立証責任

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

  • 立証責任

訴訟において、ある事実について立証責任を負うのは、紛争当事者のうちどちらか一方です。では、医療訴訟を提起したとき、患者と医療機関側のどちらが医療過誤の有無を立証するのでしょうか?

本ページでは、立証責任の概要から医療訴訟における過失と因果関係の立証責任について説明します。

立証責任とは

民事訴訟には、「立証責任」という考え方があります。

民事訴訟において、判決の基礎となる事実については、審理を経てその存否を確定する必要があります。しかし、当事者が証拠を提出し、審理を経ても、なお裁判官がその事実の存否を判断できない場合があります。この場合に、裁判官は判決をせず紛争を放置すべき、という考え方もあるかもしれません。が、そういうわけにもいかず、裁判官は、その事実が存在しないこととして判決をします。その結果、その事実が存在して欲しかった方の当事者は損をするのですが、このことを称して「立証責任とは、ある事実が真偽不明の場合に、判決において、その事実を要件とする自己に有利な法律効果の発生が認められないことになる一方当事者の危険又は不利益」をいいます。

そして、このことは、いわば、自分に有利な事実は、自分で証拠を出して証明しなければならないということを意味します。医療訴訟でいえば、損害賠償請求権の発生を基礎付ける事実は患者側が、一方、消滅時効の成立などは、医療機関側が立証することになります。

医療訴訟における立証

医療訴訟において、損害賠償請求を行う患者側は、医師・医療機関の①過失(もしくは債務不履行)、②患者に生じた損害、及び③①と②の因果関係(①が原因で②が生じたということ)を立証しなければなりません。

過失(債務不履行)の立証

「過失」とは、一般的には、結果の発生を予見でき、それを回避することができたにもかかわらず、不注意等により、回避措置を怠ったことをいいます。医療訴訟では、なされた医療行為が、医師が職務上負っている注意義務の水準に満たない場合や、そもそも、この水準に適合した医療行為がなされなかった場合に、過失が肯定されます。もっとも、この過失判断の前提となる注意義務の水準は事案ごとに異なります。そのため、患者側としては、当該事故当時、医療機関側に、いかなる水準の注意義務が求められていたのかについて、個別具体的状況に照らして主張し、過失を基礎づける事実を立証しなければなりません。

一方、「債務不履行」は医療機関側が患者との診療契約において期待された診療を怠った、つまり診療契約上負っている債務を果たさなかった場合に認められます。この際にも、過失と同様に、患者側は医療機関側の債務不履行を基礎づける事実を立証しなければなりません。もっとも、過失判断の基礎になる注意義務の水準と債務不履行の判断の基礎となる診療契約上の債務の水準は、実質的には同一の水準であると解されています。

因果関係の立証

「因果関係」とは、患者に生じた損害が、医療過誤(過失または債務不履行)によって生じたということを意味し、患者側が立証責任を負担します。

例えば、患者が死亡してしまった場合に、その死亡という結果が、医療機関側の過失によって生じていることを立証しなくてはなりません。つまり、仮に治療行為において医療機関側に過失があったことを立証できても、患者の死亡が別の原因で生じた可能性もある場合には、過失と死亡との間の因果関係が認められず、医療機関側へ損害賠償を請求できない場合があるということになります。患者側は、医療機関側の過失を立証するだけでなく、その過失行為が患者を死亡に至らしめたことまでも立証しなければなりません。

この因果関係について、どの程度まで立証すれば「過失と結果(死亡等)の間に因果関係がある」と認められるのかが問題となります。

この問題について、最高裁判例(ルンバール事件)は次のように判断しています。

すなわち、因果関係の証明は「一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる」(最高裁 昭和50年10月24日第2小法廷判決)と判示しています。

つまり、因果関係の証明には、自然科学的証明までは必要なく、高度の蓋然性を証明すればよいことになります。例えば、死亡事件を例に分かりやすく言うと「自然科学上完全にそうだと判断できなくても、その医療ミスがなければ、ほぼ間違いなく患者は生存していたであろうこと」を立証すれば良いということになります。

この記事の執筆弁護士

弁護士 真鍋 敬治
弁護士法人ALG&Associates 弁護士 真鍋 敬治
東京弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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