監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
離婚の際に揉めやすい問題のひとつに、子供に関する決め事があります。特に面会交流は、親権や養育費と並んで特に争いになることが多い問題でしょう。後々大きなトラブルに発展することを避けるためにも、面会交流についてはあらかじめしっかり取り決めておくことが重要です。
そこで今回は、離婚するにあたって決めておくべき面会交流のルールについて、取り決める際の流れやルールが守られなかった場合の対処法、取り決め後に事情が変わった場合の対応など、詳しく解説していきます。
面会交流とは
面会交流とは、別居・離婚などを理由に子供と離れて暮らしている親が子供と交流することをいいます。直接会って話をしたり遊んだりすることはもちろん、電話や手紙のやりとりなどで交流する方法もあります。
面会交流は、子供が両親から愛情を受けて健やかに成長できるようにすることを目的としているので、基本的に子供のための制度といえます。そこで、面会交流を行う際には、子供の気持ちやスケジュール、生活リズムを尊重するなど、子供の利益を一番に考える必要があります。
そのため、子供が面会交流で身体的に暴力を受ける危険や、精神的な虐待がなされる可能性が高い場合など、面会交流が子供の利益にならない場合には行うべきではありません。
面会交流ができるのは何歳まで?
面会交流は、一般的に、親の監護権が及んでいる間、つまり成人する20歳(成人年齢が引き下がる2022年4月以降は18歳)まで行うことができます。
ただし、子供が大体10歳以上になると、家庭裁判所は子供の意思を重視して面会交流の可否を決定するようになる傾向にあるので、親の一存では面会交流が実現しない可能性があります。また、親の影響を受けずに自分の意見をしっかりと表せる年齢(大体15歳以上)になったときに、子供がはっきりと拒否している場合には、面会交流が認められない可能性が高いでしょう。
別居中でも面会交流はできるのか
面会交流は、離れて暮らしている親子が交流するものであり、離婚しているかどうかは問いません。そのため、離婚調停中など、夫婦が別居しておりどちらかが子供と一緒に暮らしていない状態であれば行うことができます。
ただし、離婚後の面会交流と同様に子供の利益を第一に考えなければならないので、ある程度以上の年齢の子供が明らかに拒否しているケースや、面会交流を行うことで子供に危害がおよぶケースなどでは面会交流はできません。
面会交流について決めるべきルールとは
面会交流を安心して行うためにも、離婚時に細かいルールを取り決めておくことが重要です。具体的には、以下の事項について取り決めておくと良いでしょう。
面会頻度
文字どおり、面会交流を行う頻度です。確実に面会交流を行うためにも、しっかりと決めておきましょう。
月に1回、2週に1回など自由に決められますが、子供の年齢や成長度合いを考慮して、負担にならない間隔にすることが大切です。
面会時間
スムーズに面会交流を行うためにも、一回あたりの面会交流の長さや、面会交流の開始・終了時刻を取り決めると良いでしょう。
面会場所
必ずしも面会交流の場所を決める必要はありませんが、トラブルを防ぐためにも、事前に面会場所を決めておいたり、場所の決め方を取り決めておいたりすると良いでしょう。
一般的に、公園やレストラン、遊園地、自宅などが面会場所とされるケースが多いです。
当日の待ち合わせ方法
面会交流の当日に子供と合流する方法は、必ず取り決めましょう。離れて暮らす親が直接家まで迎えに来る、時間を決めて面会場所の最寄り駅などで待ち合わせる、子供を監護している親(監護親)に面会場所まで送ってもらうなど、いろいろな方法が考えられます。
連絡方法
面会交流の日程調整や詳細について打ち合わせができるように、SNSやメール、電話など、面会交流に関する連絡をとるための方法を決めておくことも大切です。
なお、面会交流に関する連絡は、基本的に父母でやりとりすることが想定されています。とはいえ感情的になってしまうなど、父母同士ではやりとりが難しい場合は、親族や弁護士といった第三者に仲介してもらうことをおすすめします。
学校行事への参加
入学式や授業参観、運動会、文化祭といった子供の学校行事に参加できるかどうか、参加できる場合には詳細なルールについて決めておくことで、後々のトラブルを回避できます。
プレゼントやお小遣い
プレゼントやお小遣いを渡して良いか、渡す時期や金額の目安などについて決めておくことも重要です。
高額なプレゼントを頻繁に受け取るのは、子供の成長にとってプラスになるとは言い切れません。そこで、通常の面会交流ではプレゼントやお小遣いを渡すことを禁止するものの、誕生日やクリスマスなどの節目の時期には認めるなど、ルールを設けておくべきでしょう。
対面以外の交流方法
直接会って交流することが難しい場合には、SNSのメッセージや手紙、写真のやりとり、電話やテレビ電話での通話といった間接的な方法で交流するよう取り決めることもできます。
宿泊について
「子供と離れられない」といった理由で、面会交流中に突然子供を宿泊させたりすると、監護親の心情を害して大きなトラブルに発展しかねません。
こうしたトラブルを回避するためにも、宿泊を伴う面会交流の可否やその時期、日程や宿泊場所の調整方法などのルールについて、しっかりと取り決めておく必要があります。
祖父母の面会交流
面会交流を行う権利は基本的に子供のものですし、面会交流の相手は離れて暮らす親に限られています。つまり、祖父母には面会交流をする権利は認められていません。
しかし、祖父母が面会交流の場に立ち会うことや、面会交流の際に子供と一緒に祖父母の家に行くことはできるので、面会交流の機会に祖父母も子供(孫)と交流を図ることは可能です。
とはいえ、監護親に知らせずに子供を祖父母に会わせると、トラブルになってしまう可能性もあるので、あらかじめ祖父母の立ち会いについて話し合っておくと良いでしょう。
面会交流を決める際の流れ
面会交流について取り決める際には、まず夫婦で話し合って合意を目指します。
話し合いで解決できそうになければ、家庭裁判所に面会交流調停を申し立て、裁判所の助言を受けながらさらに話し合います。
それでもまとまらず、調停が不成立になったら自動的に面会交流審判に移行し、裁判所が面会交流の可否やルールについて取り決めることになります。
面会交流のルールが取り決められたら、子供との関係性などによっては支援団体の仲介を受けつつ、面会交流が行われます。
まずは夫婦間での話し合い(協議)
面会交流のルールは、離婚時に夫婦間での話し合い(協議)によって決めるのが基本です。
二人の間で面会交流のルールを自由に決められる代わりに、客観的な第三者がいないので、揉め始めるとなかなか合意するのが難しいという問題があります。
また、口約束しただけ、合意内容をメモに書き留めただけでは、後で「言った・言わない」のトラブルになる可能性があります。
話し合いで面会交流のルールが決まったら、夫婦で公証役場へ行き、合意内容を公正証書に残しておくことをおすすめします。
話し合いで決まらない場合は面会交流調停へ
夫婦間の話し合いでは合意できず、面会交流のルールが決まらない場合は、家庭裁判所の面会交流調停を利用しましょう。なお、調停は離婚前でも離婚後でも利用することができます。
面会交流調停は、家庭裁判所の調停委員が話し合いを仲介して、面会交流の詳細について夫婦が合意できるように調整していきます。場合によっては、心理学・社会学などの人文諸科学の専門家である家庭裁判所調査官が両親や子供と面談したり、試験的な面会交流に立ち会ったりすることもあります。
調停委員は一般的に調査官の調査報告を重視するので、調査官作成の報告書に基づく内容で調停が成立することが多いです。
とはいえあくまで調停は合意で成否が決まるので、どうしても夫婦で合意できない場合は、面会交流審判に移行して裁判所の判断に委ねることになります。
面会交流を拒否する正当な理由がないのに取り決めどおりに面会交流が行われない場合には、履行勧告の申出や間接強制の申立てをして、約束の遵守を相手に求めることになります。
なお、面会交流を拒否する正当な理由としては、次のようなものがあります。
- 面会交流によって、子供が精神的な虐待や暴力にさらされる危険がかなり高い。
- ある程度以上の年齢の子供(10歳以上)がはっきりと拒否しており、拒否の理由に寄り添った十二分な配慮をしても拒否が維持されている。
※履行勧告…調停や審判で取り決めた内容を守らない相手に対して、取り決めを守るように家庭裁判所から相手方に働きかけてもらう制度
家庭裁判所に申し出ることで、家庭裁判所の担当者が面会交流を拒否する相手方に書面や電話で連絡し、事情を聴き取ったうえで面会交流が実施できるように調整してくれます。ただし、法的な強制力はありません。
※間接強制…調停や審判で取り決めた内容を守らない相手に対して、取り決めを守るまで一定額を支払うよう命じて心理的なプレッシャーを与え、取り決めを実行するように促す制度
面会交流に関する調停調書や審判書など、法的な強制力がある書類で面会交流について取り決めている場合、裁判所に間接強制を申し立てることができます。ただし、面会交流のルールについて、かなり詳細に取り決めている必要があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
取り決めた面会交流を拒否したい場合
面会交流は子供の健やかな成長のために欠かせないものですし、子供の権利なので、親が一方的に拒否することはできません。ただし、面会交流をすることで逆に子供の健やかな成長が害される場合には、例外的に面会交流を拒否することができます。 具体的には、以下のようなケースです。
- ある程度以上の年齢の子供が、自分の意思ではっきりと面会交流を拒否している
※このパターンの場合は、単に「子供が嫌といっている」とだけ伝えれば面会交流を拒絶できるというものではありません。「なぜその子が面会交流を嫌がっているのか」の理由部分に踏み込み、子が面会交流に前向きになれるように同居親の方で、配慮と対応をすることが求められます。 - 面会交流時に虐待される危険が相当程度ある
- 面会交流の際に子供が連れ去られる危険がかなり高い
なお、上記のようなケースでも、相手からの連絡を無視するなど一方的に面会交流を拒否するべきではありません。まずは相手ときちんと話し合い、面会交流を実施しない旨の同意を得るようにしましょう。
夫婦同士の話し合いでは解決が難しいようなら、弁護士に話し合いに立ち会ってもらったり、家庭裁判所の面会交流調停(審判)を利用したりといった対応をご検討ください。
面会交流と養育費の関係
面会交流と養育費は、法的な根拠や制度の目的がまったく異なるものです。そのため、「養育費が支払われないなら面会交流は行わない」「面会交流が行われないなら養育費は支払わない」というように、それぞれを交換材料とすることは認められません。
面会交流は、基本的に子供のための制度ですから、親の一存で実施する・しないを決めるべきではありません。当然のことながら、「養育費を支払いたくないから面会交流を実施しなくていい」といった主張も通りません。
再婚した場合の面会交流
親が再婚しても、親子という関係は変わりません。また、子供の健やかな成長のためには、両親との愛情ある交流が必要なことにも変わりありません。したがって、監護親や離れて暮らす親(非監護親)が再婚した後も、再婚を理由に面会交流を止める必要はありません。
たとえ再婚相手が面会交流に反対したとしても、子供のためを考えて面会交流を続けるべきでしょう。
ただし、子供の意思を何より尊重すべきなので、子供が本心から面会交流を拒んでいる場合は面会交流を止めるべきです。
再婚相手が面会交流に同席することを希望した場合も、まずは子供の意思を確認することが重要でしょう。
再婚後の面会交流については、面会交流が本来誰のための制度であるのかを忘れずに、冷静に対応する必要があります。
面会交流で不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう
面会交流は子供の大切な権利であり、子供の利益を第一に考えてルールを決めるべきですが、夫婦の感情と完全に切り離して考えることも難しい問題です。
離婚や別居することになった事情によっては、「面会交流させたくない」と思うこともあるでしょう。また、逆に「どうしても子供に会いたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、自分の感情だけに流されずに、「何が子供にとって最善なのか」を考えて冷静に話し合うことが重要です。
面会交流について少しでもご不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。お子様とご相談者様にとって、最善の未来へと続く道を探すお手伝いをさせていただきます。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)