遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

被相続人との関係が、残念ながら生前悪かったため、相続人には一切の財産をやらないという趣旨の遺言を残されてしまう場合もあると思います。また、被相続人が愛人に「ぞっこん」で、死ぬ前に自分の子や妻にではなく愛人に財産全てを贈与してしまったなんて場合もあるかもしれません。そのような場合に役立つのが、遺留分侵害額請求です。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、わかりやすく言えば、被相続人が処分した財産の一部を取りもどす制度です。
被相続人には、生前はもちろん死後に至っても、自らの財産を自由に処分する権利があります。生前は贈与など、死後は遺言、遺贈や死因贈与といった方法が考えられます。

一方で、被相続人がすべての財産を勝手に処分できるようになってしまうと、遺された家族は生活していけなくなってしまう危険もあります。
そこで、遺留分という制度を設け、遺留分を侵害するほどの財産の処分を制限し、遺された相続人に一定の財産を残せるようにしたのが、遺留分侵害額請求という制度です。

遺留分侵害額請求の方法

では、遺留分侵害額請求とは、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。以下では遺留分侵害額請求をする方法とその後の流れを解説していきたいと思います。

相手方に遺留分侵害額請求の意思表示を行う

遺留分侵害額請求の方法は、相続放棄とは異なり、裁判所に出向かなくても、口頭で遺留分を侵害している相手方、すなわち、被相続人から財産を渡された相手に対して言えば効力が生じます。
しかし、口頭では、後々言った言わないの水かけ論に発展することも予想されることや、遺留分侵害額請求は時間が経つと消滅してしまうことから、以下のように内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示をしましょう。

内容証明郵便について

内容証明郵便で意思表示を行うことにより、その内容で郵便を相手方に出したことが分かります。また、配達証明オプションをつけることにより、いつ相手に届いたかが分かります。そうすると、相手は、そんな内容の意思表示は知らない、受け取っていないなどと言えなくなり、確実に遺留分侵害額請求ができます。また、上記のように、遺留分侵害額請求は時間制限があるので、いつ届いたかが分かれば、時間制限内に遺留分侵害額請求を行使したことがわかります。

内容証明郵便の出し方は、下記の郵便局のHPをご覧ください。

https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

相手方と話し合う(協議)

内容証明郵便を発送し、遺留分侵害額請求権を行使したら、次はいよいよ相手方との交渉に入ります。
まずは相手方に任意で侵害額を支払うように交渉します。そして、その際には、請求側であればできる限りもらえる額が大きくなるように、遺贈された土地の価格が高価で、侵害額も大きいと主張したりします。

合意できたら和解書を作成し、遺留分を受け取る

何とか相手方が任意に支払ってくれるようになれば、和解をして、和解書を作成します。その際には、相手が約束を反故にしても大丈夫なように、強制執行ができるような文章の体裁にしておいた方がいいでしょう(公正証書で作成する場合ならなおさらです。)。また、後で作成したものであり、自分はそんな文書知らないなどと言われないためにも、公正証書として残しておくのも手ではあります。

合意できなかったら調停を行う

合意に至らなければ、調停を行うことになります。
調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所です。

調停では、調停官という第三者を交えて、相手方と交渉していくことになります。第三者が入るので、直接の交渉よりも相手を説得しやすい面もありますが、当然費用も掛かりますし、請求する側も請求される側も一方的に有利な合意はできないでしょう。

調停でも合意できなかったら訴訟する

調停でも合意が形成されない場合、訴訟という最後の手段に出ることができます。合意なんて形成できないから最初から訴訟をしたいという方もいるかもしれません。しかし、調停前置主義により、調停を挟まないと訴訟というステージに至れません。
訴訟では、もちろん裁判官の判断である判決を貰うという手もありますが、途中で和解するという形で終わることもあります。

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特別受益・生前贈与がある場合の遺留分侵害額請求の注意点

まず、特別受益とは、被相続人から共同相続人に対して、「遺贈」された財産、及び、婚姻や養子縁組のため、若しくは生計の資本として「贈与」された財産のことを言います。
生前贈与とは、主に相続対策で行われる、被相続人が亡くなる前に特定の者に、財産を贈与することです。

この、特別受益、生前贈与がされている場合、注意が必要です。なぜかというと、遺留分は前述のように、遺された相続人の生活を守ることが目的です。そうだとすれば、特別受益や生前贈与で財産を得ていたときは、遺産を事前に受け取っていたと判断され、遺留分が無くても大丈夫ということになります。そのため、特別受益や生前贈与を受け取っていると、遺留分が減額、最悪の場合なくなってしまうかもしれません。

複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っている場合

まず、遺贈を受けた者と生前贈与を受けた者に関しては、遺贈を受けた者に先に遺留分侵害額請求をします。そして、それでも遺留分を侵害されているときに、生前贈与を受けた者に対して遺留分侵害額請求をします。これは、遺贈が相続財産から支出されるのに対し、生前贈与は、相続財産になる前に生前の時点で支出されているので、侵害の程度が遺贈の方が大きいと考えられているからです。

そして、遺贈を受けた者、又は、生前贈与を受けた者が複数いるときは、遺贈、生前贈与の金額に応じた割合で負担します。

税金がかかるケース

まず、遺留分侵害額請求によって金銭を得ることになった相続人には、相続税がかかります。もし、すでに相続税の申告を遺留分侵害額請求の前にしていた場合、修正申告することになります。
逆に金銭を失った側の相続人は、相続税の負担が軽くなります。すでに申告済みであるときは、更正の請求をしてください。

また、遺留分侵害額請求を受けて、お金に代えて資産の移転を行った者は、譲渡所得税を負担することとなります。
逆に、資産の移転を受けた者に関しては、お金の額と同額で資産を取得したことになり、取得費として税務上計算されます。

請求には時効がある

前述のように、遺留分侵害額請求には、時間制限、すなわち、時効があります。具体的には、相続が始まったこと及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間遺留分侵害額請求を行使しないときは、遺留分侵害額請求をすることはできません。また、相続が開始したことを知らなくても、相続開始から10年経過したときも、遺留分侵害額請求をすることはできません。

もっとも、この時効は、遺留分侵害額請求の意思表示をするまでの期間であり、遺留分侵害額請求をして、遺留分を受け取るまで1年で済ませなければならないわけではありません。そのため、前述した内容証明郵便を速やかに送付するのが適切です。

遺留分侵害額請求のお悩みは弁護士にご相談ください

以上に述べたように、遺留分侵害額請求は、1年の時効という短い期間で遺留分侵害額があるかどうか判断し、遺留分侵害請求の意思表示をしなければ、相続が始まったからすぐに遺留分侵害額請求をしても、空振りをする恐れがあるばかりか、かえって、他の相続人などとの争いを加熱させる危険もあります。

そこで、遺留分侵害額請求については弁護士などの専門家に任せるのが安全と言えるでしょう。
弁護士は、遺留分侵害額請求の専門家で、交渉、調停、訴訟も任せることができます。

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この記事の監修

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼
弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長弁護士 沖田 翼
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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