取り下げ勧告からの相続放棄受理事例

相続問題

取り下げ勧告からの相続放棄受理事例

相続財産:
不明
倒壊寸前の建物に住んでいる等、負の遺産もしくは負債が大きいと思われる事案
依頼者の被相続人との関係:
相続人:
孫数人
争点:
相続放棄申述受理の可否
弁護士法人ALGに依頼した結果
相続放棄の申述に対する取り下げ勧告 相続放棄の申述受理

事案の概要

被相続人が死亡してから30年近くたっている事案です。被相続人の子であり、依頼者の父が死亡したことで、依頼者父の家を整理していたところ、被相続人が固定資産税の支払い義務となっている納税通知書が見つかりました。そのため、依頼者としては、被相続人名義の土地建物が残存しており、その処分をしなければならない(遺産の管理義務自体は相続人にあるため)と考え、被相続人の他の相続人である子、及び、その他孫数人に連絡をとり、遺産の処分について協議を行いました。被相続人が最後に住んでいた場所が、倒壊寸前の建物であったため、これが遺産であると考え、その解体費用などを他の相続人と協議を進めていました。ところが、他の相続人らから、弁護士を通じて、相続放棄をしたので、今後協議は行わないという連絡が来ました。その後、依頼者は相続人に連絡を取ろうとしたり、裁判所に対して、他の相続人の相続放棄の有無などを確認したりしていましたが、そうするうちに、時間がたってしまいました。

依頼者も相続放棄をしようと考え、自ら手続きを行いましたが、申述書の、相続を知った日について、前記納税通知書を発見した日を記載し(申述書の提出日よりも1年程度前の日付)、また、相続人間で遺産の処分に関する協議を行っていたこと等を記載してしまいました。裁判所としても、申述書の内容を前提とすると、自らが相続人であることを知った日から1年程度経過していたため、取り下げ勧告をするよりありませんでした。

その状況で、弊社にご相談にいらしたという事案です。

弁護方針・弁護士対応

受任後、今回の特殊な事情を説明する上申書を作成しました。その議論は非常に難解な法律論(再転相続における熟慮期間起算日の考え方についての議論、子世代の遺産分割協議未成立を把握した日と、子の一人の相続放棄申述受理日との関係についての議論、遺産を覚知するというのはどのレベルの事情が必要であるかという議論等)のため、記載は割愛しますが、10ページ程度に渡る上申書でした。

上申書提出後、裁判所より連絡があり、上申書の議論を前提としても、依頼者が別件で裁判所に提出した書面があり、その書面も上申書の内容と整合的に説明しなければ、申述は受理できないとのことでした。そこで、その書面を依頼者から取り寄せ、上申書の内容と整合するように理屈を構成し、再度上申書を裁判所に提出しました。

弁護士法人ALG&Associates

横浜法律事務所・相続案件担当弁護士の活動及び解決結果

2通の上申書の提出の結果、裁判所は相続放棄の申述を受理しました。

相続放棄の効果自体は、相続放棄の申述が受理されても、発生するわけではありませんが、事実上、相続放棄の申述が受理されたことの効果は大きいです(債権者から請求をされる可能性が非常に低くなります)。一方、失敗してしまったときのリスクは非常に大きいものといえます。相続放棄に関して、自身で手続きを取って取り下げ勧告がでた場合、通常は、その後申述が受理されるということはありません。ただ、このケースのように、取り下げ勧告がなされた場合でも、弁護士が適切に上申書を作成することで相続放棄の申述が受理されることがありますので、適宜ご相談いただくことをお勧めいたします。

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