遺留分放棄とは?生前と相続開始後で異なる手続き方法について解説

遺留分放棄とは?生前と相続開始後で異なる手続き方法について解説

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

相続トラブルに直面した時、「遺留分」という言葉を見かけたことはありませんか。 よく、「相続人の最低限の取り分」などと説明がなされていますが、具体的に、 誰が、何を、いくら、どのように受け取ることができるのでしょうか。以下で解説していきます。

「遺留分」は放棄できるのか?

遺留分については、相続が始まった後であれば、制限なく放棄ができます。 相続がはじまる前にも放棄はできますが、その場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。 これは、他の相続人から遺留分の放棄を強制されることを防ぐためです。

そもそも遺留分とは

一定の範囲の親族が取得できる、遺産の最低限の割合のことをいいます。
親族であればだれでも取得できるわけではなく、兄弟姉妹を除く相続人が取得可能です。
最低限の「割合」ですので、具体的に、「金○○万円」と固定で決まっているわけではありません。

遺留分放棄とは

自身の持つ遺留分については、相続が開始する前であれば、家庭裁判所の許可を求め、認められれば放棄できます。
相続を開始した後であれば、特に家庭裁判所の許可なく、遺留分を放棄できます。
相続放棄とは異なり、相続権そのものを手放すわけではないため、相続をする場面というのはまだあり得るということとなります。

遺留分放棄のメリット・デメリット

メリット

遺言書の内容がそのまま実現しやすくなると言えます。
遺留分がある状態ですと、遺言の内容によっては、遺留分を侵害することがあり得るため、後日トラブルが発生しやすくなります。
その可能性を0にできる点で遺留分の放棄には遺言を残す人にとってメリットがあります。

デメリット

遺留分の放棄を一度してしまうと、原則として撤回できないため、慎重に検討をする必要があります。
なお、相続開始前の遺留分の放棄の場合には、基本的に代償が必要と言われており、手続が少し複雑化することもデメリットと言えばデメリットでしょう。

相続開始前(生前)に遺留分放棄する方法

まず、家庭裁判所に遺留分放棄の申立てをし、家庭裁判所から示される審問期日に家庭裁判所で審問を受ける必要があります。審問とは、裁判官が申立人に事情を聞く手続と考えればよいかと思います。
後日、家庭裁判所から遺留分放棄の許可がおりた場合には申立人に通知されます。

遺留分放棄の手続きの流れ

相続開始前に遺留分の放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要ですが、 相続開始後であれば家庭裁判所の許可は不要です。

家庭裁判所が遺留分放棄の許可を出す要件

家庭裁判所は、権利者の自由意思、放棄理由の合理性・必要性、放棄と引き換えの代償の有無などを考慮し総合的に判断をします。

①本人の自由な意思に基づいているか

遺留分の放棄は、本人(遺留分の権利を持っている人)の自由な意思に基づいて行われていることが必要です。
被相続人や兄弟から威圧を受けたり、脅されたりして放棄を強要されていた場合には、本人の自由な意思による放棄とは言えないため、放棄は認められません。

②遺留分放棄をする合理的な理由があるか

相続開始前の遺留分の放棄にあたっては、合理的な理由が必要となります。単なる好悪の感情だけでは認められません。
例えば、
●遺留分権利者がもともと、被相続人から経済的援助を受けていた場合
●遺留分権利者の生活が安定しており、遺留分が紛争の火種となることを遺留分権利者が回避したいと考えているような場合

③放棄する遺留分と同等の代償があるか

遺留分の放棄にあたっては、放棄と引き換えに同等の財産を得ていることが必要となります。
この「同等の財産」というものは過去に受けたものでも差支えありません。

生前に書いた遺留分放棄の念書は有効か?

生前の書いていたとしても、生前に家庭裁判所の許可がなければ遺留分放棄の念書は有効にはなりません。

遺留分放棄を撤回することはできるか?

原則として認められません。
もっとも、遺留分放棄の前提として、放棄が詐欺や強迫などによって認められる場合は取消できる可能性があります。この場合には、家庭裁判所に対して、遺留分許可の取り消しの申立てを行い、裁判所により職権で許可を取り消してもらう必要があります。

相続開始後(死後)に遺留分放棄する方法

相続開始後に遺留分放棄をする場合には、相続開始前とは違い家庭裁判所の関与を必要としません。
もっとも、金銭にかかわることですから、紛争を予防する観点から書面で放棄の意思表示については明確にしておいた方がよいでしょう。
遺留分放棄の場合には、相続放棄と異なり、遺留分を除いた相続財産に対する相続権が残ってしまいますから、一切の相続権を放棄したいということであれば相続放棄の手続きを家庭裁判所で行う必要があります。

遺留分放棄に期限はあるのか?

相続開始後の遺留分放棄は、家庭裁判所への申立て等の手続きは必要なく、放棄の期限は設けられていません。
もっとも、遺留分を主張するための遺留分侵害額請求そのものには、期限が定められているため注意が必要です。

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「遺留分放棄」と「相続放棄」の違い

遺留分放棄では、放棄するのは遺留分だけですので、相続人としての地位は残っている状況となります。
したがって、遺留分を超える分については未だに相続することができるという結論となります。
相続放棄では、相続人としての地位を放棄することとなり、初めから相続人ではなかったこととして扱われます。

遺留分放棄すべきかどうかで判断に迷ったら、まずは弁護士にご相談下さい。

遺留分の放棄にあたっては、そもそも何の為にするか、どのタイミングでするかによって、手続きが変わってきます。
遺留分放棄が問題となる場面は通常、相続トラブルが発生する可能性のある難しい局面です。迷ったら、まずは弁護士に相談ください。

ある程度年齢を重ねると、相続の準備として遺言書の作成を検討される方も多いかと思います。
今回は公正証書遺言という、手間がかかる一方で確実に残せる方式の遺言をご紹介します。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場において、証人、本人、公証人立ち合いのもと作成される遺言書です。
公証人は元裁判官等といった人であるため、遺言書が不備により無効となることはありません。また、厳重に保管されますので、偽造や改ざんのおそれがありません。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言には他の遺言と比較してどんな長所があるのでしょうか。

紛失、偽造、変造のおそれがない

まず、公正証書遺言は作成後、厳重に保管されるため、第三者による紛失、偽造、変造のおそれがありません。

遺言書開封時の検認手続きが不要

公正証書遺言は作成にあたり公証人のチェックを受けるため、家庭裁判所での検認手続が不要というメリットがあります。

自筆できない人でも作成できる

公正証書遺言の内容は事前に文案を公証役場に提出しチェックを受けた上で、作成当日は確認のみが基本です。 したがって、自筆ができない人でも遺言書を作成できるというメリットがあります。

公正証書遺言のデメリット

作成に時間や費用がかかる

公正証書遺言を作成するにあたっては、公証役場に、文案を提出し、公証人のチェックを経なければなりません。
そしてチェックをパスしたとしても、本人や証人、公証人が一同に会する日の日程調整をしなければなりませんので、実際の作成日はどうしても数か月先ということになりやすいです。

2名以上の証人が必要となる

公正証書遺言の作成にあたっては2名以上の証人が必要となりますので、この証人たちの手配と、公証役場に集まる日程を調整しなければなりません。
少なくとも、本人、公証人、証人2人の合計4人の日程を調整するため、大変です。

公正証書遺言を作成する流れ

①証人2人の手配
②必要書類を整える(戸籍謄本や、印鑑証明、財産に関する書類等)
③遺言をする人(遺言者)と証人とで公証役場へ出向き打合せをする。
④公正証書遺言を公証人に作成してもらう。
⑤間違いがないことを確認し、遺言者、証人、公証人にて署名押印する。
⑥手数料を公証人に支払う

遺言書に書きたい内容のメモを作成する

まず、公証人と打合せをするために、どんな内容の遺言としたいか、メモを作成してまとめておきましょう。

必要書類を集める

公正証書の作成にあたり、以下のような書類が必要となります。
詳細は公証役場にご確認ください。

内容 必要書類
遺言者本人を証明するもの ・遺言者本人の印鑑登録証明書や運転免許証、マイナンバーカード等写真付証明書
・遺言者本人の実印
相続人との続柄が分かるもの 戸籍謄本、受遺者の住民票
証人の確認書類 住民票の写し、職業がわかる資料
不動産がある場合 登記簿謄本、固定資産税納税通知書等
預貯金がある場合 預貯金通帳のコピー
有価証券等がある場合 有価証券等のコピー

2人以上の証人を探す

公正証書遺言の作成には証人が2名必要です。

証人になれない人

証人は誰でもよいわけではなく一定の条件があります。
以下の①~③いずれかに該当する方は証人になれません。

①未成年者
 遺言の内容を理解する力がないためです。

②推定相続人等
 遺言そのものに利害関係があり、証人として相応しくないためです。

③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人
 公証人の関係者が証人となってしまうと、公証人が万一不正をしようとした場合に防ぐことができません。

証人と一緒に公証役場に行き、遺言書を作成する

いよいよ証人と一緒に公証役場に出向き、遺言を作成します。
どんなことに気を付けたらよいでしょうか。

遺言書を作成する公証役場はどこ?

公証役場であれば、どこでも作成できます。
もっとも、遺言をする方は高齢である場合が多く、可能な限りお住いから近いところで遺言書の作成をなさった方がよいでしょう。

公正証書遺言の作成が困難なケースと対処法

言語機能や聴覚に障害がある場合

公正証書遺言の作成には、原則として、遺言の内容を遺言者から公証人に「口述」すること、
そして、公証人は遺言の内容を遺言者に「読み聞かせ」で確認することが必要です。
しかし、遺言者に言語機能や聴覚の障害がある場合には、以下の対応が可能です。
「口述」 ⇒代わりに、遺言の内容を通訳人が手話又は筆談で公証人に伝える 「読み聞かせ」 ⇒代わりに、通訳人が手話で通訳することで遺言の内容を確認

署名できない場合

遺言者が病気や高齢のため、自分で署名ができない場合、公証人がその旨遺言書に付記することで署名にかえることができます。

公証役場に行けない場合

遺言者が病気や高齢のため、公証役場に行けない場合はどうすればよいでしょうか。
この場合は公証人が遺言者のもとに出張し、公正証書遺言を作成することができます。

公正証書遺言の作成を弁護士に依頼するメリット

遺言内容の相談ができる

遺言書の作成にあたっては、法的な観点からその内容をしっかり吟味しなければなりません。
公証人のチェックは方式(書式)のミスで遺言が無効になることを防ぐ観点から行われるものであり、
遺言者の希望を実現するためにはどうすればいいかといった、遺言の中身についての実質的な相談には応じてくれません。
加えて自分で法律について都度調べて遺言書を作成するとなると膨大なリサーチの時間と手間がかかってしまいます。
弁護士に依頼することで、早い段階から内容を練って万全の状態で遺言の作成ができるでしょう。

書類準備などの手間が省ける

特に戸籍謄本等は弁護士にて効率的に取り付けることができ、書類準備の手間が一部省ける場合があります。
もっとも、財産に関係する書類は弁護士に依頼するよりもご自身で取り付けた方が基本的には早く安く集めることができます。

遺言執行者として選任できる

依頼した弁護士を遺言執行者として選任できます。
遺言執行者とは、「遺言に記載されているとおり」に相続が実現できるよう、相続人のために動き回る人です。遺言の内容によっては、遺言執行者の選任により、遺言の実行可能性を高めることができる場合があります。

任意後見契約を結ぶことができる

任意後見契約とは、被後見人が後見人としたい人を事前に選び、被後見人が後見を必要とする事態となった場合に、後見人に面倒をみてもらうという契約です。
この任意後見契約を締結するにあたっては公正証書によることが必要です。

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公正証書遺言に関するQ&A

公正証書遺言にすれば確実に効力がありますか?

方式(書式)の不備が理由となって遺言が無効となることは考えにくいです。
その意味で他の遺言をする方法より確実と言えます。
しかし、公証人は中身に踏み込んでまでチェックをしてくれるわけではなく、内容まで保証してくれるわけではありません。
このような理由から、確実に効力があるとは言い切れません。

一度作成した公正証書遺言の内容を変更することはできますか?

作成した公正証書遺言は、いつでも、何度でも内容の変更が可能です。
この場合は基本的には最後に作成したものが優先します。
もっとも、最初に作成した時と同様、書類や手数料、証人を都合する必要があります。

公正証書遺言があることは死亡後通知されますか?

亡くなったことに紐づけて公証役場の方から通知がなされるわけではありません。

遺言書を見せてもらえません。公証役場で開示請求はできますか?

前提として、公証役場で(又は公証人の出張先で)遺言書が作成されていることが必要です。
その上で、相続人等、法律上の利害関係がある方は、公証役場に対して遺言の開示を求めることができます。
公正証書遺言の有無については、公証役場全体で検索することができるため、少なくとも遺言があるかないかについて確認するにあたって、どこの公証役場にすべきかを気にする必要はありません。

公正証書遺言に関する不安、不明点は弁護士にご相談ください

公正証書遺言は、普段馴染みのない、公証役場も絡んでの作成となるため、いざ作成をしようと思っても躊躇される方が多いのではないでしょうか。 加えて公証人がチェックするのは方式(書式)であり、遺言の中身まで公証人が相談にのってくれるわけではありません。 公正証書遺言の作成を検討されている方は是非弁護士にご相談ください。

浮気・不倫されてしまった時、どうすればいいのでしょうか。
浮気・不倫をされた際に慰謝料を請求するとなった場合、何が必要なのでしょうか。
以下で解説していきます。

浮気・不倫で慰謝料を請求するには証拠が必要!

裁判で、浮気・不倫で慰謝料を請求するには証拠が必要となります。
裁判所を使わず、交渉で解決を目指す場合でも、主張の根拠となる証拠があれば、交渉の内容が充実していきます。

LINE(ライン)にトーク履歴は浮気の証拠になる?

LINEのトーク履歴であっても、「不貞」(配偶者以外と肉体関係があったこと)を推認させる文章があれば、慰謝料請求の際の証拠となります。写真や動画、音声以外でも、文章の内容によっては証拠となるという点がポイントです。

浮気の証拠として有効になるやりとりとは?

いわゆる不貞(配偶者以外と肉体関係があったこと)を理由に慰謝料請求をするためには、肉体関係があったことを読み取れる文章が必要です。
単純に「仲がよさそう」といった内容だと肉体関係は読み取れないので、裁判で不貞慰謝料請求が認められることはないでしょう。

浮気の証拠がLINEのみだと慰謝料請求は難しい?

INEのメッセージだから証拠にならないということはありません。
あくまでその内容が重要で、不貞(配偶者以外と肉体関係があったこと)が読み取れる内容か否かが重要です。

LINE以外で浮気の証拠になるものとは?

LINE以外で不貞(配偶者以外と肉体関係があったこと)の証拠となるものは無数に考えられます。
ポイントは「肉体関係があったこと」が読み取れるかどうかですので、典型的には、動画、音声、写真、目撃者の証言(不貞をされた方や、ご友人)、不貞配偶者が不貞を認めた念書等があります。

LINEを裁判で使える証拠にする方法

LINEを裁判で使える証拠にするためには、端末のままではいけません。
印刷して紙として裁判所には提出するのが原則です。
動画や音声であれば、何か媒体に入れてデータを提出しつつ、
必要に応じて反訳も提出します。

LINEの画面を写真撮影する

裁判所に証拠として提出するためにLINEのやりとり中、必要な画面をスクリーンショット機能で撮影する等、提出するための準備を行いましょう。

LINE画面を撮影するときのポイント

そのメッセージが何月何日に送信されたものであるかがわかるように日付部分も含めてつなげて画面をスクリーンショットする等、工夫して撮影するようにしてください。

LINEのトーク履歴をバックアップする

LINEのトーク履歴のバックアップ機能を使って自分の携帯に送っておくのも有効な手段です。
編集が簡単にできるものですので、受信したら、すぐ記録媒体に記録してしまいましょう。事後的に編集できないような媒体がおすすめです。

相手を説得してLINEを見せてもらう

不貞した配偶者を説得してLINEを見せてもらうという方法もあります。
不貞した配偶者はうしろめたさから応じるケースは意外とあります。

LINEで浮気の証拠を掴むときの注意点

不貞(肉体関係)の慰謝料請求の際に、証拠の有無は非常に重要ではありますが、
証拠の収集に熱心になりすぎて「やりすぎてしまう」場合があります。
この場合は、不貞(肉体関係)とは別の問題としてむしろこちらが損害賠償をしないといけないことになりかねませんので注意が必要です。

相手のLINEを勝手に見ることは違法?

他人のIDやパスワードを勝手に使う場合等を除き、相手のLINEを勝手にみること自体がすぐに違法性を帯びるわけではありません。
なお、不貞(肉体関係)が認められるようなLINEのやりとりがあって、それを勝手にみたからといって証拠となることはありません。

ID・パスワードを勝手に使うと不正アクセス禁止法違反

IDやパスワードを入力しないと使用できないスマホ等について、本人の了解なくID・パスワードを入力することは、不正アクセス禁止法違反として刑事罰の対象となる可能性があります。

相手が浮気を認めたら「不貞の自認書」の作成を!

いつ、どこで、何回、肉体関係をもったのか自認書の作成を求めましょう。
ただし、暴力や脅しによって、無理やり作成させた場合には、証拠としての価値自体が争われることとなりますので注意してください。

よくある質問

浮気相手とはLINEだけの関係で、不貞行為がない場合でも慰謝料請求できますか?

問題の本質はLINEだけなのかどうかではなく、LINEで「どんなメッセージのやりとりがあったのか」という内容です。
実際に不貞行為(肉体関係)がなかったとしてもLINE上で肉体関係が推認できるようなやりとりがあった場合には慰謝料請求が認められる可能性があります。

LINEの証拠をもとに、浮気相手へ慰謝料を請求することは可能ですか?

可能ではありますが、浮気相手が既婚者であり、当方側が離婚を予定していないというような場合には、浮気相手から不貞配偶者にあてて慰謝料請求がなされ、事実上金銭のやり取りが発生せず和解が成立する可能性があります。

浮気の証拠を掴むために、LINEのトーク履歴を開示請求できますか?

任意での開示を拒絶された際、LINEのトーク履歴の強制的な開示請求は認められないのが現状です。そのため、LINEのやりとりを証拠として使いたい場合は、自力で集める必要があります。

浮気を匂わせるようなLINEを発見したら、まずは弁護士にご相談下さい。

浮気を疑わせるようなLINEやメールが確認できたらすぐ対応しましょう。
まずは弁護士に相談ください。

交通事故にあった際、過失割合が問題となるということは、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
過失割合は、受け取る賠償金の金額に大きな影響を与える要素です。
ではそのような重要な過失割合はどうやって決まっていくのでしょうか。

交通事故の過失割合を決めるのは誰?

結論から言えば、交通事故の過失割合を決めるのは、裁判では、裁判官が決めます。
交渉では、事故の当事者が基準となる書籍(後述)をもとに協議して定めます。

過失割合はどのように決まる?

交通事故の年間発生件数は、現状、平均して年間30万件程です。これだけの数の事故が毎年発生するわけですから、裁判になる事件もたくさんあります。
過失割合についての裁判所の判断もかなりの件数があります。それをまとめたのが別冊判例タイムズNo38という書籍です。通常は、この書籍を参考に過失割合を定めます。

まずは基本過失割合を確認する

まず基本の過失割合を確認しましょう。別冊判例タイムズNo38の目次から確認すると目当ての事故類型を調べやすいです。
道路の形状、信号機の有無、車、バイク、歩行者等の別から、ご自身の事故のパターンにもっとも近い事故類型を確認しましょう。

過失割合の修正要素を考慮する

世の中で発生している交通事故には様々なパターンがあります。
基本の過失割合そのものが当てはまらない場合であっても、基本過失割合の修正要素を踏まえれば、ご自身の事故にマッチする場合があります。

過失割合に納得できない!決まった過失割合は修正できないの?

示談が成立した後であれば、基本的に過失割合を修正することはできません。
交渉段階で過失割合を争う際には、まず上述の基本過失割合を踏まえた上で、事故状況がわかる証拠をとにかく集めていきましょう。
 その証拠を踏まえて、過失割合の修正に使える事実がないか確認しましょう。

過失割合を修正した事例

交渉で、相手方保険会社が基本過失割合の30:70を主張(当方側が30)し続け、止む無く訴訟提起をして、10:90の過失割合に修正することができた事例があります。
この事例では弊所の担当弁護士がドライブレコーダーの画像を示し、ほぼ並走している状態で進路変更をした事実を証明、その事実が修正要素となることを説明し、上述の修正を前提に和解が成立しました。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

交通事故被害者専門ダイヤル

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過失割合は賠償金額に大きく影響するため、相手方保険会社も激しく争ってきます。
お困りでしたら是非弁護士にご相談ください。

交通事故の過失割合が7対3の場合の慰謝料額

加害者 被害者
過失割合 7 3
損害額 800万円 2,200万円
請求金額 800万円×0.3=240万円 2,200万円×0.7 =1540万円
実際にもらえる金額 0円 1540万円-240万円=1300万円

注被害者の請求金額は、損害額から過失割合分を減額したものです。

注意すべき点は、請求金額=現実に受け取れる金額ではない、ということです。
過失割合とは、平たく言えば「悪さの割合」なので、現実に受け取れる金額を考えるにあたっては、受け取る人の「悪さ」も考慮しなければなりません。
表の例で言えば、被害者の請求金額から加害者の請求金額を減額する必要があります。

過失割合7対3の修理代について

交通事故の物損もケガと同様、過失相殺の対象となります。
例えば、加害者7:被害者3の過失割合で、
加害者の損害210万円:被害者90万円の物損の損害があった場合、
加害者の請求額は210万円×0.3=63万円
被害者の請求額は 90万円×0.7=63万円
被害者が実際にもらえる金額は、63万円‐63万円=0万円となります。

基本過失割合が7対3になるケース

自動車同士の事故

自動車同士の事故で7:3となるのは以下のケースです。

交差点で、青信号で直進したAと信号残り車(青信号で進入はしたが赤信号になるまでに通過できなかった車)Bが衝突したケースでは、Bの方が過失は重くなります。
Bは黄色信号による警告を受けた上で敢えて侵入してる点Aより「悪い」と言えるからです。
一方で、Aは黄色信号でも進入してきたBについて確認できたともいえ、衝突前に調整の余地なしとは言えないため過失がつきます。
A:B=3:7となります。

信号のない交差点で、広い道を直進してきた自動車と、狭い道を直進してきた自動車とが衝突したケース。
A:B=3:7となります。

信号のある交差点で、直進車Aが黄色信号で交差点に進入し、右折車Bが青色信号で交差点に進入し、黄色信号で右折し衝突したケース。
A:B=7:3

信号のない交差点で、一時停止規制がある側の道路からの直進車Bと、そうでない直進車Aとが衝突した場合です。
Aが減速せず、Bが減速した場合であればA:B=3:7となります。

信号のある交差点で、直進車Aが赤信号で進入、右折車Bが黄色信号で進入した上で、赤信号で右折し衝突したケース。
このケースでは、A:B=7:3となります。

信号のない交差点で、ほぼ同じ幅の道路を直進するAと、右折する対向車Bとが衝突したケース。
このケースではA:B=3:7となります。

信号機のないほぼ同じ幅の道路の交差点で、直進車Aと右折する右方車Bとが衝突したケース。
このケースでは、A:B=3:7です。

信号のない交差点で、直進車A側に一時停止の規制があり、右折車Bが左方車で衝突したケース。
このケースでは、A:B=7:3となります。

信号のない交差点で、Aが非優先道路を直進しており、Bが優先道路から非優先道路へ同一方向右折をして衝突したケース。
このケースでは、A:B=7:3となります。

信号のない交差点で、Aが広い道を直進、Bが狭い道から左折して衝突したケースです。
このケースではA:B=3:7となります。

信号のない交差点で、Aが広い道から右折し、Bが狭い道から右折して衝突したケースです。
このケースでは、A:B=3:7となります。

信号のない交差点で、左折するAと、対向右折車のBとの衝突事故です。
このケースでは、A:B=3:7となります。

T字型交差点の事故で、右折車同士の事故です。
このケースで、Aが広い道、Bが狭い道の場合、A:B=3:7となります。

進路変更車と後続直進車との事故です。 Aがゼブラゾーンを走行していないことを前提にすると、このケースでは基本的に、A:B=3:7となります。

Bの転回終了後に、直進したAとが衝突したことケースです。 このケースでは、A:B=3:7となります。

自動車とバイクの事故

信号機のある交差点で、自動車とバイク、それぞれ直進車同士の衝突のケースです。
バイク側が赤信号で、自動車側が黄色信号であれば、バイク:自動車=7:3の過失割合となります。

バイクと車が同じ速度帯の場合を前提として、双方直進で衝突したケースです。
過失割合は、バイク:四輪車=3:7

一方が明らかに広い、信号のない交差点で、狭路を車が直進、広い道をバイクが直進して衝突したケース。

自動車が優先道路を直進し、直進するバイクと衝突したケース。

信号機のない交差点で、バイクが一方通行規制に違反し直進して、同じく直進する車と衝突したケース。

信号機のある交差点で、黄色信号で直進するバイクと、黄色信号で右折する車とが衝突するケース。

信号機のある交差点で、直進するバイクが赤信号で、右折車が青信号で進入したものの赤信号で右折して衝突したケース。

信号機のない交差点で、直進するバイクと右折する車とが衝突したケース。

信号機のない交差点で、狭路を直進する自動車と、広路から右折するバイクとが衝突したケース。

信号機のない交差点で、自動車が優先道路を直進している際に、右折したバイクと衝突したケースです。
このケースでは、バイク7:自動車3の過失割合です。

信号機のない交差点で、直進する自動車と、優先道路から右折するバイクとが衝突したケースです。
このケースでは、バイク3:自動車7の過失割合となります。

信渋滞中の車両間の事故で、信号機のない交差点、大型トラックの陰になる等して、自動車からの見通し必ずしもよくない場合で、バイク3:自動車7の過失割合となります。

路外から道路に進入したバイクと、道路を直進する自動車とが衝突したケース。

道路を直進する自動車と、右折して路外に出ようとするバイクが衝突したケース。

追越禁止でない場所で、道路を直進する自動車を、バイクが追い越そうとして衝突したケース

直進する自動車と転回したバイクが衝突したケース。
このケースでは、バイク7:自動車3の過失割合となります。

自動車と自転車の事故

交差点で、赤信号で直進した自転車と赤信号で右折した自動車が衝突したケースです。

交差点で、赤信号で直進した自動車と、赤信号で右折した自転車が衝突したケースです。

信号のない交差点で、自動車側が広い道を直進し、自転車側が狭い道を直進して衝突したケース。

信号のない交差点で、自動車側が広い道から狭い道に右折し、自転車側が同一方向に狭い道を直進して衝突するケース。

信号のない交差点で、自動車側が広い道を直進し、自転車側が狭い道から右折して衝突するケース。

狭い道を直進してきた自転車と、広い道から対向右折した自動車とが衝突したケース。

センターラインオーバーした自転車が自動車と衝突したケース。

道路を直進する車と、転回した自転車が衝突したケース。

道路を直進する自動車と、歩道から道路に出た自転車が衝突したケース。

自動車と歩行者の事故

自動車と歩行者の事故で過失割合が7:3となるパターンをご紹介します。
自動車が7、歩行者が3です。
自動車と歩行者とでは、当然ながら、歩行者の方がケガをしやすいです。
それでも、以下パターンですと、歩行者の基本過失割合は3と高めになっています。

道路を走行する自動車と道路を歩行している歩行者の事故です。
歩道が存在しているにも関わらず、敢えて道路を歩いているため、歩行者といえども過失は高めの30%となります。

自動車と、路上で寝ている人との事故ですら、人側の基本過失割合は30%です。
一見とすると、路上で寝そべる等といった行動をとるなど、車側で予測が難しいと思えますが、それでも基本の過失割合は車の方が高いのです。

自転車と歩行者の事故

自転車は歩行者より、怪我をさせやすいですから、自転車側が基本的には事故に対してより大きな責任を負います。そのため、過失割合は自転車側の方が大きくなりやすいです。
基本過失割合「7(自転車):3(歩行者)」になるケースとしては、赤信号で横断歩道付近の道路を渡った歩行者と、赤信号で交差点を右左折した自転車とが衝突したケース等です。
歩行者は信号無視などをすると、過失割合が大きくなってしまいます。

交通事故の過失割合7対3に納得がいかない場合

保険会社が提示する過失割合については、そもそも基本過失割合自体が間違っていたり、修正要素によって被害者側に有利に修正できたりする場合があります。
もっとも、被害者だけでは限界がありますから、弁護士に依頼をするなどして、事故の状況をより詳しく証明できる証拠を収集していきましょう。

過失割合を7対3から修正することに成功した解決事例

保険会社とのやりとりを弁護士が行うことで依頼者の負担を減らし、7対3の過失割合をより有利に変更することができた事例

自転車とバイクの事故です。自転車にのって直進していた依頼者のお父様が、後方から直進進行してきた相手方のバイクに衝突されました。
担当弁護士からお父様がご高齢であったことや、類似事故の態様について裁判例を示すなどし、交渉の結果、過失割合については、3⇒2に修正することに成功、当初の相手方保険会社提示金額の約2倍での解決となりました。

弁護士が介入し、意見書を作成することで7対3の過失割合を大幅に変更できた事例

専業主婦のご依頼者様の案件です。幹線道路を横断中に、中央分離帯の切れ目の部分で転回しようと進入してきた普通乗用自動車に接触されて転倒し、頸椎捻挫等のお怪我を被ったという事例です。
この事例では、相手方保険会社は、3:7を当初から主張し、約15万円を支払うとの交渉態度でした。3がご依頼者、7が相手方保険会社です。
担当弁護士が、ご依頼者様の過失割合についてゼロとする意見書を作成、相手方保険会社に送付し、金額についても弁護士基準に基づく計算の上で増額を求めたところ、結果として過失割合を15:85に修正でき、ご相談前と比べて約100万円以上の増額を実現できました。

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交通事故の過失割合が7対3となった場合はまずは弁護士にご相談ください

過失割合が7:3と示されたとしても、修正の余地がある場合がありますから、すぐに承諾すべきではありません。過失割合は受け取れる賠償金額に影響する要素ですから、慎重に検討するためにも弁護士に相談しましょう。

お子さんが交通事故にあった際、通院にあたって付添が必要となる場合があります。
そのような場合には、いつ、どのような交通機関で付添をしたのか記録や証拠をしっかり残しておいてください。付添に関連した損害賠償請求ができるかもしれません。以下で詳しく解説していきます。

付添費とは

付添費とは、医師の指示があった場合や、重い怪我によって付添の必要性が認められる場合、被害者が年少者である場合などに、付き添いをした際認められる補償です。被害者本人の損害として計上されます。

付添費が認められる条件

付添費の請求が認められる場合は、医師から付添について特段の指示がある場合や、症状が重篤で受傷の部位・程度によって付添の必要性が認められる場合、年少者である場合などです。
保険会社側が積極的に払ってくるケースはほぼありません。

子供に付き添う場合は条件が緩和されている

自賠責では12歳以下の子供の場合に付添費の請求が認められています。このことから、目安として12歳以下の子で子供であれば、付添費が認められやすいと考えられます。

付添費の内訳と相場

一言で付添費といっても、様々なものがあります。以下で詳しく見ていきます。

入院付添費

入院している場面で付添が必要な時に認められる補償です。
入院の際には、看護態勢が整っていることが多いので、基本的に認められない前提で考えておいた方がよいでしょう。
被害者の年齢や傷害の内容及び程度、治療状況、日常生活への支障の有無が考慮され認められる場合があります。

入院付添費の相場

⑴ 自賠責基準
日額4100円
⑵ 弁護士基準
日額6500円

通院付添費

通院時に付き添いが発生した場合に請求できる補償です。被害者が高齢や幼児である場合や、足を骨折している場合などで認められることがあります。
通院「交通費」とは別に請求できます。

通院付添費の相場

自賠責基準:1日2050円
弁護士基準:1日3300円

自宅付添費

自宅での療養中の付き添いに対する補償です。お怪我の内容によって、自宅でも付き添いが必要と認められた場合のみ支払われます。
対象となる期間は、症状固定日までの自宅療養期間である点に注意が必要で、症状固定日以降は将来介護費として請求する場合があります。

自宅付添費の相場

自賠責基準:日額2100円
弁護士基準:事案によって変動
※弁護士基準については、付添人の負担の大きさによって変動します。

将来介護費

被害者が交通事故により、症状固定後も寝たきりとなったり、自分一人で食事や移動等ができない場合には、介護が必要であり、将来の介護費が損害として認められる場合があります。
要介護の後遺障害徴求が認定された場合には、基本的に将来介護費の請求は認められます。
介護を必要としない等級であってもお怪我の状況によっては認められる場合があります。

将来介護費の相場

常時介護の必要性がある場合には、1日につき、8000円~9000円程度が認められることがあります。介護の必要性や内容によっては、この金額より増減があります。

通学付添費

被害者が児童で、通学の際に付き添いが必要と認められた場合に支払われるものです。
付き添いの必要については、受傷部位やその程度、被害者の年齢、通学距離等から判断されます。

通学付添費の相場

明確な相場はなく、事案ごとに個別に判断されます。
日額1000円程度が認められた例があります。

仕事を休んで付き添いをした場合は付添看護費と休業損害と比較する

職業付添人に依頼する費用よりも、付き添いをする方の1日あたりの収入が高い場合は職業付添人の費用分までしか認められない可能性があります。職業付添人に依頼すればよいと考えられるためです。

プロに付き添ってもらった場合の付添費は実費精算

いわゆる職業付添人を付した場合、実費の請求が認められる可能性が出てきますが、必要かつ相当な範囲でしか認められません。交渉段階で相手方保険会社が支払いを拒絶してくるケースもありますので、職業付添人をつける場合は慎重に検討しましょう。

交通事故の付き添いに関するQ&A

子供が通院を嫌がり暴れたため、夫婦で仕事を休んで付き添いました。付添費は二人分請求できますか?

付き添いが認められるのは1人だけです。現実に2人が付き添いをしたとしても基本的にはもらえるのは1人分のみとなりますので注意しましょう。

子供の付添看護料は12歳以下しか支払われないと聞きましたが本当ですか?

自賠責の基準にて原則として12歳以下の場合にしか認められていません。
入院してまもなく13歳になった場合には、入院期間が連続しており、かつ13歳の期間中であることを前提に近親者が付き添った場合に付添看護料が認められます。
13歳以上の場合でも、医師の「要看護証明」があり、近親者が付き添った場合に付添看護料が認められる可能性がありますが、医療機関の実情や傷害の態様等からやむを得ない理由がある場合に限り認める扱いとなっており、子どもについては、事実上13歳以上で付添看護料が認められるケースは殆んどありません。

姉に子供の通院付き添いをお願いしました。通院付添費は支払われますか?

お子さんが12歳以下であれば支払われます。
自賠責にて通院付添費の支払い対象となっているのは「3親等以内の親族」(被害者の親、祖父母、兄弟等)だからです。

両親が入院している病院まで来てくれました。駆けつけ費用は請求できますか?

近親者の通院付添費は、付添人に生じた交通費、雑費、その他付添看護に必要な諸経費を含むものとして扱われているため、原則として付添人に生じた交通費を別途請求することはできません。
ただし、被害者の方が重症を負うことで遠隔地に居住している近親者が看護のために赴く場合は、被害者のお怪我の内容や、その方が看護にあたる必要性等の諸般の事情からみて相当な範囲で損害として認められる場合があります。

交通事故の付き添いに関して、お困りでしたら弁護士にご相談ください

交通事故の付き添いについては、必要性と相当性について、保険会社側が激しく争ってくるケースが多く見受けられます。そんな時、なぜ付き添いが必要となるのか、根拠を示しながら根気強く説得する必要があります。お困りでしたら弁護士に相談ください。

老後の生活に不安があると考えて離婚に踏み切れない方は多いかもしれません。そのような方のお悩みは、年金分割という制度によって軽減できる可能性があります。

年金分割は、婚姻中に支払ってきた年金を離婚時に夫婦間で清算する制度です。夫婦間でお金の清算をする点では財産分与と共通する点もありますが、年金分割特有の複雑な仕組みもありますので、年金分割を検討されている方は、この記事を参照してみてください。

離婚時の財産分与と年金分割制度について

年金分割とは、将来の厚生年金の受給額を夫婦間で公平にするため、婚姻期間中に納めた厚生年金の納付記録を夫婦間で分割する制度です。

元々は、婚姻期間中の年金は夫婦の共有財産であると捉えて財産分与の対象となっていました。しかし、平成19年の年金法の改正により、年金分割が法律上の制度として確立されたことから、財産分与とは別の手続きとなりました。

年金分割の按分割合の決まり

年金分割は、夫婦間で将来の年金受給額の公平を図るための制度であり、年金には老後の保障という社会福祉の意味があります。そのため、当事者が合意すれば、どのような割合でも分けることができるというわけではなく、以下のような制限があります。

なお、実際に年金分割においては、按分割合2分の1とすることが圧倒的に多いです。

  • 年金分割によって、分割を受ける方(対象期間の標準報酬総額の少ない方)が、元々の持分を減らすことがないようにすること。
  • 年金分割によって、分割される方(対象期間の標準報酬総額の多い方)が、分割を受ける方(対象期間標準報酬総額の少ない方)の対象期間標準報酬総額を下回らないようにすること。

なお、実際に年金分割においては、按分割合2分の1とすることが圧倒的に多いです。

年金分割のできる年金、できない年金

年金分割の対象となるのは、年金制度の2階部分である厚生年金と旧共済年金です。
そのため、夫婦が自営業や非正規雇用であり、どちらも国民年金にしか加入していない場合には年金分割の対象となる年金はありません。

また、年金制度の3階部分である確定給付企業年金、確定拠出年金、退職等年金給付などについても、加入者の年金額を増やす制度ではあるものの、年金分割では対象外です。

年金分割の種類

合意分割 3号分割
離婚日 平成19年4月1日以降 平成20年4月1日以降
夫婦間の合意 必要(夫婦間で合意できない場合には、裁判所で按分割合を決定することになります) 不要
分割対象期間 婚姻期間全体(平成19年4月1日以前も含みます) 婚姻期間のうち、平成20年4月1日以降に第3号被保険者となっている期間
分割割合 夫婦間の合意した割合(または裁判所が決定した割合) 2分の1
請求期限 離婚日の翌日から2年以内 離婚日の翌日から2年以内
対象者 夫婦の一方(または両方)が第2号被保険者であること 夫婦の一方(または両方)が第2号被保険者であり、夫婦の一方に第3号被保険者となっている期間があること

年金分割の方法

年金分割の方法は、合意分割の場合と3号分割の場合で異なりますので、合意分割と3号分割のそれぞれの分割方法について解説していきます。

合意分割の場合

合意分割とは、夫婦の合意や裁判所の決定によって分割割合を決める方法です。
夫婦の話し合いで、按分割合を決めることができない場合には、家庭裁判所に決めてもらうという手続きを行うことが可能です。

夫婦間の合意による場合

年金分割については、夫婦で分割割合について話し合い、合意を目指することもできます。この場合、法律上の制限以内であれば夫婦が自由に割合を決定することができます。

分割割合の合意ができたら、合意内容を記載した協議書を作成します。その後。夫婦が揃って年金事務所に行き、協議書や必要書類を提出することで年金分割を行うことができます。なお、年金分割の合意内容を公正証書にしておくことで、夫婦の一方のみ年金事務所に足を運ぶだけで手続きが可能となります。

調停による場合

年金分割について、夫婦の話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法があります。

調停とは、裁判所で選任された調停委員の関与の下で夫婦間の話し合いを進めて合意を目指していくというものです。夫婦だけだと感情的になってしまう場合でも、調停委員という第三者が介入することでスムーズに解決できることがあります。

調停で合意が成立した場合、裁判所で調停調書という書面が作成されますので、夫婦揃って、または、夫婦の一方が年金事務所に足を運んで調停調書と必要書類を提出することで年金分割を行うことができます。

審判による場合

年金分割調停でも合意に至らず、調停が不成立となった場合、自動的に審判という手続きに移行します。

審判とは、裁判官が書面などにより当事者双方の意見も確認したうえで、裁判官が按分割合を決定するというものです。
審判に不服がある場合には、審判の決定から2週間以内に高等裁判所に即時抗告をすることができることになっています。

なお、審判で年金分割の按分割合を決定する場合、特段の事情がない限り、2分の1とされることが圧倒的に多いです。

離婚訴訟における附帯処分の手続き

附帯処分とは、離婚訴訟を行う際、離婚に関連する内容を一緒に裁判所に判断してもらうことを求める手続きであり、年金分割について附帯処分を申し立てることもできます。

審判に寄る場合と同様に、裁判所が年金分割の按分割合を決定する場合、特段の事情がない限り、2分の1とされることが圧倒的に一般的です。

離婚訴訟の際に年金分割の附帯処分の手続きをとってくことで、離婚訴訟が終わった後に年金分割の手続きを改めてする必要がなくなるというメリットがあります。

3号分割の場合

第3号被保険者に該当する方が、年金事務所に申請することで年金分割を行うことができます。
合意分割と異なり、3号分割の場合、分割割合は2分の1ずつと決まっていることから、年金分割の請求したい当事者が、他方当事者の同意を得ることなく、単独で手続きをすることが可能となっています。

年金分割の手続きの流れ

年金分割の大まかな流れは以下のような形となります。

  1. ・年金分割のための情報通知書を取得する
    年金事務所に申請して、年金分割のための情報通知書の発行を受けます。
         ↓
  2. ・按分割合の決定と証明書類の取得
    夫婦間の協議や、調停、審判などで、年金分割の按分割合について取り決めをします。また、取り決めた内容を証明する公正証書や調停調書などの書類を取得します。
    なお、3号分割の場合は、夫婦間での按分割合決定は不要です。代わりに第3号被保険者加入期間証明書という書類の取得が必要となります。
         ↓
  3. ・年金分割改定の請求
    上記書類のほかに標準報酬改定請求書、年金手帳、離婚後の戸籍謄本などの必要書類を準備して、年金事務所に年金分割改定の請求を行います。手続完了後、標準報酬改定通知書が送られてくるので保管しておきます。

離婚時の財産分与で専業主婦の年金について

専業主婦であるから年金分割の額が増えるということはなく、専業主婦であるか、仕事をしているかにかかわらず、年金分割の対象となるのは婚姻期間中に支払った年金部分のみであり、結婚前に配偶者が加入していた期間は年金分割の対象となりません。

また、配偶者が自営業者などで厚生年金・旧共済年金に加入しておらず、夫婦ともに国民年金のみという場合にはそもそもとして年金分割は行うことができません。

そして、当然のことではありますが、年金を受け取ることができるのは、年金受給年齢になってからですので、年金分割が完了したとしても実際に受け取ることができるのは離婚してから相当先になるということも少なくありません。そのため、専業主婦の方で離婚後の生活費の足しに年金分割を考えている場合には注意が必要です。

熟年離婚した場合の年金分割

相場

婚姻期間が長い熟年離婚では、対象となる年金支払い期間が大きくなる分、年金分割できる金額も比較的高くなります。
もっとも、一般的に年金受給額の増額幅は最大でも月数万円程度となることが多く、相場的には月3万円となりますので、年金分割をするだけで老後の生活を安定させることが難しい場合もあります。

年金分割が成立後に配偶者が亡くなってしまった場合

夫が亡くなってしまった場合

年金分割した後は、当事者それぞれ年金の標準報酬に基づいて支給されることになります。
そのため、年金分割の成立後に夫が亡くなってしまった場合であっても、分割後の妻の年金額に影響を及ぼすことはありません。

そのため、離婚時に年金分割を完了させておけば、その後に夫が死亡したとしても、妻は自分が死亡するまでの間、分割した年金額を受給額し続けることができます。

妻が亡くなってしまった場合

年金分割した後は、当事者それぞれ年金の標準報酬に基づいて支給されることになるのは、夫が亡くなった場合でも変わりません。
そのため、年金分割の成立後に妻が亡くなったとしても、夫の年金額に影響はなく、妻に分割した分が戻ってくることはありません。

離婚時の財産分与と年金分割に関するQ&A

財産分与のときに夫婦共働きの場合、年金分割はどうなりますか?

共働きで会っても、年金分割を行うことは可能です。夫婦双方が厚生年金に加入していた場合には、夫婦双方に厚生年金の納付記録が存在することになり、合意分割によって按分割合を決めたうえで、標準報酬月額が多い方から少ない方へ分割することになります。

また、年金分割は、将来夫婦が受け取る年金額を公平にするための制度ですので、必ずしも夫から妻に分割されるとは限りません。共働き夫婦において、妻の方が高収入の場合や、夫が自営業者・妻が厚生年金加入者である場合には、妻から夫に年金分割がされることもあります。

離婚時の年金分割を拒否することは可能ですか?

年金分割は、拒否することが原則としてできません。年金分割は、老後の保障という社会福祉の意味合いがあり、公的機関である厚生労働大臣に対して請求するものです。そのため、夫婦間の合意で年金分割の請求権を放棄することはできないと考えられています。

ただし、年金分割は、婚姻期間中における夫婦間の協力を前提としていますので、このような前提が覆されるような特別の事情がある場合には、例外的に按分割合を小さくしたりする余地があります。

また、年金分割の請求期間を過ぎていたり、婚姻期間前の年金分の分割を求められている場合には年金分割を拒否することができます。

障害年金を受給していた場合、離婚後に年金分割の対象になりますか?

国民年金は年金分割の対象とならず、厚生年金のみが年金分割の対象となるのと同様に、障害年金のうち障害基礎年金は年金分割の対象とならない一方で、障害厚生年金は年金分割の対象となりますので、障害年金を受給していた場合でも年金分割を行うことになります。

もっとも、年金分割をする側が、障害厚生年金を受給している場合、病気や怪我に対する保障という障害年金の趣旨から、障害年金の受給開始時期によっては(障害認定日が平成20年3月31日以前を除く)、受給者の同意なく行える3号分割を行うことができません。

離婚後に夫婦のどちらかが再婚した場合、年金分割に影響はありますか?

夫婦のどちらかが再婚しても、年金分割の結果として受け取ることになった年金額に影響はありません。
再婚により氏名や住所の変更などがある場合、年金受給者の情報を更新しておくために年金事務所への届出が必要です。

他方で、年金分割を受けた当事者が再婚をした場合(事実婚を含みます)、遺族厚生年金は受給することはできなくなります。そして、再婚した際には遺族厚生年金の失権手続を行うことが義務付けられており、この手続きを怠ってしまうと不正受給にあたるために注意を要します。

なお、分割を受けた当事者が再婚した後は、夫婦に子供がいる場合には、その子供に遺族厚生年金が支給されることになります。

離婚時に年金分割をしなかった場合はどうなりますか?

共働きで夫婦間に収入に差がない場合、婚姻期間が短期間である場合など、夫婦の協力によって支出された年金保険料に夫婦間で差がないか、支出された年金保険料が少ないような場合、将来受給できる年金額の差が小さいため、年金分割をしてもしなくても、年金分割によって年金受給額もあまり変わりませんので、離婚時に年金分割をしなくても問題にはなりません。

他方で、夫婦のどちらかがパートタイマーや専業主婦だった場合、夫婦間での収入の差が大きく、離婚後の当事者間で将来受け取れる年金額に大きな差が生じます。このような場合は、離婚時の翌日から2年以内という期限内に年金分割手続を行っておく必要があります。

あらかじめ離婚後の年金分割の見込み額を知ることはできますか?

50歳以上の方、または、障害年金の受給権者の方であれば、年金分割の見込み額を知ることが可能です。

見込み額を知りたい場合、年金分割のための情報提供請求書に見込み額を知りたい旨を記載して年金事務所に提出します。なお、見込み額の開示は、夫婦のどちらか一方からでも請求できます。

年金見込み額は以下の3パターンで開示してもらうことができます。

  • 按分割合の上限(2分の1)
  • 按分割合の下限(分割を行わない場合)
  • 当事者の希望による按分割合

離婚したいと思った時、年金の財産分与について詳しくしりたいと思ったら弁護士に聞いてみましょう

年金分割の計算は非常に複雑で夫婦できちんと算定するのは難しいものです。他方で、年金分割を拒否することは原則としてできず、請求されれば年金分割を行わざるを得ないという特徴もあります。

そのため、財産分与や親権など決めるべきことがたくさんある離婚協議の中で、年金分割についてどの程度の労力を割くのかを検討しておかないと余分な手間をかけることになってしまいます。

弁護士に相談することで、そもそも年金分割をするべきなのかどうか、あるいは、どの程度年金額が増えるのかといった点を把握することができます。
弁護士法人ALGには、離婚事件を数多く取り扱う弁護士が多く在籍しています。離婚事件というと、夫婦で話し合うものというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、弁護士に相談することで、早期によりよい解決を図ることができますので、ぜひ一度ご相談ください。

相手から離婚を求められたけれど離婚をしたくない場合、また、離婚には応じても良いと考えているが相手の出してきた条件に納得ができない場合、多くの方は離婚を拒否したいと考えるかと思います。

今回は、相手から離婚を求められた場合に、離婚を拒否することができるのか、またどう拒否すればいいのかについて説明いたします。

そもそも離婚を拒否することはできるのか

離婚の種類 解説 拒否の仕方
協議離婚 裁判所を通さずに、話合いによる合意で離婚するもの 相手に離婚に応じないことを伝える
離婚調停 裁判所の調停という手続きを利用し、話合いにより離婚を合意するもの 調停委員を通して離婚する意思がないことを相手に伝える
離婚裁判 協議や調停では合意が成立せず、裁判所の離婚判決により離婚が成立するもの 離婚原因がないことを裁判の中で主張・立証する

拒否が難しいケース

協議や調停では、こちらが拒否している限り、離婚は成立しません。

ただし、民法で定められている離婚原因(民法770条1項1号から5号)が明らかな場合には、裁判で離婚が認められる可能性が高いです。そのため、離婚を拒否し続けても、いずれは離婚が認められることになります。

離婚原因として代表的なものは、不貞行為、暴力行為を伴うDV、別居が長期間に渡る場合等が挙げられます。

離婚調停の拒否について

離婚調停は、裁判所を介した当事者同士の話合いなので、離婚をしたくないと調停委員を通じて相手に伝えることで、離婚を拒否することはできます。
以下では、離婚調停を拒否した場合のデメリットや欠席する際の方法について説明いたします。

拒否した場合のデメリット

離婚調停を拒否したからといって、相手が離婚意思を翻す可能性は高くありません。また、離婚を欠席し、こちらの考えを一切伝えないことにもメリットはありません。

また、調停への欠席を繰り返せば、当事者に話し合う気がなく合意の可能性がないものとして、裁判所は早期に調停を不成立とすることになります。そうすると、相手が離婚訴訟を提起して、離婚が成立する時期が早くなってしてしまう可能性が高いです。

欠席する場合の連絡方法

離婚調停が申し立てられると、裁判所からいつ調停が開かれるかという日程が記載された呼出状が届きます。この呼出状には、担当書記官の名前が記載されていますので、以後、事務連絡は、この担当書記官宛てに行うこととなります。

欠席する場合には、なぜ調停に出席することができないのかについて、書記官に説明する必要があり、この説明をせずに放置し欠席した場合、離婚訴訟を提起される可能性が高くなっていきます。

離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる

離婚裁判では、裁判所が、法律に基づき、離婚請求が認められるかどうかを判断します。裁判に欠席を続ける場合、離婚を争う意思がないものとして、裁判所が離婚を認める判決を出す可能性が高くなります。

離婚調停での財産分与の拒否はできるのか

財産分与とは、離婚に伴い、夫婦が結婚期間に積み上げた財産を公平に清算する手続きです。

離婚調停は、離婚に関する諸条件を協議する場でもあるので、財産分与を拒否することも可能です。しかし、財産分与を拒否することで、離婚調停が不成立となった場合は、離婚訴訟が提起されることになります。訴訟では、財産分与についても主張と証拠に基づいて裁判所に判断されます。

通帳開示を拒否する場合

調停で預金通帳の開示を求められても、任意の開示請求にとどまる場合は、通帳の開示を拒否することは可能です。

しかし、通帳の開示を拒否することで財産分与の条件が折り合わない場合は、離婚訴訟が提起されることになります。離婚訴訟では、「調査嘱託」という手続きを取ることで、裁判所から銀行に預金情報の開示が求められ、いずれ預金情報が明らかになってしまいます。

離婚調停の拒否に関するQ&A

離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?

離婚調停を拒否していても、別居期間が長期間に渡ると、客観的に夫婦関係が破綻していると判断され、裁判になれば離婚が認められる可能性が高くなります。
そのため、相手から別居を求められた場合は、法律上夫婦には同居義務があることなどを伝え、できるだけ別居しないように話し合う方が良いでしょう。

離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?

調停で離婚を拒否する意思を明確にした場合、相手は離婚を求めているわけですから、話合いが成立する余地はありません。そのため、2、3回調停が行われた後、調停は不成立となり、離婚を求める相手が離婚訴訟を提起することになります。

相手との復縁を望むなら、裁判所に夫婦円満調停を申し立てて、夫婦関係の継続に向けて話し合うというのもひとつの方法です。

離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください

離婚調停を申し立てられたけれども離婚を拒否したい場合、離婚の手続きや裁判所の運用を理解していないと、自分の意に沿わない条件で離婚が認められてしまう可能性があります。また、条件を整理してみると、相手と協議して離婚に応じた方が良い場合があるかもしれません。

また、相手から離婚を求められている状況で、一人で相手や調停委員とやり取りするのは、精神的にも負担が大きくなってしまいます。

離婚を求められた場合は、一度弁護士に相談していただくことで、どのように対応すれば良いのか、どうすれば自分が一番納得できるのかということが整理されます。当事務所には、離婚に精通した弁護士が多数在籍しているので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

離婚する際に、夫婦の財産を清算する必要がありますが、最も保有している方が多いと考えられるのが預貯金ではないでしょうか。
清算するにあたって、夫婦共同の預貯金だけでなく、夫単独の預貯金も妻単独の預貯金も、さらに子供名義の預貯金も財産分与の対象となり得ます。

きちんと公平に預貯金を財産分与するためには、お互いに通帳を開示して、財産分与の対象となるもの、対象とならないものを判別する必要があります。
しかし、財産分与の対象となるのかどうかわからなかったり、配偶者が通帳を開示しなかったりしてトラブルになるケースもあります。

本記事では、財産分与の対象となる預貯金、対象にはならない預貯金など、財産分与時の預貯金について、様々な角度から詳しく解説します。

通帳の預貯金は財産分与の対象になる?

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築きあげた財産を離婚する際に公平に分け合うことをいいます。
通帳の預貯金は財産分与の対象となるものもあれば、財産分与の対象とならないものもあります。
次項で詳しく解説していきましょう。

財産分与の対象になる預貯金

婚姻期間中に夫婦それぞれの収入からお金を出し合って貯めた預貯金は財産分与の対象です。通帳の名義が夫でも妻でも構いませんし、子供名義でも財産分与の対象になり得ます。
具体的な期間は、夫婦の入籍日から、別居もしくは離婚した日までに貯めたお金です。

財産分与の対象にはならない預貯金

夫婦それぞれが婚姻前の独身時代に貯めたお金や、親族から生前贈与や遺産相続したお金、別居後に貯めたお金は財産分与の対象となりません。
また、親族がお年玉や入学祝いなどの名目で子供に贈与したお金や子供がアルバイトして貯めたお金も子供の固有財産となりますので財産分与の対象となりません。

婚姻前の口座を婚姻後も使い続けている場合は要注意

「結婚して新しく口座を開設するのがめんどくさかった」、「口座を増やしたくない」などの理由で結婚前と結婚後と同じ口座を使い続けている方は多く見受けられます。

生活費や交際費など、頻繁に細かく引き出したり、預け入れたりしている場合は、婚姻前の預貯金なのか、婚姻後の預貯金なのか区別が難しくなり、本来、財産分与の対象とならない預貯金を財産分与してしまったり、財産分与の対象とならない婚姻前の預貯金だと証明するのが難しかったりしてトラブルになるケースがありますので、注意が必要です。

財産分与の対象にしないためにできることはある?

次のような資料があれば、財産分与の対象とならない財産だと証明しやすくなります。

  • 婚姻前の残高がわかる通帳のコピー
  • 生前贈与で得たお金だとわかる贈与契約書と贈与前後の通帳のコピー
  • 遺産相続で得たお金だとわかる遺産分割協議書と相続した前後の通帳のコピー など

昔の通帳が手元に残っていない場合は、銀行に取引明細書を発行依頼して取得できる可能性がありますので、問い合わせてみてください。

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へそくり用の隠し口座は財産分与の対象になる?

へそくり用の隠し口座が財産分与の対象となるかどうかは、資金の出どころによります。
婚姻期間中の夫もしくは妻の収入を資金にしたへそくり用の隠し口座は財産分与の対象となります。
例えば、専業主婦(主夫)が、配偶者のお給料で家族の生活費をやりくりして余ったお金をへそくり用の隠し口座に貯めているケースでは、財産分与の対象となります。

一方で、婚姻前の独身時代に内緒で貯めたお金や独身時代に購入した貴金属や洋服、バックなどを換金してへそくり用の隠し口座に貯めている預貯金は、財産分与の対象となりません。

子供名義の預貯金は財産分与の対象になる?

子供名義の預貯金は、夫婦の収入などを原資にして貯めたお金であれば財産分与の対象となります。
夫婦の収入で払込みをして加入している学資保険や、子供を育てる親を支援するお金である児童手当なども財産分与の対象です。

一方で、子供自身が取得した財産は、子供の固有財産となり、夫婦が築いた財産ではないので財産分与の対象になりません。例えば、親族からもらったお年玉や入学祝い金や子供自身が働いて稼いだアルバイト代は財産分与の対象外です。

財産分与するには通帳の開示が必要

離婚の際、公平に預貯金の財産分与をするためには、夫婦それぞれの通帳を開示する必要があります。
通帳を確認しなければ、正確な預貯金の額がわからないからです。
重要なのは、相手に通帳の開示を依頼するとともに、ご自身の通帳も正直に開示することです。

通帳のコピーを用意しましょう

不正な入出金がないかどうか把握するために、財産分与の対象となる期間について、すべての通帳のコピーを取得しておくことをお勧めします。
財産分与をするにあたって通帳を開示する範囲は、「婚姻した日から別居した日、もしくは離婚した日となります。」
さらに、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義が記載している部分も漏れなくコピーしておくようにしましょう。

通帳開示をしたくない場合

配偶者以外から通帳開示を求められたのであれば、開示を拒否することができます。
また、配偶者であっても、通帳の開示を強要することまではできません。

しかし、通帳を開示しなければ、財産分与の話し合いは進められず、分配できないままとなり、解決できない状態が続きます。
開示する必要があるのは、婚姻期間中の分だけで問題ありません。
素直に必要な範囲だけでも通帳開示をしたほうが、スムーズに解決できるでしょう。

通帳開示を拒否された場合

通帳開示は強要できませんので、相手が応じない可能性は十分にあります。
相手が応じないかもしれない場合は、通帳の所在がわかるのであれば、同居中に通帳のコピーをしておくのが有用です。

相手から通帳開示を拒まれ、通帳の所在もわからない場合は、「弁護士会照会制度」と「調査嘱託制度」を利用して通帳の中身が調査できます。
次項よりそれぞれ詳しく解説していきます。

弁護士会照会制度

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、事件の解決に必要な情報を取得するため、銀行や会社などの団体に事実を問い合わせることをいいます。弁護士が職務活動を円滑に行えるよう設けられた法律上の制度です。

財産分与において、裁判外で争っていても弁護士照会制度を利用することができ、銀行に照会を行って、口座の有無、取引履歴の調査などが可能となります。
ただし、弁護士会照会を利用するには、金融機関名と支店名を特定している必要があります。
また、弁護士会照会に応じて回答するかは金融機関次第となり、名義人の同意がない限り開示に応じない金融機関もあり、必ずしも回答されるかどうかはわかりません。

調査嘱託制度

調査嘱託制度とは、裁判所が官公庁や企業、事業所に調査を嘱託して必要な事項について報告を求めることができる制度です。

財産分与においては、裁判所が調査嘱託を行い、配偶者が開示しない預金口座について、裁判所が当該金融機関に調査や報告を求めて預金残高、取引履歴を開示が可能となります。
弁護士会照会制度とは異なり、調査嘱託は財産分与の請求を裁判所に申し立てた場合に利用できる調査手続きです。
しかし、調査嘱託するには、調停で調査嘱託を行うことは少なく、裁判に移行しなければ調査嘱託がされないケースが多いです。

また、金融機関名と支店名が必要となりますので、どこの銀行に預金があるか特定していなければ、調査嘱託は利用できません。

財産分与時の通帳に関するQ&A

別居時に通帳を持ち出され、預貯金を使い込まれてしまいました。財産分与は請求できないのでしょうか?

別居時に通帳を持ち出されて使い込まれた預貯金を財産分与として請求できるかどうかは、財産分与の対象となるお金(共有財産)なのか、対象外のお金(特有財産)なのかによって異なります。

通帳がご自身の名義でも相手の名義であっても、婚姻期間中に夫婦で協力して形成した預貯金であれば、夫婦の一方が勝手に持ち出して使い込んだとしても、離婚する際の財産分与の対象となります。
したがって、特段の事情がない限り、不法行為や不当利得にはなりませんので返還を求められませんが、持ち出して使い込まれた預金額の半額を財産分与として請求できます。

一方で、ご自身が独身時代に貯めた預貯金や親族から生前贈与や遺産相続した預貯金などは、法律上返還を求めることができます。

口座があるのは確実なのに、通帳を隠されてしまい残高が分かりません。どうすればよいでしょうか?

まずは、当事者間の話し合いや調停のなかで、任意で通帳の残高を開示するように求めましょう。
特に調停では、調停委員に説得されて、相手方が開示に応じる可能性もあります。

任意で通帳の残高を開示するように求めても応じない場合は、預貯金を保有している金融機関や支店名などの情報を把握しているのであれば、弁護士を介して、弁護士会照会を利用しましょう。
対象となる金融機関に対して、預貯金の残高の回答を求めることができます。
しかし、弁護士会照会に応じるかどうかも金融機関次第なので、回答してもらえない場合は、家庭裁判所に離婚調停・裁判や財産分与請求調停・審判などの申立てを行ったうえで、調査嘱託制度を利用する方法もあります。

銀行口座を解約されてしまったら、通帳開示できませんよね。諦めるしかないのでしょうか?

確かに、解約されている口座について、開示請求できる権利は認められないという判例もありますが、実際には開示してくれるケースもあるようです。

金融機関によって対応は異なりますが、一度、弁護士を介して、弁護士会照会や調査嘱託制度を利用してみてはいかがでしょうか。

宝くじの当選金が口座に入っています。財産分与の対象になりますか?

婚姻期間中に購入した宝くじの当選金は、財産分与の対象となり得ます。 夫婦には、お互い同等の生活を維持するための生活保持義務があり、夫婦間の公平性を考えると偶然得た利益であっても、夫婦の一方が独占するのは許されず、夫婦の生計のために使われるべきであると考えられるからです。
ただし、宝くじの当選金は、実際に当てた人の運が貢献しており、一方の配偶者が何らかの貢献をしたとは考えられにくいともされています。
したがって、財産分与する割合は、実際に宝くじを当てた人の割合を有利にされる可能性があります。

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財産分与で預貯金等を確認することは大切です。弁護士に相談することをお勧めします

離婚後の生活を安定させるためにも、離婚時に財産分与を行うのはとても大切です。
実際に相手名義の預貯金を正確に把握していない夫婦も多く、把握できなければ、公平に財産分与ができません。

そもそも財産分与の対象となるのか対象とならないのかわからないという方や相手が通帳を開示してくれず困っている方は、まずは弁護士にご相談ください。
ご家庭の状況を確認のうえ、適切に財産分与を行えるようにアドバイスさせていただきます。
弁護士に依頼すれば、相手と直接交渉(話し合い)も可能ですので、弁護士から通帳の開示を求めたり、財産分与について話しあったりすることも可能です。
また、弁護士を介せば、「弁護士会照会制度」や「調査嘱託制度」も利用できますので、相手の預貯金の情報を把握できる可能性は高まります。

まずは、弁護士法人ALGにお気軽にお問合せください。

「仕事から帰ってきたら突然妻と子がいなくなっていました。その後妻からは離婚の申し出と婚姻費用の請求をされています。どのように対応すればよいでしょうか。」

離婚案件においては、このような相談が数多く寄せられます。そのような事態は初めてのことでしょうから、どのように対応したらよいか分からないという方が多いと思います。今回は、このようなケースで、どのような法律関係に置かれているか、どのように対応すべきか等を解説していきます。

妻が勝手に別居した!婚姻費用の支払い義務は?

勝手に別居した妻から、婚姻費用の請求がされました。婚姻費用とは何でしょうか。また、勝手に別居したにもかかわらず、婚姻費用の支払義務はあるのでしょうか。

婚姻費用を簡単に説明すると、夫婦は別居中であっても、適正に生活費を分配しなければならない義務があります。具体的には、夫婦の生活費に回せる収入を合算し、それを家族に分配するわけですが、その結果、どちらか一方から、他方に対し、毎月一定金額を支払わなければなりません。これを婚姻費用といいます。

そして、婚姻関係にある以上、基本的には、婚姻費用の義務は免れることはできません。例外的に、婚姻関係の破綻を招いた有責性のある当事者が婚姻費用の請求をするような場合には、婚姻費用の請求が信義則違反として認められないということもあります。

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正当な理由がない、勝手な別居は「同居義務違反」

夫婦には同居義務があるため、正当な理由がない勝手な別居は、同居義務違反として判断される可能性はあります。

他方、別居に至るのは夫婦関係の悪化が基本的な要因と考えられるため、いずれか一方のみが悪いというようには判断し難いことが多く、結果的に、同居義務違反として問題視されることは多くはないというのが実情です。

そのため、同居義務違反を理由に、別居した側からの婚姻費用の請求が信義則違反であるという主張が認められることは多くないと考えられます。

同居義務違反なら慰謝料を請求できるケースも

同居義務違反の内容が悪質で有責性を帯びるようなケースでは、婚姻費用の請求が信義則違反となる可能性もありますが、加えて、離婚条件として慰謝料を請求できるケースもあるでしょう。

相手方が一定額の離婚慰謝料を支払うということで合意ができれば良いですが、相手方が離婚慰謝料の支払いを拒絶した場合には、離婚訴訟の中で離婚慰謝料の請求を行う必要があります。

その場合でも、同居義務違反と判断されるケースは多くないため、慰謝料請求のハードルは低くないことには注意が必要です。

家出の原因が相手にある場合は婚姻費用が減額される可能性あり

例えば、自ら不貞を働いておきながら、別居し、婚姻費用の請求をしてきたとします。その場合、婚姻費用の支払をしたくないという心情になると思います。

実は、自ら婚姻関係の破綻を招いたような有責配偶者が婚姻費用の請求をしてきた場合には、婚姻費用の請求が信義則違反となり、請求が全部又は一部認められないことがあります。したがって、家出の原因が相手方にある場合には、その内容次第では、婚姻費用の支払義務が免除又は減額されることがあります。

なお、仮に信義則違反がある場合でも、それは有責配偶者の請求が認められないだけで、子の生活費については、養育費相当額の支払い義務があると判断されることが一般的です。

家出の原因が自身(払う側)にある場合はどうなる?

夫が不貞を働き、その結果妻が別居し、妻が婚姻費用の請求をしたとします。その場合、婚姻費用の支払義務者側に有責性があることになります。

しかし、婚姻費用の支払義務者側に有責性があったとしても、支払をすべき婚姻費用額が増額するというようには考えないのが通常です。支払義務者の有責性については、婚姻費用の問題ではなく、慰謝料の問題であると考えるのが通常だからです。

勝手に出て行った相手から婚姻費用を請求された場合の対処法

勝手に家を出た相手から婚姻費用の請求がされた場合、どのように対応すべきでしょうか。

まずは、相手方の有責性等に鑑み、婚姻費用支払義務があるかどうかを検討することとなります。
婚姻費用の支払義務があると考えられる場合には、婚姻費用の適正額を計算することとなります。婚姻費用の基本となる金額は、婚姻費用算定表というものが存在しますので、その算定表を参照すると良いでしょう。

その上で、相手方と協議を重ね合意に至るかどうか交渉することとなります。相手方が調停の申し立てをしてきたときには、調停手続きにおいて協議してくこととなります。

勝手な別居と婚姻費用に関するQ&A

勝手に家出した妻が実家にいることが分かりました。実家の世話になるなら婚姻費用は払わなくても良いですか?

相手方が実家に帰り、実際には実家からの援助で生活ができている場合、婚姻費用の支払義務はあるのでしょうか。また、婚姻費用の金額に影響しますでしょうか。

多くの案件では、婚姻費用の支払義務はあり、婚姻費用の金額に影響はないと判断されると思われます。前者については、実家からの援助の有無にかかわらず、夫婦である以上、生活費を分配する義務自体は消滅しないと考えられます。

後者についても、実家からの援助を、権利者の収入認定の際に考慮するということは稀にありますが、基本的には、実家からの援助を法的に期待するのは妥当ではなく、婚姻費用の金額には影響しないのが一般的です。

浮気相手の家に転がり込んでいるようなのですが、それでも婚姻費用を払わなければならないのですか?

浮気相手の家に転がり込んでいる場合は、婚姻費用の請求が信義則に反するものとして、認められない可能性があります。
そのようなケースでは、浮気相手の家に転がり込んでいるということを証拠によって立証するか、相手が認めなければ、裁判所が浮気相手の家に転がり込んでいるという事実を認定しないため、証拠の存在が重要ということになります。

勝手に出て行った妻から離婚したいと言われたので離婚届を送ったのですが提出されません。何度か送っても放置されているのですが、それでも婚姻費用は払わなければいけませんか?

双方に離婚意思があり、離婚届を送っているにもかかわらず、離婚届の提出がなされないような場合でも、婚姻関係自体は継続している以上、婚姻費用の支払義務はあると判断されることが一般的です。
確かに、婚姻関係が破綻していることを理由に、婚姻費用の支払義務を免除したり、減額したりするケースもありますが、よほど例外的なケースであると理解した方がよいでしょう。

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婚姻費用の協議が長引くと、それだけ離婚の話をするのが先延ばしになります。最終的に離婚は致し方ないという場合には、婚姻費用は早期に決着をつけ、離婚協議に時間を割いた方が生産的です。

他方で、婚姻費用として相場より高い金額を支払ってしまって生活に困るというのも良くありません。支払義務の有無や適正な婚姻費用額等、一般の方には判断しづらい部分も多々ありますので、弁護士にご相談いただき、早期に進めていくことをお勧めいたします。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。