように思えますが、法定相続人の人数は、被相続人の相続が発生した時点での法定相続人の人数で計算するので、増えることはありません。

相続税の申告と納税義務が引き継がれる

相続税の申告義務がある者が、申告する前に亡くなった場合、申告義務や納税義務が消滅するのではなく、その相続人が相続税の申告及び納税義務を承継します。そのため、相続人は、申告、納税を行わなければなりませんので、注意が必要です。

相続税の申告期限は延長になる

相続税の申告期限前に相続が開始した場合には、二位相続の相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に、届出をすることになり、その意味で相続税の申告期限は延長されます。

相次相続控除が受けられる

先の記載した通り、相続から10年以内に再度相続が発生した場合に、10年以内に2回以上の相続が発生した場合、相続税の負担を一定額控除するものです。数次相続の場合も、要件を満たせば相次相続控除の適用を受けることができますので、確認する必要があります。

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数次相続は複雑なので弁護士にご相談ください

遺産分割協議を行う際には、相続人や相続財産の確定をすることが必要ですが、数次相続の場合には、一次相続の場合に比べて相続人が増えますし、相続人が増えることで遺産分割協議も難航することが考えられます。また、遺産分割協議が整ったとしても、その後の登記や税申告などを想定して遺産分割協議書の作成をした方が良い場合も多いです。

数次相続の場合には、相続人の確定や協議の進め方など、通常の相続に加えて複雑になることが多いですので、ぜひ弁護士にご相談ください。

交通事故によって怪我をした場合、入院や診察の通院した以外に慰謝料の支払いを求めることができないのでしょうか。
本ページでは、入院や診察のために通院した以外にリハビリ治療を行った場合の慰謝料の支払いを受けることができるのか、リハビリ治療をする際の注意点などを解説します。

リハビリ期間の慰謝料は請求できる

交通事故で怪我をした場合には、治療をする必要がありますが、その治療は医師による診察だけでなく、リハビリ治療によってけがの回復を促すことになります。その意味で、リハビリも治療なのです。そのため、医師の診察を受けたときだけでなく、リハビリを行っている期間も治療期間として、慰謝料の請求をすることが可能です。

入通院慰謝料がもらえるのは症状固定と判断されるまで

入通院慰謝料は、交通事故による怪我の治療期間や治療日数に対応して算出されるものです。入通院慰謝料の対象期間は、交通事故発生日もしくは初診日から、治療終了日もしくは症状固定日となります。

症状固定日とは、医師が、これ以上治療しても治療の効果が見込めないと判断した日のことで、これ以上治療やリハビリの必要がないということを意味します。そのため、症状固定日後の慰謝料をもらうことはできません。

リハビリ期間の慰謝料請求が認められないケースもある

リハビリ期間も、入通院慰謝料の請求をすることが可能ですが、リハビリをしていたらなんでも慰謝料請求をすることができるわけではないことに注意が必要です。

交通事故との因果関係がない

交通事故による賠償を求めるためには、交通事故と直接関連のある損害でなければなりません。交通事故と関係のないリハビリを行っても、入通院慰謝料を求めることはできません。

過度の通院

交通事故による賠償を求めるためには、交通事故と直接関連のある損害でなければならず、治療との関係でいうと、治療の必要性が認められる範囲での治療に限られます。そのため、たくさんの病院に行ったり、一日に何度治療を行ったりなど、過度な治療を受けたとしても、必ずしも賠償を受けられるものではありません。

治療の頻度や治療方法については、医師と相談して決める必要があります。

漫然としたリハビリ治療

リハビリ治療が入通院慰謝料に含めて算出されるのは、リハビリ治療が怪我を直すために必要な治療だからです。そうすると、怪我の回復のために効果的なリハビリ治療を行う必要があります。

そうすると、同じリハビリ治療を長期間継続したり、治療の効果を振り返らなかったりするようなな漫然としたリハビリ治療を行っていると、必要な治療と判断されず、慰謝料を求めることが難しくなります。
リハビリ知用の内容については、症状を詳しく医師に伝え、定期的に医師に確認をしてもらう必要があります。

リハビリ通院中の慰謝料を請求する場合の注意点

転院する場合は事前に連絡する

治療を継続している間に、治療の効果を上げるため転院をすることもあると思います。しかし、医師や保険会社に何も言わずに転院すると、治療を終了したと誤った判断がされる危険があります。転院をする際には、医師や保険会社に、事前に、転院することを伝えることが重要です。

整骨院への通院は整形外科医に許可をもらってから

整骨院等は、法律上は医療機関ではないため、治療としてみなされないことが多いです。整骨院で治療を行いうためには、整骨院での施術が、医師の指示のもと行われる治療であるということが必要となります。そのため、整骨院等への通院をする場合には、整形外科医の許可、指示をもらってから通院をして下さい。

もっとも、整形外科医の許可や支持があったとしても、治療として判断されないことも多いですので、可能な限りは整形外科での治療を受けた方が良いです。

保険会社による治療費の打ち切りに安易に応じない

保険会社は、事故の態様によっても異なりますが、事故日から3カ月を経過してから、治療費の事前支払いを打ち切るとの連絡が入ることが多いです。しかし、治療が必要か否かは、最終的には医師が判断することです。

そのため、保険会社から治療費打ち切りの連絡が入ったとしても、すぐに受け入れることなく、速やかに医師に伝え、治療の必要性について確認をした方が良いです。

健康保険を使う場合は150日ルールに気を付ける

健康保険を利用してリハビリをする場合、医師がリハビリ治療の継続が必要であると判断しない限り、発症から150日間を上限としてリハビリを行うことができると定められています。そのため、健康保険を利用してリハビリ治療を行っている場合には、基本的には、150日を超えるとリハビリ治療をすることができなくなります。

適正な慰謝料を受け取るために必要なこと

リハビリは適切な頻度で通う

これまで記載している通り、症状がある限り、入院や通院、リハビリ治療などを継続的な治療を行って治癒を目指すわけですが、リハビリ治療を行うときには、過度に治療をすると、治療の必要性がないとして慰謝料の請求ができなくなる危険もあります。そのため、リハビリ治療を行う際には、医師に相談をしながら、適切な頻度で治療を行うことが重要です。

弁護士基準で請求する

弁護士が介入すると、弁護士基準といって、基本的には事故日から治療終了日もしくは症状固定日までの期間で算定します。弁護士基準で算定する場合、通院頻度というよりは治療期間で算出するので、治療日数は関係ないと思われるかもしれません。

しかし、治療があまりにも高頻度である場合や逆にほとんど治療を行っていない場合などは、減額をされることもあります。適切な治療を行うことは、弁護士基準で算定したとしても必要なことですので、医師の指示を仰ぎながら治療を受けることが重要です。

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リハビリ期間の慰謝料を適正な金額で受け取るためにも弁護士にご相談ください

入通院慰謝料の算定においては、3つの基準があり、基準によって受け取れる慰謝料の金額も異なります。また、算定の基準が決まったとしても、最終的な金額に関して、通院頻度や治療の内容を考慮して金額を増減額させることも考えられます。

リハビリ治療を含め、適切な慰謝料をもらうためには、専門的な知見から判断、請求することが必要となりますので、ぜひ弁護士にご相談ください。

配偶者からのモラハラに耐えかねて、別居や離婚を決意される方もいるでしょう。しかし、モラハラ配偶者に離婚を切り出しても、素直に離婚に応じてくれることは多くありません。それまで配偶者をないがしろにしてきたにもかかわらず、いざ離婚されそうになるといつまでも離婚を拒否し続けます。
今回は、どうすればモラハラ配偶者と離婚できるのかについてご説明します。

モラハラ配偶者が離婚に応じない理由

プライドが高い

モラハラ配偶者が離婚を拒否する理由のひとつは、プライドが高いことです。
モラハラをする配偶者は多くの場合プライドが高く、配偶者を自分より下だとみなしています。そのため、自分より下であるはずの相手から離婚を切り出されることや、相手の希望通りに物事が進むことを負けだと感じ、なかなか離婚に応じようとしません。

自分に自信がない

他にも、モラハラをする理由のひとつは、自分に自信がないことです。他人よりも優れている部分がないと思っているため自分に自信がなく、身近にいる配偶者をモラハラによって自分の支配下に置くことで、自分の自尊心や心の平穏を保っています。

そのため、離婚をしてしまうと自分の優位を確認できる相手がいなくなってしまうので、離婚に応じることができないのです。

自分が正しく、離婚請求される理由がないと思い込んでいる

自分の発言がモラハラだと思っていない場合、例えば相手のためを思って言っているのだから自分は正しいと思っているモラハラ配偶者は、離婚を要求される理由が理解できず、離婚に合意しようとしません。

このタイプの配偶者は、自分に非があるとは思っていないので、相手がどれだけ離婚したいかを説明しても、理解できるまでに時間がかかるか、最後まで理解することができません。

モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段

証明できる証拠を集める

モラハラ配偶者は、自分の言動がモラハラに該当することを自覚していないことが多いです。そのため、協議や調停で説得するために、相手の言動を証拠として集めておく必要があります。また、話合いで相手が納得しない場合には裁判をする必要がありますが、訴訟でモラハラを証明するためには、客観的な証拠が必要になります。

ただ、相手の言動を咄嗟に録音することは実際には困難です。そのため、日頃から相手の言動を日記などで記録しておく必要があります。

別居してみる

モラハラ配偶者と離婚するためには、別居することが大きなきっかけとなることがあります。
別居することで、モラハラ配偶者にもこちらが本気で離婚したいということが伝わり、離婚に応じてくれることがあります。また、相手が応じなくとも、別居が長期化することで、夫婦関係が破綻しているとして、裁判でも離婚が認められやすくなります。

事前に別居することを伝えると、相手が別居に抵抗する可能性が高いので、別居時に置手紙を残すか、別居後にメールで離婚する意思があることを伝えると良いでしょう。

子供がいる場合

お子様がいる場合、モラハラ配偶者の下にお子様を置いて別居することは難しいと思います。別居後にモラハラや暴力がお子様に向かう可能性が高い場合には、お子様を連れて別居することを検討した方が良いでしょう。

ただ、状況によっては、お子様を連れて出ていったことが「違法な連れ去り」と判断されて、親権を取るうえで不利な事情となる可能性があります。しかい、相手のモラハラから逃れるための別居の場合には、お子様を連れていったことに正当な理由があるとされる可能性があるため、弁護士にも相談しながら進めると良いでしょう。

経済的に不安な場合

別居後の生活に経済的な不安がある場合は、実家や親族に頼るというのも一つです。また、相手が生活費を払わない場合は、婚姻費用を請求する調停を申し立てることも検討した方が良いでしょう。

実際には、周囲に全面的に頼るのが難しいことも多いので、別居前には一定期間分の生活費を貯めておくと落ち着いて離婚協議を進めることができます。

弁護士等、第三者に相談する

モラハラ配偶者と離婚するためには、どのような証拠が必要なのか、どのようにすれば良いのか、また別居してから離婚するまで経済的に生活していけるのか、など多くの不安や懸念点があると思います。

そのような場合には、公的機関であれば、都道府県や市区町村が設置している配偶者暴力相談センター、警察の窓口に相談すると良いでしょう。また、婚姻費用の請求や具体的な離婚までの道筋を考えるうえでは、法律の専門家である弁護士に相談してください。

モラハラ夫と離婚の話し合いをする際の注意点

相手の一時的な態度に騙されない

モラハラ配偶者に離婚を請求すると、一転してこれまでの行動を謝罪したり、反省したからもう離婚は考え直してほしいと懇願したりしてくることがあります。しかし、こうした行動は、多くの場合離婚を回避するためのその場しのぎのものに過ぎません。そのため、同居を再開すると、これまでと同じように、モラハラが再開することが多いです。

一度離婚をすると決めたら、相手の態度や行動に振り回されないようにしてください。

話し合いは第三者に介入してもらう

モラハラ配偶者と直接離婚のための話合いをすることはおすすめしません。それまでの生活で精神的な上下関係が構築されてしまい、相手と対等な立場で反論することが多いということや、モラハラ配偶者の高圧的な言動に委縮してしまい、相手の言いなりになって離婚を断念してしまうことが多いからです。

そのため、モラハラ配偶者と話し合う際には、一対一で話すことはせず、家族や友人などの第三者に立ち会ってもらって、話し合うのが良いでしょう。

第三者がモラハラ夫の外面の良さに騙されてしまうことも…

夫婦の話合いに立ち会う第三者としては、それぞれの両親や共通の友人が考えられますが、モラハラ配偶は外面が良いことが多く、むしろあなたに問題があると思われて関係の修復を勧められることもあります。

そのため、相手の外面の良さに騙されないように、弁護士を代理人として交渉を進めるのが良いでしょう。弁護士であれば、全面的にあなたの味方として交渉を進められ、相手の外面の良さに騙されることもありません。

離婚してくれないモラハラ配偶者との離婚に成功した事例

モラハラに悩んだご依頼者様が離婚調停を申し立てたものの、相手が復縁に応じず、調停が長引いていた事案では、弁護士が介入してご依頼者様の離婚意思を毅然と示したことで、モラハラ配偶者もご依頼者様の離婚意思が強いことを認識し、早期に離婚を成立させることができました。

モラハラ離婚に関するQ&A

うるさく言うのは私のためだと言ってモラハラを正当化し、離婚してくれません。離婚できないのでしょうか?

相手が自分のモラハラを自覚できなくても、離婚ができないということはありません。モラハラ配偶者の場合、最後まで自分がモラハラをしていたと理解できないことも多いです。
しかし、自分の言動がモラハラと認識できなくても、相手が別居し、弁護士を入れて離婚調停を申し立てて来れば、夫婦関係を続けることは難しいと分かります。そのため、相手が離婚を拒否しても、代理人を入れて、離婚意思が固いことを伝えることが重要です。

相手のモラハラに耐えられず不倫したことがばれました。それでも離婚してくれない場合、どうすればいいでしょうか?

不倫した側から離婚を請求する場合、夫婦関係を破綻させた側からの離婚請求として、裁判では離婚が認められない可能性があります。
しかし、絶対に離婚ができないというわけではなく、慰謝料等の条件面で譲歩することで、相手と合意のうえで離婚をすることはできます。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

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モラハラ配偶者が離婚してくれない等、お困りの場合は弁護士へご相談ください

モラハラ配偶者と離婚することは、精神的な負担が非常に大きいです。同居期間中のモラハラで精神的に疲弊しているため、離婚を拒否する相手と粘り強く交渉することは難しいでしょう。

そのような時に、弁護士であれば第三者として粛々と離婚協議を進めることができるため、離婚のための精神的な負担はぐっと少なくなります。また、どのようなタイミングで別居や調停をすれば良いのか、最適なアドバイスができます。

モラハラをしてくる配偶者と離婚をしたいがどうすればいいのか分からないという方がいらっしゃったら、是非弁護士にご相談ください。

苦しい結婚生活から一変して、離婚後は解放的な気持ちになれると思っていたところ、意外にも離婚を後悔してしまう方も少なくないかもしれません。そのような事がないよう、離婚すべきかどうか、離婚をするならばどのような準備をしておくべきか、以下で解説をしていきたいと思います。

男女共通で離婚を後悔する理由

離婚したことを後悔する理由は、男女それぞれ異なる部分もあるでしょうが、まずは、男女ともに共通する理由ももちろんあります。以下で紹介していきますので、参考にしてみてください。

世間から厳しい目で見られる

近年は、国内の離婚率が上がっていますが、まだまだ離婚に対する偏見も少なくありません。
離婚をしているから、何か問題のある人なのではないか、子どものことを考えていないのではないかなど、世間から冷ややかな目で見られることもあることは、離婚の後悔へ繋がりやすくなります。

離婚してから元配偶者の良さに気付いた

結婚生活をしていた当時、気付かなかった元配偶者の良いところに離婚後に気付くことはあります。
元配偶者に助けられていたことや、優しくしてもらったことなどを思い出すことにより、後悔してしまうことがあるかもしれません。

孤独感・寂しさを感じている

離婚後、しばらくすると、周りの知人や友人が配偶者と仲良くしているのを見て羨ましくなることがあります。そんな時、1人になったような気分になり、孤独や寂しさを感じる人も少なくありません。
そのような孤独感から、男女共に離婚を後悔してしまうこともあるかもしれません。

勢いで離婚してしまった

離婚には、人それぞれ多くの理由があります。結婚して間もない離婚や熟年離婚など、離婚までの結婚年数もばらばらです。もっとも、理由や年数にかかわらず、大きな喧嘩をしてしまった結果、勢いで離婚してしまった夫婦もいます。感情的になり、勢いで離婚すると、後々後悔することも多いようです。

子供に寂しい思いをさせてしまう

子どもがまだ幼いうちに離婚をした場合、片親になってしまうので、本当は寂しさを感じていないか、学校でいじめられたりしていないかなど、親としては心配になります。そのような心配で気を揉んだり、子どもが我慢している様子が見えたときなど、離婚を後悔してしまうこともあるようです。

女性が離婚を後悔しやすい理由

以上では、男女共通して離婚を後悔する理由について、紹介をしましたが、以下では女性ならではの後悔について、解説していきます。女性の方はぜひ参考にしてみてください。

経済的に苦しくなってしまった

離婚をした女性の後悔の一つに、経済力の低下による後悔があります。
特に専業主婦やパート・アルバイトの女性が離婚をした場合、経済的に苦しくなり、否が応にも生活レベルを下げざるを得なくなる可能性が高いです。離婚後に正社員になり仕事をしようと思っても、なかなか転職活動も厳しく、子どもを抱えていると上手くいかないことも多くなります。

また、女性は子どもを抱えて離婚することも多く、養育費だけでは子どもの生活を賄えないことも多いのが現状です。

シングルマザーで育児しなければならない

子供がまだ幼い場合、保育園に預けて送迎が必要になるなど、仕事をしながら1人で子どもを育てるとなると、結婚していたときよりも、何倍も忙しくなり、体力的にも精神的にも余裕が持てなくなると考えられます。
このように、ワンオペ育児に疲れ切ってしまうことも、離婚を後悔する原因になります。

男性が離婚で後悔しやすい理由

男性も、女性だけでなく男性ならではの離婚を後悔する理由があります。以下で、どんな理由で後悔をするのか見ていきましょう。

子供と会えないことが辛い

子どもが未成年の場合、離婚後は夫か妻のどちらかが子供の親権を持つことになりますが、離婚後の居住地や生活状況によっては子供と会う機会が減ってしまうものです。

子供を連れて実家に帰ってしまったり、離婚後はほとんど縁が切れてしまい連絡が途絶え、子供との面会が実現しないこともあるかもしれません。
今まで顔を見ることのできた子供に会えないことが辛いため、後から離婚を悔やんでしまうのでしょう。

仕事と家事を両立するのが大変

結婚していた当時、妻が専業主婦でほとんど家事は妻に任せていた男性の場合、離婚後、一人で慣れない家事をこなさなければならなくなります。さらに、共働きで家事を一部していたとしても、離婚後は全ての家事を1人でしながら仕事と両立しなければならなくなり、大変な思いをすることも多いです。
そうした時に、離婚を悔んだりするのでしょう。

子なし夫婦が離婚で後悔する理由

上で述べましたが、離婚後に子供と会えなくなったりすると、離婚したことを後悔しがちです。
もっとも、子供のいない夫婦であっても、離婚を悔やむことがあるのは言うまでもありません。

冷静な話し合いができずに、売り言葉に買い言葉で喧嘩をしてしまい離婚に至った場合や、離婚後に元配偶者よりも良い人に出会えなかった場合等、取返しのつかないことをしてしまったのかなと思い悩んだりもするでしょう。悔やんでも仕方ないとしても、やはり後悔が残るのでしょう。

離婚で後悔しないためにすべきこと

まずは、感情的な勢いで離婚に至ったりしないよう、配偶者と冷静な話し合いをすることを心がけましょう。それでも、話し合いが成立しないこともあるので、しっかり離婚するにあたってのメリット、デメリットをあらかじめ調べておくようにしましょう。

離婚に向けてしっかり準備しておく

離婚すると決めたときには、きちんと離婚のために必要な準備をする必要があります。
特に、必要な証拠や資料を収集するようにしましょう。配偶者が不貞をしているようであれば、慰謝料請求のために必要な不貞の証拠を集めなければならず、また、財産分与のことを考えれば、不動産、預貯金、その他株式等、どのような夫婦共有財産があるかも整理しておかなければなりません。

さらに、親権を争うことが予想されるような場合、きちんと自身の監護実績を証明できるような資料も集めておきましょう。
いざ、離婚をするとなったときに、準備不足で思うような請求を配偶者にできなかったということがないようにすることが大切です。

離婚条件は妥協せず取り決める

早期離婚を求めるよりも、離婚後に後悔しないことを優先する場合、やはり離婚するための「条件」は妥協せずに、配偶者と合意をするか、裁判所の判断を求める方が良いでしょう。

①親権、養育費
子供がいる場合、親権を夫と妻で取り合うことは珍しくありません。離婚後の自分の気持ちだけでなく、子供の人生にも関わってくる重要事項なので、子供にとって何が最善かという観点から話合いをまずはしましょう。また、離婚後、子供の監護をしている一方の親は、もう片方の親から養育費をもらえることが通例です。そのため、養育費の金額についても、おざなりにせず、妥協せずに決めましょう。

②年金分割
夫婦の一方または両方が厚生年金に加入していた場合、年金分割ができます。合意分割をする場合、相手方の同意で分割割合も決めなければなりません。年金分割は離婚後に年金事務所で手続きを行う必要があるので、きちんと分割割合について、合意書を残しておきましょう。

③慰謝料
配偶者が不貞やDVをして被害を受けたといった場合、慰謝料請求ができるので、話し合いをしましょう。

④財産分与
原則として、婚姻期間に夫婦共同で築いた財産を折半することになります。もっとも、不動産や動産、預貯金や投資信託・株式等、それぞれが取得を欲する財産は異なるかもしれません。そのため、何をどれだけ分与して欲しいと考えるか、双方の意見を前提に話し合うことが必要です。

合意できた内容は公正証書に残しておく

慰謝料を支払うと合意したにもかかわらず、離婚後も一向に元配偶者から振り込まれない場合、また、養育費の支払いが途中から滞る場合など、元配偶者が離婚後に、取り決めに従わずに金銭を支払わないことが考えられます。

そのような状況に陥った場合、きちんと元配偶者から取り決めた金銭を回収できるよう、強制執行をかけられるようにしておく必要があります。
そのため、双方で合意内容を公正証書という形で残しておくようにしましょう。

離婚問題に強い弁護士に相談する

離婚を考えても、離婚後の生活について不安を感じる方も多いかと思います。
離婚分野に経験豊富な弁護士であれば、離婚に向けた話し合いや離婚後の生活にとってより良くなるよう、適切な助言をくれるでしょう。

また、年金分割、財産分与、慰謝料請求など、離婚の手続きや損をしないためにどのようにすべきかについて、専門知識を教えてくれるでしょう。
離婚後に生活に困窮したり、不要な後悔をすることのないよう、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

離婚するかどうかで判断に迷ったときは

配偶者に対し不満があっても、そもそも、離婚自体をすべきかどうか悩んでる方もいらっしゃるかと思います。その場合、まずは冷静に考えを整理してみましょう。

離婚以外の方法がないかを考える

結婚生活の中で生じた問題や配偶者への不満を、まずは離婚以外の方法で解決することができないか考えてみましょう。離婚を回避することにより解決できるのであれば、それに越したことはありません。

どうしても、一緒にいることではぎくしゃくしてしまう事情があるのであれば、離婚を目的とせず、一旦は距離を置いてみるという意味で、別居をしてみるという方法もあるかもしれません。 勢いで離婚を切り出さないようにしましょう。

離婚後の生活が成り立つかを考える

これまで、専業主婦であった場合や、パート・アルバイトをしていた場合、離婚後の生活費を賄うことができるかどうか、冷静に考える必要があります。自分1人で生活を維持していくことになり、さらに、子どもがいる場合、学費や習い事等の経済的負担も負っていくことになります。

離婚後、元配偶者から支払われる養育費のみで子どもの生活費も賄えることはそう多くないでしょう。また、想像していたよりも、正社員になるのは簡単ではないかもしれません。
今一度、離婚後の生活が成り立つかどうかを考えてみましょう。

弁護士に相談する

離婚のための準備には何が必要か、離婚に向けて今後どのような手続きを踏まなければならないか、など初めてのことで知らないことばかりであることが多いでしょう。法的専門知識のある弁護士に相談すると、必要な手順等について教えてもらえるといったメリットがあります。

また、不安なことが多い中、心強い味方を得られ、精神的な安定も得られることと思います。まずは、気軽に弁護士に相談してみることをおすすめします。様々な角度から助言をもらえるでしょう。

すでに離婚して後悔している場合はどうする?

離婚後、離婚したことを後悔し悩んだ場合、まずは、どの点について後悔をしているのか整理をしましょう。

離婚後であっても、財産分与が未了であれば、離婚成立から2年以内であれば、財産分与の手続きをすることができます。また、離婚後の収入に変動があり、養育費について増減を希望する場合には、そのような法的手続きも用意されています。経済面でなく、精神面での負担であれば、心のカウンセリングも必要になるでしょう。

漠然とした後悔で整理が難しい場合であっても、一度、弁護士に相談してみるのも無意味ではないでしょう。

よくある質問

妻のモラハラ、ヒステリーがひどいため離婚を考えています。子供の親権を獲得できますか?

妻のモラハラ、ヒステリーを理由に離婚をする場合であっても、子どもの親権を父親が取得できるかどうかは、母子関係によって決まります。
妻が、夫に対しヒステリーを起こしたりする場合でも、子どもに対しては、母として、監護・養育の実績があり、子どもとは良好な母子関係を築けている場合には、父親が親権を取得できないケースも多いです。反対に、妻が子どもに対し、暴力等虐待をしているような場合には、母子関係に問題があるとされ、引き離しが必要であるとの判断を裁判所がすることもあります。

セックスレスが原因で離婚すると、後悔する可能性は高いですか?

セックスレスといった、いわゆる夫婦生活に関する不満が原因で離婚をするからといって、必ずしも後悔するとは限りません。もっとも、セックスレスに至った要因や、現在の年齢にもよっても、後悔するかどうかは変わってくるでしょう。
そもそも、喧嘩が多い等、夫婦関係が不仲なことに端を発している場合には、セックスレスになりやすいでしょうし、離婚せざるを得ない状況になることもあるでしょう。他方、年齢とともに夫婦生活が自然に減っていくことは珍しくないため、離婚後にパートナーができても、元配偶者と同年齢であれば、同じ悩みに直面することもあるかもしれません。
その意味では、後悔しないために、セックスレスの原因を考えてみると良いでしょう。

性格の不一致で離婚を考えています。後悔しないためにしておくべきことはありますか?

夫婦といえども、赤の他人です。これまで過ごしてきた環境も歩んできた道のりも違うのが通常なので、性格の不一致はめずらしくありません。もっとも、今後の結婚生活を送るうえで、その不一致が致命的なものなのかを考え、致命的かつ改善が見込めないようなものならば、離婚を考えてみるべきでしょう。
他方、一時的に、感情的になってしまったり、結婚生活が長いために気になることが増えてきたといったように、冷静に向き合えば、結果が変わりそうなものなのであれば、落ち着いて考え直しましょう。

妊娠中に浮気されたので離婚したいです。妊娠中の離婚で後悔するケースはありますか?

妊娠中の離婚により、後悔するかどうかは、人それぞれです。
後悔するケースとして挙げられるのは、まず経済的な理由です。子どもが出産後、間もなくして働きに出なければならないところ、赤ちゃんを抱えながらなのでなかなか相応の給料をもらえないケースがあります。他には、ワンオペ育児が大変で、心身ともに余裕がなくなるようなケースがあります。
しかし、妊娠中に浮気するような夫は、妻に対する愛情に欠ける部分があり、やはり別れておいてよかったと思う人も少なくないでしょう。
出産後の生活を冷静に想像し、離婚を考えてみることをおすすめします。

産後クライシス・産後うつによる離婚で後悔しないためにはどうしたらいいですか?

産後うつは、誰でもかかる可能性のある疾患です。そのため、産後うつになったからといって、必ずしも夫のせいとは言い切れません。まずは、産後うつになったときには、夫など周囲を頼りましょう。夫が親身になって話を聞いてくれたり、不安を軽減してくれないような場合、今後も症状が重くなり、子育てに協力が得られない可能性がありますが、寄り添ってくれることもあります。

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離婚で後悔しないために、弁護士が法的な観点からアドバイスいたします。

離婚で後悔しないためには、離婚をした方が良いかどうかを冷静に判断し、離婚をすると決めたなら十分な準備をすることが必要です。
離婚をするにあたり、まず財産分与に必要な資料を集めておくべきですが、どのような資料をどれだけ集めたら良いかについても弁護士が助言いたします。

また、子どもの親権や養育費等、子どもがいる場合にはより一層、離婚後の生活に不安が生じると思います。そのような場合に備えて、親権や養育費の取り決めについても後悔しないよう、できるだけ早く弁護士にご相談下さい。弁護士が適切な助言をいたします。

交通事故で被害を受け、慰謝料請求をする場合、加害者の加入する自賠責保険に対し請求ができます。自賠責保険は、交通事故による被害を最低限補償するためのものですが、支払額には上限が設けられています。

傷害に関する損害に関しては、120万円が上限額ですが、それを超えた場合にどうすれば、損害額を回収することができるのか、以下で解説をしていきます。

慰謝料120万円は自賠責保険の限度額

上で述べましたが、傷害に関する損害の補償額の上限は120万円となります。
他方、傷害だけでなく、被害者が死亡した場合には別途請求が可能です。また、事故により後遺障害が残った場合にも120万円の補償とは別に、慰謝料や逸失利益を請求することできます。

自賠責保険による基準に従うと、被害者死亡の場合3000万円まで、後遺傷害の場合、認定等級によりますが、最高額で4000万円まで補償があります。

120万円に含まれるのはどんなもの?

傷害による損害には、以下のとおり、様々なものが含まれます。

  • 治療関係費
  • 文書料(診断書等)
  • 休業損害
  • 慰謝料

1つの項目だけで120万円というわけではありません。

慰謝料額が120万円を超えたらどうなるの?

それでは、傷害による損害が120万円を超えた場合、どうなるのでしょうか。
加害者が、任意保険に加入している場合とそうでない場合とで、できることが異なるので、以下で解説していきます。

加害者が任意保険に入っている場合

加害者の加入している任意保険会社(以下「相手方保険会社」といいます。)に対し、120万円を超えた部分の金額について請求をしていくことになります。もっとも、120万円を超えた部分について、出来る限り相手方保険会社は支払いを抑制することが考えられます。

相手方保険会社が多く支払わないといった姿勢を見せた場合、弁護士に代理交渉を依頼した方が、有利に交渉を進められるかもしれません。

加害者が任意保険に入っていない場合

加害者本人に直接請求をしていくことになります。 もっとも、交渉に応じてくれなかったり、交渉をしても、そこまで支払えるほどのお金を持っていないことも多いです。

その場合、健康保険を適用して通院したり、労災保険を申請することで、出来る限り、自身で支払う金額を抑えることが大切です。
また、加害者の自賠責に対して、直接、被害者が請求することや、場合によっては、自身の保険利用も選択肢に入れるべきでしょう。

限度額の120万円を超えた場合の請求方法

加害者が任意保険に加入している場合には、相手方保険会社に対し、損害賠償の請求をすれば特に問題はありません。相手方保険会社は、被害者に賠償金を全額支払い、その後に、自賠責に対し120万円については求償することができます。

もちろん、先に120万円を自賠責に請求することも可能ですが、相手方保険会社に全て請求する方が手続きとしては簡便です。

先に自賠責に請求する方法

先に相手方の自賠責保険に対し、賠償請求するためには、加害者請求と被害者請求のいずれかによることになります。
加害者請求は、加害者が自身の自賠責保険に請求することを指し、被害者請求とは、被害者が加害者の自賠責保険に請求することを指します。

被害者請求の場合、資料(通院の領収書や病院の診断書等)を被害者が取り付け、自賠責保険に対し提出をします。
なお、120万円を超えた部分を後で相手方保険会社に請求するため、領収書等は全て残しておき、提出できるように準備しておきましょう。

自分にも過失がある場合、慰謝料額はどうなるの?

被害者にも過失がある場合、過失相殺といって、過失の割合に応じて賠償額が減額されます。
下記に具体例を挙げます。
賠償額合計が160万円で被害者の過失が4割のケースを想定しましょう。
このケースでは、160万円×0.6(1-0.4)=96万円に減額されるのが原則です。

他方で、自賠責からの保険金は、過失が7割未満の場合は過失相殺をされません。
したがって、この場合の被害者請求では、過失相殺の対象にならないため、上限額120万円を受領できます。さらに、弁護士が代理交渉をすることにより、自賠責基準ではなく、弁護士基準で賠償請求をするため、受け取れる賠償金の増額も見込めます

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これまで説明をしてきましたが、自賠責保険で支払われるべき120万円を超えると、相手方保険会社の負担になるため、賠償金の支払いに応じない可能性があります。
弁護士が代理交渉を担当すれば、自賠責基準を上回る弁護士基準で賠償金を請求することになるため、多くの賠償金を請求できる可能性も高くなります。

交通事故に遭った場合、まずは専門家である弁護士に相談しましょう。交渉の進め方や請求のコツなど、様々な助言を得られるでしょう。

被相続人の作成した遺言書があるとしても、被相続人が生前に認知症を患っていた場合、そもそも、この遺言書は有効なものとして扱ってもいいのでしょうか。相続人同士で話し合いをしてもわからないことも多いでしょう。

認知症を患っていると、物忘れが激しくなったり、物事を認識する能力が低下していたりします。その中で、書かれた遺言書をどう扱うべきか、以下で解説していきます。

認知症の人が書いた遺言書に効力はあるのか

認知症の人が書いた遺言書の効力は、有効である場合と無効になる場合、いずれの場合もあります。
遺言書が有効か否かは、遺言者において遺言書の作成時に遺言能力があることが必要です(民法963条)。

もっとも、遺言者が認知症であることのみでは、直ちに遺言書が無効であるということにはなりません。遺言能力を欠くと言えるかどうかにより最終的に判断されるため、どういう場合に有効になり、どういう場合に無効になるか、以下に解説していきます。

有効と判断される場合

遺言書が有効と判断されるには、上記のとおり、遺言者が遺言書を作成する際に、遺言能力を有している必要があります。「遺言能力」とは、遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る意思能力をいいます。この遺言能力の有無については、遺言がされた時を基準に、遺言書の内容及びその遺言による結果を理解する能力を有していたかどうかで判断されます。

判断要素となるのは、①遺言者の認知症等の疾患の程度等、②遺言書の複雑性、③遺言をするに至った経緯等になります。

例えば、遺言の内容が「相続人A及びBに、財産を8対2の割合で相続させる」といったものであった場合、生前、相続人Aが被相続人の介護をしていたような事情があれば、遺言内容も自然であり、遺言書の効力が認められやすくなります。

無効と判断される場合

遺言能力の有無は、上述のとおり、様々な観点から判断されます。そのため、認知症の症状が非常に重い場合等には、遺言能力が認められない要素となり得ます。

また、遺言書の内容について、多額の財産を複数の相続人に分けて相続させる等、複雑な内容となっている場合には、遺言能力が認められない方向に働き得ると言えます。
他方、遺言書の効力の判断については、ケースバイケースです。

必ずしも、認知症であるからといって、遺言書が直ちに無効になるわけではないため、様々な考慮要素を判断しなくてはなりません。なお、遺言書が無効とされた裁判例について、以下でも解説しております。

公正証書遺言で残されていた場合の効力は?

公正証書遺言は、公証人立会いの下行われるため、自筆証書遺言と比べて、無効になる確率は極めて低くなっています。もっとも、アルツハイマー等、親族の名前や顔の判別もつかないような状態であった場合、遺言作成の時に遺言内容を理解できていたとは考え難いため、無効であると判断される可能性があります。

遺言能力とは

遺言能力とは、作成する遺言の内容を理解し、その遺言による結果を理解できる能力のことをいいます。そして、遺言能力の有無については、遺言書の作成時を基準に、遺言者が遺言書の内容及び結果を把握する能力を有していたかどうかを判断します。

遺言能力の判断基準

遺言能力の判断要素となるのは、上述のとおり、①遺言者の認知症等の疾患の程度等、②遺言書の複雑性、③遺言をするに至った経緯等になります。

遺言能力の有無は誰が判断するの?

遺言能力は、「遺言無効確認訴訟」の提起という形で、最終的な判断を裁判官に委ねることになります。

裁判官は、上記のような考慮要素に従い、遺言書の有効性を判断します。医師による認知症の診断は重要な考慮要素となることは言うまでもありませんが、この訴訟について、以下で詳しく解説していきます。

認知症の診断が出る少し前に書かれた遺言書がでてきた。有効?無効?

遺言書が認知症の診断が出る少し前に書かれたとしても、その遺言書の有効性を判断できません。
上記に述べたとおり、遺言書の有効性は、様々な要素を総合考慮して判断されます。遺言書が作成された後に認知症の診断が出ると、遺言作成時に遺言者が遺言能力を欠いていたことを推認させる事情になります。

たしかに、遺言者が認知症の診断を受けた時期と遺言書作成時が近接していると、遺言書が無効であるとの方向に働きやすいと言えますが、この事実のみでは、有効性の判断は難しいといえます。

診断書は無いけど認知症と思しき症状があった…遺言書は有効?無効?

上記と同様、医師の診断書がないことのみをもって、遺言書の有効性を判断することはできません。
やはりこれも、判断要素の1つに過ぎません。

医師の診断書は、信用性の高い客観的証拠ではありあすが、診断書はなくとも認知症が疑われる症状があったのだとすれば、家族や知人の証言や、介護者の記録等から、遺言書作成時に遺言内容の判断を行う能力がなかったため遺言書は無効であると判断される可能性もあります。

まだら認知症の人が書いた遺言書は有効?

これも同様に、まだら認知症であったことのみを理由にして、遺言書の有効性を判断することができません。
まだら認知症とは、常時認知症の症状が現れるのではなく、ランダムに症状が現れるものをいいます。まだら認知症では、物忘れが激しい一方、物事の認識や判断能力には問題がなかったり、1日の中で様々な症状が現れたり現れなかったりなど、症状が様々です。

なぜか、身内の名前や顔は思い出せないが、新聞や参考書を読解することができる、朝は物を置いた場所を思い出せるが夜になると思い出せなくなる、等です。
このように、遺言者の症状が「まだら」では、なかなか遺言能力の有無の判断がつかないため、遺言書を作成した経緯や背景事情、遺言前後の遺言者の様子等と含め総合判断していくことになります。

認知症の人が書いた遺言書に関する裁判例

遺言書が有効と判断された裁判例

【東京地裁平成27年3月25日】
被相続人が遺言当時、認知症であったところ、相続人3人のうちの1人のみに全財産を相続させるといった内容の遺言書を書いたような事案でした。

遺言作成時、被相続人は認知症を患っていたものの、自分の身の回りのことができるくらい、症状が軽微でした。また、生前の状況や様子から、被相続人が他の相続人を廃除すると決断するに足る合理的な理由があると認められました。そのため、裁判所は、認知症であった被相続人の遺言能力を認め、本事案の遺言を有効と判断しました。

遺言書が無効と判断された裁判例

【東京地裁平成30年1月30日】
本件では、認知症であった被相続人の作成した公正証書遺言(平成24年作成)の有効性が争点になりました。その内容は、全財産を養女に相続させるといったものでした。これ以前に、被相続人は平成19年に遺言書を作成していましたが、これは、平成24年作成のものとは異なる内容でした。

鑑定書の中で、被相続人が重度のアルツハイマー型認知症であったことが明らかになり、平成24年時点で、裁判所は、夜間の徘徊等が頻繁にあったことなどを認定しました。
そのため、総合考慮のうえ、裁判所は公正証書遺言を無効と判断しました。

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認知症の方の遺言書については弁護士にご相談ください

生前、被相続人が認知症と診断されている場合、遺言書の作成時点において、遺言能力がなかったのではないかと疑われ、相続人がその後、遺言書の有効性を争うことは多くあります。

上記のとおり、遺言書の有効性は、必ずしも認知症であったことだけでなく、様々な考慮要素をもとに判断されます。そのため、遺言書の有効性をきちんと主張していく必要がある場合、専門家である弁護士にまずは、相談することをおすすめします。何をすべきか、助言が得られるでしょう。

交通事故にあった際、慰謝料を請求するという話はよく聞かれるかもしれません。それでは、その慰謝料は、具体的にいくらもらえるものなのでしょうか。通院期間が3か月の場合を例にみていきます。

通院3ヶ月で受け取れる慰謝料

赤本(日弁連発行の書籍)基準によると、純粋に通院期間が3ヶ月の場合は、53万円~73万円です。

通院3ヶ月の慰謝料の算定基準

日弁連発行の赤本に掲載の基準を用います。具体的には赤本掲載の表を使って慰謝料の算出をします。

3ヶ月通院した場合の慰謝料の計算

3ヶ月通院した場合の慰謝料の計算は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
通院3ヶ月、実通院日数45日の場合をみていきます。

入通院慰謝料の計算方法

通院3ヶ月、実通院日数45日の慰謝料
自賠責基準 38万7000円
任意保険基準 約36万9000円
弁護士基準 53万円~73万円

自賠責基準
自賠責基準は、日額4300円と固定されています。その日額に、次のいずれか少ない日数を掛け合わせ算出します。
・通院期間(3か月の場合は90日で計算)
・実際の入通院日数×2(45日の通院だと、2倍の90日)
4300円×90日=38万7000円

任保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めているものであるため、共通の算定方法があるわけではありません。
もっとも、弁護士基準より低く設定されることが多く、自賠責の基準より下回ることはありません。

弁護士基準
いわゆる赤本と呼ばれる日弁連発行の書籍に記載された表を用いて計算します。
軽傷の場合とそれ以外とで表自体が違ってきます。
怪我の軽重に対応する表の中で入院期間と通院期間が交わる点が、慰謝料の金額です。
今回の事例が軽傷だと、53万円、
それ以外だと、73万円です。

慰謝料の算定表

後遺障害慰謝料の計算方法

治療が終わっても治癒(なおる)しなかった場合で、自賠責の調査事務所から後遺症について等級が認められた場合、後遺障害慰謝料の請求ができます。
請求できる金額は、日弁連発行の書籍である赤本に記載の以下の表通りです。入通院慰謝料と異なり、等級毎に請求できる金額が固定されています。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
10級 190万円 550万円
12級 94万円 290万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円

適正な慰謝料を受け取るための注意点

通院3ヶ月の適切な通院頻度とは?

週2~3日程度を目安にするとよいでしょう。医師により、特に通院頻度について指摘があった場合には、その頻度で通うとよいです。
通院頻度はケガの重さと種類によって異なってきます。例えば、骨折の場合は頻繁に通院することはむしろ不要な通院と評価されてしまい治療費の請求ができなくなります。

リハビリで通った期間は通院回数に含まれるのか

原則として通院回数に含まれます。症状固定前の通院は、治療の一環として考えられるからです。
ただし、整骨院・接骨院で施術を受ける場合については注意をしてください。整骨院・接骨院での施術を受ける際には、先に医師からその旨の指示を受けておくようにしましょう。

むちうちは通院3ヶ月で治療費を打ち切られる可能性が高い

むちうちは3か月で8割の方が治るとされています。保険会社側は、この3か月を根拠に治療を打ち切ってくることがありますので、医師の方から、治療が必要なことを説明してもらいましょう。

症状固定と言われたら

保険会社から症状固定と言われた場合は、医師にその旨説明し、医師も症状固定と考えているか確認するようにしてください。
医師が症状固定ではないと考えている場合は、保険会社にそのように説明し、治療の継続が必要なことを主張しましょう。

通院3ヶ月と2ヶ月の慰謝料の違い

日弁連発行の赤本の基準によると、
通院3ヶ月だと53万円~73万円、
通院2ヶ月だと36万円~52万円です。

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通院3ヶ月の交通事故慰謝料について弁護士にご相談ください

むちうちの場合、保険会社から、治療の打ち切りを打診されることが多いのが治療から3か月です。ご不安がある場合は、弁護士に相談しましょう。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。