監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
離婚をしたいけれど、離婚届の書き方が分からないという方も多いかもしれません。
離婚届の提出は協議離婚においては必須であり、離婚について合意に至っただけでは離婚はできず、離婚届を提出してはじめて離婚が成立します。
せっかく協議が成立しても、離婚届の提出で手間取ってしまっては大変です。
今回は、そんな離婚届に記載する事項のうち、特に証人欄にフォーカスして注意点等を説明します。
目次
離婚届を出す際は証人が必要
離婚届の受理について、民法765条は、離婚届が民法739条2項やその他の法令の規定に違反しないこと等を認めた後でなければ、受理することができないと定めており、民法739条2項は、離婚の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面又はこれらの者から口頭でしなければならないと定めています。
すなわち、離婚届は成年の証人2人以上が署名をしなければ受理されないことが原則なのです。
証人になれる人の条件
前述しているように、証人となるためには、成年であること、すなわち年齢が18歳以上であることが必要です。
また、証人は当事者以外の第三者でなければなりません。
しかし、そのほかに条件はないため、家族のみならず、知人や友人でも証人になることができます。また、極端な例では、赤の他人であっても全く構わないということになります。
証人が不要になるケース
離婚届の証人欄の記載は、調停離婚や裁判離婚など家庭裁判所での手続きを経て離婚した場合には不要であるとされています。
調停離婚や裁判離婚の場合は、離婚にあたって裁判所という第三者が介入し、離婚すべきか否かの判断や離婚にあたっての条件について慎重に検討されたものであることが明らかであって、証人の関与を求める必要がないためです。
証人は保証人とは違う
離婚届における証人は、夫婦の離婚の意思を確認し、離婚届が当事者双方の合意に基づいて作成されたものであることを証明する者をいいます。
一方で、保証人とは、民法において、保証契約を締結し、主たる債務者がその債務を履行しない場合にその債務を履行する責任を負う者をいいます。
すなわち、借金の保証人になるという場合のことです。
したがって、証人と保証人は、言葉は似ていますが、全く別の概念です。
離婚届の証人が必要な理由と役割
離婚は、夫婦関係を解消することで、子の監護環境や財産状況等に大きな影響を及ぼす重大な事項です。また、離婚は当事者双方の意思がなければ成立しないのが原則です。
そこで、離婚届の作成に第三者を関与させることによって、そのような重大な事項の判断を慎重に行わせ、当事者の一方からの不当な働きかけや、当事者間の誤解によって離婚届を提出することを防止するために、証人欄を設け、第三者に関与させる取扱いとしています。
また、証人を2人以上必要であるとすることで、署名の偽造のリスクを下げ、当事者の意思のない離婚届の提出を防止する意味もあります。
証人が見つからない場合の対処法
離婚することを家族や友人に相談しづらい場合等、どうしても証人欄を記載してくれる人が見つからなかったり、すぐに離婚届を出したいのに、すぐに書いてくれる人がいないということもあるかもしれません。
しかし、だからといって、証人欄を当事者自身が記載することは認められません。
仮に他人の名前を当事者自身が証人欄に記載した場合、私文書偽造罪(刑法159条1項)や、偽造し文書行使罪(刑法161条1項)に問われるおそれがあります。
ネット上には、証人欄の署名をするサービスを行っている業者もありますが、このような業者は弁護士と異なり、守秘義務を負っていないため、住所等の個人情報が漏洩するリスクがあることに注意が必要です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
証人の欄の書き方と記入時の注意点
証人欄に記載が必要な事項は、署名、生年月日、住所、本籍となります。
署名は必ず苗字も名前も省略せず、フルネームを住民票や戸籍謄本に記載されている漢字のとおりにご記載いただく必要があります。
また、住所や本籍地はそれぞれ住民票や戸籍謄本の記載通りにご記載いただく必要があります。
特に、本籍地を正確に把握されていない方もいらっしゃると思いますので、証人の方にも戸籍謄本を事前にご用意いただくことで、記載に不備があったために受理されない等の事態を防ぐことができます。
証人欄の不正記入・代筆のリスク
前述のとおり、証人欄に他人の名前を記載した場合、離婚届が受理されないリスクがあるのみならず、私文書偽造罪(刑法159条1項)や、偽造し文書行使罪(刑法161条1項)に該当するおそれがあります。
また、証人欄は、証人が署名することができないと市町村長において認めるときは代筆を許すとされているものの、手が不自由で署名ができないなどの正当な理由がある場合に限られることに加え、書面にその事由を記載しなければならないとされています。
離婚届の証人に関するQ&A
離婚届の証人欄に記入してほしいと頼まれました。引き受けたらリスクはありますか?
証人は前述のとおり、保証人とは全く異なる概念です。単に、当事者の離婚の意思を証するにすぎず、法的な義務や責任を負うということはありません。
したがって、リスクはほとんどないと言ってよいでしょう。
ただ、夫婦間の離婚の問題に関与することになることや、証人欄に住所等の個人情報を記載することによる付随的なリスクとして、夫婦間のトラブルに巻き込まれたり、いやがらせを受ける可能性が全くないとはいえません。
友人の名前を貸してもらえることになりました。離婚届の証人欄に自分で書いても良いですか?
仮に、友人が自身の名前を証人欄に離婚の当事者が代筆して記載することを許したとしても、前述のとおり、代筆は例外的な場合以外は許されないため、離婚届が受理されないおそれがあります。
したがって、友人が代わりに書いてほしいと言ってきたとしても、友人本人に書いてもらう必要があります。
証人を頼める人がいません。役所の窓口の人に頼むのはアリですか?
理論上は、役所の窓口の方でも証人になり得ますが、一方で、証人欄には住所や本籍といった重要な個人情報の記載が必要であるため、役所の窓口の方が証人欄を書くことを承諾してくれる可能性は低いと思われます。
ご自身の知人や職場の方など協力してもらえる方が身近にいないかどうか、今一度ご検討ください。
離婚についてお悩みの方は弁護士にご相談ください
弁護士にご相談いただければ、今回取り上げたような離婚の手続きに関するお悩みのみならず、離婚の条件の精査や離婚交渉のアドバイスなど多岐にわたってサポートをさせていただくことが可能です。
離婚をお考えの際は、離婚について経験豊富な弁護士法人ALG&Associatesのご利用をぜひご検討ください。

-
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
