監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭った後で、めまいに悩まされる方も少なくありません。事故によるめまいで通院が必要になったり、後遺症としてめまいが残ってしまった場合、事故の加害者に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
交通事故によるめまいで疑われる症状を踏まえて、本ページで詳しく解説していきます。
交通事故によるめまいで慰謝料はもらえるのか
交通事故によってめまいが生じた場合、慰謝料を請求できる可能性があります。 ただし、単に「めまいがする」と訴えるだけでは慰謝料を認めてもらうことはできません。
慰謝料とは、交通事故が原因で被害者の方に生じた精神的苦痛に対する賠償金のことで、事故によるめまいで請求できる可能性がある慰謝料は“入通院慰謝料”と“後遺障害慰謝料”の2種類です。
このうち、入通院慰謝料は事故が原因で通院・入院した場合に認められますが、後遺障害慰謝料を認めてもらうためには、事故とめまいの因果関係が証明されて“後遺障害等級”の認定を得る必要があります。
交通事故でめまいが起こる原因
交通事故後にめまいの症状があらわれた場合、次に挙げる症状が原因であることが考えられます。
- 良性発作性頭位めまい症
- 外リンパ瘻
- むちうち
- バレリュー症候群
- 軽度外傷性脳損傷
- 脳脊髄液減少症
このなかには重篤な後遺症に繋がるものもあるので、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。 それぞれの傷病について、次項で詳しくみていきましょう。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は、交通事故で頭部に衝撃を受けることで発症することが多い、耳の病気です。 衝撃ではがれた耳石が三半規管に入り込むことにより、めまいなどの症状を引き起こします。
【特徴】
頭を動かしたときに回転性のめまいが生じ、耳鳴りや難聴を伴わないのが特徴です。 めまいのほかには、頭痛、吐き気、しびれといった症状があります。 こうした症状があらわれた場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
【治療】
安静にしていれば自然治癒することが多いですが、症状が強い場合は耳石を戻すために耳石置換法という治療が行われることがあります。
外リンパ瘻
外(がい)リンパ瘻(ろう)は、交通事故の衝撃やエアバックに頭部を打ちつけることで発症することがある、耳の病気です。 内耳に穴があいてリンパ液が漏れてしまうことで、めまいなどの症状を引き起こします。
【特徴】
めまいのほかに、耳鳴り、難聴といった症状が生じます。 水の流れるような耳鳴りや、水の中にいるような耳鳴りがあらわれたら、外リンパ瘻の疑いがあるので、耳鼻咽喉科で精密検査を受けましょう。
【治療】
一般的には、安静にして穴が自然閉鎖するのを待ちます。 症状によっては、穴を塞ぐための手術が必要になる場合があります。
むちうち
むちうちは、交通事故による衝撃で首に強い負荷がかかることにより引き起こされる症状の総称です。 首まわりの骨、関節、筋肉、神経が傷ついて、痛みやしびれ、吐き気、めまいなどのさまざまな症状を引き起こします。
【特徴】
むちうちによるめまいは、画像検査などで異常がみつからないことも多く、診断が難しいという特徴があります。 一見すると交通事故とは無関係に思えるめまいでも、むちうちが原因である可能性が考えられるので、整形外科を受診しましょう。
【治療】
むちうちの症状の多くは、整形外科に通院してリハビリを行うことで改善します。 なかには症状が長引き、後遺症として残ってしまう場合があります。
バレリュー症候群
バレリュー症候群は、交通事故で首まわりを損傷することにより発症することがあります。 首に受けた衝撃により、交感神経に不具合が生じて、めまいなどの自律神経に関わるさまざまな症状を引き起こします。
【特徴】
めまいのほかに、頭痛、しびれ、耳鳴り、難聴、食欲不振、不眠、全身倦怠など、自律神経に関わる症状が主体となるのが特徴です。 むちうちと似た症状が多いので、まずは整形外科を受診しましょう。
【治療】
一般的には、むちうちの治療に準じて安静と消炎鎮痛剤による治療が行われますが、交感神経の働きを正常に戻すために、麻酔科医やペインクリニック科で星状神経ブロックなどの療法が行われる場合もあります。
軽度外傷性脳損傷
軽度外傷性脳損傷は、交通事故で頭部を強く打ったり、揺さぶられたりすることで発症することがあります。 脳に衝撃が伝わって脳損傷が起こり、めまいなどの症状を引き起こします。
<WHOの定義>
軽度外傷性脳損傷(MTBI)について、世界保健機関(WHO)では「30分以内の意識喪失、24時間未満の外傷後健忘症を示す軽度の脳損傷」と定義しています。
【特徴】
画像検査で異常がみつからないことが多いです。 事故後、数日から数週間後にめまいや頭痛、記憶障害、手足のしびれといった症状があらわれることがあるので、いつもと違うと感じたら、すみやかに脳神経外科や整形外科を受診してください。
【治療】
名称に「軽度」とつくものの、重度の意識障害がないというだけで、決して症状が軽いわけではなく、慢性化したり後遺症が残ったりすることもあります。 脳神経外科や整形外科など、複数の診療科による総合的な診断が必要になります。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は、交通事故で頭部を損傷したり、身体に強い衝撃を受けたりして発症することがあります。 外傷などが原因で脳脊髄液が慢性的に減ることにより、めまいや頭痛、吐き気などの症状を引き起こします。
【特徴】
起立性頭痛、吐き気、めまいが主な症状です。 ほかにも、頚部痛、倦怠感、視覚や聴覚に関する異常が生じたら、脳神経外科や整形外科を受診し、画像検査を受けましょう。
【治療】
安静と、水便補給や点滴で自然閉鎖するのを待ちます。 改善しない場合は、ブラッドパッチという硬膜外に自己血を注入して漏れを止める治療が行われることがあります。
交通事故から数日後にめまいがした場合について
交通事故から数日後にめまいがした場合、明らかな外傷がみられないときは、むちうちが原因であることが疑われます。 むちうちの症状は首の痛みだけとは限りませんので、めまいを感じたら、整形外科を受診して、画像検査や神経学的検査を受けましょう。
《むちうちの主な症状》
- めまい、頭痛、耳鳴り、吐き気、倦怠感などの自律神経に関する症状
- 首や肩まわりの痛み、運動制限
- 手足のしびれ など
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
めまいで後遺障害等級認定を受けるためには検査が必要
めまいの症状が後遺症として残ってしまった場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求するために“後遺障害等級認定”を受けなければなりません。 等級認定を受けるためには、次のような検査で、めまいと交通事故の因果関係を医学的に証明する必要があります。
《めまいの症状を医学的に証明できる可能性がある検査》
- CTやMRIなどの画像検査など
- 眼球運動に関する眼振検査、迷路刺激検査、視刺激検査など
- 体のバランスに関する体平衡検査など
- 内耳機能に関する聴力検査など
めまいで認定される可能性のある後遺障害等級
交通事故によるめまいは、以下の認定基準に従って後遺障害等級に該当するかどうかが判断されます。
《失調、めまい及び平衡機能障害》
後遺障害等級 | 認定基準 |
---|---|
3級3号 | 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することができないもの |
5級2号 | 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの |
7級4号 | 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの |
9級10号 | 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの |
14級9号 | めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの |
めまいが後遺障害等級認定された裁判例
交通事故により回転性めまいなどの後遺症が生じたとして、後遺障害等級が認定された裁判例をご紹介します。
【福岡地方裁判所 平成30年3月30日判決】
<事案の概要>
乗車していたバスが発進時に急ブレーキをかけた反動で左頭部を窓ガラスにぶつけ、左耳に傷害を負った事故において、被害者のめまいは、外リンパ瘻に対する手術により軽快した後、術後に再び症状が生じたという事案について、加害者側から被害者にめまいが残存しているとしても、事故以外による要因によるものである因果関係が争われたものです。
<裁判所の判断>
裁判所は、回転性めまいについて
- 外リンパ瘻以外の原因(ストレスなど)によるものと認めるに足る証拠はない
- 事故による受傷当初から症状が認められている
- 眼振そのほか平衡機能検査の結果に異常所見が認められる
と認定したうえで、めまいについて後遺障害等級12級13号と評価して、東急に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益の支払うことを加害者に命じる判決を下しました。
交通事故後にめまいが続く方は弁護士にご相談ください
めまいの原因にはさまざまなものがあり、症状が交通事故によって生じているのか、事故以外の要因によるものなのかを評価することは簡単ではありません。
交通事故について適正な慰謝料を受け取るためにも、交通事故後にめまいがしたら、なるべくはやめに医療機関を受診して、症状と交通事故の関係性を確認しておくことが重要です。
弁護士法人ALGでは、これまでにも多くの交通事故問題に取り組んできました。
その経験と知識を生かして、事故によるめまいでお困りの方や慰謝料請求をお考えの方のお力になれるよう、通院の仕方や治療・検査の受け方、後遺障害等級認定の申請など、幅広くアドバイス・サポートいたします。
相手方の保険会社とのやりとりも任せていただけますので、まずは困っていること、不安に感じていることを、私たちにお気軽にご相談ください。
不貞した妻と離婚協議をしていたところ、ある日、仕事から帰宅すると、妻と子が突然別居をしており、別居後に婚姻費用を請求され、不貞をした妻に生活費を支払うことが理不尽に感じる方もおられるのではないかと思います。
本記事では、例として挙げたような事例も含めて、婚姻費用を請求された場合に拒否できるケースがあるのかを解説していきます。
婚姻費用の支払いは拒否できない
夫婦はお互いに生活保持義務を負っていることから、別居をしたとしても、収入が高い方から低い方に対して生活費を分担する必要性が生じることになり、婚姻費用は法的義務として位置付けられます。
そのため、婚姻費用を請求された場合には、基本的に支払いを拒否するという対応はできないということになります。
この結論は、どちらかの配偶者が無断で別居したり、別居先がどちらかの配偶者の実家であるために生活費の負担がないという場合でも変わりません。
拒否できる可能性があるケース
例外的に婚姻費用の支払いを拒否できるケースとして、婚姻費用を請求した側の配偶者に有責性が認められる場合が挙げられます。
典型的な有責性は不貞行為であり、不貞行為をした配偶者からの婚姻費用の請求は、有責配偶者からの婚姻費用請求として、信義則や権利濫用の観点から否定されることがあります。
しかし、不貞行為があれば必ず婚姻費用の支払いを拒否できるわけではなく、不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したという点を主張していく必要があります。
また、婚姻費用を拒否できる場合でも、拒否できるのは配偶者の生活相当分だけにとどまり、子の生活費相当分を拒否することはできません。
相手が勝手に別居した場合は?
どちらかの配偶者が無断で別居をしたという事情だけでは婚姻費用の支払いを拒否することはできません。
無断で別居した配偶者にお金を支払うことになる抵抗感から、別居が無断でされたことを理由に婚姻費用を拒否する主張がされることもありますが、民法には同居義務が規定されていますし、裁判所は、無断の別居を理由に婚姻費用の支払いを免れさせる判断をすることはありませんので、適切に対応しないと婚姻費用の不払いが蓄積するだけになってしまいます。
婚姻費用の支払いを拒否し続けるリスク
婚姻費用は、請求されたら基本的に拒否が難しい性質を有するため、支払いを拒否し続けると未払額がどんどんと膨らんでしまい、事後的に一括で精算することができない状況に陥るリスクがあります。
婚姻費用の精算ができない状況となれば、請求側から強制執行の手続きをされて、会社や取引先に事情が判明してしまうといった婚姻費用の支払い以外にもトラブルが波及してしまうリスクもあります。
また、夫婦の問題について早期解決をしたいと考えている場合であれば、婚姻費用の支払いを拒否し続けていると、婚姻費用分担請求調停という法的手続きに移行することになってしまい、解決は長引きがちになるというリスクもあります。
婚姻費用の支払いを減額することはできる?
婚姻費用は、標準算定方式という計算式で算定されることが多いのですが、標準算定方式は当事者双方の収入と子の人数・年齢から金額を算定することになります。計算式できちんと算定された金額が出てくる以上、標準算定方式で算定される金額を減額する交渉というのは基本的には難しいといえます。
しかし、婚姻費用は、生活費の分担という性質上、単に標準算定方式に当てはめるだけでは解決できない事例も多く、相手方が過大な請求をしてくる事例も少なからずあります。
そのような場合、支払側が既に負担している生活費(水道光熱費や子の習い事費用など)を踏まえる形で請求された額を減らしていくことができるケースも多いといえます。
弁護士の介入により婚姻費用を減額できた事例
婚姻費用に関して、①標準算定方式が想定している上限よりも高額な収入がある、②子らが大学や私立高校に行っており、支払側が学費を負担をしている、③支払側が子らの携帯代を支払っているといった複数の争点がある事案を担当した際、請求側からは相当高額な請求をされていたのですが、支払側が負担している金額から婚姻費用の既払いに該当するものを裏付け資料とともに丁寧に主張・立証した結果、請求額を大幅に減額できた事案もあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
婚姻費用の拒否に関するQ&A
離婚を前提として別居しているため婚姻費用の支払いを拒否したいです。可能ですか?
婚姻費用は別居中の生活費の分担であることから、単身赴任とか里帰り出産をしているだけであるとか、離婚を前提とした別居をしているかどうかが請求の可否に関係しません。
離婚を前提にした別居であったとしても、請求側に不貞行為等の有責性が認められる事案を除くと、婚姻費用の支払いを拒否することはできません。
子供と会わせてもらえないことを理由に婚姻費用の支払いを拒否できますか?
面会交流と婚姻費用は、同じ当事者の間で協議する要素となることから、当事者心理としては、子供と会えるなら婚姻費用を支払うし、会えないなら支払いたくないという考えが出てくることはやむを得ないといえます。
しかし、面会交流と婚姻費用は別の要素ですので、子供と合わせてもらえないという事情があったとしても、婚姻費用の支払いを拒否できることにはなりませんし、むしろ、子供の生活費も含まれている婚姻費用の支払いを拒否することで、より一層子供と会えなくなる可能性も出てきてしまいます。
生活が苦しいため婚姻費用の支払いが難しいです。拒否できますか?
婚姻費用は、税金等の負担を控除した基礎収入を当事者間で分配するという形で算定されることになりますので、本来であれば、婚姻費用を支払うことで生活が苦しくなるということは想定されないはずです。
しかし、別居前に家族で利用することを前提にローンで自動車を買ってしまっていたとか、毎月投資のために相当額の支払いが予定されているといった事情があると、別居後に婚姻費用として決まった額の支払いが新たに発生することで月々の負担が重くなることはあります。
もっとも、婚姻費用は、夫婦間の生活保持義務から生じるものであり、他の支払いよりも優先する位置づけであることから、生活が苦しいから婚姻費用の支払いを拒否するということは難しいです。
算定表で決めた婚姻費用を支払っています。子供の進学費として追加で請求されているのですが、拒否できますか?
婚姻費用を算定する際の標準算定方式は、子の教育費について公立学校の費用を想定しており、私立学校や大学の学費は考慮されていません。
そのため、当事者双方の学歴や支払側の子の進路への認識等によっては、進学のための費用が標準算定方式で算定される額に追加されることがあります。
他方で、進路に全く関与してない場合や進学費が高額に過ぎる場合(私立の医学部等)などは、進学費の支払いを拒否できる場合もあります。
婚姻費用の支払いを拒否したいと思ったら弁護士にご相談ください
婚姻費用は、標準算定方式という計算式があるため、計算式どおりにすればいいと考え、弁護士への相談をしないケースも少なくありません。
しかし、実際には計算式どおりで解決できない事例も多数あり、離婚の前段階として協議される婚姻費用を円滑に解決することは離婚の解決にも影響してくることがあります。
そのため、婚姻費用の請求をされた場合には、お早めに弁護士に相談をしていただき、離婚までを見据えた中長期的な方針で対応を検討していくことをおすすめいたします。
夫婦は、お互いに同じ程度の生活を保持させる義務があり、これを生活保持義務といいます。
生活保持義務は、別居中でもなくなるものではないため、収入の高い配偶者は、相手に対して、自分と同程度の生活ができるように、婚姻費用を支払う義務があります。
では、支払い義務があるにもかかわらず、配偶者が支払いを拒否する場合には、婚姻費用を請求することはできないのでしょうか。
今回は、婚姻費用の支払いを拒否された場合の対処法を解説します。
婚姻費用の支払いを拒否された場合の対処法
別居前または別居直後に、相手に婚姻費用の支払いを拒否された場合の対処法としては、内容証明郵便の送付、婚姻費用分担調停・審判、という方法があります。
また、婚姻費用分担調停の申立て後は、調停前の仮処分・審判前の保全処分なども利用することで、迅速な婚姻費用の支払いを求める方法もあります。
内容証明郵便の送付
口頭やメールで婚姻費用を請求しても、相手が婚姻費用の支払いに応じてくれない場合は、弁護士に依頼して、婚姻費用の支払いを求める内容証明郵便を送付することが考えられます。
内容証明郵便自体には、相手に婚姻費用の支払いを強制する効力はありませんが、弁護士の名前で内容証明郵便が届くことで、相手が任意の支払いに応じることが期待できます。
また、婚姻費用の支払い義務は、請求した時から生じるとされているため、婚姻費用請求の明確な意思表示の証拠として、早期に内容証明郵便を送付することは有効です。
婚姻費用分担請求調停・審判
口頭での請求や、内容証明郵便を送付しても、相手が婚姻費用の支払いに応じない場合は、婚姻費用分担調停を申し立てる必要があります。
また、相手が婚姻費用の支払いを明確に拒否している場合には、早急に婚姻費用分担調停を申し立てることが必要です。
調停が始まると、裁判所に行って、婚姻費用についての話し合いを行います。調停で相手と婚姻費用についての合意ができれば、合意した金額を毎月相手に請求することができます。
調停で話し合いが成立しない場合、調停は不成立として終了し、審判という手続きで裁判官が婚姻費用を決定します。
調停前の仮処分・審判前の保全処分
経済的な問題から、すぐにでも婚姻費用を受領しなければならない状況も考えれます。
調停申立て後、調停終了までであれば、調停前の仮処分を求めることができます。
調停前の仮処分とは、裁判所に緊急で婚姻費用が支払われなければならないことを上申し、裁判所が緊急性を認めれば、裁判所から相手に対して婚姻費用の支払い勧告・命令がされます。支払い勧告に強制力はありませんが、勧告・命令を無視した場合、10万円の過料が科せられるため、相手の任意の履行を期待できます。
また、審判が出るまでは、審判前の保全処分を利用することができ、調停前の保全処分とは違い、強制執行が可能です。
しかし、強制力を伴うことから、仮処分よりも高い緊急性を裁判所に説明して、認めてもらう必要があります。
婚姻費用の支払いの強制執行
調停が成立した、又は婚姻費用の支払いを命じる審判が出たにもかかわらず、相手が婚姻費用を支払わない場合には強制執行をする必要があります。
強制執行には、直接強制と間接強制の2種類があります。
直接強制とは、相手の給与、預金などの財産を差し押さえて、直接回収する方法です。
すでに期限の到来している部分だけでなく、将来期限が到来する部分についても、給与を差し押さえて、取り立てることができます。
間接強制とは、定められた期間内に婚姻費用が支払われない場合に、追加で金銭の負担を命じるもので、義務者に対して心理的なプレッシャーを与えて、支払いを促すことが目的です。
婚姻費用の支払いに対する遅延損害金の請求
義務者が、期限までに婚姻費用を支払わない場合、婚姻費用に追加して、遅延損害金を請求することができます。
遅延損害金について、何も取決めをしていない場合でも、民法で定められている年3%(令和2年4月1日以前は5%)の利率で遅延損害金を請求できます。
婚姻費用の支払い拒否が認められるケース
いわゆる性格の不一致で別居が開始したというだけでは、別居に合意していない場合でも、婚姻費用の支払いを拒否することは認められません。
しかし、別居の原因が、婚姻費用の請求した側の暴力や不貞行為にある場合は、別居・婚姻関係の破綻の責任は請求した側にあるとして、婚姻費用を請求することが認められないことがあります。
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婚姻費用を拒否された場合のQ&A
時効を理由に婚姻費用の支払いを拒否されました。諦めるしかないのでしょうか?
公正証書などで婚姻費用について合意していたにもかかわらず、相手が婚姻費用を支払ってこなかった場合、支払期限から5年で時効消滅してしまいます。
しかし、相手が時効消滅を主張していても、実際には時効の完成が猶予されて、時効が完成していない場合もあるので、不安な場合は弁護士に相談してみましょう。
別居中です。夫が家を出ていき、私は夫名義の家に住んでいます。この家の住宅ローンを支払っているからと婚姻費用の支払いを拒否されましたが、払ってもらえないのでしょうか?
住宅ローンの支払いは、不動産という財産の取得を目的にしており、婚姻費用の支払いとは性質が異なります。
そのため、住宅ローンを支払って、事実上、相手の家賃を負担しているからと言って、婚姻費用の支払いを拒否することはできません。
しかし、出ていった夫が住宅ローンを支払うことで、妻が住居費用を免れていることになるので、算定表上の婚姻費用から、一定額減額されることになります。
相手の浮気が原因で別居していますが、「勝手に出て行った」として婚姻費用の支払いを拒否されています。請求はできないのでしょうか。
夫婦には同居義務、扶助義務があるため、別居の理由によっては婚姻費用の請求が認められないことはあります。
しかし、相手の不貞が原因で同居を続けることが困難となり、別居を始めた場合は、同居義務・扶助義務に違反したとはいえないため、婚姻費用の請求を諦めるべきではありません。
婚姻費用の支払いを拒否されてしまったら、一度弁護士へご相談ください。
婚姻費用は、別居して生活をしていくうえで必須のものですが、多くの場合、婚姻関係が悪化した相手から、任意に支払われることは多くありません。
当事者同士では話し合いが難しい場合、弁護士が代理人として交渉することができますし、早期に婚姻費用分担調停を申し立てることで、できるだけ早く婚姻費用を支払ってもらうことが可能です。
相手から婚姻費用の支払いを拒否されたときは、速やかに弁護士にご相談してください。
交通事故の損害賠償金は、基本的に加害者が加入する任意保険会社から支払われます。
しかし、事故の相手が必ずしも任意保険に加入しているとは限りません。
加害者が「無保険」であった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
この記事では、「加害者が無保険だった場合に考えられるリスクや問題点」、「無保険の加害者に損害賠償を請求する方法」、「支払いに応じない場合の対処法」などについて解説していきます。
交通事故における無保険とはどういう状態?
交通事故の加害者が「無保険」の状況としては、以下の2つが考えられます。
- 「自賠責保険」には加入しているが「任意保険」には未加入
- 「自賠責保険」と「任意保険」ともに未加入
任意保険は、車やバイクの所有者が保険会社やプランを自由に選択でき、また、加入も任意となっています。一方、自賠責保険は最低限の対人賠償の確保を目的とした「強制保険」です。車やバイクの所有者は自賠責保険に加入する義務があります。
ところが、車検切れであったり、自賠責保険の更新を忘れていたりする「無保険」の状態で道路を走行し、事故を起こしてしまうことも珍しくありません。
交通事故の相手が無保険の時のリスクと問題
交通事故の相手が「無保険」の場合には、どのようなリスクや問題があるのでしょうか。
ここでは、起きる可能性が高い問題などについて詳しく解説していきます。
加害者と直接交渉しなければならない
一般的に、交通事故の示談交渉は被害者と加害者の任意保険会社の示談交渉サービスによって行われることが多いです。
しかし、事故の加害者が自賠責保険のみ加入の無保険の場合には、自賠責保険に示談交渉サービスがないことから、加害者が直接被害者の任意保険会社と交渉していくことになります。
さらに、事故がもらい事故など被害者に一切過失が付かない事故の場合は、被害者も任意保険会社の示談交渉サービスを利用することができません。これは、「弁護士法」により定められています。
つまり、その場合には、被害者と加害者の当事者同士で示談交渉を行うことになります。専門知識がない当事者同士で交渉すれば、お互いの主張が衝突してしまう可能性が高いでしょう。
物損の補償をしてもらえない
事故の加害者が自賠責保険にのみ加入していて、任意保険には加入していない「無保険」の場合は、車の修理費など物損の補償が期待できない可能性があります。
そもそも自賠責保険は、怪我の治療費や休業損害など「人的損害」に対しての補償はしますが、車の修理費など「物的損害」の補償はしてくれません。
つまり、車を修理しなければならず、加害者が自賠責保険しか加入していない状態では、修理代を直接加害者に請求しなければなりません。
音信不通になる
加害者は、任意保険のみ未加入の場合は自賠責保険でまかなえない部分を負いますし、自賠責保険も任意保険も未加入の場合は、損害の全体を自ら賠償する責任を負います。
しかし、加害者がこのような責任をおそれて被害者と音信不通になってしまう場合があります。最悪の場合には、連絡を取りたくないために着信拒否をしたり、連絡を無視したりする可能性もあります。
とくに、「どうせ裁判までは起こさないだろう」と考え、誠実な対応をしない加害者は珍しくありません。
踏み倒される可能性がある
被害者がみずから損害賠償金を計算し、加害者に提示したとしても、加害者が「そんなに支払えない」と支払いを拒否する場合もあります。
しかし、加害者が任意保険に加入しているのであれば、任意保険会社から損害賠償金を受け取ることができますが、任意保険や自賠責保険に未加入である場合は、加害者に直接請求するしかありません。
特に、後遺障害が残るような事故であれば損害賠償金も高額になります。加害者に資力がなければ、「払えない」とかわされたり、実際に支払いを受けられなくなる可能性は十分考えられます。
無保険の加害者に請求する方法
では、無保険の加害者にどうやって損害賠償金を請求したら良いのでしょうか。
ここからは、「相手が任意保険に入っていない場合」と「相手が自賠責保険にも入っていない場合」に分けてそれぞれについて解説していきます。
相手が任意保険に入っていない場合
自賠責保険に請求する
人身事故の場合、被害者は一定限度額の範囲で自賠責保険を通じて最低限の補償を受けることができます。怪我の治療費や休業損害など障害部分については、最大120万円まで補償され、後遺障害が残った場合には、その等級に応じた金額を受け取ることが可能です。
しかし、この補償を受けるためには、被害者自身が必要書類を準備・作成しなければならず、負担がかかってしまう可能性があります。
不足分は加害者に請求する
自賠責保険からの補償では、損害の全てを補填できなかった場合、残りの損害賠償金を加害者本人に請求することになります。
請求する金額は自賠責保険分を差し引いた金額なので、加害者も比較的応じやすいでしょう。しかし、加害者の責任意識が薄かったり、資力に乏しかったりする場合は支払ってもらえない可能性もあります。
相手が自賠責保険にも入っていない場合
事故の加害者が「任意保険」にも「自賠責保険」にも未加入の無保険の場合は、どのように損害賠償金を受け取るのでしょうか。
具体的な方法を見ていきましょう。
まずは自身の保険会社に対応できないか聞いてみましょう
まずは、ご自身が加入している任意保険に利用できるものがあるか確認してみましょう。
特に「人身傷害補償保険」に加入していれば、自分が交通事故に遭った場合に対人賠償保険と同じ保障が受けられます。つまり、加害者との協議状況とは無関係に加入する任意保険会社との契約に従って補償金が支払われます。
また、「無保険車損害保険」に加入していれば、被害者に後遺障害が残った場合に人身傷害保険の不足分の補償も受けることができます。
政府保障制度を活用する
政府保障制度とは、ひき逃げ事故や無保険事故などに遭った被害者に対し、自賠責保険と同等の補償を受けられる制度です。
ひき逃げ事故や無保険事故などの被害に遭われた被害者を救済するために用意されています。
この制度を利用すれば事故の加害者が自賠責保険未加入であっても、国から自賠責保険と同等の補償額を受け取ることができます。
ただし、支払いには上限があり、傷害部分は120万円、後遺障害部分は等級に応じて支払われます。
労災に請求する
交通事故が通勤中や仕事の最中に起きたのであれば被害者自身の勤務先の労災保険を利用できる場合があります。
労災保険を利用することで、治療費の支払いを受けられるだけでなく、休業損害の一部として休業補償給付と特別支給金あわせて給与の8割を補償してもらえます。
ただし、労災保険では慰謝料の支払いを受けることはできません。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
加害者が支払いに応じなかった場合の対処法
被害者としてできる限り様々な方法を取ったとしても、損害の全部が補償されない場合、最終的には加害者本人に請求するしかありません。しかし、加害者が支払いに応じない場合には、どうすればいいのでしょうか。
そもそも支払い能力がない場合
加害者に支払い能力がない状態で無理に支払いをさせようとしても、自己破産され回収できる金額が減ってしまう可能性もあります。そのため、損害賠償請求の「分割払い」や「減額」に応じて、少しでも加害者が支払いやすい条件にすると良いでしょう。
また、分割払いや減額で加害者が支払いに応じた場合は、後から「言った・言わない」のトラブルにならないよう法的に適切な書面に残しておくことが大切です。
自己破産したと言われたら?
加害者のなかには、「支払い能力がないから自己破産する」と言ってくる可能性もあるかもしれません。
自己破産の手続きを進めてしまうと、損害賠償請求の支払い義務も免責されてしまう場合があり、被害者にきちんと損害賠償金が支払われないおそれもあります。
しかし、事故の状況によっては、加害者の責任が「故意または重大な過失により生命または身体を害する不法行為(破産法253条3号)」に該当し、被害者の損害賠償請求権は免責されない可能性もあります。
その場合、加害者は被害者に対し変わらず損害賠償金の支払い義務を負います。
亡くなった人が遺した財産に預貯金が含まれている可能性は高いです。
しかし、預貯金を自由に引き出せるようにしておくと、その後の相続トラブルを招くこと等から、名義人が亡くなったことを把握すると、金融機関は口座を凍結してしまいます。
そこで、この記事では、口座の凍結を解除する方法や預貯金を相続する場合の注意点、相続手続きの流れ等について解説します。
亡くなった人の口座は凍結される
被相続人が亡くなったことを、被相続人が口座を開設している金融機関が把握すると、その口座は凍結されることになります。
口座が凍結されてしまうと、金額を変更させる手続きが基本的にできなくなってしまいます。そのため、入出金や解約だけでなく、引き落としすること自体もできなくなります。
被相続人の口座を生前と同じように利用できるようにするためには、金融機関で凍結を解除する手続きを行う必要があります。
凍結を解除するには
口座の凍結を解除するためには、金融機関ごとに凍結解除の手続きを行う必要があります。
凍結解除の手続きは、遺言書や遺産分割協議書等の必要書類を集めて行います(詳しくは後述いたします)。
預貯金を放置したらどうなる?
凍結された口座の預貯金を放置すると、その口座は休眠口座となります。
【休眠口座とは】
最後の取引から10年以上、入出金等が行われていない口座です。この期間について、相続が発生したタイミングは影響しません。
2009年1月以降に最後の取引が行われた口座については、預金保険機構に移管されて公益活動に利用されます。
窓口で手続きを行えば休眠口座を復活させることができますが、最近利用されていない口座から手数料を取る金融機関があるため、残高が減ってしまうおそれがあります。
預貯金を相続する場合の注意点
預貯金を相続する場合には、以下のような点に注意しましょう。
- 遺産分割手続きが完了するまで口座からお金を引き出さない
- 平日の日中しか手続きができない
- 銀行ごとに書式が違う
これらの注意点について、次項より解説します。
遺産分割手続きが完了するまで口座からお金を引き出さない
相続財産の預貯金は、遺産分割協議が成立するまで手を付けないようにしましょう。これは、金融機関が口座名義人の死亡の事実を把握して、口座が凍結される前であっても同じです。
口座が凍結されていなければ、ATM等を利用して預貯金を引き出すことが可能です。そのため、金融機関に被相続人が亡くなった事実を知られる前に預貯金を引き出そうとする人がいます。
しかし、預貯金を勝手に引き出すと、遺産隠しを疑われて相続トラブルの原因となるおそれがあります。
また、被相続人が多額の借金等をしていたことが判明した場合に、相続放棄が認められなくなるおそれもあります。
なお、相続が発生する直前に預貯金を引き出すケースもありますが、そのような「直前引き出し」は預貯金を現金に換えただけなので、その現金は基本的に相続財産となります。
そのため、現金は遺産分割の対象や、相続税の課税対象となります。
直前引き出しをした現金を申告しないと脱税になる危険もあるため注意しましょう。
平日の日中しか手続きができない
口座の凍結解除手続きを相続人が自分で行うためには、金融機関の窓口の営業時間内に手続きを行う必要があります。一般的な銀行では、窓口の営業は平日の午前9時から午後3時までです。
なお、ゆうちょ銀行については、平日の午前9時から午後4時まで窓口を営業しています。
また、一部の銀行では、窓口の営業時間を延長したり、土日も営業したり、郵送での手続きを受け付けているケースがありますので、金融機関へ直接確認すると良いでしょう。
銀行ごとに書式が違う
口座の凍結解除のためには、遺産分割協議書または遺言書等の書類が必要であることは共通している場合が多いものの、金融機関ごとに独自の手続き書類が用意されている場合があります。
書式を入手するためには、基本的に各金融機関の支店等に出向く必要があります。なお、書式を郵送してもらえる場合等もあります。事前に金融機関に確認することをお勧めいたします。
銀行等の金融機関で行う相続手続の流れ
金融機関で行う相続手続きは、主に以下のような流れで進みます。
- 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る(口座が凍結される)
- 必要書類を準備する
- 払戻し等の手続を行う
この流れについて、次項より解説します。
1. 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る
預貯金を相続するためには、口座のある金融機関に名義人がなくなったことを伝えます。伝える方法として、窓口で直接伝える方法や電話で伝える方法、WEBサイトで伝える方法等があります。
名義人が亡くなったことを伝えると、金融機関は口座を凍結します。凍結後は公共料金や通信料等の引き落としができなくなるので、なるべく事前に引き落とし口座を変更しておくようにしましょう。
2. 必要書類を準備する
預貯金を相続するために必要な書類は、遺言書があるか否かによって変わります。また、各金融機関が用意している「相続手続依頼書」の提出等が必要となります。
なお、相続手続依頼書は、各金融機関において「相続届」等の名称で書式が用意されています。
相続手続依頼書には、基本的に相続人全員による署名押印が必要です。通常の場合、押印には実印を用いて印鑑証明書を添付します。
遺言書がある場合
遺言書がある場合、預貯金を相続する権利がある人は遺言書を確認すればわかるケースが多いので、主に以下のような書類を提出します。
- 遺言書
- 検認調書または検認証明書(検認が必要な場合)
- 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
- 預貯金の相続人の印鑑証明書
- 被相続人の通帳等
- 相続手続依頼書
遺言書がない場合
遺言書がなく、遺産分割協議書を作成したケースでは、遺産分割協議書を提出する必要があります。
また、相続人全員が手続きに関わっていることを証明するために、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要となります。
遺言書はないが、遺産分割協議書がある場合
遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合、相続人全員が決めた相続人を明らかにするために遺産分割協議書を提出する必要があります。
この場合には、主に以下のような書類を提出することになります。
- 遺産分割協議書
- 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の通帳等
- 相続手続依頼書
遺言書も遺産分割協議書もない場合
遺言書も遺産分割協議書もない場合であっても、預貯金の払い戻しを受けることは可能です。
主な必要書類は以下のとおりです。
- 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の通帳等
- 相続手続依頼書(相続人全員)
3. 払戻し等の手続
すべての手続きを終わらせると、被相続人名義の預貯金口座は、解約されて払い戻しとなるか、口座の名義が変更されます。
払い戻しの場合、必要書類を提出してから2週間~1ヶ月程度かかります。払い戻しの入金は、相続手続依頼書で指定した口座に行われます。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
貯金・預金の相続に関するQ&A
銀行預金の相続に期限はありますか?
銀行預金の相続について、明確な期限は設けられていません。しかし、なるべく早く相続手続きを行うのが望ましいです。
なぜなら、銀行預金を10年以上放置すると休眠口座になってしまうだけでなく、放置されている口座には管理手数料が生じることもあるからです。
さらに、債権は基本的に5年で消滅時効を援用できるようになることから、5年以上放置した預金口座については銀行が消滅時効を援用するリスクを否定できなくなります。
今のところ、そのような事例はないようですが、絶対にないことだとは言えないため注意しましょう。
生活保護を受けているのですが、貯金を相続したら保護は打ち切られてしまいますか?
生活保護の受給者であっても、被相続人の預貯金を相続することはできます。そして、預貯金を相続したとしても、生活保護が必ず打ち切られるわけではありません。
例えば、生活保護費の1ヶ月分に届かない程度の預貯金を相続しても、そのまま生活保護を受給できる可能性があります。
また、生活保護費の6ヶ月分程度以下の預貯金を相続した場合には、生活保護が停止されるものの打ち切られない可能性があります。
ただし、生活保護費の6ヶ月分を上回るような預貯金を相続すると、生活保護が打ち切られるおそれがあります。
なお、預貯金を相続したときには、福祉事務所等に届け出ましょう。また、事情があって相続放棄したい場合には、ケースワーカー等に事前に相談することが望ましいでしょう。
相続人は自分だけです。相続手続きせず口座を使っていても良いですか?
相続手続きを行っていない預貯金口座からお金を引き出すことは、相続人が一人であっても、リスクがあるのでおすすめできません。
なぜなら、預貯金は金融機関が名義人から預かっているお金なので、名義人でない人が無断でお金を引き出すと、少なくとも形式的には詐欺や窃盗に該当するおそれがあるからです。
また、金融機関は名義人以外の利用を禁止している場合が多いので、相続人がお金を引き出すと契約違反になるおそれがあります。
相続する貯金がどこの銀行にあるか分からない場合はどうしたらいいですか?
被相続人の預金がある金融機関が分からない場合には、通帳やカード等を探して調べる方法があります。
また、被相続人の自宅等に金融機関からのはがきがある場合、パソコンやスマートフォンにメールが届いている場合等もあるため確認しましょう。
他にも、近所にある金融機関等で手続きを行えば、口座を開設していないか確認できることがあります。
なお、近年は店舗のないインターネットバンキング等もありますが、パソコンの接続履歴やスマートフォンのアプリ等を確認することによって口座を把握できる可能性があります。
貯金の相続手続きをするなら、弁護士への相談・依頼がおすすめです
準備をする時間がない状況で被相続人が亡くなってしまうと、口座の凍結により生活に支障が生じるおそれがあります。
そのような場合には、すぐに凍結解除の手続きを行う必要がありますが、遺産分割協議がすぐにまとまるとは限りません。
そこで、預貯金の相続について困っている場合には、すぐに弁護士にご相談ください。弁護士であれば、早く交渉をまとめるためのアドバイスが可能です。
また、お金がすぐに必要な場合等では、仮払いの手続きについてもお手伝いいたします。
離婚時に取り決めた養育費の額について、後になって相手方から減額を求められることがあります。
本記事では、実際に相手方から減額を持ち掛けられた場合にどうすべきか、その対応方法や、養育費の減額が認められる場合と認められない場合の違い等についてご説明します。
養育費の減額請求は拒否できる?
養育費の取り決めをした場合、その後、養育費の支払い義務者が一方的に養育費を減額することや、支払いを止めることは認められませんが、 養育費の取決め後に、それぞれの生活状況や収入等について変更があった場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
相手方から養育費減額の話があった場合、必ずしも承諾しなければならない訳ではありませんが、合意できない場合には、相手方から養育費減額調停を申し立てられることがあり得ます。
そのため、減額の申し出に対して拒否する場合には、相手方の言い分をよく把握した上で、対応策を考える必要があります。
養育費の減額が認められる条件
養育費の支払いは、子が経済的に自立するまで長期間続くことから、その間に、当事者の収入や生活状況等に変化が生じることが起こり得ます。
そのため、離婚時に養育費の金額が取り決められていたとしても、 離婚の際に取り決めたときには予測できなかった事情の変更があり、これを考慮しなければ著しく公平を害する場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法
養育費の減額について、相手方から交渉を持ち掛けられた場合、まずは相手方と養育費の金額について話し合うことになります。その話合いの中で、相手方の言い分を把握しながら対応策を検討します。
相手方が、養育費減額調停を裁判所に申し立てた場合には、さらに調停への対応を考えていく必要があります。
連絡を無視せず話し合う
相手方から養育費の減額を求めて話合いを要求された場合、まずは法的にその減額請求が妥当なのかどうかを検討し、対応を考えていく必要があります。
法的に減額請求が認められないと考えられる場合には、話合いを拒絶するという対応も一つの手段となり得ます。
他方で、法的に減額請求が妥当といえる場合は、話合いを無視して相手方から調停を申立てられてしまうより、むしろ話合いで進めた方が、減額幅を抑えた金額で合意できる可能性があります。
したがって、相手方からの連絡を完全に無視するのではなく、 話合いにより相手方の主張する事情をよく聞いた上で、対応を検討していくべきです。
生活が苦しいことを証明する
養育費の減額は、養育費の支払いをする側の事情だけではなく、養育費を受け取る側の事情も踏まえて判断されることになります。
養育費を支払う側の収入が減少していたとしても 、養育費をもらう側の収入も減少し、生活が苦しいという場合には、そのことを証明することで、養育費の減額を回避できる可能性があります。
調停で調停委員を味方につける
養育費減額調停を申し立てられた場合は、調停で調停委員を味方につけることも重要です。
調停委員は、当事者の間に入って話合いを調整する立場にありますので、調停委員を味方につけることができれば、こちらにとって有利な条件で相手方を説得してもらえる可能性があります。
また、最終的に、裁判官に対し、養育費の減額を認めないというこちらの主張の正当性を説得しなければなりませんが、通常、裁判官には、調停委員を通して事情が伝えられますので、その意味でも、 まずは調停委員をこちらの味方につけることが重要です。
折り合いをつけ減額幅を減らすのも1つの手
相手方の主張について法的な根拠があり、反論が難しい場合には、減額を完全に拒否するのではなく、その減額幅を抑えられるように交渉することも一つの手といえます。
相手方は、生活が苦しい状況であるからこそ減額を求めているという場合も多く、調停で時間をかけるよりも、早い段階で養育費の減額が見込めるのであれば、多少減額の幅を小さくしてでも合意したいと考えることもあり得ます。
そのため、早期解決のための譲歩として、 一定の減額を受け入れることとして金額を提示していくことも検討すべきでしょう。
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養育費の減額拒否に関するQ&A
養育費の減額請求を拒否したら、勝手に減額されました。残りを回収できますか?
公正証書や調停調書において養育費の金額を定めている場合、義務者の一存で勝手に減額することはできず、減額する場合は協議や審判で内容を変更する必要があります。
そのため、勝手に減額されたことで生じた未払分については、強制執行を申し立てることにより回収することができます。
他方、単に協議書を作成していたにすぎない場合や口頭での合意のみであったりした場合は、強制執行をすることはできません。
その場合には、減額に応じる代わりに、未払分はしっかり払ってもらうなど、強制執行以外の方法で回収することを試みる必要があります。
再婚を理由に養育費が減らされるのは納得できません。私はシングルで頑張っているのに…。減額拒否できますか?
相手方が再婚をしたことで、その扶養をすべき家族が増えたことは、法的には養育費の減額が認められる事情変更にあたる可能性があります。
しかし、再婚相手の収入によっては、扶養しなければならない家族が増えたとはいえない場合もあり、減額を拒否できることもあります。
再婚の予定があるので養育費を減らしたいといわれましたが相手が本当にいるのか疑問です。拒否できますか?
再婚相手の有無については、義務者の戸籍謄本等から確認することが可能です。
相手方が戸籍謄本等を示さない場合には、再婚相手の存在について不明ということで、減額を拒否することが考えられます。
なお、減額調停が申し立てられた場合には、調停委員からも、戸籍謄本等、再婚したことが証明できる資料を提出するよう求めることが多く、相手方が資料を提出しない場合は、減額を拒否しやすくなるといえます。
算定表通りの金額なのに、支払いが苦しいから養育費を減らしたいといわれました。拒否できますか?
離婚時に算定表を用いて金額を決めている場合、それは離婚当時の収入や子の人数等を前提として決めたものです。
そのため、相手方が養育費支払いについて苦しいと主張する理由が、離婚当時の収入よりも収入が下がったか、扶養家族が増えたといった事情によるものであるならば、裁判所は養育費減額を認める可能性が高いといえますので、その場合は減額を拒否することは難しいと思われます。
養育費の減額請求を拒否できるかは弁護士にご相談ください
相手方からの減額請求が法的に根拠のあるものか否か、反論しうるものであるか否かを判断するには、専門的な知識や経験が求められます。
そのため、相手方から養育費の減額を求められた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
被相続人が遺した財産(相続財産)を相続できる人は民法によって決められています。
しかし、相続財産を受け取る権利を有する人が遺言書を偽造する等の悪事を行った場合にまで、相続を認めるのは不適切です。
そこで、民法には、一定の行為をした人の相続権を自動的に失わせるための「相続欠格」という制度が設けられています。
この記事では、相続欠格の概要や要件、似た制度である「相続人廃除」との違い等について解説します。
相続欠格とは
相続欠格とは、本来であれば相続人になる予定だった人が、一定の要件に該当すると自動的に相続権を失う制度です。相続欠格になった人を 相続欠格者といいます。
相続欠格者は、相続できないだけでなく、遺言書による贈与(遺贈)を受けることもできません。
どんな場合に相続欠格になるの?
相続欠格になる要件は、以下のように定められています。
- 被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした
- 被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた
- 詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや撤回・取り消し・変更することを妨害した
- 詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回・取り消し・変更させたりした
- 遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した
被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした
被相続人や前順位の相続人、同順位の相続人を故意に殺害して刑罰を受けた人は相続欠格者になります。これは、未遂に終わった場合についても同様です。
例えば、自分の父親である被相続人を故意に殺害した場合には相続欠格になります。
ただし、故意に殺害した場合に限られるため、傷害致死については相続欠格に該当しません。また、執行猶予が満了した場合については刑罰を受けたことになりません。
被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた
被相続人が殺害されたことを知っていて、捜査機関に告発や告訴をしなかった人が相続欠格者になります。
例えば、被相続人である父親を、自分の兄が殺害したと知っていた場合、捜査機関に告発や告訴をしない場合には相続欠格者になります。
ただし、以下のような人は相続欠格者になりません。
- 是非を判断する能力がなかった人
- 被相続人を殺害した人が配偶者または直系血族である人
「是非を判断する能力がなかった人」とは、幼い子供や、認知症等により判断力を失っていた人のことです。
また、被相続人を殺害した人が配偶者や直系血族であった人が除外されているのは、告発や告訴をするのが難しいと考えられているからです。
詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや撤回・取り消し・変更することを妨害した
被相続人が遺言書を作成しようとしている、あるいは作成した遺言書を撤回等しようとしているときに、詐欺や脅迫によってそれを妨害した場合には相続欠格者になります。
例えば、被相続人が長男に全財産を相続させる旨の遺言書を作成しようとしているときに、二男が脅迫して遺言書を作成させないと、二男は相続欠格者になります。
ただし、不当な利益を得ることを目的にしていなかった場合には、相続欠格にならない可能性があります。
詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回・取り消し・変更させたりした
被相続人に対する詐欺や脅迫によって遺言書を無理やり作成させたり、作成した遺言書を撤回等させたりした場合には相続欠格者になります。
【具体例】
長女が被相続人を脅迫して、自分に全財産を相続させる旨の遺言書を作成させると相続欠格者になる。
ただし、必ずしも不当な利益を得ることが目的でないのであれば、相続欠格にはならない可能性もあります。
遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した
被相続人の遺言書を偽造したり、作成されていた遺言書を書き換えたりした人は相続欠格者になります。
例えば、被相続人の死後に、長男が実家を片づけていたところ遺言書を発見し、誰にも知らせずに開封して内容をみると、全財産を長女に相続させる旨が記載されていたため破棄した場合、長男は相続欠格者になります。
なお、不当な利益を得ることが目的でなければ相続欠格者にならないと考えられているため、被相続人が遺言書への押印を忘れていたために押印したとしても、書き換え等には該当せず相続欠格者にならない可能性があります。
相続欠格者がいる場合、相続順位はどうなる?
相続欠格者は相続人として扱われないため、同順位の相続人等がいなければ、次順位の相続人が相続することになります。
例えば、被相続人に子供が1人だけいる場合、その子供が相続欠格者になり、その子供の子供(被相続人の孫)がいない場合には被相続人の両親等が相続します。
しかし、被相続人の子供が相続欠格者になったとしても、その子供の子供がいる場合には代わりに相続することが可能です。これを 代襲相続といいます。
相続順位・代襲相続については、以下のページでも解説しています。あわせてご覧ください。
相続順位について詳しく見る 代襲相続について詳しく見る相続欠格であることは戸籍に表記されない
相続欠格者がいる場合であっても、戸籍にはその旨が記載されません。
そのため、相続欠格者を除いた法定相続人の全員による遺産分割協議を行ったとしても、相続人が不足しており無効ではないかと疑われてしまいます。
そこで、相続登記等の手続きを行うために、相続欠格者であることを証明するための書類を作成して提出しなければなりません。
相続欠格者がいる場合の相続手続き
相続欠格者であることを証明するためには、本人が作成して署名押印した「相続欠格証明書」に印鑑証明書を添付する方法があります。
しかし、相続欠格者が自分の相続欠格を認めていない場合には、裁判等によって相続欠格者であることを証明する必要があります。
相続欠格と相続人廃除の違い
相続欠格と似た概念として、相続人廃除という制度がありますが、相続欠格と相続人廃除は、適用される対象や、適用までの流れ等が違います。
相続欠格は被相続人の殺害や遺言書の偽造等によって適用されますが、相続人廃除は以下の要件に該当すると適用されることがあります。
- 被相続人を虐待した
- 被相続人に対して極度の侮辱をした
- その他の著しい非行をした
また、相続欠格が法律に定められている事由に該当すれば自動的に適用されるのに対して、相続人廃除は被相続人による家庭裁判所への請求、または遺言書による遺言執行者からの請求によって家庭裁判所によって審理されて適用されます。
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相続欠格に関するQ&A
相続欠格者が、遺言書に書いてあるのだから遺産をもらえるはずだと言っています。従わなければならないのでしょうか?
基本的に従う必要はありません。なぜなら、相続欠格者は相続権を失うため、遺言書によって相続させることもできなくなるためです。
また、遺贈についても、相続欠格者は受け取る権利を失います。
ただし、被相続人が遺言書によって相続欠格者の相続権を回復させることは認められるという考えもあります。この点については、法律に明文の規定がないため議論されています。
相続欠格者から遺留分を請求されました。無視していいですか?
相続欠格者による遺留分の請求であっても、無視するのは望ましいことではないので、請求権がないことを伝えた方が良いでしょう。
なぜなら、請求を無視すれば裁判等によって請求されてしまうおそれがあるため、その対応に手間や費用がかかるからです。
なるべく早い時点で、請求者が相続欠格者であるため遺留分についても失っており、請求する権利がないことを伝えるようにしましょう。
なお、裁判による請求を無視すると、敗訴して支払い義務が生じるおそれがあるため、その点についても注意しましょう。
遺産分割後に遺言書の偽造が判明しました。やり直しはできますか?
偽造された遺言書は無効なので、遺産分割後であってもやり直すことができます。
遺産分割をやり直す場合には、偽造でない遺言書の内容に従うか、相続人全員による遺産分割協議を行います。このとき、遺言書を偽造した人は相続欠格者になるので相続権を失います。
なお、時間が経過することによって無効であった遺言書が有効になることはないので、数年前に遺産分割をしていたとしてもやり直すことになります。
相続人の一人が嘘を吹き込み、遺言書を書き直させたようなのですが、証拠がないと言われてしまいました。諦めるしかないのでしょうか?
たとえ、誰かが嘘を吹き込んで遺言書を書き直させたとしても、証拠がなければ遺言書を無効にするのは極めて難しいでしょう。
ただし、遺言書に形式的なミスがある場合や、被相続人が認知症を発症していた場合等では無効にできる可能性があります。
また、遺言書によって遺留分が侵害されているケースについては、遺留分侵害額請求によって侵害された遺留分を他の相続人等から取り戻すことができます。
相続欠格者がいます。相続税の基礎控除額に影響しますか?
相続欠格者がいる場合、相続税の基礎控除額に影響します。基本的には減額されますが、増額されるケースも存在します。
相続税の基礎控除額は、以下の式によって計算します。
【基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)】
相続欠格者は法定相続人の数から除外されるため、基本的には基礎控除額は減額されることになります。
しかし、相続欠格者に子供がいる場合には、その子供が代わりに相続する「代襲相続」が発生するため、相続欠格者の子供が2人以上であれば基礎控除額が増える可能性があります。
なお、相続人廃除についても相続欠格と同様に扱われますが、相続放棄についてはなかったものとして扱われます。
なぜなら、相続放棄は相続人の意思のみによって行えるので、相続税の金額に影響させると、税金が個人の意思によって左右されてしまうことになるからです。
相続欠格証明書を書いてもらえない場合は、諦めて遺産分割するしかないのでしょうか?
相続欠格者が相続欠格証明書の作成に応じてくれない場合には、相続欠格者ではない相続人全員が原告となり、相続欠格者を被告として「相続権存否確認請求訴訟」を提起し被告が相続欠格者であることを確定させます。
その後、相続人全員による遺産分割協議を行い、「遺産分割協議書」を作成して判決書を添付すれば、相続登記等の手続きを進めることが可能となります。
相続欠格に関する問題は弁護士にご相談ください
遺言書の偽造等、不正を行った人がいる場合には、相続させたくないと思うのは当然のことでしょう。しかし、不正を行った人が、積極的にその事実を認めるケースは少ないと考えられます。
そこで、相続欠格者に相続させたくないと思っている方は弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、相続権存否確認請求訴訟を視野に入れながら、なるべく相続欠格者を説得できるようなアドバイスができます。
また、相続欠格を証明するのが難しい状況であっても、遺言書の無効等、他の理由によって争う可能性についても併せて検討します。
離婚を検討している方の中には、離婚後の生活についての経済的な不安から、なかなか別居に踏み切れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法律上、夫婦は、自分と同程度の生活を相手にも保持させる義務を負っており、これは別居中でもかわりません。
そして、夫婦共働きの場合でも、双方の収入から算出した婚姻費用を請求することが可能です。
今回は、婚姻費用とは何なのかという基本的な点から、共働きの場合の婚姻費用の相場や、相手が婚姻費用を支払ってくれない場合の対処法などを解説いたします。
共働きでも婚姻費用の分担義務はある
夫婦が両方とも働いていて、それぞれが自身の収入だけで生活できているとしても、収入の高い方は、低い方に毎月一定の金額を婚姻費用として渡す必要があります。
婚姻費用というと、一方が専業主婦(夫)の場合のみ、生活費として渡すというイメージがあるかもしれません。
しかし、法律上、相手に収入がある場合は婚姻費用の支払を免除されるわけではなく、双方の収入をもとに婚姻費用を計算し、収入の高い方は低い方に決まった婚姻費用を支払う必要がある のです。
そもそも婚姻費用とは?
法律は、夫婦は収入や資産などの一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担する、と定めています(民法760条)。
そのため、夫婦は一方がその分担義務を果たさない場合は、相手の配偶者は婚姻費用を請求することができます。
夫婦は、相手に対して、自分と同程度の生活水準を維持させる義務を負っています。
そのため、収入の高い配偶者は、相手にも自分と同じ程度の生活をさせるため に、婚姻費用を支払う必要があるのです。
共働きの場合の婚姻費用の相場はどれくらい?
婚姻費用の金額は、双方の収入、給料をもらっているか自営業者か、子どもがいる場合は人数・年齢、どちらが監護をしているかで決まります。
婚姻費用の具体的な金額は、上記の事情が分かれば、裁判所が公表している標準算定表と見比べれば、おおよその金額を計算することができます。
例えば、夫婦共に会社員で、夫の年収が700万円、妻の収入が400万円、妻が5歳の子どもを監護している場合、夫が妻に支払う婚姻費用は月額約9万4000円 となります。
婚姻費用を払ってくれない場合の対処法
婚姻費用を払ってもらうためには、まずは夫婦で話し合って合意することになりますが、話し合いでは金額が決まらないことや、そもそも相手と直接話す自体に抵抗があるということもあります。
そのような場合は、家庭裁判所に 婚姻費用分担調停 という調停を申し立てることで、裁判所の関与のもとで、話し合いを進めることができます。
調停でも話し合いがつかない場合は、調停から審判という手続きに移り、最終的に裁判官が適正な婚姻費用を判断します。
調停や審判で婚姻費用の金額が決まったにもかかわらず、相手が婚姻費用を支払わない場合は、相手の財産や給料を差し押さえることができます 。
共働き夫婦の婚姻費用に関するQ&A
共働きの妻が生活費を出さないのですが、払わせることはできますか?
夫婦の収入や、どちらが子を監護しているかという事情次第 では、妻側に婚姻費用を請求することが可能です。
例えば、妻の方が高い場合、あるいは、子は一人暮らししているが仕送りなどを全て夫がしていて事実上夫が監護しているような場合には、妻側に婚姻費用を請求する余地があります。
共働きですが、育休中です。婚姻費用は収入0の欄を見ればよいのでしょうか?
育休中でも、育児休業給付金などの手当を受け取っている場合は、これを収入として扱うことが一般的です。
育児休業給付金などを収入とみなす場合、働いて給料を受け取るのと同じように経費がかかるわけではありません。
そのため、実際に受け取った金額よりも、少し高い金額を収入として婚姻費用を計算することになります。
この場合、計算方法が複雑になるため、具体的な金額を知りたい方は弁護士に相談していただくのが良いと思います 。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
共働き夫婦の婚姻費用でお悩みなら弁護士にご相談ください
共働きの場合でも、夫婦の収入や子の人数や監護状況によっては、婚姻費用の支払義務や、婚姻費用を請求する権利が発生します。
算定表に当てはめれば、おおよその婚姻費用を計算することはできますが、家庭によっては算定表の金額をそのまま用いることが不公平になることがあります。
婚姻費用は、夫婦が離婚するまで毎月発生するものなので、別居期間が長くなるほどその影響は大きくなります。
適切な婚姻費用を計算することは、離婚を進めていくうえで重要なこと です。
婚姻費用でお悩みの方は、まずは一度、弁護士にご相談ください。
被相続人が亡くなったとき、相続財産に不動産が含まれていると争いになりやすいです。
なぜなら、不動産は高額である場合が多く、相続財産の高い割合を占めるケースがあるからです。
このような特徴から、不動産は分配が難しく、評価額について意見が対立するおそれもあります。
また、不動産を相続すると相続登記を行わなければならず、税金もかかります。
そこで、この記事では、不動産の分配方法や相続登記、税金、相続したくない不動産がある場合の対応等について解説します。
相続した不動産はどうやって分ければ良いの?
相続財産に含まれている不動産の分け方には、主に以下の4種類があります。
- 換価分割
- 現物分割
- 代償分割
- 共有分割
ただし、被相続人が遺言書を作成していた場合には、その内容に従って分配することができます。
これらの分け方等について、次項より解説します。
遺言書があるなら内容を確認しましょう
被相続人が有効な遺言書を作成していた場合、基本的には遺言書の内容に従って相続財産を分配します。
この場合、不動産も遺言書の内容に従って分配すれば問題ありません。
ただし、相続財産の分配が偏っていると、兄弟姉妹以外の法定相続人にとって最低限の取り分である「遺留分」を侵害してしまい、 遺留分侵害額請求 が行われるおそれがあります。
このとき、遺留分に相当する金銭を支払うことができれば、問題ありません。
また、相続人全員で遺産分割協議を行えば、遺言書とは異なる方法で相続財産を分配することも可能です。
相続人のうち、誰か1人でも合意できなければ、遺言書の内容に従うことになります 。
遺産分割協議については以下のページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
遺産分割協議について詳しく見る売却・現金化して相続人で分ける(換価分割)
換価分割とは、不動産等の相続財産を売却して金銭に換えてしまい、その金銭を分配する遺産分割方法です。
金銭は分配しやすいため、最も公平な分配が可能だと考えられます。
ただし、不動産を売却するのは被相続人ではなく相続人なので、売却するために不動産の相続登記を行う必要があります。
また、売却手続きのためには、売買契約が成立するまでの時間と、仲介手数料等の費用がかかります 。
各相続人が相続財産をそのままの形で相続する(現物分割)
現物分割とは、各相続人が相続財産をそのままの形で相続する遺産分割方法です。
例えば、1筆の土地を文筆して2筆として、1筆ずつ各相続人が取得するという分け方や、土地は分筆などせずそのまま長男に、その代わり株式はそのまま長女に分配するという分け方を指します。
ただし、不動産は長男、株式は長女に分けるというような分割をした場合、それぞれの取得する価値に実際には差が生じてしまうことが多いため、その差額を埋めるために金銭等の給付を行う(代償分割を併用する)ということも多い です。
相続する人がほかの相続人にお金を払う(代償分割)
代償分割とは、不動産等の相続財産を一部の相続人が相続して、代わりとなる金銭等を支払う遺産分割方法です。
例えば、相続人が被相続人の長女と二女であり、唯一の相続財産である2000万円の不動産を長女が相続する場合、二女に1000万円の金銭等を支払います。
また、相続人は被相続人の妻と長女、二女であり、唯一の相続財産である2000万円の不動産を妻が相続する場合、長女と二女に500万円ずつ金銭等を支払います。
代償分割は、公平な分割が可能であり、実家等の相続財産をそのままの形で残すことができます。
ただし、相続財産の評価額で争いになりやすいです。また、代償金にできる現金や預貯金等がないと成立しにくい です。
複数の相続人で共有する(共有分割)
共有分割とは、不動産等の相続財産を共有する形で分配する遺産分割方法です。
共有分割であれば、公平な分割になり、実家等の財産がそのままの形で残り、売却手続き等の負担がありません。
ただし、後でトラブルになることが多いため、共有分割はおすすめできません。なぜなら、共有者の1人でも反対すると、不動産全部を売却することはできないからです。
さらに、共有者の1人でも亡くなってしまうと、さらに相続が発生して共有者が増えてしまうため、ますます売却等をすることが難しくなってしまいます。
そのため、共有分割は基本的に行わない ようにしましょう。
不動産の相続には名義変更が必要
相続登記はいつまでにやればいい?
相続登記については2024年4月1日より以下のとおり義務化されました。
- 相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない
- 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければならない
義務化以前に相続が開始している不動産についても、3年の猶予期間は設けられていますが、義務化の対象です。
期限までに相続登記を行わなければ、10万円以下の過料に処せられるおそれがあるため、不動産を相続したら、早めに登記の申請をするようにしましょう。
また、相続税の申告については、自己のために相続が開始されたと知ったときから10ヶ月以内に行わなければなりません 。
相続登記を行っていなかったとしても、相続した不動産は課税対象になりますのでご注意ください。
相続登記に必要な書類
相続登記に必要な書類は、遺言書がある場合とない場合で異なります。
それぞれの場合について、必要な書類は以下のとおりです。
【遺言書がある場合】
- 遺言書
- 登記申請書
- 被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本
- 不動産の相続人の戸籍謄本(被相続人の死亡後のもの)
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産の相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
【遺言書がない場合】
- 登記申請書
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印によって押印したもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡後のもの)
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産の相続人の住民票
提出先
相続登記の必要書類は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。
相続する不動産が各地にあるケース等では、すべての不動産について、管轄している各法務局へ提出 しなければなりません。
管轄は、法務局のサイトで確認することができます。
不動産の相続時に発生する税金
相続税
不動産等の財産を相続し、相続財産の評価額が相続税の基礎控除額を上回った場合には、基本的に相続税が発生します。
不動産だけについて相続税を計算することはありません。
相続税の基礎控除額は、以下の式によって計算します。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
登録免許税
登録免許税とは、登記を行うときに支払う税金です。不動産を相続や売買、贈与等した場合にかかります。
相続登記を行うときには、基本的に不動産の固定資産税評価額×0.4% で算出できる金額を登録免許税として納めます。
なお、登録免許税を納めるときには、税額が3万円以下であればその税額に相当する収入印紙を登記申請書に貼付します。
税額が3万円を超える場合には、事前に税務署等で支払いを行い、領収証書を添付することになっています。
相続したくない不動産はどうすればいい?
例えば、相続財産に含まれている山を管理できない場合や、実家が遠方にあって老朽化している場合等、相続人にとって不動産が要らないケースでは相続放棄する方法があります。
ただし、相続放棄すると不動産以外の財産を受け取ることもできなくなります。
そのため、相続財産に高額な預貯金が含まれているケース等では相続放棄したくないかもしれません。
また、相続放棄した時点で被相続人の不動産を占有している場合には、管理義務が生じるおそれがあります。
そこで、 相続土地国庫帰属法 によって定められた制度により、要らない土地を国に引き取ってもらう方法が考えられます。
ただし、この制度を利用するためには、主に以下のような条件が揃う必要があります。
- 建物が存在しない
- 抵当権等の担保権が設定されていない
- 有害物質で汚染されていない
- 所有権の争いがない
- 管理等を困難にする物が地上や地下に存在しない
- 管理に過大な労力や費用等がかからない
相続放棄について、詳しくは以下の各ページをご覧ください。
相続放棄について詳しく見る不動産の相続に関するQ&A
父が亡くなったのですが、不動産の名義人が祖父になっていました。この場合、私たちは相続できないのでしょうか?
不動産の登記名義人が祖父になっていた場合には、まだ祖父の相続について遺産分割が終了していない可能性があります。
その場合には、祖父の相続人(祖父の相続人が既に死亡している場合には、更にその人の相続人)全員で遺産分割を完了させる必要があります。
その遺産分割の結果、祖父の相続人(既に死亡している)の子である自分たちが、その不動産を取得できることはあります。
場合によっては相続人が多数となり、大変な手間がかかることもありますが、そのまま放置していても問題が悪化するだけであるため、早めに遺産分割を完了させることをお勧めします。
なお、祖父が生きており、不動産も祖父のものである場合には、基本的にその不動産を父親から相続することはできません。
父親が祖父から不動産を譲られていた場合には、贈与等による所有権移転登記を行ってから相続登記しましょう 。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
不動産の相続は弁護士へ依頼するのがおすすめ
不動産の相続は、金額が大きいためにトラブルになりやすいと言えます。
分配方法が難しいことや、評価額について意見が対立すること等により、相続人間の対立が発生するおそれもあります。
特に、相続財産の大部分を不動産が占めている場合等では注意が必要です。
そこで、不動産の相続を巡って対立が発生したときには弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、よりトラブルになりにくい分配方法や、不動産の評価方法等についてアドバイスできます。
また、自身の死後に相続人が対立することを防ぐための遺言書の作成や、不動産の相続に伴う手続き等についても相談していただけます。
交通事故に遭ってむちうち等の怪我をした場合、症状を緩和するために「整骨院」に通いたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、“整骨院に通院すると慰謝料が減額されてしてしまう”という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
この記事では、交通事故で負った怪我の治療で整骨院に通う場合に慰謝料はどうなるのか、整骨院に通院する際の注意点などについて解説していきます。
整骨院に通院しても慰謝料はもらえる
結論から言うと、整骨院に通ったからといって慰謝料がもらえなくなるということはありません。
ただし、整骨院で施術を行っているのは医師ではなく柔道整復師であり、医療行為ではありません。
そのため、医師の診察を受けずに整骨院にしか通っていなければ、「治療に必要な施術」と認められず、慰謝料が適正額支払われない可能性もあります。
怪我の治療のために整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の医師の診察を受け、整骨院に通いたいことを相談したうえで通うようにしましょう。
「整骨院への通院は慰謝料が半額になる」は本当?
整骨院に通院したら慰謝料が半額になるというルールはありません。
しかし、医師のいる整形外科へはほとんど通院せずに、整骨院ばかり通っていると「医学的な観点から必要な治療を受けたわけではない」と判断されるおそれがあります。
そうすると、相手方保険会社からの慰謝料提示額が、適切な頻度で整形外科に通院して医師による治療を受けていた場合よりも、半額程度に減額されてしまう可能性もあります。
整骨院にも通う場合は、医師に判断を仰いで、整形外科へも定期的に通うようにしましょう。
交通事故で整骨院に通院した場合の入通院慰謝料の相場
交通事故の慰謝料を算定するには以下の3つの基準があり、自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準の順に金額が高くなります。
ここでは、自賠責基準と弁護士基準の入通院慰謝料相場を計算してみましょう。任意保険基準については、算定表が非公開であるため割愛させていただきます。
以下の表の相場は整形外科と整骨院を併用して通院し、交通事故により、頚椎捻挫や腰椎捻挫のむちうちを負った場合とします。
例:通院期間5ヶ月(150日)・実通院日数50日の場合
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
43万円 | 79万円 |
整骨院に通院したい場合の注意点
整骨院に通院したい場合は、気を付けるべきポイントがいくつかあります。
- 病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
- 保険が適用される治療かどうかを確認する
- 病院(整形外科)にも通院する
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
交通事故で怪我を負った場合、治療費や慰謝料を相手方に請求することができますが、怪我の治療として必要だと医学的に認められた部分にのみ請求が可能です。
整骨院での治療は医療行為ではないため、整形外科の担当医に整骨院への通院の許可を得ていない場合は、怪我の治療として医学的な観点から必要な治療ではないと判断されてしまう可能性があり、治療費や慰謝料が適正額支払われないおそれもあります。
このような事態にならないためにも、整骨院に通いたい場合は、まずは整形外科の担当医の了承を得るようにしましょう(医師の了承があっても適正額が支払われないこともあるため、最低限医師の了承は必要です)。
保険が適用される治療かどうかを確認する
交通事故で負った怪我の治療費は、基本的に相手方保険会社が病院へ直接支払う任意一括対応をしてもらえます。
しかし、この対応は打ち切られることもあり、その場合は自費で支払い、後から治療費として請求する手順になります。
自費で通院する場合は、健康保険が利用できるかどうかで負担額が大きく変わるため、健康保険が適用されるかどうかを通院前に整骨院へ確認しておきましょう。
病院(整形外科)にも通院する
適切な慰謝料を受け取るためには、医学的に怪我の治療のために必要な医療行為を行ったことを証明する「診断書」を相手方保険会社に提出する必要があります。
しかし、整骨院では診断書を発行することはできず、医学的に治療が必要な怪我を負ったことが認められない可能性があります。
治療費や慰謝料について争いになった場合、医師が整骨院に通うよう指示したかが重要なポイントとなります。
整骨院に通院する場合でも、定期的に整形外科を受診し、医師の診察を受けましょう。
後遺障害が残りそうな場合も整形外科への通院が重要になる
治療を続けていても怪我が良くも悪くもならず、後遺症として残った場合は、後遺障害等級認定の申請をすることができます。
後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を新たに請求でき、示談金が大きく増額するでしょう。
しかし、後遺障害等級認定は、基本的に書類審査のみであり、医師が作成する「後遺障害診断書」が非常に重要です。
後遺障害診断書には、事故時の症状、治療による経過などを書く必要があり、それまで整骨院にしか通っていなければ書く材料がなく、後遺障害診断書の作成を断られたり、内容が不十分な後遺障害診断書しか作成されなかったりする場合もあります。
そのため、治療開始から継続して整形外科にも通院することが大切です。
整骨院への通院と慰謝料に関するQ&A
整骨院に毎日通えば、その分慰謝料はもらえるのでしょうか?
入通院慰謝料は、通院すればするほど増額するものではありません。弁護士基準は、基本的には通院日数ではなく通院期間で計算することになるため、通院日数を増やすことが当然に慰謝料額を増額させるわけではありません。
また、毎日通院することは、早めに治療費打ち切りにあったり、過剰診療と判断され慰謝料が減額されてしまう可能性もあります。
どのくらい通院するべきかは整形外科の医師の診察を受け、判断を仰ぎましょう。
保険会社に、整骨院への通院は治療費として認めないと言われてしまいました。医師の許可は取っているのですが、どうしたらいいでしょうか?
医師の許可を取っている場合は、その旨を相手方保険会社に伝えましょう。その際、医師が許可したことが分かる書面や整骨院への紹介状などがあるとその根拠になります。
それでも相手方保険会社が整骨院への通院を治療費として認めない場合は、裁判で争うことも考えられます。
ただし、裁判でも接骨院の治療費の全部または一部が否定されることはあるので注意は必要です。
裁判は非常に被害者の方の負担になってしまうので、弁護士に相談することをおすすめします。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
整骨院に通院した場合の治療費や慰謝料の請求は弁護士へご相談ください
交通事故の怪我の治療のために整骨院に通う際は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。
しかし、ポイントを抑えていても、相手方保険会社から治療費や慰謝料が適正額支払われるか不安に思うことでしょう。
事故による怪我の治療で整骨院に通ってもいいか、不安な方は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
交通事故に強い弁護士だからこそ、不利にならない示談や、慰謝料増額のポイントを心得ています。
また、弁護士は代理人として相手方保険会社に対応できるため、治療費打ち切りや慰謝料額で争いになった場合でも法的な観点から主張・立証していくことができます。
交通事故について少しでもお悩みの方は、まずは私たちに一度ご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)