アルコール依存症を理由に離婚できる?

離婚問題

アルコール依存症を理由に離婚できる?

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

配偶者がアルコール依存症である場合、アルコール依存症であることを理由に離婚は認められるでしょうか。アルコール依存症の患者数には日本国内で80万人以上にものぼるといわれています。

人によっては家族に対して暴力を振るってしまったり、暴言を吐いてしまったりすることがあるため、アルコール依存症の配偶者との離婚を希望する事例は珍しくないでしょう。アルコール依存症との配偶者の離婚について、以下解説していきます。

アルコール依存症を理由に離婚できるのか

合意できればもちろん離婚できる

離婚は大きく分けると、合意により離婚する場合と、裁判官の判断により離婚する場合に分類できます。

離婚に合意して離婚届を役所に提出することにより離婚が成立する協議離婚と、家庭裁判所の離婚調停という手続きの中で合意して離婚が成立する調停離婚の場合は、双方が同意すれば離婚できます。

そのため、合意が成立すれば、アルコール依存症の配偶者とも離婚することができます。

合意できず裁判まで発展した場合は…

他方、合意による離婚ができなかった場合には、離婚訴訟を提起して裁判所に強制的に離婚を認めてもらうしかありません。離婚訴訟において、裁判官が離婚を認めるためには、民法770条第1項第1号から第5号に定める離婚事由の存在が認められる必要があります。

このうち、アルコール依存症の配偶者を被告として離婚請求する場合には、多くの事案では、第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として主張を展開することになることが多いです。

訴訟における主張の中で、配偶者のアルコール依存症により被った被害等について詳細に主張し、裁判官の判断を仰ぐことになります。

離婚の同意が得られなければ別居してみる

「婚姻を継続し難い重大な事由」としてアルコール依存症による被害等を主張していくことになりますが、他方で、そのような配偶者と同居したままの状態でいると、「同居可能なわけであるから、婚姻関係が破綻しているとは評価できず、婚姻を継続し難い重大な事由は認められない」という判断に傾く可能性があります。

そのため、多くの事案では、別居をした上で離婚請求をすることが多いです。離婚について合意が得られず離婚訴訟も含む法的手続きを視野に入れなければならない場合には、離婚前に別居を開始することを検討した方がよいでしょう。

アルコール依存症を理由にした離婚で慰謝料請求できる?

アルコール依存症というだけでは慰謝料は認められにくい

離婚訴訟の中で離婚慰謝料を請求する場合、配偶者がアルコール依存症であるというだけでは、裁判官が離婚慰謝料の支払いを認める可能性は高くないと考えられます。

請求自体は可能ですが、裁判官が離婚慰謝料を認めるハードルは高いものと考えられます。アルコール依存症であるということだけでなく、その結果として暴力行為等があったなどの事情が必要となることが多いです。

モラハラやDVを受けているなら請求できるけど証拠が必要

アルコール依存症の配偶者からモラハラやDVを受けるというケースもあります。モラハラやDVという形で被害を受けている場合に、離婚慰謝料を請求することが考えられます。

モラハラやDVにより裁判官が離婚慰謝料を認めるケースはあると考えられますが、継続的に被害を受けているということがわかる詳細かつ客観的な証拠が必要です。写真や日記、診断書といった証拠の収集を心がけましょう。

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アルコール依存症の配偶者に離婚慰謝料を請求する流れ

アルコール依存症の配偶者に離婚慰謝料請求をする場合、他のケースでも基本的には同様ですが、まずは協議や調停の場で離婚慰謝料の請求をしてみましょう。

これらの手続きでは合意さえ成立すれば、相手方が離婚慰謝料の支払いをしてくれます。合意が成立せず、離婚訴訟に至った場合には、離婚慰謝料の請求を正式に裁判所に申し立てる必要があります。

そして、裁判官が、提出された証拠をもとに慰謝料を認めるか否か、認めるとして金額を判断します。

アルコール依存症が理由の離婚に関するQ&A

アルコール依存症の妻でも、離婚時に親権を獲得する可能性はありますか?

離婚訴訟において、親権者の指定について合意が成立しない場合には、裁判官が親権者を定めることになります。このとき、アルコール依存症の妻でも親権を獲得する可能性はあります。他方、症状の程度や生活能力、従前の監護に携わってきた程度等次第では、妻を親権者として指定せず、夫を親権者として指定するということも十分に考えられます。

アルコール依存症の配偶者からの暴力で離婚し、慰謝料を請求しましたが支払ってもらえません。義両親に支払ってもらうことはできますか?

離婚訴訟において当事者となれるのは、あくまで夫と妻だけです。したがって、アルコール依存症の配偶者からの暴力について、裁判官が離婚慰謝料を認めた場合には、あくまでその配偶者の財産に対して強制執行ができるのみで、配偶者の両親の財産に強制執行ができるわけではありません。 他方、離婚協議をするにあたり、任意に配偶者の両親が、自身らの子の暴力について慰謝料を支払うということで合意をしたのであれば、配偶者の両親から慰謝料を支払ってもらうことが可能です。

アルコール依存症の配偶者とスムーズに離婚するためには、弁護士にご相談ください

アルコール依存症の配偶者の場合、ケースによっては、協議をすること自体困難なこともあります。

そのようなケースでも離婚手続きを進めることは可能ですが、調停や訴訟等の法的手続きが必要になってきます。裁判所を利用したことのある人は稀でしょうから、スムーズに離婚を実現させるためにも、裁判所手続きに精通した弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。