相続放棄したらどうなる?デメリットや注意点などを詳しく解説

相続放棄したらどうなる?デメリットや注意点などを詳しく解説

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

人が死亡すると相続が開始します。相続財産というと価値のある財産を想定されるかもしれませんが、相続に含まれる財産は、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含まれますので、相続した場合には借金等の支払いもしなければなりません。
この点、相続放棄をすると、相続人ではなくなるので借金等の支払いをする必要はなくなりますが、プラスの財産も相続することができなくなるデメリットもあります。

今回は、相続放棄をした場合のデメリットを説明します。

相続放棄で生じるデメリットとは?

相続放棄とは、相続人が、亡くなった被相続人が有していた権利や義務を引き継がないことの意思を表示することを言います。
相続放棄は、権利と義務の両方を引き継がないことになるので、良いことだけでなく不利益を被ることもあり、相続放棄をするか否かは慎重に検討する必要があります。

全ての遺産を相続できなくなる

相続放棄をすると、被相続人の権利と義務を一切引き継がないことになるので、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も引き継ぎません。プラスの財産とマイナスの財産で主なものは以下の通りです。

プラスの財産 マイナスの財産
・土地、建物、借地権等
・預貯金
・株券、証券、投資信託等の有価証券
・貸付金、立替金等の債権
・借入金
・未払金
・買掛金
・保証債務、連帯保証債務
・税金、延滞金

他の相続人とトラブルに発展するおそれがある

相続人となるか否かについては、相続人になる順位が関係します。相続放棄をすると、その人は相続人ではなくなるので、同順位の相続人がいない場合には、次の順位の相続人に相続権が移ります。

先順位の相続人が相続放棄をすると、次順位の相続人が、想定に反して相続人になるので、相続人になるなんて思わなかったなどと困惑し、トラブルになることもあります。そのため、相続放棄をする場合には、事前に次順位の相続人に、相続放棄をすることを伝えておく方が良いです。

なお、相続順位は以下の通りです。

第1順位 子(死亡している場合は孫)
第2順位 親(死亡している場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)
相続の順位と相続人の範囲について

相続放棄したら原則撤回できない

上述の通り、相続放棄をすると次順位の相続人に相続権が移り、次順位の相続人で遺産分割協議を行うこともあり、他の人にも影響を与えますし、遺産分割を早期に終結する必要があります。そのため、一度相続放棄をした場合には、その意思表示を撤回することはできないのが原則です。

例外的に相続放棄の取消しをすることができるケースもあります。

  • 未成年者が親権者等の同意を得ずに単独で行った相続放棄
  • 成年被後見人、被保佐人、被補助人が、その定められた方法(同意や裁判所の許可等)以外で行った相続放棄
  • 詐欺、強迫、錯誤など、自身の真摯な意思で行ったわけではない相続放棄

などの場合には、有効な法律行為ではないので取り消すことができます。もっとも、これらの場合も、相続放棄の意思表示を取り消すことができるだけで、撤回をすることができるわけではありません。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えない

生命保険金や死亡保険金は、相続財産ではなく、保険金を受け取る人の固有の財産ですので、相続放棄をしたとしても、保険金を受け取ることができます。
そして、保険金を受領する際には、【500万円×法定相続人の数】の非課税枠があります。

相続放棄をするか否かで相続税額を変更することを出来てしまうことによる、納税者間の課税の不公平を排除するため、相続放棄をした人がいるとしても、この非課税枠の「法定相続人の数」にはその人も含みます。もっとも、この非課税枠が適用されるのは、財産を相続する相続人だけです。相続放棄をした人は相続人ではなくなるので、非課税枠を適用されることはなく、税金を支払う必要があります。

家庭裁判所で手続きをしなければならない

相続放棄をするためには、自身が相続人であることを知った日から3か月以内に、管轄の家庭裁判所に相続放棄の申述の申立てを行い、受理してもらう必要があります。

相続放棄の申述のためには、戸籍や申立書など必要書類を提出する必要があり、資料の取り付けや作成をしなければなりませんし、相続放棄ができる期間も決まっているので、迅速な判断をしなければなりません。

相続放棄の手続き方法について

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相続放棄のメリットとは?

相続放棄をすると、被相続人の権利義務を引き継がず、相続人ではなくなります。そのため、借金などのマイナスの財産を引き継がずに済みますので、債権者から取立を受けたり、債務を支払ったりすることはありません。また、相続人ではなくなるので、相続問題や他の相続人との関係を断ち切ることができ、相続トラブルを回避することができます。

相続放棄をする際の注意点

相続放棄をすることができるのは、3か月間と期間制限があるなど、相続放棄をした場合のメリットデメリットだけでなく、手続きについても知っておく必要があります。以下、相続放棄をするにあたっての注意点を解説します。

相続放棄には期限がある

相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月以内に、管轄の家庭裁判所に相続放棄の申述を申し立てる必要があります。相続の開始を知ったときから、期限は進行しますので、相続放棄をする場合には、迅速に判断をする必要があります。

もっとも、相続の開始を知った時点で、被相続人と疎遠だった場合や被相続人の財産関係は不明だった場合なども考えられ、3か月の期限内に、相続放棄をすべきか否かを判断することが難しい場合もあると思います。そのようなときには、速やかに、家庭裁判所に対して、相続放棄をするか否かの検討のため、3か月間の申述期間の延長を求める申請を行う必要があります。家庭裁判所に、相続放棄のための申述期間の伸長の申請を行い、その申請が認められれば、申述の期間が延長できるので、その間に相続財産の調査や相続放棄をするか否かを検討することができます。

相続放棄の期限はいつまで?

生前の相続放棄はできない

相続放棄をするには期限があるのであれば、相続開始前に相続放棄をしておこうと考えるかもしれませんが、相続自体が発生していないので、相続が開始する前に相続放棄をすることはできません。

そして、生前には、推定相続人の立場では財産調査をするにも限界があるので、正確に相続財産を把握することができません。また、相続放棄をした時点では、借金があっても、亡くなるまでの間に借金を完済することもあり、財産関係は変化しています。そのため、相続開始時点ではプラスの財産のみが残っていた状況だったということもあり、相続放棄をしたことを後悔する可能性もあります。

やはり、相続放棄は、相続が開始してからしっかりと検討する必要があるのです。

財産に手を付けてしまうと相続放棄が認められない

相続放棄は、期間を順守すればいつでもできるわけではありません。
相続放棄は、権利や義務も承継せず、相続人ではなくなる手続きですので、相続放棄をする前に、相続人として行動している場合には、相続放棄をすることができなくなります
例えば、

  • 被相続人の預貯金を引き出して利用したり自分の口座へ入金したりした
  • 被相続人の預金を解約して自分名義に変更した
  • 被相続人の財産を処分した
  • 形見分けや遺品整理として衣類などを他人に譲渡した

などです。
被相続人の財産を使用、処分する行為は、相続人でなければできない行動です。相続放棄をすると決めたときや相続放棄をするか否かを迷っているときには、むやみに被相続人の財産に手を付けてしまうと、相続放棄ができなくなるので、注意が必要です。

相続放棄しても管理義務が残る場合がある

相続放棄をすると、権利義務を引き継がなくなるのですが、相続放棄をしたからといって安心できない場合があります。
それは、不動産や株式などの管理が必要な資産を被相続人が有している場合です。

民法上、相続放棄をしても、他の人が相続財産の管理を開始できるまで、その人が管理しなければならないと定められています(民法940条1項)。つまり、相続人がもともと一人しかいなかった場合や、相続放棄したら他に相続人がいなくなった場合の最後に放棄した相続人は、相続放棄をしたとしても、不動産や株式などの財産を管理する人が現れるまで、その財産を管理しなければならないのです。

相続放棄でトラブルにならないためのポイント

相続放棄をすると、相続人ではなくなるので、相続トラブルとは無縁になると思われるかもしれませんが、そこには落とし穴があります。
相続放棄をしても、親族関係には変わりがないので、相続放棄をしたことでトラブルに発展してしまうこともあります。

他の相続人に相続放棄する旨を伝える

相続放棄をしても、他の相続人に対して、裁判所から相続放棄をしたことは通知されません。そのため、残りの相続人は相続放棄をしたことを知らず、残りの相続人だけに債務の取り立てが来たり、不動産等の管理が必要な財産がある場合には、その管理を継続しなければならなかったりと、他の相続人に負担が多くなることがありトラブルになることもあります。

そこで、相続放棄をする場合には、他の相続人が相続放棄について検討する機会を与えるためにも、事前に他の相続人に連絡をした方が良いですし、可能であれば相続人全員で協議ができるとなお良いです。

相続財産を正確に把握する

相続放棄するか否かの判断においでは、被相続人の資産や債務の内容を正確に把握する必要があります。その場合、相続人の立場で、相続財産を調査することができます。預貯金や金融資産の有無や不動産の有無、債務の有無などを調査することができます。

ただ、調査をするといっても簡単ではなく、必要な書類も多かったり、そもそもどこに問い合わせをしたらよいのかもわからなかったりする場合が多いです。
そのようなときは、相続財産調査を弁護士に依頼すれば、弁護士の方である程度の調査を行うことができるので、負担は軽減できます。

相続財産調査について

「限定承認」をする選択肢も

債務を引き継がない方法は、相続放棄だけではなく、限定承認という方法もあります。
限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不明の場合に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ制度です。負債の程度は不明であるものの、不動産は受け継ぎたいなどの場合によく使われる制度です。

限定承認は、相続放棄と同様に申述には、相続の開始を知ってから3か月間という期間制限がありますし、相続人全員が共同して行う必要があります。そのため、限定承認の申述を行う際には、相続人全員で協議をしなければなりません。

全ての債務ではないとしても、債務を引き継がない方法には、相続放棄だけでなく限定承認という方法もあるので、相続放棄をする前に一度検討してみてください。

限定承認とは

相続放棄に関するQ&A

土地や家を相続放棄する場合のデメリットはありますか?

被相続人が土地や家などの不動産を有している場合、相続放棄をすれば、不動産を相続しないので、その所有者になることができません。そのため、その不動産から得られる家賃収入や不動産売却益などは、所有者ではないので、受け取ることができなくなります。

また、相続人の全員が相続放棄した場合、不動産は管理が必要な財産ですので、次に管理をする人が現れるまでは、管理をする必要があります。そのため、相続放棄の申述が受理されたとしても、管理する手間や維持費用等は負担しなければなりません。

さらに、次に財産を管理する人として相続財産管理人の選任などの手続きを行ったりそのための費用を負担したりしなければならなくなります。

被相続人の子供が相続放棄すると、兄弟の相続分は増えますか?

被相続人の子が相続放棄をした場合、第二順位の親などの直系尊属もいないときには、第三順位の被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が相続人となれば、相続分は増えることになりますが、マイナスの財産も引き継ぐことになるので、経済的利益があるとは限りません。そうすると、兄弟姉妹においても、相続放棄をすべきか否かを検討しなければなりません。

そのため、被相続人の兄弟姉妹は、先順位の相続人が相続放棄をしたか否かに注意を払う必要があります。

相続人の全員が相続放棄したら、借金は誰が払うのでしょうか?

相続放棄をすれば、権利も義務も承継しないので、被相続人の借金を返済する必要はなくなります。そのため、他の相続人がいるのであればその相続人が、その借金に、保証人や連帯保証人が要るのであれば、その人達が返済義務を負うことになります。

相続人や連帯保証人などがいない場合には、相続財産管理人が、被相続人の財産を調査して、プラスの財産から債権者に配当をして、借金を返済することになります。

相続放棄ができないケースはありますか?

  • すでに相続を承認している場合
  • 相続放棄の申述者の真意によらないで申立てをした場合
  • 相続放棄の申述に必要な書類が足りなかったり、裁判所からの連絡に応じなかったりした場合

以上の場合には、相続放棄をすることはできません。
また、相続放棄の申述の熟慮期間を徒過すると、原則的には相続放棄は認められません。

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相続放棄で後悔しないためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

これまで述べてきた通り、相続放棄は、マイナスの財産を引き継がなくて済むなどのメリットだけの制度ではありません。プラスの財産が後で見つかっても相続できないなどのデメリットも多くあります。そのため、相続放棄をするか否かには慎重な判断が必要となる一方で、相続放棄の申述ができる期間は決まっているので、速やかに判断をする必要があります。
相続放棄をすべきか否かを迷っている間に、申述期間が徒過してしまい、相続放棄ができなかったというケースもあります。

相続放棄をすべきか否かで迷った場合には、お早めに弁護士にご相談ください。ご相談いただければ、現状を整理し、相続財産の調査が必要か、被相続人の財産や債務の状況を踏まえて相続放棄をすべきか、相続放棄の申述期間の延長申請をすべきかなどをアドバイスすることができます。

民法904条の2は、財産の維持又は増加について特別の寄与がある相続人に対し、寄与分を認めています。寄与の類型には家業従事型や財産給付型、療養看護型等、いくつかの類型があります。今回は、その中でも、被相続人の財産管理をしたことにより、遺産が維持又は増加された場合(財産管理型)の寄与分について、紹介していきます。他の寄与分の場合と同様ですが、どのような寄与行為をしたのか、なるべく客観的証拠を残しておくことが重要です。

財産管理型の寄与分とは

財産管理型の寄与分は、相続人が、被相続人の財産を管理することで財産の維持形成に寄与した場合の寄与分のことです。どういった財産管理行為が、財産管理型の寄与分として認められるかはケースバイケースですが、様々な態様が考えられます。

財産管理型の寄与分が認められるためには、財産管理の必要性、特別な貢献、無償性、継続性、財産の維持・増加との因果関係が必要です。

具体例

具体例としては、以下のものがあげられます。

被相続人所有の土地の売却の際、土地上の家屋の借家人との立退き交渉、家屋の取壊し、滅失登記手続き、土地の売買契約の締結等に努力した相続人について、寄与分を認めた例(長崎家諫早出昭62・9・1家月40・8・77)

被相続人が遺産である不動産関係の訴訟の第1審敗訴後、特定の相続人が証拠の収集に奔走し、控訴審で逆転勝訴の結果を得たことについて、その相続人に寄与分を認めた例(大阪家審平6・11・2家月48・5・75)

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寄与分と特別寄与料の違い

法改正により、「特別寄与料請求権」というものが法定されました。
これは、寄与分とは全く別の制度です。
特別寄与料請求権というのは、

  • 被相続人の親族のうち、相続人、相続放棄をした者及び相続権を失った者以外の者が
  • 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより
  • 遺産の維持又は増加に特別の寄与をした場合に
  • 相続人に対し
  • 特別寄与者の寄与に応じた金銭の請求をすることができる

というものです。
寄与の態様として、労務の提供を伴わないような寄与では、特別寄与料請求権は認められません。

財産管理型の寄与分の計算式

あくまで財産管理型として寄与分が認められた場合の、計算式の一例にすぎませんが、例えば以下のような考え方で計算をします。

①不動産の賃貸管理等の場合
相当思われる財産管理費用×裁量割合=寄与額
相当と思われる財産管理費用については、例えば、賃料の3%、5%等といった数字です。
裁量割合は、0.5、0.7といった数字です。
いずれも、寄与分を定める処分の審判においては、裁判官が判断をすることになります。

②火災保険料、修繕費、不動産の公租公課等を負担している場合
現実に負担した額×裁量割合=寄与額
相続人が現実に負担した額に、上記裁量割合を掛けます。

寄与分を認めてもらう要件

寄与分全般として、寄与分が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 寄与行為
  • 被相続人の財産の維持又は増加
  • 寄与行為と財産の維持又は増加との因果関係
  • 無償性
  • 特別の寄与
  • 継続性、専従性等

相続財産管理型の場合、特に、以下の要件を満たす必要があります。

  • 財産管理の必要性(寄与行為)
  • 被相続人の財産の維持又は増加
  • 寄与行為と財産の維持又は増加との因果関係
  • 無償性
  • 特別の寄与
  • 継続性

例えば、相続人が、長年にわたり、被相続人所有の収益不動産の管理全般を無償で行い、適切に管理した結果被相続人の財産の維持又は増加が図れた場合には、寄与分が認められる可能性があります。

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成年後見人として財産を管理していた場合

被相続人に判断能力がなくなってしまい、成年後見人が就任することがあります。成年後見人の業務として、被相続人の財産の管理を行うことになります。

成年後見人が相続人の中から選任されているのであれば、成年後見人の財産管理を寄与行為とみて、寄与分が認められる余地も一応はあります。しかし、成年後見人には通常であれば報酬も発生していますし、公的な職務として行っているのであり、特別の貢献といえるか等も問題となると思われます。基本的には、成年後見人の財産管理行為について寄与分を認めてもらうのは困難と考えられます。

なお、寄与分が認められるのは相続人だけですが、成年後見人は相続人以外からも選任されることがあります。

財産管理型の寄与分はどう主張すれば良い?

寄与分は、一般的に、裁判所に認めてもらうハードルは高く、適切な主張・立証が必要です。具体的な寄与行為の態様によって、主張・立証のポイントは異なりますが、とにかく重要なのは、なるべく客観的な証拠に残しておくことです。

主張するための重要なポイント

財産管理型の寄与分を主張する際は、要件に沿って、重要な事実に絞って主張するのが重要です。

財産管理をした場合には、いつから、どのような管理行為をしてきたのかを時系列にまとめるようにしましょう(寄与行為、特別の貢献、継続性)。また、どのような経緯で管理行為をするようになったかも主張する必要があります(財産管理の必要性)。無償であることも十分に説明する必要があります(無償性)。管理行為をして以降の被相続人の財産の推移についても整理しておく必要があります(財産の維持又は増加とその因果関係)。財産管理に伴い費用を負担した場合は、その経緯と内容を主張します。

有効となる証拠

寄与分の主張においては、上記主張を裏付ける客観的な証拠をなるべく残すようにしておくことが最も重要です。例えば、金銭出納帳や具体的な管理行為を行っていたことが窺われる様々な資料等を用意しておくことが重要です。裁判官は、まずは事実認定をしなければなりませんが、証拠がなければ、十分な認定を期待することはできません。

財産管理型の寄与分に関する裁判例

財産管理型の寄与分に関する裁判例は多くはありませんが、以下、いくつか紹介していきます。どのような寄与行為に寄与分が認められ、又は寄与分が認められていないか参考になります。

財産管理型の寄与分が認められた裁判例

被相続人が遺産である不動産関係の訴訟の第1審敗訴後、特定の相続人が証拠の収集に奔走し、控訴審で逆転勝訴の結果を得たことについて、その相続人に寄与分を認めた例(大阪家審平6・11・2家月48・5・75)があります。

訴訟の内容にもよるでしょうが、例えば、当該不動産の所有権をめぐる訴訟において、第1審で敗訴した後、証拠収集に相続人が奔走した結果、控訴審で逆転勝訴したのであれば、相続人の行為が遺産の維持又は増加につながったといえそうです。そして、証拠収集に奔走した時間や手間、集めた証拠の内容次第では、特別の貢献も認められ、寄与分が認められる可能性があります。

財産管理型の寄与分が認められなかった裁判例

被相続人が行っていた駐車場管理を相続人が引き継いで管理・経営していたことについて、相続人が報酬を毎月5万円取得していたことから、寄与分を否定された例(大阪家審平19・2・8家月60・9・110)があります。

財産管理行為について、相続人が有償で業務を行っていたことから、無償性が否定されたものと考えられます。他方、管理業務に対する報酬として、毎月5万円では著しく低額であるというような管理業務であれば、「無償」と評価してもよく、寄与分が認められる可能性もあります。

財産管理型の寄与分に関するQ&A

父の資産を株取引で倍増させました。寄与分は認められますか?

被相続人の財産管理行為として、投資行為をすることがあります。例えば、父の資産を株取引で倍増させたというような場合、寄与分が認められるかどうか、問題となります。
最終的な判断は、具体的な行為態様や結果により、異なり得るところですが、通常であれば、寄与分は認められないものと考えられます。投資には資産減少のリスクもありますが、資産減少の場合には相続人はリスクを負わず、被相続人の財産が減少するだけです。他方で、資産が増加したときに寄与分を認めてしまっては、公平ではないと考えられます。したがって、寄与分は認められにくいと考えられます。

母が介護施設に入っていた間、実家の掃除を定期的に行い、家をきれいに保ちました。寄与分は認められますか?

それぞれの要件において問題になる点があると思われますが、一般的には、寄与分は認められないものと考えられます。親と子という身分であれば、実家の掃除をして清潔に保つということは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度の負担であると思われますので、特別の貢献とは評価されないと思われます。また、具体的な費用の支出がなく、単に掃除をしていたということであれば、被相続人の財産の維持又は増加があったと立証することも困難と思われます。

父の所有するマンションの一室に住みながら、管理人としてマンションの修繕等を行った場合、寄与分は認められますか?

父の所有するマンションに無償で居住していたのであれば、修繕等に対して有償の対価(無償で居住できる利益)があったものと評価される可能性があります。修繕等の内容に比して、その対価が著しく低額であるという事情がなければ、寄与分としては認められないものと考えられます。
また、管理人としての報酬をもらっていた場合でも、同様に、無償性が否定される可能性があります。
最終的には修繕等の具体的内容や賃料相当額、管理人報酬等の金額によって結論は変わり得ますが、有償の場合には、寄与分は認められにくいと考えられます。

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財産管理型の寄与分請求は弁護士にご相談ください。

寄与分の主張・立証は専門家でも難しいことがありますので、少なくとも専門家に一度相談されることをお勧めいたします。既に相続が発生している場合はもちろんですが、将来的に相続が生じる際、自分の寄与分が認められるようにしておきたいという場合でも、今からアドバイスできることは多くあります。ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

夫・妻からモラハラを受けて苦しみ、離婚を考えている方は少なくないのではないでしょうか?
モラハラは言葉による暴力であるため、被害が外に見えづらく、また、モラハラ相手は外面がいいことが多いため、周りに理解されず悩んでいる方が多くいらっしゃると思います。

そもそも、モラハラを理由に離婚することはできるのでしょうか?
また、モラハラで離婚する場合に注意しておくべきことはどんなことでしょうか?

この記事では、モラハラで離婚する際に知っておくべきことを解説していきますので、夫・妻からのモラハラで悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。

モラハラを理由に離婚できるのか?

夫婦間の話し合いによる「協議」や、調停委員を介した「調停」においては、お互いが離婚に合意さえすれば、モラハラを理由に離婚することは可能です。

ただし、モラハラ配偶者は、モラハラをしている自覚がなかったり、自分の非を認めなかったりして、そもそも話し合いが難しい場合が多いです。そのため、協議や調停では合意にいたらず、裁判へと進む可能性も考えられます。

裁判で離婚を認めてもらうには、相手のモラハラが、法律が定める離婚理由(法定離婚事由)のうち、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまることを証明する必要があります。例えば、悪質なモラハラが日常的に繰り返され、モラハラ相手に反省の色がないような場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められる可能性があります。ただし、悪質なモラハラが継続的に行われていることを、裁判官に認めてもらえるような客観的な証拠の提出が必要となりますので注意が必要です。

モラハラをしているのが姑の場合

協議や調停の場合では、離婚理由は訴訟の場合よりは厳密には問題とされませんので、姑からのいじめという理由であっても、夫・妻が離婚に応じさえすれば、離婚することは可能です。
しかし、夫・妻が離婚に応じない場合は、離婚裁判を起こす必要があります。

裁判で離婚を認めてもらうには、姑のモラハラが、法定離婚事由のうち「婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまることを、客観的証拠によって証明する必要があります。
例えば、以下のようなケースでは、離婚が認められる可能性があります。

①夫・妻が姑のモラハラを見て見ぬふりをした
②夫・妻が姑と一緒になってモラハラを行った

つまり、姑の行動その自体ではなく、姑のいじめに対して【夫がどのような対応をしていたか】によって、離婚できるかどうかが決まるということになります。一方で、離婚が認められにくい場合としては、以下のようなケースが考えられます。

①夫・妻がモラハラする姑に注意をしていた
②夫・妻がモラハラをされた相手の味方となっていた

子供がモラハラされている場合

子供が夫・妻からモラハラされている場合、夫・妻が離婚に応じさえすれば、離婚することは可能です。また、応じてくれない場合でも、モラハラの内容や程度によっては、裁判で離婚が認められる場合があります。

ただし、モラハラ配偶者との話し合いが難航し、離婚するまでに時間がかかりそうな場合は、まずは離婚よりも子供の身の安全を守ることを優先させることを検討すべき場面があるかもしれません。
配偶者暴力相談支援センター、児童相談所、場合によっては警察等に相談しましょう。後に、これらの事実や相談記録がモラハラの重要な証拠となる可能性があります。

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モラハラの慰謝料はもらえる?

夫・妻のモラハラによって精神的苦痛を受けとしても、慰謝料をもらえる可能性はあまり高くありません。
例えば、夫婦喧嘩程度のものや、多少言い方がきついぐらいでは、慰謝料の請求は難しいです。

モラハラが誰の目から見ても悪質で、継続的に行われていることを証明する客観的な証拠を用意したとしても、認められる慰謝料の金額は低額なケースが多いです。

モラハラを理由に離婚する方法

夫・妻のモラハラを理由に離婚するにはどうすればいいのでしょうか?

離婚する方法として、以下の3つが挙げられます。

①協議離婚(夫婦の話し合いによる離婚)
②調停離婚(調停委員を介した話し合いによる離婚)
③裁判離婚(裁判所の判決による離婚)

まず、夫婦2人での協議(話し合い)から始めることになりますが、前述のとおり、モラハラを行うような者と冷静に話し合うことはそもそも難しいでしょう。

また、調停では、調停委員を介して話し合うことになりますが、モラハラ配偶者は外面がいいことが多いため、調停委員がだまされてしまい、離婚が認められない可能性があります。

そのため、協議や調停では合意できず、離婚裁判へと進むことも少なくありません。
裁判離婚を成立させるためには、相手のモラハラが、法律が定める離婚理由(法定離婚事由)にあてはまることを、客観的な証拠によって証明する必要があります。

裁判による離婚を目指す場合でも、まずは原則として、離婚調停を行うことが必要となりますので、調停の段階から離婚問題に詳しい弁護士に相談し、必要な準備や対策をすることをおすすめします。

モラハラの証拠として有効なもの

モラハラを証明する証拠として有効なものを、以下でご紹介します。
モラハラが誰の目から見ても悪質で、継続して行われていることがわかるような客観的な証拠が必要となります。

  • 相手がモラハラを行っているときの録音・録画データ
  • モラハラ発言が含まれた相手からのメールやLINEなどの文面
  • モラハラ発言が含まれた相手のSNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)の投稿やメッセージ
  • モラハラを受けたことを記録した日記やメモ
  • 精神科や心療内科などを受診した診断書やカルテ、領収書
  • 警察や児童相談所などへの相談記録
  • 親族や友人など第三者からの供述書
モラハラの証拠について

モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段

モラハラ配偶者に離婚を切り出しても、「自分はモラハラをしていない」と否定したり、配偶者や子供への執着心が強かったりして、離婚に応じてくれない可能性があります。
モラハラ配偶者がなかなか離婚してくれない場合の対抗手段として、以下のようなものが挙げられます。

思い切って別居する

まずは、思い切って別居しましょう。同じ場所に住んで、モラハラを受け続けると、強いストレスから心のバランスが崩れてしまうおそれがあります。

また、モラハラの支配下にあると、「怒られているのは自分が至らないからだ」「この人を支えられるのは自分しかいない」などと思い込み、正常な判断ができなくなることもあるので、ひとまず距離を置いてみることが必要です。
別居をすると、お互い離婚について冷静に考える機会を持つことができます。また、別居されてしまったら仕方がないと、相手が離婚に応じる可能性もあります。

なお、別居期間が一定期間続くと、婚姻関係が破綻していると判断され、法定離婚事由に該当するとして、離婚が認められる場合もあります。

別居したいけれどお金がない場合

別居したいけれど、今後の生活費に不安を抱き、別居に踏み切れない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。特に、専業主婦やパートタイマーなど収入が少ない方にとっては、別居後の生活費の工面が気がかりでしょう。
この場合、婚姻費用の請求をご検討ください。

婚姻費用とは、「夫婦が結婚生活を維持するのに必要な生活費」のことをいいます。基本的に、収入の多い者から収入の少ない者に支払われるもので、たとえ別居中だったとしても、戸籍上の夫婦であるならば、別居期間中の生活費を、一定の額、婚姻費用として相手に請求することができます。

別居にあたっての注意点

別居する際は、相手に察知されないように十分気をつけましょう。また、置き手紙やメールなどで構いませんので、モラハラ配偶者に「あなたの度重なる暴言に我慢できないから、別居します」などと、別居をしていること自体と、別居の理由を明確に伝えておくようにしましょう。

また、相手に別居先がバレないようにしておくことも必要です。家族や友人、共通の知り合い、子供の通う学校関係者などに、相手から居場所を聞かれても答えないよう、口止めしておきましょう。

また、住民票を移すことについても、慎重になってください。相手は住民票を取り付け、追跡をすることができるからです。

なお、別居後、相手と連絡をとることに不安がある場合は、弁護士が窓口となることも可能ですので、相談をご検討ください。

相手が下手に出ても受け入れない

モラハラには以下のように3つの周期があるとされています。

①蓄積期:常にイライラしており、ちょっとしたことでかっとなって、怒りやストレスを溜めていく時期
②爆発期:溜まった怒りやストレスが爆発し、相手に暴言を吐いたり、物を壊したりするなどの時期
③ハネムーン期:自分の非を認めて反省の弁を述べ、人が変わったように優しくなる時期

モラハラ配偶者が優しくなって下手に出てきても、決して受け入れてはいけません。
いわゆるハネムーン期にあるだけで、しばらく時間が経つと、また、蓄積→爆発→ハネムーンというサイクルが始まることになるため、同じことの繰り返しになってしまいます。

モラハラ配偶者と離婚をする際は、ハネムーン期の相手に翻弄されることなく、「何があっても離婚する」という強い意思を持つようにしましょう。

話し合いは第三者に介入してもらう

モラハラ配偶者と直接話し合う場合は、二人きりではなく、第三者の立ち会いのもとに話し合うことをおすすめします。家族や友人、知人などに立ち会いをお願いしてもよいですが、親しい間柄だと、夫婦のどちらかに肩入れしてしまったり、感情的になってしまったりして、話し合いがスムーズに進まない可能性があります。

そのため、離婚協議を公平に進めていくためには、できれば離婚問題に精通した弁護士を介入させ、代理人として交渉や調停対応をしてもらうことをお勧めします。

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モラハラでの離婚について不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

夫・妻からモラハラを受けている方は、自分自身に問題があるのではと思い悩まれている方が多いですが、本当にそうかは、実は自分ではなかなかわからないものです。
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人生の新たなスタートを踏み出せるよう尽力いたしますので、モラハラで離婚を考えている方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

交通事故によりケガを負い、治療をしたにもかかわらず、完治せず、後遺障害が残ってしまった場合、体が不自由になることにより、労働能力が低下し、将来の収入が減少することが想定されます。
この収入の減少分を逸失利益として、加害者に賠償請求することが可能です。
逸失利益は交通事故賠償金の中で最も高額になる可能性があるため、慎重かつ適切な計算が求められます。

ここでは、逸失利益の内容や計算方法、具体的な計算例、増額するためのポイントなどについて説明していきたいと思います。

後遺障害逸失利益とは

後遺障害逸失利益とは、事故により後遺障害が残ったことで失われた将来の収入分のことをいいます。後遺障害を負うと、自由に歩けなくなったり、手足を動かしにくくなったりするなど、労働が制限されますので、将来の収入分が減少することが想定されます。この減少分は事故によって発生した損害として、加害者に賠償請求することが可能です。ただし、請求するためには、自賠責保険の定める後遺障害等級認定を受ける必要があります。

後遺障害逸失利益を請求できるのは、後遺障害が残った被害者本人です。ただし、事故の時点で、以下の条件のいずれか1つを満たす必要があります。

①事故前に実際に収入を得ていた
②将来働いて収入を得る可能性が高かった
③家事労働など経済的価値が認められる活動をしていた

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後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の基本的な計算方法は以下のとおりとなります。各用語については後ほどご説明します。

有職者の場合は、事故前年の年収を基礎収入としますが、18歳未満の未就労者の場合は、収入がないため、基本的には、賃金センサスの平均賃金額に基づいた金額を基礎収入とし、逸失利益を計算します。なお、賃金センサスとは厚生労働省の調査結果に基づき、労働者の性別、年齢、学歴等別に平均賃金をまとめたデータのことをいいます。

(有職者)
基礎収入(事故前年の年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=後遺障害逸失利益

(18歳未満の未就労者)
基礎収入(賃金センサスによる平均賃金)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=後遺障害逸失利益

基礎収入の算出方法

逸失利益の計算に用いる基礎収入とは、基本的には、事故前1年間の収入になりますが、被害者の属性により算出方法が変わります。
以下、被害者の属性別の基礎収入額の算出方法を解説します。

給与所得者(会社員など)

サラリーマンやOLなど給与所得者の場合は、基本的には、事故前年の年収を基準とし、基礎収入を計算します。具体的には、源泉徴収票や給与明細などから判断します。なお、この収入は手取り額ではなく、所得税等控除前の収入で、基本給やボーナスの他、皆勤手当などの各種手当も含まれます。

ただし、被害者が30歳未満の若年労働者の場合で、事故前の収入額が賃金センサスの全年齢平均賃金額より低く、将来的に全年齢平均賃金額を得られる可能性が高い場合には、年収の低い若年労働者保護のため、全年齢平均賃金額を基準とし、基礎収入を計算するのが一般的です。

個人事業主(自営業など)

自営業者の場合も、事故前年の確定申告所得額を基準とし、基礎収入を計算します。
青色申告控除を受けている場合は、控除前の金額を使います。
この所得額は売上から経費を控除したものですが、事務所の家賃や従業員に対する給料などの固定費は、基礎収入の計算の際には、経費として控除されないとされています。

なお、確定申告をしていない場合や過少申告をしている場合でも、帳簿や領収書等により所得額を証明できれば、実際の収入が基礎収入として認められる可能性があります。

また、前年の所得額を証明できない場合や、確定申告額が赤字または賃金センサスの平均賃金よりも低額の場合は、被害者の職歴や勤務状況等を考慮し、賃金センサスの平均賃金を基準に基礎収入が計算される場合もあります。

もっとも、過少申告がなされている場合は、いざ裁判となった場合でも、裁判所からは、嘘をついていた点が重くみられ、「実際の収入の証明」のハードルがかなり高まってしまうことを覚悟しなければなりません。過去過少申告という嘘をついていた者が、実際の収入の証明において嘘をついていないという保証はどこにもないからです。

会社役員

会社役員は、基本的に事故前1年間の役員報酬額を基準として、基礎収入を計算します。
役員報酬は、役員が働いた結果支払われる労働対価部分と、会社の業績によって配当を受ける利益配当部分に分けられ、逸失利益として請求できるのは、労働対価部分のみです。

家事従事者(主婦など)

主婦(主夫)の場合、現実の収入はありませんが、家事労働をしているとみなされ、基本的には、賃金センサスの女子全年齢平均賃金をもとに基礎収入を計算します。主夫の場合も、公平のため、同様に女子全年齢平均賃金を基準とします。

また、仕事を持つ兼業主婦(主夫)の場合は、実際の収入と賃金センサスによる女子全年齢平均賃金とを比較し、金額が高い方を基礎収入とします。

なお、一人暮らしの家事労働は、他人のために労働をしているわけではないので、対価性がなく、逸失利益として認められていません。

無職

無職の場合は収入がないため、基本的には、逸失利益は認められません。
ただ、事故当時、就職先より内定を得ていた場合など、就労の可能性が高い場合には、失業前の年収や賃金センサスの男女別全年齢平均賃金などをもとに、基礎収入を計算する場合があります。

学生

収入のない学生でも将来的に働く可能性が高いため、基本的に賃金センサスの男女別全年齢平均賃金を基準とし、基礎収入を計算します。また、大学生や大学進学の見込みが高い者の場合は、賃金センサスの大卒の男女別全年齢平均賃金を基準とする場合があります。

高齢者

高齢者の場合も、働いて給与や事業所得を得ている者であれば、会社員や自営業者と同様、事故前の給与や確定申告所得額を基準とし、主婦(主夫)であれば、賃金センサスの女性全年齢平均賃金を基準とします。また、無職者でも、将来的に就労の可能性が高い場合は、賃金センサスの男女別年齢別平均賃金を基準とし、基礎収入を計算します。

また、年金生活者の場合は、後遺障害が残っても年金額が減ることはないため、逸失利益を請求することはできないとされています。

幼児・児童

幼児、児童については、まだ働いていませんが、将来働いて収入を得ていたはずとみなし、基本的には、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金をもとに基礎収入を計算します。

ただし、女性より男性の平均賃金額が高いことから、男女間で逸失利益の金額に不平等が生じるため、女児の場合には、男女合わせた全労働者の全年齢平均賃金をもとに基礎収入を計算するのが一般的です。

労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われた労働能力を割合で表したものです。後遺障害の等級ごとに労働能力喪失率の目安が定められています。等級が上級になるほど喪失率は高くなり、逸失利益も高額になる傾向があります。

ただし、下記表の割合がそのまま認められるわけではなく、被害者の職務内容や後遺症の部位、程度などにより、喪失率が増減する場合があります。

後遺障害等級 労働能力喪失率(%)
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

例えば、理容師やピアニストなど指を使う専門職者が事故により後遺症を負い、指にしびれが残ってしまった場合など、仕事への影響度が強いと考えられる場合には、表の割合より高い喪失率が認められる可能性があります。

また、顔や身体に傷跡が残る「外貌醜状」、骨が変形する「脊柱変形障害」などの後遺症は、運動機能に障害を及ぼさないため、業務への支障は少ないと判断され、下記表の割合より低い喪失率とされる場合があります。

労働能力喪失期間の算出方法

労働能力喪失期間とは、事故によって負った後遺障害により、今後労働能力の喪失が続くであろう期間を年数で表したものです。基本的には、「被害者の症状固定時の年齢から67歳までの期間」を労働能力喪失期間とします。

ただし、後遺障害の程度によっては、労働能力喪失期間の終期を67歳よりも短い期間で算定する場合があります。例えば、むちうちの場合は、年数が経つと症状が軽くなると考えられているため、労働能力喪失期間は5~10年とされるケースが多いです。

労働能力喪失期間の計算方法は被害者の属性により異なりますので、以下解説していきたいと思います。

幼児~高校生

幼児から高校生については、高校卒業の年齢である18歳から67歳までの49年間を労働能力喪失期間とします。
ただし、大学進学が確実な場合は、22歳~67歳までの45年間を労働能力喪失期間とするのが一般的です。

大学生

大学生については、大学卒業後の就職が想定されるので、22歳から67歳までの45年間を労働能力喪失期間とする場合があります。

会社員

会社員については、原則どおり、症状固定時の年齢から67歳までの期間を労働能力喪失期間とします。

高齢者

67歳以下の場合は、「平均余命の2分の1」と「67歳-症状固定時の年齢」を比較し、長い方の期間を労働能力喪失期間とします。また、68歳以上の場合は、簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。

中間利息の控除

逸失利益を受け取ると、毎年もらうはずの収入をまとめ受け取ることになります。例えば、20年分の収入を銀行に預金すると、20年分の利息が発生し、その分多くの運用利益を得られます。よって、逸失利益から余分に受け取る利息分を控除することになっており、中間利息の控除といいます。

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、逸失利益の中間利息控除のために用いられる係数のことをいいます。例えば、労働能力喪失期間が10年だとして、そのまま10を乗じればいいわけではありません。10年分先払いで逸失利益を受け取るわけですから、必要以上に受け取る10年分の利息を割り引く必要があります。この割引のためにライプニッツ係数が用いられます。

2020年4月1日以降に発生した事故については、法定利息年3%に基づき算出されたライプニッツ係数を使用しますが、2020年4月1日より前に発生した事故については、改正前の法定利息年5%に基づき算出されたライプニッツ係数を使用します。

例えば、被害者が36歳の場合、労働能力喪失期間は67-36=31年となりますので、下記の「年金原価表」にあてはめると、ライプニッツ係数は20.000となります。

なお、被害者が18歳未満の場合は、働き始めるとされる18歳までは無収入なため、逸失利益は発生しません。よって、不利益が生じないよう、67歳までの年数に対応するライプニッツ係数から18歳までの年齢に対応するライプニッツ係数を控除したライプニッツ係数を適用します。具体的には「18歳未満の者に適用する表」をもとに、被害者の年齢に適用されるライプニッツ係数を探し出します。

後遺障害逸失利益の計算例

16歳の男子高校生 後遺障害等級8級に該当した場合

逸失利益の計算式は以下になります。

「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×(16歳から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数-16歳から18歳までの年数に対応するライプニッツ係数)」

①16歳の男子高校生の場合、まだ就労していませんので、令和3年賃金センサスの男子の学歴計、全年齢平均賃金546万4200円を基礎収入とします。

②後遺障害等級8級に対応する労働能力喪失率は45%、16歳から67歳までの年数51年に対応するライプニッツ係数は25.9512、16歳から18歳までの年数2年に対応するライプニッツ係数は1.9135となりますので、適用する係数は25.9512-1.9135=24.038(四捨五入)となります

③後遺障害逸失利益は、546万4200円×0.45×24.038=5910万6797円となります。

50歳の公務員 年収600万円 後遺障害等級12級に該当した場合

逸失利益の計算式は以下になります。

「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-50歳=17年)に対応するライプニッツ係数」

①1年あたりの基礎収入は600万円、後遺障害等級12級に対応する労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間17年に対応するライプニッツ係数は13.166となります。

②後遺障害逸失利益は、600万円×0.14×13.166=1105万9440円となります。

30歳の専業主婦 後遺障害等級14級に該当した場合

逸失利益の計算式は以下になります。

「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-30歳=37年)に対応するライプニッツ係数」

①専業主婦の場合、収入がないため、令和3年賃金サンセスの女子全年齢平均賃金385万9400円を基礎収入とします。

②後遺障害等級14級に対応する労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間37年に対応するライプニッツ係数は22.167となります。

③よって、後遺障害逸失利益は、385万9400円×0.05×22.167=427万7565円となります。

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後遺障害逸失利益を増額させるポイント

後遺障害逸失利益が増額するポイントを説明します。

①適正な後遺障害等級認定を受ける。
後遺障害等級が上級になるほど、労働能力喪失率が上がるため、逸失利益額も高くなります。よって、後遺障害がいかなる等級に認定されるかが重要になります。
そのためにも、治療中の段階から等級認定を意識し、適切な通院回数を保持したり、MRI等認定に必要な検査を受ける必要があります。
また、認定された等級に不服がある場合は、異議申し立てをすることが可能です。

②基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間、それぞれが適切に計算されているか確認する。
基礎収入は被害者の職業や年齢によって計算方法が異なります。また、労働能力喪失率や労働能力喪失期間も職業、年齢、後遺障害の部位や程度などにより、数値が変動します。
保険会社から提示された逸失利益が、被害者の事情を考慮し、適正に計算されたものかを確認し、適正でない場合は、金額の修正を求めるべきでしょう。

等級認定に向けていかなる治療方針をとるべきか、また、適正な逸失利益額について、被害者自身で判断するのは難しいため、事故後の早い時期から、弁護士に相談し、必要な戦略を立てることをお勧めします。

減収がない場合の後遺障害逸失利益

逸失利益が発生するのは、基本的に、事故後、車椅子の生活を余儀なくされてしまったなど、将来にわたって収入の減少が続くと思われる状態の障害が残った場合とされています。しかし、職種によっては後遺障害が生じたとしても、収入に影響しない場合があります。

例えば、車椅子生活になったとしても、デスクワークをメインに仕事をする者にとっては、さほど業務に支障がなく、収入減少の影響は少ないと思われます。
このように、後遺障害は残ったものの、減収が発生していない場合については、保険会社側が逸失利益を認めないケースが多くなっています。

それに対し、裁判所は、現実に減収が発生していない場合でも、特段の事情があるならば、逸失利益を認めるという判断を示しています(最判昭和56年12月22日)。
ここでいう特段の事情とは、①収入維持は本人の努力や勤務先の配慮によるもの、②昇進、昇給などについて不利益な取り扱いを受ける可能性がある、③業務上支障がある等の事情を指します。

このような事情が認められれば、減収がなくても、逸失利益を請求できる場合があります。

後遺障害逸失利益に関する解決事例・裁判例

ここで、弁護士法人ALGの弁護士が介入し、後遺障害逸失利益の増額に成功した2つの事例をご紹介したいと思います。

耳鳴りなどの症状から後遺障害等級12級相当の認定が受けられ、後遺障害逸失利益などの増額に成功した事例

【ご依頼経緯】
交差点での右直事故により、耳鳴りなどの症状に悩まされた依頼者が、保険会社との交渉等すべて弁護士に委任するため、事故直後よりALGにご依頼されました。

【事件解決までの過程】
①担当弁護士は依頼者の症状固定後、後遺障害等級認定申請を行い、耳鳴りにつき、後遺障害等級12級の認定を受けました。

②等級結果をもとに、相手方と賠償金交渉をしたところ、相手方は耳鳴りは事故直後に発症した症状ではないと主張し、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間3年という低額の逸失利益の提示をしてきました。

③担当弁護士は、医療記録などの精査や、依頼者の事故前後の稼働内容を整理し、交通事故紛争処理センターにて、事故と耳鳴りとの因果関係を主張し、立証を行いました。

④当方主張を認めたあっ旋案で和解に至り、相手方の当初提示額の約4倍の後遺障害逸失利益を得ることに成功しました。

弁護士が介入したことで学生の後遺障害逸失利益と後遺障害等級14級9号が認められた事例

自転車で横断歩道を走行中の当時高校生であった依頼者と相手方車両が衝突する事故が発生しました。

依頼者は事故により頚椎捻挫や腰椎捻挫等のケガを負い、8ヶ月程治療を行いましたが、肩、腰の痛み等が残存したため、後遺障害認定申請を行いました。しかし、後遺障害非該当との回答があったため、担当弁護士は、カルテの記載や事故当時の状況証拠に基づき、異議申し立てをした結果、肩と腰の痛みにつき後遺障害14級9号が認定されました。

また、示談交渉中、相手方より「被害者は高校生のため、逸失利益は発生しない」との主張もありましたが、「高校在学時にアルバイトで収入を得ていたし、卒業後は進学せず働く場合もあるため、当然逸失利益は発生する」と主張したところ、請求通りの逸失利益を得ることに成功しました。

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後遺障害逸失利益は弁護士に依頼することで増額できる可能性があります

後遺障害逸失利益は将来の生活を支える重要な賠償金のうちの一つです。それだけに、適切な後遺障害等級認定を受け、逸失利益を正しく計算することが必要です。

しかし、等級認定に向けていかなる治療方針をとるべきか、また、適正な逸失利益額について、被害者ご自身で判断するのは難しいと思われますので、事故後の早い時期から、弁護士などに相談し、必要な対策を練ることをお勧めします。

交通事故問題に詳しい弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定に関するアドバイスを受けられるので、適切な等級に認定される可能性が高まります。さらに、適正な逸失利益額を計算し、相手方と示談交渉をすることが可能ですので、逸失利益の増額の可能性も高まります。

逸失利益を含めて、交通事故の賠償金に関して何かご不安がある場合は、一人で悩まず、ぜひ交通事故問題に精通した弁護士が所属する弁護士法人ALGにご相談下さい。

遺産分割審判とは

遺産分割審判とは、裁判所が、遺産の内容、性質、提出された証拠等を考慮して判断をする手続きです。遺産分割調停の中で当事者での協議を尽くしたものの協議が整わない場合に、裁判所が強制的に遺産分割の方法を判断して、遺産分割の終局的な解決を目指します。

遺産分割調停との違い

遺産分割調停は、裁判所で行いますが、その実質は当事者間での合意点を模索する手続きです。そのため、調停委員の仲介を得ながら、当事者同士で話し合い、遺産分割の方法等を柔軟に取り決めることが出来ます。

遺産分割調停は、当事者全員が遺産分割方法等について合意をして成立するので、当事者全員が出席して協議をする必要があります。

遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

遺産分割審判の効果

遺産分割審判で決まった内容で確定すると、その内容には当事者全員を拘束する強制力を持つことになるので、遺産分割審判には従わなければなりません。

強制執行を行うことができる

遺産分割審判が確定すると、その審判内容に当事者全員が拘束されるので、その内容に反した場合には、強制的に債権の回収を行うことができるようになります。

例えば、遺産分割審判の内容として、金銭の支払いを命じられた相続人がいたのに、その相続人が金銭の支払いをしない場合には、強制執行を申し立て、預貯金、土地、給与等から回収することができるようになります。

不動産の名義変更などができる

遺産分割審判が確定すると、その内容で遺産分割の方法が決まります。通常の相続手続きでは、相続人全員から印鑑証明書や委任状等の必要書類の取り付けが必要になりますが、遺産分割審判において不動産を取得することになった相続人は、他の相続人の協力なく、単独で不動産の相続登記をすることができます。他の相続人が資料提供などの協力を得ることできないために、相続登記ができないといった問題は避けることができます。

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遺産分割審判の流れ

遺産分割審判は、遺産分割の方法を裁判所が強制的に判断してくれるので、相続人間の対立が激しい場合や早期に解決したい場合には、審判手続きから始めたいと思う人も少なくないと思います。しかし、遺産分割審判は、遺産分割調停において、当事者全員で協議を尽くしてからでないと行うことができません。相続は家族の問題でもあるので、まずは親族間で話し合いを尽くすことが肝要であると考えられているからです。もっとも、遺産分割調停で協議が整わなかった場合には、協議の内容も含めて裁判所が判断するため、新たな申立てをすることなく、遺産分割調停から自動的に審判手続きに移行します。

遺産分割審判の1回目期日が決まる

調停が不成立になると、審判手続きに移行しますが、必要に応じて期日が指定されます。
審判では、主張書面や客観的な証拠に基づいて裁判官が判断しますので、自分の主張や主張を補強する必要な証拠は、事前に準備し裁判所に提出する必要があります。

また、審判期日では、当事者に対して、遺産分割の方法や財産の評価などに関し、意向の確認をされることがあるので、自身の主張や意向を整理しておき、裁判官から確認された時に回答できるようにしておくと良いです。

期日当日

調停は、交互に調停室に入って話をしますが、審判期日では、裁判所が判断する手続きになるので、裁判官と当事者の全員が一つの部屋に集まって、これまでの協議の内容や提出した主張書面及び証拠の確認をします。

審判期日では、調停での協議の内容を踏まえて、裁判官から一定の心証を示したうえで和解案を示されることもあります。この和解案を一人でも受け入れなければ、裁判官が判断することになります。
事案に応じて異なりますが、1回から3回くらい期日を経ても合意が得られない場合に、最終的な審判が下ることになります。

審判が下される

最後の期日で、審判が出される日が指定され、その日以降に、裁判所から審判の内容が記された審判書が郵送されてきます。裁判所に電話で結果を聞こうとしても、教えてくれません。
審判書には、遺産分割の方法の最終的な判断と裁判官がその判断をするに至った理由が書いてあります。
当事者は、その審判書を見て、理由と結論を知ることになります。

審判に不服がある場合

審判書を受領し、その内容に不服がある場合には、2週間以内に、即時抗告をする必要があります。この期間を徒過すると、不服を申し立てることができず、審判書記載の内容で確定してしまいます。
誰か一人でも即時抗告をした場合には、高等裁判所に場所を移して審理をし、他の裁判官の判断を仰ぐことになります。

遺産分割審判を有利に進めるためのポイント

審判手続きでは、

  • 主張書面や客観的な証拠に従って判断される。
  • 裁判所の考え方を軸に判断される。
  • 主張や証拠を提出しないと、なかったものとして扱われる。

ことになるので、適切な主張と、それを補強する証拠を提出する必要があります。
自分の思う主張だけをしていてもその判断を採用されるわけではありません。
裁判所の考えを理解し、主張を補強する証拠を収集し、主張を書面にして提出する必要があるので、専門家である弁護士に依頼されることをお勧めいたします。

遺産分割審判を欠席した場合のリスク

遺産分割調停で主張していたとしても、口頭で話をしていただけでは、審判手続きにおいて考慮されません。

また、裁判所から指定された審判期日に欠席した場合には、書面で提出された書面の内容は考慮されますが、書面に漏れていた内容等を補足説明することができず、言い分や希望を聞いてもらえないですし、相手が虚偽の事実を言っていたとてしてもそれを訂正する機会がないまま判断がされてしまう危険があります。

そのため、審判期日までに、自身の主張と証拠を提出するだけでなく、審判期日に出席し、自分の言い分をきちんと裁判所に伝えましょう。

欠席したい場合の対処法

遺産分割審判の期日に出席することが難しい場合には、事前に裁判所に連絡をしましょう。
期日の日程変更を検討してくれる可能性もあります。
また、裁判所が遠方であるなど場合には、電話会議システムの利用が可能な場合もあります。

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遺産分割審判を検討されている場合は弁護士にご相談ください

遺産分割審判は、裁判所が遺産分割の方法に関し、最終的な判断をする手続きですので、自分の言い分や希望をきちんと裁判官に伝えなければなりません。そのためには、これまでの裁判所の考えの検討、証拠の取り付け、方針検討、書面作成を行うことになります。

当法人では、相続に関する案件を多々扱っており、遺産分割審判手続きの進め方、方針の検討等専門的な知識も有しております。遺産分割審判を検討されている場合、まずは弁護士にご相談ください。

相続人(相続する人)が被相続人(亡くなった人)に対して介護をしていた等、一定の貢献がある場合、相続人としてはその貢献は相続財産を分ける際に考慮してほしいものです。 そのような貢献を考慮するのが、寄与分という考え方です。

このページでは、介護等の療養看護を行っていた場合に認められる寄与分について解説をしていきます。

療養看護型の寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度です。
ただ、貢献とは一言で言っても、多種多様な貢献がありえます。

療養看護型は、相続人が病気療養中の被相続人の療養介護に従事した場合に認められる類型の寄与分です。

療養看護型の寄与分を認めてもらう要件

療養看護型の寄与分を認めてもらうには、寄与分の要件をすべて満たす必要があります。

①相続人による寄与であること
②被相続人の財産が維持または増加していること
③特別の寄与であること
④寄与行為と被相続人の財産の維持または増加に因果関係があること
(療養看護によって看護費用等の出費を免れたこと)

特別の寄与とはどんなもの?

そもそも、寄与分は被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度でした。ただ、他の相続人よりも相続財産を多くもらうことを正当化するには、通常期待されるような貢献では足りません。

特に、親族間では扶養義務がありますので、高齢であったり病気になったりした親族の世話は通常、通常期待される範疇を超えません。
その相続人が、同居やそれに伴う家事分担といった程度を超えて、特別の寄与をした場合に寄与分が認められるのです。

一般に療養看護をしたことを原因に寄与分が認められる場合、次の要件を満たしています。

①被相続人の症状からして、近親者による療養看護が必要であること(必要性)
②無報酬又は無報酬に近い状態で行われていること(無償性)
③療養看護が相当期間継続していること(継続性)
④療養看護の内容が片手間でないこと(専従性)

親族間の扶養義務、親族と見なされる範囲はどこまで?

扶養義務があるとされるのは、「直系血族及び兄弟姉妹」(民法877条1項)です。
ここでいう直系血族は、祖父母や父母、子どもや孫といったご家族を指します。

要介護認定が「療養看護が必要であること」の目安

必要性(①要件)を判断する上で、要介護認定が参考にされることが珍しくありません。 というのも、要介護認定が、介護保険を受けるだけの症状を抱えているかを審査していますので、受けた認定の程度を見れば被相続人が生活にどういう手助けを必要としていたかが分かるのです。

要介護認定は、手助けがあまり必要でない、「要支援1」から介護なくして生活がままならない「要介護5」まで7段階あり、日常の基本的な動作すら手助けを要する「要介護2」が療養看護型の寄与分を認める一つの線と考えられています。

要介護とはどのような状態をいう?

要介護とは「自力で日常生活を送るのが困難で、介護が必要な状態」をいいます。
具体的には次の表のような分類があります。

要介護1 日常の複雑な動作を行う能力が低下しており、部分的に介護を要する状態。問題行動や理解力低下がみられることがある。
要介護2 日常の基本動作にも部分的に介護を要する状態。問題行動や理解力低下がみられることがある。
要介護3 日常の基本動作にほぼ全面的に介護を要する状態。いくつかの問題行動や全面的な理解力低下がみられる。
要介護4 介護なしでは日常生活を送ることがほぼ困難な状態。多くの問題行動や全面的な理解力低下がみられる。
要介護5 要介護状態のうち最も重度な状態。介護なしでは日常生活を送ることができず、意思の疎通も困難。

要介護認定がない場合、諦めるしかない?

要介護認定が療養看護型の寄与分を主張していくうえで分かりやすい指標とはなりますが、要介護認定の背景にある考え方が重要なのであって、要介護認定がないからと言ってすぐに諦める必要はありません。

被相続人の生前の身体の調子(他人の手助けを借りずにどこまで動くことができたか)、生活の様子、認知機能や社会生活への適応具体等を客観的な資料とともに説得的に主張できれば療養看護の必要が認められる場合もあります。

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寄与分を認めてもらうには主張する必要がある点に注意

どのような手続きにおいても、有利な事情は自ら主張しなければ誰も考慮しません。
そのため、寄与分が認められるべき事情を遺産分割の場面で自ら主張しなければいけません。

療養看護型の寄与分の主張に有効な証拠は?

療養看護が必要であることや、どれだけの療養看護を行ったという事実は、当事者以外分からないことが珍しくありません。
そのため、客観的にその点を残しているかどうかが、寄与分の主張が認められやすさを大きく左右します。
そのため、次のような資料を収集しておくとよいでしょう。

①被相続人の症状が分かる資料
健康状態が分かる資料、例えば、診断書、カルテといった医師が作成した資料があるとよいです。
また、日常生活の様子が撮影された動画なども有効であることもあります。

②行った療養看護が分かる資料
療養看護の内容が書かれた日記等、継続して書かれた記録があるとよいです。

療養看護型の寄与分の計算方法

寄与分は、被相続人の財産の維持や増価に貢献した場合に認められるものでした。
療養看護方の場合、通常は、相続人が療養看護を行うことで支払わずに済んだ諸費用を基準に計算していくことになります。
具体的には次のような式で考えることができます。

療養看護型の寄与分の金額=付添介護人の日当額×療養看護を行った量(日数)×裁量的割合

付添介護人の日当額の決め方

昨今、介護サービスも増え、支払う料金次第では非常に高度なサービスも受けられるようになりました。
もっとも、寄与分における日当については、介護保険における介護報酬基準を参考にして決めることが通常です。

裁量的割合とは

上に述べた介護報酬基準は、資格を持ったプロのサービスを受けることを前提に組み立てられた制度ですので、資格を持たない家族が行う場合には支援の程度がどうしても落ちてしまいます。
そのため、介護報酬基準を前提とした金額をそのまま適用するのではなく、一定の割合差し引いた金額を寄与分として認める運用がされています。
そのときに差し引く割合を「裁量的割合」といい、相続人が行った療養看護の程度を中心に様々な事情を考慮して裁判所が決めます。

療養看護型の寄与分に関する裁判例

寄与分が認められた裁判例

大阪高決平成19年12月6日は、家業である農業の手伝いをしながら、要介護認定を受けた被相続人を療養看護したケースでした。
このケースでは、相続人の貢献の程度等を考慮して、具体的な金額を定めるのではなく、遺産総額の15%もの寄与分を認めています。

寄与分が認められなかった裁判例

静岡家沼津支審平成21年3月27日は、13年間もの間通院や入浴の介助を行ったものの、被相続人が身の回りのことを自らできたことから、特別な寄与とまで言えないとして、寄与分を認めなかった事例です。
扶養義務として期待される療養看護を行ったということは容易でないことが分かる事例です。

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療養看護型の寄与分に関するQ&A

義両親の介護を一人で行っていました。寄与分は認められますか?

義両親の介護をしていたということなので、通常であれば、被相続人との相続人となることはできません。
相続人ではない以上、寄与分というものを考慮してもらう余地は本来ありません。
そのような事態を避けるには、被相続人が存命のうちに遺言書に相続財産を遺贈する旨の記載をしてもらうことが一番良いです。
それも難しい場合は、特別寄与料の請求を検討することになります。

介護できない分、介護費用を全額出しました。寄与分は認められますか?

自ら療養介護をしておらず、介護費用を支払っていた場合でも寄与分が認められることもあります。
ただ、通常負担すべき介護費用を超えるような金額を支払っていない限り、特別な寄与と言い辛いでしょう。
また、療養看護型ではなく、金銭出資型という別の類型の寄与分として考えて、寄与分を主張することも考えられます。

介護だけでなく家事もこなしていた場合、寄与分は増えますか?

療養看護型では、身の回りの世話をすべて含めて考慮しますので、介護や家事といった区分けに意味がありません。
いずれについても他人に任せた場合に比較してどの程度の特別な寄与と言えるかを見ることになります。

療養看護型の寄与分について不明点があったら弁護士にご相談ください

親族の介護をしていた相続人からすると、自らの貢献が相続の場面で考慮されないことは非常に腹立たしいことです。
しかし、その貢献を正当に評価されるには、寄与分を認めてもらう必要があります。
これまで見たように、寄与分が認められるには複数の要件を満たす必要があり、どの程度の主張が可能なのかを判断するのは容易ではありません。

また、寄与分を主張された側の相続人としても、どのように取り合ったらよいか悩ましいところです。
どうしても寄与分を主張する相続人が感情的になって交渉が大変になることも珍しくありません。

弁護士であれば、冷静に事実関係を整理して分析し、いずれの立場からも有効な主張が可能です。
遺産分割を進める上でお困りのことがあれば、是非、弁護士にご相談いただき、解決への道筋を見出してください。

相手に対する不満がつのり、「もう我慢できない。離婚しよう」と決意しても、今後どのように離婚の手続きをとればいいのか、離婚について悩まれている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚と4つの方法がありますが、どの方法が適しているかは、夫婦の置かれた状況により異なります。

ここでは、日本で最も多い協議離婚にスポットをあて、協議離婚の進め方や注意点などについて、ご説明しますので、ぜひ参考になさってください。

協議離婚の進め方や流れ

協議離婚の進め方や流れは、主に以下のとおりとなりますので、ご確認ください。

相手に離婚を切り出す

離婚を切り出す前に、離婚したい理由や離婚後の生活設計を明確にしておくことが大切です。

例えば、「離婚したい理由は夫の浮気。親権は自分がとる。慰謝料は〇〇円で、養育費は月〇〇円、面会交流は1ヶ月に1回」などメモで整理しておけば、話し合いも進みやすいでしょう。
また、不貞などの離婚原因が相手にある場合、離婚を切り出したら、相手が証拠隠滅を図る可能性があるため、事前に、不倫をうかがわせるメール等の証拠資料を集めておくことが必要です。証拠資料は慰謝料請求のための大切な証拠となります。

さらに、切り出すタイミングも大切です。お互いが喧嘩中の時や子供がいる前で離婚を切り出すと、冷静な話し合いができなくなる可能性があるため、お互いが落ち着いて話し合えるタイミングを見計らって、離婚を切り出しましょう。

離婚に合意したら協議離婚で話し合うべきこと

離婚に合意したら協議離婚で話し合うべきことは、主に以下のようなものが挙げられますので、ご確認ください。

慰謝料

相手に不倫やDV、モラハラ、生活費を渡さないなどの不法行為があり、それが原因で離婚することになった場合に、慰謝料を請求することが可能です。
ただし、双方に離婚の原因があったり、性格の不一致や価値観の違いがあったりするなど、どちらの責任ともいえない場合は、慰謝料を請求することができないのが通常です。
協議離婚の場合、夫婦双方が合意すれば、慰謝料の金額はいくらでも構いません。しかし、あまりに高額だと相手が応じない可能性があり、過去の判例などを参考に、慰謝料の金額を決めるのが望ましいでしょう。

もっとも、「請求ができる」ということと「現実に支払われる」ということの間には大きな差があります。根拠となる証拠の有無や、請求先の資力、財産のありかなどの諸要素を慎重に検討し判断することが必要です。

財産分与

財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いた共有財産を、お互いの貢献度に応じて、離婚に伴い分配することをいいます。現金や預貯金、土地、住宅、自動車、年金、婚姻中に契約した生命保険やローンなどが対象となります。財産分与の割合については、貢献度を具体的に測るのは難しいため、裁判など実務上では、基本的に、2分の1ずつとされています。

年金分割

年金分割とは、離婚する際に、夫婦の婚姻期間中に納めた保険料額に対応する厚生年金を分割し、それぞれ自分の年金とすることをいいます。具体的には、厚生年金の保険料納付記録を多い方から少ない方へと分割することになります。年金を分割する方法には、一定の要件で年金記録を1/2ずつ分割できる「3号分割」と、2人で話し合って分割割合を決定する「合意分割」があります。
年金分割には、基本的に、離婚した日の翌日から2年間という請求期限がありますので、注意が必要です。

養育費

養育費とは、未成熟子(経済的、社会的に自立していない子供)が自立するまでにかかる養育のための費用(生活費、教育費、医療費など)のことをいいます。

離婚によって親権者でなくなった親であっても、子供にとって親であることに変わりないため、養育費を支払う義務があります。子供を監護する親(監護親)は、子供と離れて暮らしている親(非監護親)から養育費を受け取ることが可能です。そのため、離婚時に養育費の金額、支払期間、支払方法や支払時期などについて取り決めておくことが必要です。

親権

親権とは、未成年の子供の養育や監護をしたり、財産を管理したりする権利及び義務です。
夫婦が婚姻中の場合は、夫婦が共同して親権を行使しますが、離婚後は共同で親権を行使できないため、離婚にあたっては、必ず、夫婦どちらか一方を親権者に指定する必要があります。
協議離婚の場合は、夫婦の話し合いにより親権者を決め、離婚届に記載しなければなりません。

離婚で親権者が決まらず争いになった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、親権を決めるための話し合いを行います。調停不成立の場合は、離婚裁判で親権者が決定されることになります。

面会交流

面会交流とは、非監護親と子供が定期的、継続的に直接会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話やメールなどの方法で、親子の交流をすることをいいます。 

非監護親または子供が面会交流を希望した場合、基本的には、親権者が面会交流に否定的であっても、よほど合理的な理由が無ければ、面会交流が認められる傾向にあります。離婚時に面会の頻度、1回の面会時間や面会場所、面会交流の範囲などについて、取り決めておくことが大切です。

離婚協議書の作成と公正証書の作成

離婚協議書とは、離婚時に夫婦双方が合意した離婚条件などの内容を書面にしたものです。
離婚協議書に養育費や慰謝料など様々な取り決め事項を記載しておけば、離婚後の、言った、言わないのトラブルを防ぐことが可能です。
また、例えば、相手からの養育費や慰謝料の支払いが滞った場合、離婚協議書をもとに、裁判などを起こし、支払いを請求することができます。

なお、離婚協議書を作成する場合は、執行認諾文言付公正証書にしておくことをおすすめします。
相手が離婚条件を守らない場合に、この公正証書があれば、金銭債権については、裁判を行うことなく強制執行をかけることが可能です。相手の預貯金や給料などを差し押さえ、未払い金を回収できます。

離婚届けを役所に提出する

夫婦間で離婚に合意をし、離婚条件を決めたら、次に離婚届を提出します。
離婚届の提出先は、夫妻の本籍地、もしくは、夫または妻の所在地の市区町村役場です。
ただし、提出先が本籍地の役所でない場合は、離婚届と併せて、夫婦の戸籍謄本の提出も必要になります。
書式は市区町村役場の戸籍課に常備してあり、インターネットからダウンロードすることも可能です。提出方法は持参でも郵送でも、夫婦のどちらかだけ、または代理人が提出するのでもかまいません。
また、協議離婚の場合、成人の2名の証人の署名と押印が必要になります。

なお、離婚届に不備がある場合や、夫婦に未成年の子供がいる場合、離婚届に親権者が記載されていないと、不受理になってしまいますので、注意が必要です。
郵送や夜間窓口に提出した場合は、不受理になっても提出した離婚届は戻ってこないため、相手方が離婚届の作成に非協力的で、離婚届の作り直しが難しい場合には、日中に窓口で提出することをお勧めします。

離婚届を提出するタイミングに注意

今すぐにでも離婚したいというお気持ちはわかりますが、離婚条件などについてしっかり話し合わないまま、離婚届を出してしまうと、離婚後、養育費や財産分与など、金銭の支払い等についてトラブルになる可能性があります。ここは焦らず、相手と離婚条件などについてじっくり話し合い、離婚協議書を作成した後に、離婚届を出すことが望ましいでしょう。

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離婚に応じてくれない場合や協議が決裂した場合の進め方

離婚について話し合いを続けていても、一方が離婚したくない場合や、親権や養育費、慰謝料などの離婚条件について折り合いがつかない場合は、いつまで経っても協議離婚が成立しません。
離婚協議が難航した場合の対処方法を、以下でご紹介します。

別居を考える

別居をすると、お互い精神的に落ち着き、今後の離婚について冷静に考える機会を得ることができます。また、相手が離婚を拒否していた場合でも、別居されてしまったらもう仕方がないと、離婚に応じる可能性もあるでしょう。離婚の話し合いがまとまらない場合は、一度別居をしてみることをおすすめします。

なお、別居期間が一定期間続いた場合に、婚姻関係についてすでに破綻していると判断され、法定離婚事由(民法第770条1項5号)に該当し、離婚が認められる場合もあります。

調停離婚を視野に入れる

夫婦間で離婚協議をしたが合意できない場合や、相手が話し合いに応じない場合には、調停による離婚を検討すべきでしょう。家庭裁判所に夫婦関係等調整調停を申し立てると、調停がスタートします。調停委員が間に入り、夫婦双方の言い分を聴き取り、離婚の合意や離婚条件について、意見の調整を行います。ここで夫婦双方が合意に至った場合は、調停が成立し、調停調書が作成され、離婚が成立するということになります。

調停調書には法的効力があり、仮に、相手が養育費や慰謝料などの支払いをしなかった場合、調書をもとに、家庭裁判所に履行勧告または履行命令を申立て、支払いを請求することが可能です。支払いがなされない場合は、地方裁判所に強制執行の申し立てを行い、相手の財産を差し押さえることになります。

別居中やDV・モラハラがある場合の協議離婚の進め方

別居中やDV・モラハラがある場合など、当事者間で離婚の話し合いができないケースでの離婚の進め方を以下に挙げますので、ご確認ください。

別居している場合

別居していて、直接会って離婚の話し合いができない場合には、まずは、メールや電話、手紙などで、相手に「離婚したいので、話し合いがしたい」という意思を伝えましょう。相手が応じれば、離婚に向けた話し合いを進めていきます。しかし、相手が無視している、離婚を拒否している、離婚条件で折り合いがつかないような場合は、弁護士に代理交渉を依頼するか、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。離婚調停では、調停委員を介して、離婚条件などについて話し合いを行うことが可能です。

DVやモラハラを受けている場合の協議離婚の進め方

相手からDVやモラハラの被害を受けていて、相手に「離婚をしたい」などと言ったら、身の危険が及ぶ可能性がある場合は、家を出て別居するか、DVシェルターなどに避難して身の安全をはかったうえで、弁護士などの専門家に依頼して、裁判所に対して保護命令や離婚調停の申し立てを行いましょう。

保護命令が発令されると、相手が付きまといなどをした場合に懲役や罰金などが科される可能性があるため、相手は近づきにくくなります。離婚調停においても、DVのことをあらかじめ説明しておけば、調停の場で相手と直接顔を合わさないよう、配慮してもらうことが可能です。

協議離婚を進める際の注意点

協議離婚を進める際の注意点を以下に挙げますので、ご確認ください。

協議内容を録音しておく

離婚に向けての話し合いをする場合は、メモをとることはもちろんのこと、ボイスレコーダーなどで録音しておくことをおすすめします。録音しておけば、後で言った、言わないのトラブルを避けることができますし、音声記録がご自身に有利な条件で離婚を進めるための、有効な証拠となる可能性があるからです。例えば、相手から不倫やDVを認めるような発言があったり、暴言があったりした場合、この音声記録をもとに、離婚事由があることを証明したり、慰謝料請求などをすることが可能となります。なお、無断で相手との会話内容を録音していたとしても違法にはなりませんので、相手から許可を得る必要もありません。

離婚届不受理申出を提出しておく

「離婚届不受理申出」とは、相手方から離婚届が出されても受理しないよう、役所に申し出ておくことをいいます。本来なら、離婚届は夫婦双方が離婚に合意した後に作成し、届出をするものですが、相手が先走って、離婚届を偽造し、勝手に役場に届け出てしまうおそれがあります。これを防止するために、あらかじめ離婚届不受理申出を行っておくことをおすすめします。

不受理申出は、申立人の本籍地または住所地にある市区町村役場に離婚届不受理申出書を提出する方法で行います。有効期限はありません。

不貞やDV等の証拠を出すタイミング

相手方の不貞やDVなどの証拠をつかんだとしても、相手方にはなるべく隠しておくことが望ましいでしょう。証拠を集めていることが知られると、相手が証拠の隠滅をはかったり、逆切れしたり、しらを切ったりして、協議が進まなくなるおそれがあるからです。

そのため、例えば、相手の言い分をすべて聞いた後に、言い逃れができない決定的な証拠を見せるなど、最適なタイミングで証拠を出せば、相手方に不貞やDVの事実を認めさせることができ、結果として、慰謝料の増額の可能性も高まります。最適なタイミングはケースにより異なりますので、弁護士に交渉を任せるという手もあります。

協議離婚の子供への影響

夫婦で離婚の話し合いをする場合は、子どもがいない場で行うようにしましょう。両親がケンカをしている様子を子どもが見てしまうと、不安や恐怖を感じ、精神的トラウマを残すおそれもあります。
また、協議離婚をする際に、親権や子供の苗字を夫婦どちらにするのか、子どもへの影響を考えて決定する必要があります。

男性でも有利に協議離婚の進められるのか

協議離婚においても、男性は女性に比べて親権を獲得できないケースが多いのが現状です。また、一般的に男性は女性より平均的に収入が多いため、親権を取られてしまったら、養育費を支払い続けることになります。また、離婚が成立する前に別居すれば、婚姻費用を支払う必要も生じる可能性があります。面会交流の申入れをしても拒絶された場合は、面会交流の実施が難し場合があります。

そのため、夫婦間で離婚条件について話し合い、なるべくご自身にとって不利な条件を減らすことが必要でしょう。話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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協議離婚に関するQ&A

協議離婚についてよくある質問をご紹介します。

協議離婚ではなくいきなり離婚調停をすることはできますか?

離婚の話し合いをせずに、いきなり家庭裁判所に離婚調停を申し立てることは可能です。特に、相手方がDVやモラハラ等を行う人物であって、話し合いが難しい場合には、直接顔を合わせることなく、調停委員を介した話し合いができるため、調停による離婚を目指すことをおすすめします。
また、相手方が離婚の話し合いに応じてくれない場合も、調停を申し立てるべきでしょう。

ただし、いきなり調停を申し立てると、相手が感情的になり、余計にこじれるおそれがありますので、まずは話し合いからスタートして、折り合いがつかない場合に、調停を申し立てるという段取りで進めるのがよいでしょう。

離婚届を提出した後に行う手続きは、どのようなものがありますか?

離婚届を提出した後に行うべき手続きは、主に以下のようなものが挙げられますので、ご確認ください。
たくさんの手続きが必要となります。

  • 住民票の異動(転入、転居、転出届、世帯主変更届などを提出)
  • 国民年金の変更(相手の厚生年金に加入していた場合は国民年金に加入し直します)
  • 国民健康保険の加入(相手の健康保険に加入していた場合は国民健康保険に加入し直します)
  • 印鑑登録の変更
  • 児童手当の受給者変更
  • 児童扶養手当の申請
  • 年金分割
  • 婚氏続称の届出(婚姻時の苗字をそのまま使う場合)
  • 子の氏の変更許可の申立て(子供の苗字を自分の旧姓にする場合)
  • 運転免許やパスポート、マイナンバーカードなどの書き換え
  • 自宅や自動車の名義変更
  • 公共料金の契約者の変更

協議離婚の証人には誰がなれるのでしょうか?

協議離婚では、成人の2名の証人の署名と押印が必要になります。令和4年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳以上の方であれば、証人になることができます。
一般的には、夫婦の親や兄弟姉妹、友人などに依頼する場合が多いようですが、まったく知らない赤の他人でも証人になれます。証人になることで受ける不利益は基本的にはありません。
離婚届の証人は、夫婦それぞれから1名ずつ出す必要はなく、どちらか一方が2名を出すことも可能です。

協議離婚を進める際、第三者の立ち合いは必要ですか?

協議離婚を進める際に、第三者の立ち合いは必要ありませんし、立ち会わせるべきではありません。第三者として、例えば、双方の両親に立ち合ってもらうことも可能ですが、当然、自分の子どもの方に有利な条件で離婚の話し合いが進むよう、肩入れすることが予想されるため、お互い感情的になり、冷静な話し合いができなくなるおそれがあります。
そのため、夫婦の親族などによる立ち合いは避け、できれば弁護士などの専門家を立ち合わせることをおすすめします。

協議離婚を適切に進められるかご不安な場合は弁護士へご相談ください

協議離婚は簡単な手続ですむ離婚方法ですが、夫婦間の話し合いによって、養育費や慰謝料、財産分与などの離婚条件を取り決める必要があります。
これら条件は法的な問題とも絡むため、夫婦間の協議だけで決めるというのは容易なことではありません。また、相手が離婚の話し合いに応じない場合は、いつまで経っても離婚が成立しません。
このように、離婚協議が難航している場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士が介入すれば、法的知識に基づき、協議離婚を適切にスムーズに進めるためのサポートを受けることが可能ですし、ご自身にとって有利な離婚条件で離婚できる可能性も高まります。また、調停離婚や裁判離婚に進行した場合のサポートも受けられます。
協議離婚について悩まれている方は、ぜひ、離婚案件に豊富な相談実績をもつ、弁護士法人ALGにご相談ください。

交通事故の被害者になり、自分には何の落ち度もないと思っていたのに、相手方保険会社から「過失割合は加害者が9割で、被害者が1割なので、あなたに支払う賠償金を1割減額します」と言われるような場合があります。

過失割合とは事故当事者の責任の度合いを割合で示したもので、交通事故の賠償金額を変動させる要因となるため、重要なものです。

ここでは、過失割合が9対1になる場合の賠償金額の計算方法や具体的な事例、過失割合の修正事例などについて、ご紹介していきたいと思います。

交通事故で過失割合9対1の損害賠償金額について

交通事故における過失割合をまとめると、以下のような特徴があります。

  • 事故当事者の責任(不注意、過失)を割合で示したもの
  • 一般的には、実際の事故と類似した過去の裁判例を基準とし、事故状況に応じて双方の過失割合に修正を加えながら、最終的な割合を算定する
  • 交通事故においては、過失割合の大きい方を「加害者」、過失割合の小さい方を「被害者」という

次に具体的な計算式でご説明します。
【例】

  • 加害者の過失が9割、被害者の過失が1割
  • 加害者の損害額が300万円、被害者の損害額が1,000万円

①加害者が被害者に対して請求できる損害額
300万円×(1-0.9)=30万円

 

②被害者が加害者に対して請求できる損害額
1,000万円×(1-0.1)=900万円

③30万円と900万円を過失相殺すると、結果として、被害者は870万円の損害賠償金を受け取ることになる

以下の表に計算例をまとめましたので、ご参照ください。

過失割合 9 1
損害額 300万円 1,000万円
請求金額 300万円×(1-0.9)
=30万円
1,000万円×(1-0.1)
=900万円
実際の受取額 0円 870万円

過失割合9対1と10対0の比較

上記の表の例では、被害者が加害者に請求できる損害額は1,000万円×(1-0.9)=900万円となります。しかし、加害者も被害者に対して30万円の損害額請求権をもちますから、被害者が最終的に受け取れる金額は900万円-30万円=870万円となります。
それに対し、被害者に全く過失がない事故の場合、過失割合は10対0となりますので、被害者の損害額が1,000万円だとすると、加害者に請求可能な損害額は1,000万円となります。

しかし、9対1と判断されても、被害者に全く過失がなく、加害者の過失が増加する特別な事情(修正要素)があることを証明できれば、10対0に変更できる場合があります。例えば、加害者側にスピード違反やわき見運転などの事情があるような場合です。
10対0の場合は、基本的には、保険会社示談交渉サービスが使えず、被害者自身で相手方保険会社と交渉する必要があります。もっとも、相手方保険会社が交渉上全面的に自陣の非を認めることは通常考えられませんので、10対0への変更を実現することは交渉レベルでは弁護士の介入をもってしても通常は極めて困難です。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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交通事故の過失割合が9対1の賠償金額の計算方法

交通事故の具体的な賠償金の計算手順は、下記のとおりとなります。

①損害金総額を算出
計算対象となる損害金項目は、治療費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害認定を受けた場合に支払われる後遺障害慰謝料、逸失利益などや、物損に関する損害金などが挙げられます。
これら損害金を合算して、総額を算出します。

②過失相殺による減額
事故当事者双方に過失があるなら、損害金の総額から、過失割合分を減額し、過失相殺を行います。

③既払金を控除
示談前に相手方保険会社から治療費等の損害金の先払いを受けている場合は、最終的な損害金額から控除します。

例えば、「過失割合が9:1で、加害者の損害額が200万円、被害者の損害額が800万円、被害者に対する既払金が50万円」だった場合は、まず、損害額から過失割合分を控除し、過失相殺を行います。

加害者の損害額 200万円×(1-0.9)=20万円
被害者の損害額 800万円×(1-0.1)=720万円
720万円-20万円=700万円(過失相殺)

次に、700万円から既払金50万円を控除します。最終的に、被害者が加害者に対して請求可能な損害金額は650万円となります。

700万円-50万円=650万円(既払金控除

9対1の場合、保険の等級にも影響があります

交通事故に遭い、被害者に1割でも過失がある場合は、被害者が加入する自動車保険を利用し、賠償金を支払うのが一般的です。ただし、保険を利用して賠償金を支払うと、翌年以降の保険の等級が下がり、保険料も上がることが想定されます。支払うべき賠償金額より、値上がりした保険料の方が高くなる場合は、保険を利用しない方がいい場合もあります。よって、支払いの前に、保険料がどの程度増えるか保険会社の担当者に確認した方がよいでしょう。

なお、保険に弁護士費用特約がついていれば、上限はありますが、弁護士費用を負担することなく、弁護士に依頼することが可能です。
弁護士特約を利用すると、翌年以降の等級が下がらず、保険料が上がらないというメリットがあります。保険会社に特約の有無を確認し、付帯していたら、利用することをおすすめします。

基本過失割合が9対1になるケース

過失割合が9対1になる事故ケースとはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、自動車同士の事故、自動車とバイク、自動車と自転車、自動車と歩行者との事故など、事故状況別に分けて、説明していきたいと思います。

自動車同士の事故で過失割合が9対1になるケースは、下記のようなケースです。

①一方に一時停止の規制がある場合
信号機のない交差点で、一時停止の規制がない道路から減速して進入したAと、一時停止の規制があり、減速せず進入したBが衝突 ⇒ B対A=9対1

②一方が優先道路(直進車同士)
信号機のない交差点で、優先道路を直進するAと非優先道路を直進するBが衝突⇒B対A=9対1

③直進車と右折車
信号機のある交差点で、赤信号で直進するAと、青信号で進入し、赤信号で右折したBが衝突⇒B対A=9対1

④一方が優先道路(直進車と右折車)
信号機のない交差点で、優先道路を直進するAと、非優先道路から優先道路へ右折したBが衝突⇒B対A=9対1

⑤一方が優先道路(直進車と左折車)
信号機のない交差点で、優先道路を直進するAと非優先道路から優先道路に左折したBが衝突⇒B対A=9対1

⑥追越禁止の交差点(右折車と追越直進車)
追い越し禁止の交差点で、中央線または道路中央を越えた追越直進車Aと、右折車Bが衝突⇒A対B=9:1

⑦一方が優先道路(直進車と右左折車)
T字型交差点で、優先道路を直進するAと、非優先道路から優先道路に右折または左折したBが衝突⇒B対A=9対1

⑧道路外に出るため右折する場合
直進するAと、対向直進し、道路外に出るために右折するBが衝突⇒B対A=9対1

⑨追越車と追い越される車の場合
追越禁止場所で、直進するAと、Aを追い越したBが衝突⇒B対A=9対1

自動車とバイクの事故

自動車とバイクの事故で過失割合が9対1になるケースは、下記のようなケースです。

①直進車同士
信号機のある交差点で、赤信号で進入したA車と、黄色信号で進入したバイクBが衝突⇒A対B=9対1

②一方が明らかに広い道路の場合
信号機のない交差点で、狭路から減速しないで進入した直進車Aと、広路を減速しながら直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

③一方に一時停止の規制がある場合
信号機のない交差点で、一時停止の規制があり、減速せずに進入した車Aと、減速しながら直進していたバイクBが衝突⇒A対B=9対1

④一方が優先道路の場合
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に進入した車Aと優先道路を直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑤車が一方通行違反の場合
信号機のない交差点で、一方通行規制に違反して、交差点に進入した車Aと直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑥右折車と直進車
信号機のある交差点で、赤信号で進入する直進車Aと青信号で進入し、黄色信号になった後、赤信号で右折したバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑦右折車に一時停止の規制がある場合
信号機のない交差点で、一時停止の規制を受ける右折車Aと、直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑧一方が優先道路の場合
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に右折したA車と直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑨左折車と直進車
信号機のない交差点で、直進するバイクBと、Bを追い抜き、左折した車Aが衝突⇒A対B=9対1

⑩路外車が道路に入る場合
道路外から道路に進入するA車と、直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑪路外に出るために右折する場合
直進車Aと道路外に出るために右折するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑫バイクに法24条違反
先行するバイクBが急ブレーキをかけたために、A車がバイクBに追突⇒A対B=9対1

⑬転回車と直進車との事故
転回するA車と、直進するバイクBが衝突⇒A対B=9対1

⑭ドア開放事故
開放されたA車のドアに直進するバイクBが追突⇒A対B=9対1

自動車と自転車の事故

自動車と自転車の事故で過失割合が9対1になるケースは、下記のようなケースです。

①車直進・自転車右折
信号機のある交差点で、赤信号で進入する直進車Aと、赤信号で進入し右折した自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

②車右折・自転車直進
信号機のない交差点で、右折車Aと、直進自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

③一方が明らかに広い道路で、車右折・自転車直進
  信号機のない交差点で、狭路から広路に右折したA車と広路を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

④一方が明らかに広い道路で、車直進・自転車右折
信号機のない交差点で、狭路から広路に進入したA車と、広路から狭路に対向右折した自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑤車に一時停止規制がある場合で、直進車同士
信号機のない交差点において、一時停止の規制を受ける直進車Aと直進自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑥車に一時停止の規制がある場合で、車右折・自転車直進
信号機のない交差点で、一時停止の規制を受ける右折車Aと直進自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑦車に一時停止の規制がある場合で、車直進・自転車右折
信号機のない交差点で、一時停止の規制を受ける直進車Aと対向右折した自転車B が衝突⇒A対B=9対1

⑧車に一時停止の規制がある場合で、同一方向右折
信号機のない交差点で、一時停止の規制を受ける直進車Aと同一方向を右折した自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑨自転車が優先道路の場合で、直進車同士
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に進入したA車と、優先道路を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑩自転車が優先道路の場合で、車右折、自転車直進
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に進入し、右折したA車と優先道路を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑪自転車が優先道路の場合で、車直進、自転車右折
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に進入したA車と優先道路を対向右折する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑫自転車が優先道路の場合で、同一方向右折
信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に進入したA車と同一方向に右折する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑬交差点での車先行左折
信号機のない交差点で、先行するA車が左折した際、同一方向を直進する自転車Bと衝突⇒A対B=9対1

⑭渋滞中の車両間の事故
信号機のない交差点で、渋滞中の自動車の間を通り、対向方向から右折しようとした、または、交差する道路を直進していた自動車Aと、渋滞中の自動車を追い越しながら直進していた自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑮路外出入車と直進車の事故
道路外から道路に進入したA車と、同一方向または対向方向を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑯車が路外に出るために右折する場合
道路外に出るために右折するA車と、同一方向または対向方向を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑰対向車同士の事故(車直進、自転車右側通行)
直進するA車と、道路の右側を通行していた自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

⑱車進路変更
前方を走行していたA車が、進路変更をし、左側を通行していた自転車Bに衝突⇒A対B=9対1

⑲自転車進路変更で前方に障害物あり
前方にいた自転車Bが進路変更し、同一方向を走行していた車Aに衝突⇒A対B=9対1

⑳転回車と直進車の事故
道路を転回中のA車と同一方向または対向方向を直進する自転車Bが衝突⇒A対B=9対1

自動車と歩行者の事故

自動車と歩行者の事故で過失割合が9対1になるケースは、下記のようなケースです。

①幹線道路・広狭差のある道路における広路横断
狭路から広路に右左折するA車と広路を横断する歩行者Bが衝突⇒A対B=9対1

②幹線道路・広狭差のある道路における狭路横断
狭路から広路に直進、または右左折するA車と狭路を横断する歩行者Bが衝突⇒A対B=9対1

③ 車道通行が許されている場合
歩道、車道の区別があるが、工事中等で歩道を通行できず、車道を歩いていた歩行者Bと車道を走るA車が衝突⇒A対B=9対1

④ 歩車道の区別のない道路の場合
歩道、車道の区別のない道路を同一方向または対向方向に進行する歩行者Bと直進車Aが衝突⇒A対B=9対1

自転車と歩行者の事故

自転車と歩行者の交通事故において、過失割合が9対1になるケースは主に以下の通りです。①~④の過失割合はすべて「自転車:歩行者=9対1」となります。

①信号機のある交差点で、青信号で道路を横断する歩行者と青信号で右左折する自転車が衝突した場合。

②信号機のある交差点で、青信号で道路を横断する歩行者と赤信号で直進した自転車が、横断歩道の手前で衝突した場合

③工事中等のため歩道を通行できず、車道を歩いていた歩行者と車道を走行する自転車が衝突した場合

④歩道、車道の区別がない道路で、道路の側端以外を歩いていた歩行者と車道を走行する自転車が衝突した場合

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交通事故の過失割合9対1に関する解決事例

ここで、ALGの弁護士が介入し、過失割合を9対1に修正できた2つの事例をご紹介します。

訴訟を行い、加害者扱いから被害者へ(7対3から1対9)へ覆すことのできた事例

ここで、ALGの弁護士が介入し、過失割合を7対3から1対9に修正できた事例をご紹介します。

3車線道路の2車線を走行中の依頼者の車両が、交差点を超えたところで、3車線を走る相手方車両に後方から衝突されるという事故が発生しました。

相手方は、依頼者が車線変更をしたので、過失割合7対3の主張をし、過失割合に争いが生じたため、訴訟へと進行しました。担当弁護士は、ドライブレコーダーなどをもとに、交差点を超えた際の動静などの分析結果を主張したところ、当方の主張が裁判所より認定されました。その結果、過失割合1対9という形で和解に至り、依頼者の立場を加害者から被害者へと覆すことに成功しました。

弁護士が細かく調査し、保険会社が主張する過失割合8対2を9対1に修正することができた事例

ここで、ALGの弁護士が介入し、過失割合を8対2から9対1に修正できた事例をご紹介します。

優先道路を走行中の依頼者の車両と、一時停止を無視し狭路から交差点に進入した相手方車両が衝突し、依頼者の車両が横転する事故が発生しました。
相手方は、優先道路との交差点での車同士の衝突事故の基本過失割合は1対9だが、本件では交差点上の中央線が消失していたため、依頼者が走行していた道路は優先道路ではなく、過失割合は2対8になると主張し、譲りませんでした。

担当弁護士は現地調査、刑事記録の精査等を重ね、当方の主張の正当性を裏付ける各種証拠を紛争処理センターに提出した結果、過失割合1対9であると認められ、依頼者に有利な過失割合を得ることに成功しました。

過失割合9対1の場合、弁護士に相談することで過失割合が修正される可能性があります。ぜひご相談ください

例えば、損害賠償額1,200万円の事故の場合、過失割合10%の違いで120万円、20%の違いで240万円と、被害者の受け取れる金額が大きく変動します。それだけに、過失割合の算定は重要です。

よって、相手方保険会社から提示された過失割合を鵜呑みにせず、過失割合が適正かどうか、しっかり検討することが必要です。

しかし、事故のケースは多種多様で、これまで挙げた過失割合が9対1の事故類型にあてはまらない、特殊な事故態様も存在します。そのような中で、適正な過失割合を算定するには、事故の具体的な事情を加味した複雑な判断が必要になりますので、被害者個人で行うのは困難だと思われます。

その点、交通事故問題に詳しい弁護士に依頼すれば、過失割合の修正を裏付ける証拠を収集し、被害者にとって適切な割合を算定し、これに基づき、相手方保険会社と交渉することができる可能性があります。

相手方保険会社から提示された過失割合に納得がいかないと思われるような場合は、ぜひ交通事故問題に精通した弁護士が所属するALGにご相談ください。

被相続人が借金を残したまま死亡した場合や、相続に関して揉めそうな場合等には、相続人が「相続放棄」を選ぶことがあります。
もっとも、相続放棄の手続きをしたとしても、それだけで全ての負担から逃れられるとは限りません。相続しなくても管理が必要な財産がある等、注意すべき点があります。
以下では、相続放棄後の相続人の管理義務について説明します。

相続放棄をしても残る管理義務とは

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければならない義務を負います。

相続放棄しても管理費用と労力はかかる

例えば、相続財産が既に誰も住んでいない空き家だった場合、そのまま放っておけば、誰かが住みついたりして、周囲の治安に影響を及ぼすおそれがあります。違法な植物の栽培や放火等の犯罪の温床となるおそれさえあります。また、放置された建物や土地は、不法投棄がされる等、周囲の環境の悪化をもたらすおそれもあります。さらに、老朽化した建物が倒壊して事故が起こる可能性もあります。
こうしたことが起こると、近隣住民等に迷惑をかけ、管理者が苦情を受けるおそれがあるだけでなく、場合によっては管理者が損害賠償請求を受ける可能性もあります。そうならないためにも、相続人は、相続放棄をしたとしても、他の相続人が管理を始められるまでは、相続財産の管理を怠らないでいる必要があります。

管理義務の対象となる遺産

  • 空き家
  • 空き地、農地、山林

管理って何をすればいい?管理不行き届きとされるのはどんなケース?

例えば、空き家に関しては、老朽化した建物や塀を修繕しないまま放置した結果、それらが倒壊して通行人に怪我を負わせた場合や、隣地の家屋等に被害が発生した場合は、管理不行き届きとされ、損害賠償請求されるおそれがあります。そのため、倒壊の危険を回避するための補強工事や、状況によっては瓦礫の撤去等をしておく必要があるといえるでしょう。また、建物等の状態を確認したり、他人の入り込み等を防いだりするためには、定期的な見回り等による状況把握も必要となります。
土地の場合であれば、庭木が倒れて通行人や隣地等に被害が発生するおそれがあるような状況や、雑草が生い茂って害虫が発生するような状況を放置していれば管理不行き届きとされるおそれがあり、剪定や除草、害虫駆除をする必要があると考えられます。

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管理義務は誰にいつまであるの?

現行民法は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と規定しています(民法940条1項)。
したがって、相続人は、たとえ相続放棄をしたとしても、次順位の相続人が相続財産の管理を始められるまでは、相続財産の管理義務を免れることができません。

もっとも、この規定の解釈上、相続人全員が相続放棄をし、次順位の相続人が存在しない場合や、相続放棄した者が不動産を占有していない場合等において、相続を放棄した者が管理義務を負うかどうかや、その義務の内容については、必ずしも明らかではありませんでした。これらの点について、改正民法(令和5年4月1日施行)では、規定の見直しが図られました。

管理を始めることができるようになるまでとは?

「次の相続人が管理できるようになるまで」とは、次順位の相続人に相続財産を引き継ぎ、その相続人が管理できる状態になるまでということです。
改正民法では、相続を放棄した者が財産管理の義務を負う終期について、「相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまで」と規定され、具体化、明確化されました。

民法改正の2023年4月1日以降は誰に管理義務があるのか明確になる

改正民法では、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九五二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と規定されました。
相続放棄時に「現に占有」している相続放棄者であることが要件となるため、相続人が実際に占有していない相続財産については、管理義務の対象外となります。
例えば、相続財産が不動産であれば、離れて暮らしていた相続人が相続放棄をしたときは、この不動産を管理する義務はありません。

民法改正以前に起きた相続でも適用される?

改正民法の適用開始時期は、2023年(令和5年)4月1日です。施行日後に相続放棄された場合に適用されます。

管理義務のある人が未成年、または認知症などで判断能力に欠ける場合

未成年者や重度の認知症で判断能力に欠ける方は、相続放棄の手続きをご自身で行うことができず、法定代理人、後見人等が本人に代わってする必要があります。
相続放棄者の管理義務について、未成年者や重度の認知症等で判断能力に欠ける方等、現実には自身で管理を行えない者であっても、相続放棄者である以上、本人が管理義務を負うのかといったことや、その代理人が管理義務を負うかどうかについては、規定上、明確ではありません。
しかし、法定代理人等の趣旨に照らすと、代理人等の責任が肯定される可能性がありますので、損害賠償等のリスクを避けるためにも、本人に代わって管理しておく必要があるといえます。

管理義務のある人が亡くなった場合

相続放棄後は、当該財産について相続放棄者の相続人に相続されることはありません。
相続放棄後の管理義務は、「相続を放棄した者」が、次順位相続人等に対して負う保存義務ですから、相続放棄者の相続人が、管理義務だけを相続するということはありません。
ただし、相続財産である不動産を次順位相続人等に未だ引き渡さず占有しているような場合は、別途、土地工作物の占有者の責任を負う等といったことはあり得ます。そのような場合は、損害賠償責任を問われないよう管理をする必要があるといえるでしょう。

遺産の管理をしたくないなら相続財産管理人を選任しましょう

これまで述べたように、相続放棄した元相続人は、相続財産に関して損害賠償義務を負わされてしまう可能性があります。こうした負担から解放されるためには、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立てをする必要があります。相続財産管理人に相続財産を引き渡せば、相続放棄者は相続財産の管理から解放されることになります。

相続財産管理人とは

相続財産管理人とは、被相続人の相続財産の管理をする人です。
相続人がいるのかが明らかでない場合や、すべての相続人が相続する権利を放棄して相続人がいなくなった場合等に、相続に関して利害関係がある人等の申立てによって家庭裁判所で審理されます。そして、家庭裁判所によって相続財産管理人が必要だと判断されれば、相続財産管理人が選任されます。
相続財産管理人となる人に特段の資格は必要なく、申立の際に候補者をあげることもできます。 ただし、その候補者が相続財産管理人に選任されるとは限りません。実際上は、弁護士や司法書士などの専門職に委嘱されることも多くあります。

選任に必要な費用

相続財産管理人選任を申立てる際は、収入印紙800円と連絡用の郵便切手数千円程度がかかるほか、「予納金」を支払う必要があります。
予納金は、相続財産管理人が遺産の清算を進めるのに必要な経費や相続財産管理人の報酬に充てられるお金です。予納金の額は、裁判所が事案の内容に応じて決めますが、概ね、30万円から100万円程度です。
相続財産が十分にあれば、最終的には、相続財産の中から予納金も返還されます。しかし、相続財産が少ないときは、返還される原資がないことになりますので、申立人が費用を自ら負担せざるを得ない結果となります。

選任の申立・費用の負担は誰がする?

相続人全員が相続放棄して、結果として相続する者がいなくなったときは、利害関係人または検察官の請求によって相続財産管理人を選任することができます。
相続放棄をした元相続人は「利害関係人」に当たりますので、相続放棄した者は、相続財産管理人の選任申立をすることができます。
相続財産管理人選任を申立てる際は、収入印紙800円と連絡用の郵便切手数千円程度がかかるほか、「予納金」を支払う必要があります。

相続財産管理人の選任方法

相続財産管理人を選任したいときには、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所での選任の申立てを行います。
相続財産管理人選任の申し立てがなされると、家庭裁判所は審理を行い、被相続人との関係や利害関係の有無、相続財産の内容などを考慮して、相続財産を管理するのに最も適任と認められる人を選びます。
相続財産管理人となる人に特段の資格は必要なく、申立人が候補者をあげることもできます。候補者がある場合には候補者がそのまま選ばれる場合もありますが、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることが少なくありません。

管轄の裁判所の調べ方

相続放棄をした財産に価値がない場合、相続財産管理人が選任されないことがある

相続財産管理人を選任した場合、その報酬等の費用がかかり、申立人がその費用及び予納金を支払います。予納金は、相続財産の中から返還されますが、相続財産が少ないときは予納金が返還される原資がないことになり、申立人が費用を自ら負担せざるを得ない結果となることから、相続放棄者が相続財産管理人の選任をしないことがあり得ます。
債権者等の利害関係人も、相続財産から弁済を受けるために相続財産管理人の選任を申し立てることができますが、そもそも、相続財産に価値がなければ、債権者は弁済を受けることができませんし、むしろ報酬等の費用がかかることになります。そのため、相続財産管理人を選任しないことがあります。

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管理義務に関するQ&A

相続放棄した土地に建つ家がぼろぼろで崩れそうです。自治体からは解体を求められていますが、せっかく相続放棄したのにお金がかかるなんて…。どうしたらいいですか?

家の解体は、処分行為といって、相続を承認したとみなされて相続放棄が無効になる可能性があるため、相続放棄者において行うことは避ける必要があります。市町村等から命令を受けた場合であっても、これに従うことができない正当な理由がある場合がありますから、行政代執行にかかる空き家の解体費用などを負担しないですむ可能性があります。
また、この管理義務は、後に相続人となる者等に対する義務であって、地域住民などの第三者に対する義務ではありません。
とはいえ、空き家の倒壊や放火等により第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うこともあり得ます。

他方で、相続財産管理人を選任した場合、既に述べたように、場合によっては100万円程度の予納金が必要となる上、相続財産の財産価値がなければ予納金の返還がなされず、実質的に申立人が負担することになります。もっとも、相続財産管理人は、定期的な管理業務というものがないことから、相続財産管理人に対する報酬は初めに納付した予納金の範囲内で認められ、追加の納付を命じられることは考え難いといえます。
以上からすると、本件のような場合、予納金については結果的に申立人が負担せざるを得ないことも承知の上で、損害賠償責任等のリスクを回避するために、相続財産管理人の選任の申立てをすることも選択肢の1つとして考えられます。

全員相続放棄しました。管理義務があるなんて誰も知らなかったのですが、この場合の管理義務は誰にあるのでしょうか?

法定相続人全員が放棄した場合は、相続放棄の時に現に相続財産を占有している者であって、最後に相続放棄した者に、相続財産管理人に対して当該財産を引き渡すまでの間、管理義務があります。

相続放棄したので管理をお願いしたいと叔父に伝えたところ、「自分も相続放棄するので管理はしない」と言われてしまいました。私が管理しなければならないのでしょうか?

このようなケースでは、現行民法では、相談者と叔父のどちらに管理義務があるのか明らかではありません。
改正民法では、相談者が相続放棄の時に相続財産を現に占有していて、その相続財産を叔父に引き渡した場合は、叔父が管理義務を負い、相談者は管理義務を免れます。
しかし、叔父が当該財産を占有しておらず、相談者からの引渡しも受けないまま相続放棄した場合は、叔父は管理義務を負わず、相談者が引き続き管理義務を負います。
相談者は、他の相続人又は相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、管理義務を負い、これらの者に引き渡せば、引き渡しのときに管理義務が終了します。

相続放棄したのに固定資産税の通知が届きました。相続しないのだから、払わなくても良いですよね?

固定資産税の課税では、課税者等を決定する期日に登記簿等に登録されていた人を土地の所有者として扱います。そのため、相続放棄をしても、課税者等を決定する期日に登記簿等に登録されていた人には、固定資産税の納税通知が届きます。
固定資産税を免れるためには、相続放棄をしたことを証明する書面を役所に提出する必要があります。

相続放棄後の管理義務についての不安は弁護士へご相談ください

相続放棄後の管理義務は、これまで述べたように、複雑な面があります。その仕組みや内容、具体的にどのような手続をすべきか等について、しっかりと把握した上で判断するためにも、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。ご不明な点や不安なこと等、どうぞお気兼ねなくご相談ください。

遺言書を作成する目的は、本来は相続人間のトラブルを予防することにあるはずですが、遺言書における遺産の分配方法に隔たりがある場合などには、遺言書の存在が相続人間トラブルの原因となってしまうこともありえます。遺言書に関して納得できないことがある場合などにはどのように対処していくべきなのかを説明していきます。

遺言書は絶対?納得いかない遺言書でも従わなければいけないの?

遺言は相続人が残した最後の意思表示となりますので、原則として尊重されるべきといえます。もっとも、遺言書自体が無効である場合など、遺言書があったとしても、必ずしも遺言書どおりに相続をしなくてもよいケースはあります。

相続人全員の合意が得られれば従わなくて良い

自筆証書遺言でも、公正証書遺言でも、相続人全員が合意するのであれば、遺言書と異なる相続をすることは可能です。もっとも、遺言書どおりに相続しないということは、相続人や受遺者の誰かの取り分が減り、その一方で、誰かの取り分が増えることに直結することがほとんどですから、相続人全員が合意して遺言書と異なる相続を行うことができるケースは珍しいといえそうです。

合意が得られなくても、遺留分を請求できる場合がある

遺言書どおりに相続が行われる結果、法定相続分を下回る取り分になってしまう相続人がいる場合、当該相続人は遺留分を請求できることがあります。遺留分とは、相続人に認められた最低限の取り分のことを指します。遺留分侵害額請求をすることができる場合でも、請求可能なのは金銭の支払いのみであって、不動産の取得などを求めることはできないので注意を要します。

遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

そもそも無効の遺言書であれば従わなくてよい

遺言は法定相続分に優先する強い効力を有する分、遺言書の作成にあたっては法律上に定められたルールを守って行う必要があります。自筆証書遺言であるにもかかわらず、遺言書本体が自筆で作成されていないとか、公正証書遺言ではあるものの、遺言者に遺言を作成するに足りる能力がない状態で作成されたといった場合には遺言書が無効になります。遺言書が無効になった場合、相続人が任意に遺言書の内容を踏まえつつ遺産分割をすることもできますが、原則としては法定相続分どおりに相続されることになります。

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遺言書の無効を主張したい場合は?

自筆証書遺言の筆跡が本人のものとは思えないなどの理由で遺言書の無効を主張したいと考える場合、相続人全員と話合いをして無効の合意を得ることが必要です。 相続人全員の合意が得られない場合には、遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を行うことになります。原則としては調停から行うことになりますが、当事者間の対立が激しい時には、調停から入らずに訴訟から始めることも可能です。なお、遺言無効確認訴訟は、あくまでも遺言書が無効かどうかを判断する手続ですので、訴訟の中で遺産の分割方法までは決まらないことから、訴訟で遺言書が無効と判断された後に遺産分割協議をしなければなりません。

納得いかない遺言書であっても偽造や破棄は違法に

遺言書の内容に納得がいかないからといって、遺言書を偽造したり、破棄したり、あるいは、隠匿してしまったりすると、当該相続人は相続人として資格を失い、相続欠格の状態となってしまいます。納得いかない遺言書があるとしても、きちんと法的手続きを踏む必要があるのです。

遺言書に納得いかない場合のQ&A

私は遺言書のとおりに分割したいのですが、納得いかないと言われてしまいました。話し合いが平行線なのですが、どうしたらいいでしょうか?

遺言書に納得いかない場合があっても、遺言書が有効であり、遺言執行者が選任されれば、遺言書に基づいて遺産を分割することができます。
そのため、相続人が遺言書に納得がいかず話し合いが平行線になった場合でも、遺産分割できないというものではありません。
ただ、遺言書に遺言執行者として誰がなるかについて記載がない場合には、遺言執行者の選任の申立てを家庭裁判所にする必要があります。
また、納得がいかないという内容が、遺留分すらも侵害しているということであれば、遺留分の侵害額相当分について支払いを行わなければならないでしょう。

愛人一人に相続させると書かれていました。相続人全員が反対しているので、当人に知らせず遺産を分けようと思いますが問題ないですよね?

相続人以外の受遺者として愛人の存在がある以上、相続人全員が同意したとしても、愛人に知らせずに遺言書と異なる遺産分割をすることは認められません。愛人が遺言書の存在すら知らない場合には事実上、遺言書と異なる遺産分割をしても問題ないまま終わることもあるかもしれませんが、事後的に愛人から遺産分割の有効性を争われる可能性が残ってしまいます。そのため、愛人が遺言書のことを知っている場合はもちろん、知らない場合でも、遺言書の内容を知らせないまま遺産分割をすることはおすすめはできません。

遺言書に納得がいかないのですが、遺留分程度の金額が指定されている場合はあきらめるしかないのでしょうか。兄は多めにもらえるため、このままでいいじゃないかと言っています。

遺留分が確保されているのであれば、遺言書が有効である以上、法的に請求できることは多くはありません。敢えて方法を挙げるとするならば、被相続人の生前の介護をしていた場合には自身の寄与分を主張したり、遺言書における受遺者が被相続人から生前贈与を受けている場合には特別受益を主張したりする余地はあるといえます。

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遺言書に関して納得いかないことがある場合、弁護士への相談で解決できる可能性があります!まずはご相談ください

遺言書の内容に納得がいかないとしても、実際に取るべき手段はケースによって様々です。遺留分侵害額を請求する期間は1年間と決まっていることなどから、遺言書の内容を速やかに分析して行動に移していく必要があります。遺言書の内容に納得いかない点がある場合、相続に詳しい弁護士に相談することで適切な第一歩を歩むことができるはずです。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。