遺留分を請求された場合の対処法

遺留分を請求された場合の対処法

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

遺言書等があったことにより、特定の人が遺産を多く取得することがあります。

その際、他の相続人の遺留分(最低限取得できる遺産)を侵害していることがあります。その場合には、遺産を多く受け取った人は、遺留分を侵害されたと主張する相続人から、「遺留分侵害額請求」という金銭請求を受けることがありまます。

今回は、遺留分侵害額請求を受けた場合に、どのような対応が考えられるかについて、紹介していきます。

遺留分侵害額請求をされたら、内容をよく確認しましょう

遺留分侵害額請求は、民法1042条から1049条までの間に、そのルールが定められています。遺留分侵害額請求を受けた場合には、それらの条文に基づき、本当に請求が許される状況なのか、また、適正な内容で請求されているかを確認する必要がありますので、請求内容をよく確認するようにしましょう。

請求者に遺留分を請求する権利はある?

まず、請求者に遺留分侵害額請求をする権利があるかどうかを確認しましょう。
民法1042条は、遺留分の帰属(=権利者)について定めています。

権利者は誰か

これは、「兄弟姉妹以外の相続人」です。
つまり、配偶者は常に遺留分を有する権利者です。
また、相続人の第一順位である子(及びその代襲相続人)も遺留分を有します。子がいない場合や子が相続放棄している場合には、第二順位である直系尊属(親、祖父母等)が遺留分を有することになります。

したがって、少なくとも、これらの人からの請求かどうかは確認するようにしましょう。

遺留分の侵害は事実かどうか

遺留分の侵害があった場合に、遺留分侵害額請求ができます。そのため、遺留分侵害の事実があるのかどうかを確認する必要があります。

例えば、遺言等が特段存在せず、請求されている人が遺産を多く取得しているわけではない場合は、遺留分を侵害しているとはいえないと考えられます。

遺留分を侵害しているといえるには、遺言等により特定の人が遺産を多く取得した結果、遺留分権利者が、遺留分を下回る遺産しか取得できていないという状況が必要です。多くの場合は、遺言により、特定の相続人が全て又は大部分の遺産を取得する内容となっているため、遺留分権利者がほとんど遺産を取得できていないというようなケースだと思われます。
遺留分を侵害している事実があるかどうか、確認をするようにしましょう。

請求された割合は合っている?

民法1042条は、遺留分の割合を定めています。
例えば、遺留分を算定するための財産の価額(ここでは、正確ではありませんが、遺産全額をイメージしていただければと思います。)が1200万円だとした場合、

①相続人が直系尊属(親、祖父母等)“のみ”である場合
その相続人の遺留分は3分の1の400万円です。
なお、被相続人の両親が生存している場合、相続人が2名ですので、それぞれが200万円ずつの遺留分を有することになります。

②①以外の場合
その相続人の遺留分が2分の1の600万円です。
例えば、配偶者1名と子2名がいる場合には、配偶者は300万円、子はそれぞれ150万円ずつの遺留分を有することになります。
遺留分がこのような割合できちんと計算されているかどうか、確認をするようにしましょう。

遺留分請求の時効を過ぎていないか

民法1048条は、「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始のときから十年を経過したときも同様とする」と、遺留分侵害額請求の期間制限について定めています。

すなわち、①相続の開始及び②遺留分侵害の事実を知ったときから1年以内に遺留分侵害額請求を行わないと、同請求権が消滅時効にかかることになります。
例えば、子3人が相続人である事案で、被相続人に死亡当日に、子3人が全員、被相続人死亡の事実と、全遺産を長男に相続させる旨の遺言があることを認識したとします。長男以外の相続人からの遺留分侵害額請求が、死亡日から1年を経過していた場合には、長男は消滅時効の援用をし、請求を拒否することが可能となります。
請求を受けた場合には、起算点から1年経過していないかどうか、確認をするようにしましょう。

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払わなくていいケースでも連絡は必要?

遺留分侵害の事実がなかったり、既に消滅時効にかかったりしているような場合でも、請求者への連絡はした方がよいでしょう。

特に消滅時効により支払いを拒絶する場合には、請求された人も「時効の援用」をすることが必要です。例えば、請求者に対して、「遺留分侵害額請求の消滅時効が完成しているため、同請求権は消滅しており、支払には応じられない」というような連絡をする必要があります。
支払を拒絶する連絡をすることで、請求者に対してスタンスを明らかにすることができますし、不当な請求が止む可能性もありますので、連絡自体は行った方が良いでしょう。

遺留分の請求は拒否できないの?

遺留分侵害額請求が法律に従い適正な内容で行われている場合でも、任意の交渉段階で支払いを拒絶すること自体は可能です。
もっとも、その場合には、請求者が遺留分侵害額請求の訴訟を提起してくる可能性が高いと考えられます。

判決で一定額を支払わなければならない内容となった場合、それでも支払いをしなければ、自身の財産に対して強制執行され、強制的に支払いをさせられてしまうことになります。
訴訟に移行した場合等の見通しも踏まえて、請求者の請求に対して適切な対応をとることが必要です。

遺留分は減らせる可能性がある

遺留分侵害額請求者は、適正な金額よりも過大な金額で請求を行ってくることがあります。その場合には、当然、減額交渉や訴訟の中で減額の主張を行うことが可能です。
ここでは、遺留分侵害額請求に対して減額を主張する場合の具体例を説明していきます。

自身に寄与分がある場合

遺留分侵害額請求を受けた際、請求された人に寄与分がある場合、遺留分侵害額を減額することは可能でしょうか。

例えば、遺産分割の際は、相続開始時の遺産から寄与分を控除して、みなし相続財産を算出します(そのみなし相続財産に法定相続分等を乗じて一応の相続分を算出し、一応の相続分に寄与分を加算することで具体的相続分を計算します。)。

これと同じように、遺留分侵害額を計算する際の「遺産の全体額」を、遺産から寄与分を控除して計算できるのであれば、遺留分侵害額も減少するように思われます。

しかし、結論として、このような計算はできません。民法上、遺留分侵害額を計算する際の要素に、寄与分が含まれていないためです。遺留分侵害額請求に対し、自身の寄与分があることを理由に減額することはできませんので、注意が必要です。

請求者に特別受益がある場合

遺留分侵害額請求をする相続人に、特別受益があるような場合には、遺留分侵害額を減額できる可能性があります。
例えば、相続開始時の遺産の評価額が1300万円、子2名が相続人、子Bは被相続人の生前1500万円の贈与を受けており特別受益に該当する、遺言により死亡時の遺産1300万円は子Aが相続したという事案だとします。
この場合、遺留分侵害額は、(1300万円+1500万円)×4分の1-1500万円=0円となります。
したがって、子Bの請求額が、子Bの特別受益を無視した、例えば1300万円×4分の1=325万円であったとしても、正しくは0円であり、支払を拒絶することが可能です。

遺産の評価額を下げる

特定の遺産について、その評価額に争いがある場合があります。典型例は不動産です。片田舎の土地があったとして、当然請求者側は、当該土地の評価額を高く設定して請求します。

他方、片田舎の土地が高い金額で売却できるのか、不当に高い金額で評価されていないか、という点は請求された側は主張しておきたい点です。不動産の評価額を低く主張することで、遺留分侵害額の金額を下げることが可能です。交渉であれば、それで合意を目指すことになりますし、訴訟の場合には低い金額で裁判官が認定する主張・立証を尽くすことになります。

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遺留分を請求されてお困りのことがあれば弁護士にご相談ください

遺留分侵害額請求は、理屈の上では単なる計算をすればよいだけですが、法律実務家であっても、その多くは、遺留分侵害額請求は負担が大きいと認識していると思われます。それは、遺留分侵害額請求の計算が複雑で、深い知見が必要であることや、未処理の遺産がある場合に遺産分割と遺留分侵害額請求のいずれを先行させるか、その解決内容を如何に統一的なものとするか等、未解決の問題が残されているためです。

このような遺留分侵害額請求を法的知見がない場合に適切に処理することは困難を極めます。遺留分侵害額請求をする、又はされた場合には、是非、一度弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

セックスレスは、夫婦関係や性に対する価値観が多様化した現代で、離婚原因として徐々に増えてきましたが、プライベートな事情であり、他人にはなかなか相談しづらい内容です。
今回は、セックスレスが離婚原因となるのか、また離婚した場合に慰謝料が認められるのかという点をご紹介いたします。

セックスレスとは

セックスレスの法律上の定義はありませんが、特別な事情がないのに夫婦間に一定期間性交渉がないこと、と言われています。
どの程度の期間が必要なのかは、夫婦間の事情により異なりますが、一方の配偶者が性交渉を求めるにもかかわらず長期間性交渉を拒否している場合には、セックスレスと認められやすいでしょう。

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セックスレスは離婚原因として認められるのか

セックスレスは、離婚原因を定めた民法の条文には載っていませんが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すれば、離婚原因として認められます。

ただ、冒頭にもあるとおり、性に関する価値観は多様化しているので、夫婦間にどの程度の性交渉が必要かは、個々の夫婦により違います。
そのため、セックスレスを原因として離婚が認められるためには、長期間性交渉がないせいで婚姻関係を継続することが困難であることを証明しなければなりません。

セックスレスでの離婚率

セックスレスによる離婚率を調べた信頼できる調査はありませんが、令和3年度の司法統計によると、家庭裁判所に離婚を申し立てた人のうち、「性的不調和」を理由に挙げた人は、4940人います。

セックスレス離婚の慰謝料

セックスレスが原因で離婚することになり、精神的苦痛を受けたのであれば、性交渉を拒否した配偶者に慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の額は、セックスレスの期間や苦痛の度合いによって異なります。

慰謝料の相場

セックスレスによる離婚慰謝料の相場は、10万円~といわれています。もっとも、セックスレス単体が離婚の原因となることは少なく、不貞やDVなどセックスレス以外の要素が考慮されて慰謝料の金額が上がることが多いです。

請求方法

セックスレスによる離婚慰謝料を請求するためには、①交渉②調停③訴訟という方法があります。
①交渉とは、当事者同士の話合いで、任意に慰謝料を支払ってもらうように求めることです。
②調停は、裁判所で調停委員を交えて行われる話合いのことです。離婚慰謝料を請求する場合、離婚調停の中で、慰謝料を払うように相手に求めることになります。
③調停でも相手が慰謝料の支払いに応じない場合、離婚訴訟の中で、相手に慰謝料を請求することになります。

セックスレス離婚の切り出し方

セックスレスによる離婚を考えている場合、まず、相手がセックスレスについてどう思っているのか話し合いましょう。こちらがセックスレスに悩んでいることに相手が気づいていない場合もあるからです。
ただ、話し合ってもセックスレスに対する価値観が一致しないなら、離婚した方がお互いにとっていいのではないかということを相手に伝える必要があります。

離婚したくないと言われた場合

相手に離婚を拒否されて、話合いによる離婚が難しいと判断した場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。調停でも合意ができなければ、離婚裁判へと進んでいくことになりますが、セックスレスだけでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められない可能性があります。そのため、あらかじめ別居することで、婚姻関係の破綻がより認められやすくなります。

セックスレス離婚に必要な証拠

相手を説得したり、裁判所にセックスレスを認定したりしてもらうためには、セックスレスだったという証拠を用意する必要があります。

夫婦の生活時間帯などがわかる表

夫婦の生活時間がバラバラで、一緒に過ごしていた時間がほとんどなかったような場合には、当然性交渉があったと判断することは難しくなります。そのため、夫婦の生活時間帯がおおよそでも分かる表を作成することで、セックスレスを推測させる証拠となる可能性があります。

セックスレスについて夫婦で話した会話の録音

セックスレスについて、夫婦間で話し合った会話の録音も証拠となります。セックスレスは、正当な理由なく長期間性交渉を拒否することですから、相手のセックスレスについての考えを録音することで、性交渉の拒否に正当な理由がなかったと認められる証拠になり得ます。

セックスレスのことが書かれた日記

セックスレスの事実が書かれた日記も、証拠になります。ただし、日記は、他の証拠と比べて、作成者の主観が入り込みやすいものです。自分に都合よく改ざんしたと言われないように、継続的に、細かく、セックスレス以外のことにも触れながら書くと、より信用性が増すでしょう。

セックスレスでの離婚でよくある質問

セックスレスで離婚した場合、子供の親権はどちらになりますか?

子供の親権者が父母のどちらになるかは、夫婦のいずれが主として子供の監護をしてきたかで決まります。離婚原因がセックスレスであっても、この原則に変わりはありません。

そのため、セックスレス自体が、親権者を決めるうえで有利になったり、不利になったりすることはありません。

セックスレスを理由に不倫された場合は離婚慰謝料を請求することはできますか?

セックスレスになっていたとしても、夫婦関係が破綻していない限り、相手の不貞行為を理由とする慰謝料を請求することは可能です。
ただし、不貞行為をした時点で婚姻関係が破綻していれば、慰謝料を請求することはできません。そのため、不貞をした相手は、当時セックスレスによって夫婦関係は既に破綻していたと主張してくるでしょう。

妊娠中のセックスレスでも離婚できますか?

妊娠中の女性は、胎児に対する影響や女性自身の体調の問題によって、性交渉が困難であることも少なくありません。
そのため、妊娠中の女性が性交渉を拒否したとしても、正当な理由があると認められる可能性が高く、セックスレスを原因とする離婚は認められない可能性が高いです。

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セックスレスにより離婚する場合は弁護士にご相談ください

セックスレスによる離婚を考えることは、価値観が多様化した現代では珍しいことではありません。他方で、夫婦のプライベートな事情であることから、第三者に相談しづらく、我慢してなかなか離婚に踏み出せない方もいるのではないでしょうか。
弁護士に相談していただければ、専門知識や経験に基づき、離婚のために必要な証拠の収集や、離婚に向けた適切な行動についてのアドバイスをすることが可能です。

セックスレスで離婚を検討しているのなら、是非一度弁護士にご相談ください。

離婚する際に親権問題が大きな争点になっているケースがあります。
親権問題を早期に解決する手段のひとつとして、親権と監護権を分ける方法があります。

親権は聞きなれた言葉ですが、“監護権”という言葉は聞きなれない方も多くいらっしゃるかと思います。

本記事では、“監護権とは何なのか”、“親権と監護権の違い”や“親権者と監護権者を分けるメリット・デメリット”など、監護権を得たい方に参考になるように解説していきます。

監護権とは

監護権は親権の一部で、子供と一緒に暮らして子供の世話をしたり、学校を通わせるなど必要な教育を受けさせたりすることをいいます。
親権は、子供を監護・教育する「身上監護権」と子供の財産を管理する「財産管理権」の2つの権利から構成されています。監護権は「身上監護権」を指します。

通常は、親権者と監護権者は同じ親がなりますが、事情によっては、父母間で合意できれば分けることができます。

例えば、離婚する際に夫婦双方が親権を譲らないときなどに、親権者を父親と定めて、監護者を母親と定めると、子供は父親の戸籍に残り、実際に子供を引き取って世話をしているのは母親ということになります。父親も母親もそれぞれに“親である意識”や“子供とのつながり”を離婚しても感じられます。

親権と監護権の違い

親権には、子供の財産に関しての法律行為を子供の代わりに行い、財産を管理する権利と義務となる「財産管理権」が含まれていますが、監護権には「財産管理権」は含まれていません。
例えば、子供名義の預貯金や祖父母から生前贈与された資産などの管理は親権者のみの権限です。

子供の資産を売却したり、賃貸したりできるのも親権者となります。

身上監護権の内訳

親権の一部である身上監護権には、さらに細かく分類ができ、「身分行為の代理権・同意権」、「居所指定権」、「懲戒権」、「職業許可権」があります。
それぞれどのような権利なのか、解説していきましょう。

身分行為の代理権・同意権

子供の身分に関する権利関係について、同意や代理をする権利をいいます。
例えば、未成年の子供の婚姻の同意や養子縁組の代諾、相続の承認・放棄などが挙げられます。

居所指定権

親は子供の住む場所などを指定する権利をいいます。
子供と一緒に暮らすことはもちろん、進学などで親と独立した生活が必要な状況であれば、その管理を行う権利も含まれます。

懲戒権

子供が悪いことをしたときに、しつけをする権利です。
当然ですが、決して虐待が許される権利ではありません。
懲戒権は、必要な範囲で子供の人格や権利を尊重して行使しなければなりません。

職業許可権

子供がアルバイトなどの仕事をしたいときに許可する権利をいいます。
許可するだけでなく、許可の取り消しや制限するのも認められています。

親権者と監護権者を分けるメリット・デメリット

親権者と監護権者を分けるメリットもあれば、デメリットもあります。
それぞれ詳しく確認していきましょう。

メリット

離婚する際、親権問題で激しい争いが生じる場合は少なくなく、親権者を決めなければ離婚することはできません。

しかし、親権者は、父母それぞれにとって歩み寄りの難しい状況になることが多く、双方が親権を一歩も譲らず、離婚が長期化し、何年も解決できないことになってしまいます。
そこで、親権問題がなかなか解決しない場合は、親権と監護権を分けるという方法を選択することで、父母それぞれが子との関わり方に納得し、早期に離婚が成立する可能性が高まります。

そのほかにも、父母それぞれが「親」としての意識をもつことができる点が挙げられます。
親権をもたずに子供と離れて暮らす親は、自然に親としての自覚が薄れていき、養育費の支払いを滞る場合があります。
親権と監護権を分離することによって、子供と離れて暮らす親も“親権者”としての意識をもち続け、養育費の不払いが生じる可能性を軽減できます。

デメリット

親権者と監護権者を分けた場合、実際に子を日常的に監護している監護権者には、この法律行為について代理をしたり、同意をしたりする権限がないことになります。そのため、子名義の通帳を開設するという行為を1つとっても、毎回、親権者に連絡を取り、事情を説明して、親権者に契約手続きをしてもらうという煩雑さが生じます。また、緊急で手続が必要な場合に、親権者とすぐに連絡が取れないということによって子の生活に支障を来たす可能性もあります。

さらに、親権者と監護権者が離婚後に対立してしまった場合、監護権者の方針に親権者が同意しないことにより、監護権者が思うように子の監護をすることができなくなる可能性もあります。
そのほかにも離婚届には監護権者を記載する欄はありません。戸籍にも記載されません。
監護権者について、書面に残しておかなければ、後になって、「監護権者に定めたつもりはない」などと親権者が言い出してトラブルになる可能性もあります。

親権と監護権を分ける手続き

親権と監護権は、まずは父母間で話し合って決めます。話し合いでは解決できない場合は、調停を申し立てて、裁判官や調停委員を交えて親権と監護権をどうするか話し合いをしていくことになります。

ただし、調停や裁判などの裁判所の手続き離婚をする場合、、親権と監護権を分けることについて裁判所は基本的に消極的です。認められるのは、親権と監護権を分けることが子供の利益(幸せ)になると考えられる非常に限られたケースのみとなっています。

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監護権をとるために必要なこと

監護権をとるためには、これまで子供とどのように関わってきたかという監護実績が重視されます。
これまでの監護実績のほかに、現在の養育環境や監護状況に問題ないか、今後子育てをする時間を確保できるか、祖父母などの監護補助者がいるかどうかも監護権をとるために重要な要素となります。
様々な事情を考慮したうえで、どちらの親の元で子供が育てられたほうが子供の福祉(幸せ)につながるのかが考慮されます。

監護を怠った場合の罰則

監護権者が、幼い子供を自宅に放っておいたまま遊びに出かけたり、暴力を振るったり、子供を出先で置き去りにしたりした場合は、児童虐待防止違反や保護責任者遺棄罪などで処罰される可能性があり、それぞれ以下の罰則が定められています。

【児童虐待防止法違反】
・1年以下の懲役または100万円以下の罰金

【保護責任者遺棄罪】
・3ヶ月以上5年以下の懲役
※子供が身体に危険を及ぼした状況に応じてさらに刑罰は重くなります。

一度決めた監護権は変更できる?

護権者を一度決めた場合でも、監護権者を変更することを希望するときには、、父母間の話し合いによって変更することが可能であり、家庭裁判所の関与は必須ではありません。
その際に、監護権者を変更したこと役所などに届出することも不要です。

しかし、監護権者の変更について父母間の話し合いでは決まらないときは、家庭裁判所に調停や審判を申し立てたうえで結論を出していくことも考えられます。することになります。

なお、監護権と違い、親権者の変更についてはは、父母間の話し合いでは変更できず、必ず家庭裁判所での手続きを経る必要があります。

監護権に関するQ&A

親権者と監護権者を分けた場合、親権者に養育費を請求することはできますか?

監護権者は親権者に対して養育費を請求できます。
養育費は子供を監護・教育するために必要な費用でであり、具体的には、子供の衣食住に必要な経費、教育費、医療費などです。
そして、監護権者は、実際に子供と一緒に暮らし世話をして、子供の衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがかかるわけですから、子供と離れて暮らす親権者には、親として養育費の支払義務が発生し、公平に分担するべきと考えられています。

監護権の侵害とはどんなことをいいますか?

監護権の侵害とは、例えば、離婚時に監護権者と定められた親のもとから、他方が正当な理由もなく子供を勝手に連れ去ったり、面会交流の際にそのまま子供を監護権者のもとに返さなかったりした場合などを指します。

祖父母でも監護権を獲得できますか?

離婚する際は、父母のどちらかが監護するのが前提ですが、父母のどちらも子供を育てるのが難しい環境に置かれていたり、祖父母に育てられたほうが子供の福祉(幸せ)になったりする場合は、父母との話し合いによって、夫婦以外の第三者である祖父母が監護権者にとすることも禁止はされていません。可能です。

また、祖父母が監護権者になるうえで、必ずしも養子縁組をする必要はありませんが、監護の実態と戸籍の実態を合致させるためには、養子縁組の手続きをして戸籍上親子関係を成立させる方法もあります。

ただし、監護権者は、法律上は父母のどちらかとするのが原則とされていることから、、祖父母が家庭裁判所に監護者指定の調停・審判を申し立てることはできません。

監護権を証明する書類はあるのでしょうか?

離婚するときに役所に提出する離婚届は、親権者を記入する欄はありますが、監護権者を記入する欄はありません。よって、戸籍にも監護権者の記載はありません。
監護者指定審判や調停を経て、監護権者を決めた場合には裁判所で作成される書類に誰が監護権者であるかが記載されていますので、監護権の証明になります。
監護権者指定審判や調停を行わない場合、親権と監護権者を分けるときには、、あとから親権者から「監護権者に指定したつもりはない」、「勝手に子供を連れていった」などといわれ、トラブルが起きないように書面に残しておきましょう。できれば、証明力や信頼性などに優れている公正証書を作成しておくのをお勧めします。

監護権のみを持っている場合でも児童扶養手当をもらうことができますか?

児童扶養手当は、子供を監護・養育している親に支給されるものなので、親権を有していない監護権者であっても児童扶養手当を受け取ることができます。
ただし、戸籍を確認しても監護権者である事実が記載されておらず証明ができませんので、児童扶養手当の受給に関してトラブルが生じないようにするためには監護権について明確な取り決めをしておくことが重要です。

監護権についてわからないことは弁護士にご相談ください

離婚を決意したものの、配偶者と親権問題(親権と監護権)で激しく揉めている場合やわからない点がある場合はぜひ弁護士にご相談ください。

本来は、親権者と監護権者になるのは同じ親がいいと考えられていますが、状況により、子供の利益(幸せ)を考えたうえで、親権者と監護権者を分ける場合もないではありません。
弁護士に依頼すれば、代わりに相手と親権・監護権について交渉することも可能ですし、調停・審判などの裁判所の手続きも一任できます。

また、親権者と監護権者を分けるにあたって、それぞれの役割を理解して、しっかり取り決めておかないと後からトラブルになるケースもあります。
まずは、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。

離婚調停でどのように振舞えばいいのか、わからない方も多いでしょう。
言いたいことを、言いたいように伝えたばかりに、調停委員に悪い印象を持たれ、調停が自分の不利なように進んでしまうといったことは避けた方が良いでしょう。以下では、調停の場ですべきでない言動について解説していきます。

離婚調停でしてはいけない不利な発言

離婚調停でしてはいけない発言は、以下のとおり様々です。
意識して離婚調停に臨まなければ、つい、過度に相手を貶めるような発言をしてしまったり、自分の考えていることを全て話すなど手の内を見せてしまい、譲歩せざるを得ない状況を作ってしまうことがあります。

調停の場は、調停委員という第三者を介した話合いの場なので、カウンセリングや思いを吐露する場でないことは心に留めておきましょう。

①相手の悪口や批判

離婚調停をするぐらいですから、相手に対して言いたいことや恨み辛みもあるでしょう。
しかし、それを調停という場でそのまま調停員にぶつけることは避けた方が良いです。人に対し、負の感情を抱きやすい、感情的になりやすく冷静な話し合いができないといった印象を持たれてしまいます。

そうすると、調停委員に耳を傾けてもらったり、自分に有利なように話し合いを進めることも難しくなってしまいます。
本当に必要なことを適切に伝えられるよう心掛けるようにしましょう。

②矛盾する発言

以前の自分の主張と矛盾するような発言をすることもやめましょう。
例えば、相手はケチなためお金の管理を細かくしてくると言ったかと思えば、高額なものは全て相手が購入していた、というような主張です。

事実を自分の考えに沿って正しく伝えられるよう、思ったことをそのまま口にしないことが大切です。予め伝えたいことをまとめておくとこのような矛盾は避けやすいです。

③固執しすぎる発言

一般的に通りにくい主張を通そうとしたり、絶対にこれだけは譲りたくないという内容が説得的なものでなかったりすると、調停委員からも呆れられてしまいます。

親権など強く争わなければならない条件以外は、そこまで言うなら、もう調停で話し合うのは無理なので訴訟でやってください。」など言われないように、一定程度は譲歩するようにしましょう。

④譲歩しそうだと思われる発言

固執しすぎないことが大切であるとは言いましたが、ここまでなら譲歩するだろうと相手から悟られるような発言はしないようにしましょう。

例えば、「ここまでの金額ならもらえなくても仕方ないかなと思っています。」、「正直、早く離婚を成立させたいといった気持ちが1番強いので他は諦めます。」といったような発言です。

相手から、お金をあまり支払わなくても済むぞ、などと付け込まれてしまうので、交渉の場であることを忘れないようにしましょう。

⑤他の異性との交際などをほのめかす発言

調停の場で、離婚を求める理由や相手との婚姻関係継続が困難な理由を聞かれた際、交際中の異性や再婚予定があることを説明してしまう人がいます。

たしかに、夫婦関係が破綻した後であれば、異性との交際も不貞行為にはなりませんが、離婚理由がこの本人にあるのではないか、実は以前から交際が続いており、不貞していたのではないか、といった印象を持たれる可能性があります。
不用意な発言で不利な状況にならないようにするため、このような発言は極力避けるべきです。

⑥相手に直接交渉するといった発言

調停委員を介すため、上手くニュアンスが伝わっていないのではないかと不安になり、つい「もう自分で相手に話してみます!」と強気に発言する人がいますが、これは望ましくありません。

相手を攻撃するのではないか、なんとしてでもお金を取ろうとするのではないか、と調停委員から警戒され不利な方向に話し合いが進んでしまうかもしれません。思うようにいかなくても、相手と直接交渉をしようとするのは避けましょう。

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離婚調停で聞かれること

聞かれる内容
申立人 ・なぜ離婚をしたいのか
・相手方との話し合いはできたのか
・離婚にあたりどのような条件を提示したいのか
・離婚後の生活をどのように考えているか
・(子どもがいる場合)親権は欲しいと考えているか
相手方 ・離婚に応じる意思はあるか
・条件次第では離婚に応じる場合、どのような条件を求めるか
・(子どもがいる場合)親権は絶対に争いたいか

離婚調停中にしてはいけない行動

離婚調停に段階が進んでいるのであれば、調停委員や弁護士を介して冷静に交渉を進めなければなりません。それにもかかわらず、身勝手な行動をとることによって、信頼を失うだけでなく違法行為をしてしまったことにより、本来得られるはずだったものまで失ってしまうことがあります。

思い通りに進めたいあまり、身勝手な行動を取らないよう気を付けましょう。

①配偶者以外との交際や同棲

夫婦関係が破綻しており、修復が困難な状況であっても、離婚が成立するまでは、異性と交際することは控えましょう。
不貞行為を疑われて慰謝料請求をされる可能性や不誠実と見られて有利に交渉を進めることが難しくなるかもしれません。

②相手に直接連絡する

相手に電話をかけたり、LINEやメールを送って直接連絡を取ろうとすることは控えましょう。直接交渉ができないからこそ、調停に進んでいるので、あまりしつこく接触しようとすると、警察に通報されるといったことも考えられます。

冷静に物事を伝えられなければ、相手にも響かずかえって不利な結果になってしまいますので、気を付けましょう。

③離婚調停を欠席する

離婚調停を無断で欠席することは、絶対にしないようにしましょう。
話し合いを諦めたことになってしまい、想定よりも不利な結果になる可能性もあります。

場合によっては、5万円以下の過料が設定されますので、都合が悪いときには期日の日程調整をお願いするなどして、出席するようにしましょう。

④子供を勝手に連れ去る

親権を取れないのではないかとたまりかねて、子どもの学校帰りや面会交流中に、子ども連れ去ってしまう人がいます。このような行為は、誘拐と解される違法行為なのでしてはいけません。

また、身勝手な行動を取る人という印象を持たれ、調停員から警戒された結果、自分に有利な結果に繋がらない可能性もあります。

離婚調停を有利にすすめるためのポイント

離婚調停を有利に進めるためには、①感情的にならない、②自分の主張に固執しすぎない、③事実を冷静に説明できるようにする、ことが重要です。

伝えたいことがたくさんあるとしても、自分の不満や主張を調停委員にぶつけてしまうと話合いも進みません。有責配偶者であっても、冷静に話し合いをできると結果的に悪くない条件に落ち着くこともあります。

また、提出を求められた資料に関しては、拒否せず期限までにきちんと提出するようにしましょう。誠実な態度を示せると、調停委員にも話が伝わりやすくなります。

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離婚調停で不利な発言をしないようまずは弁護士にご相談ください

離婚調停は初めての経験で、何をすればいいのか、どのような準備が必要なのか、わからない方がほとんどだと思います。わからないまま離婚調停に臨んでしまうと、相手には代理人がいるのに自分だけいないばかりに、不利な結論であることに気付かず合意してしまうことも少なくありません。

根拠に基づいて適切な主張をすることが重要なので、法律の専門家である弁護士に、どのように話し合いを進めて行けばいいのか法的アドバイスを求める方が良い結論に繋がりやすいでしょう。

交通事故の示談交渉で、相手方の保険会社から「1日8600円」の慰謝料を提示されたら、要注意サインですので、示談するのをちょっと待ってください。

1日8600円の話が出ているならば、最低水準の自賠責基準で慰謝料が計算されている可能性があり、ご自身が本来もらえるはずの慰謝料よりも、かなり低額となっているおそれがあります。
そこで、本記事では、交通事故の慰謝料が8600円と言われる理由、正しい慰謝料の計算方法、慰謝料を増額させる方法などについて解説していきます。適正な慰謝料を受けとるためにも、ぜひ最後までご一読ください。

慰謝料が1日8600円(旧8400円)になるのはなぜ?

交通事故でケガをした場合、入院や通院を強いられた精神的苦痛に対する「入通院慰謝料」を加害者に請求することができます。この慰謝料の金額について、保険会社から「1日8600円」と提示されることが多い理由は何なのでしょうか?

これは、自賠責基準による慰謝料の計算過程で生じた誤解であると考えられます。
自賠責基準では、以下の①と②を比較して、金額の少ない方を入通院慰謝料の金額とします。

【自賠責基準による入通院慰謝料】

①入通院期間(初診日~治療終了日)×4300円
②実際に入通院した日数×2×4300円

※2020年3月31日以前に起きた事故:4200円で計算

②の下線部分をご覧ください。この部分だけを見ると、「2×4300円(旧4200円)」と見えるため、入通院慰謝料は8600円(旧8400円)と誤解される方が多いのでしょう。
しかし、実際には「実際に入通院した日数×2」が正しい計算方法となります。

また、②の実際に入通院した日数×2より、①の入通院期間の日数の方が短い場合は、①の式で計算した慰謝料が適用されます。
そのため、1日8600円という入通院慰謝料額は、そもそも何ら関係がないことになります。

通院回数を増やした分だけ慰謝料がもらえるわけではない

手当たり次第に通院回数を増やしても、慰謝料が増えるとは限りません。
これは、前述の自賠責基準の計算式にあてはめてみれば分かりやすいです。

(例1)入通院期間200日、実際に入通院した日数100日

①200日×4300円=86万円
②100日×2×4300円=86万円
①=②であるため、慰謝料は86万円になります。

(例2)入通院期間200日、実際に入通院した日数101日

①200日×4300円=86万円
②101日×2×4300円=86万8600円
①<②であるため、慰謝料は86万円となります。

つまり、自賠責基準では、入通院期間の半分の日数(2日に1回)通院した場合に、慰謝料が最大となり、それ以降は、通院回数を増やしても、慰謝料額は変わらないことになります。

また、ケガの症状に照らして必要以上に多く通院したり、湿布やマッサージだけの漫然治療を続けたりすると、過剰診療を疑われる場合があるため注意が必要です。

保険会社は、あくまでも「交通事故のケガの治療に必要だった治療分」の治療費や慰謝料しか支払いません。過剰診療と判断された治療費については自腹で支払わなければならなくなったり、入通院慰謝料が減額されたりするおそれがあります。

適切な通院頻度はどれくらい?

適切な通院頻度は、ケガの内容や症状の重さ、治療経過等により異なるため、まずは医師の指導に従って、通院を続けるのが望ましいでしょう。

仕事が多忙などの理由でなかなか通院ができない場合もあると思われますが、通院頻度が少なすぎると、「もう治療の必要はないのに、わざと通院期間を延ばしている」などと判断され、治療費の支払いが早期に打ち切られたり、慰謝料が減額されたりするおそれがあります。そのため、医師の指導に従って適切な頻度で継続的に通院をすることが治療の効果を上げるうえでも、適切な慰謝料を受け取るうえでも重要です。

骨折や重傷で自宅安静が必要な場合には無理して通院する必要はありませんが、捻挫、打撲系の事案等では週に2~3日程度の頻度が望ましいといえます。

自賠責には120万円の限度額がある

自賠責保険には支払われる損害賠償金に上限額が設けられており、例えば、被害者がケガをした場合に受領できる傷害部分の自賠責保険金の上限は120万円と決められています。

この120万円には、入通院慰謝料だけでなく、治療費や休業損害(ケガの治療のために仕事を休んだ分の補償)などの金額も含まれています。
つまり、入通院が長引いたことで、治療費が高額になったり、仕事を長期休んだことで休業損害が生じたりした場合には、自賠責保険から受け取れる慰謝料が、その分減ってしまう可能性があることを意味します。

弁護士基準なら自賠責基準の入通院慰謝料を上回る可能性大

交通事故の慰謝料を計算する基準には、以下の3つがあります。

①自賠責基準(自賠責保険が用いる最低補償の基準)
②任意保険基準(各任意保険会社が独自に定める基準)
③弁護士基準(過去の裁判例をもとに作られた基準で、弁護士や裁判所が用いる基準)

どの基準を使うかで慰謝料の金額が変わり、一般的には、①≦②<③の順で金額が上がり、弁護士基準が自賠責基準の入通院慰謝料を上回り、、多くの事案で最も高額の慰謝料の獲得することができます。そのため、弁護士に依頼することで自賠責基準のまま算定するよりも高額の慰謝料を獲得できる可能性が高いということです。

ただし、弁護士基準では、被害者にも過失がある部分については、その分慰謝料などの損害賠償金が減額されます。これを過失相殺といいます。
一方、自賠責基準では、被害者の過失が7割未満であれば、過失相殺による減額は行われません。よって、自賠責基準の方が高額になることもありえます。
そのため、多くの場合には弁護士基準で算定するのが最適となりますが、事案によってはどの基準で慰謝料を算定するべきを慎重に検討するべきことになります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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1日8600円の慰謝料が貰えるのは治癒・症状固定までの「治療期間」のみ

入通院慰謝料は、初診日からケガの完治日まで、もしくは症状固定日※までの「治療期間」を対象して算定されることになります。

※症状固定日:これ以上治療を続けても、改善の見込みがない状態に達したと医師より診断を受けた日

症状固定と診断されると、これ以上の通院治療は必要がないと判断されるため、症状固定後の通院は、基本的には、入通院慰謝料の支払い対象から外れることになります。

なお、保険会社から「そろそろ症状固定ですね」「もう治療は必要ないでしょう」などと言われても、安易に応じないよう注意が必要です。症状固定を判断するのはあくまで主治医であって、保険会社ではありません。まだケガが治っていないのに治療を終えてしまうと、ケガが悪化したり、通院期間が短くなることで入通院慰謝料が低額になったり、後遺障害認定においても不利になったりする可能性があるからです。

後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料が請求できる

医師より症状固定の診断を受けた後も、痛みやしびれなどの後遺症が残っているケースがあります。このとき、ご自身の後遺症が「後遺障害」として認定されれば、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求することができるようになります。

後遺障害は1級から14級まで区分され、1級が最も重症、14級が最も軽症、傷害の程度が重症であればあるほど、慰謝料額も増えるよう設定されています。そのため、どの等級に認定されるかが重要ポイントになります。

適切な後遺障害認定を受けるには、通院の仕方や後遺障害診断書の作成が鍵となるため、それなりの戦略と医学的知識が求められます。後遺障害認定を希望される方は、できれば交通事故に精通した弁護士に相談して、今後の方針を立てることをおすすめします。

後遺障害等級認定についての詳細は、以下の各記事をご覧ください。

後遺障害等級認定の申請方法

慰謝料が1日8600円から増額した事例

依頼者が交通事故の被害にあい、むちうちのケガを負ったという事例です。治療を続けた後も後遺障害が残ったため、事前認定を行った結果、後遺障害14級9号と認定されました。

加害者側の保険会社から、慰謝料などの損害賠償金として約130万円の提示(既払い分は除く)がありましたが、妥当な金額であるかどうか判断できなかったため、弁護士法人ALGにご依頼されました。
担当弁護士が保険会社の示談案を確認したところ、弁護士基準と比較すると、相当低い金額となっていました。そこで、保険会社に対し、弁護士基準で計算した賠償金額を提示し、応じないのであれば、すぐに裁判を起こす旨強く主張しました。

その結果、保険会社は当方の主張を認め、弁護士基準で計算した場合の満額に近い、約300万円の賠償金額で示談が成立し、当初の提示額より約170万円増額させることに成功しました。

保険会社から「1日8600円」と提示されたら、弁護士へご相談ください

保険会社から示談案を提示されても、すぐにサインせず、まずは交通事故に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

保険会社からの「1日8600円」の提示には、金額の低い自賠責基準を基にした算定になっていることが多いです。この場合、被害者本人で慰謝料の増額を求めても弁護士基準と同程度までは増額されないことがほとんどです。

この点、弁護士が交渉に入れば、、弁護士基準による増額交渉に応じる可能性が高くなり、慰謝料の増額が叶うとともに示談交渉や保険関係の書類集めなどの面倒な手続きも一任できるため、心身の負担が軽くなり、治療に心置きなく専念できるという利点もあります。
示談案の妥当性を知りたい方や、慰謝料をできる限り増やしたいと考えている方は、ぜひ交通事故対応を得意とする弁護士法人ALGにご相談下さい。

亡くなった親や兄弟姉妹が生きている間、献身的に介護をし続けたとしても、その相続人でなければ1円ももらう権利はないのでしょうか。相続人でなくても、親族であればこのような貢献をした人が、一定の金額を相続人に請求できる制度が創設されました。
この制度は令和元年7月1日以降に開始した相続に適用されます。しかし、どのような制度がまだ知らない方も多いでしょう。以下、制度内容を具体的に解説していきます。

特別寄与料とは

被相続人(要は亡くなった人がこれにあたります)の生前、親族が被相続人の療養看護やその他の労務提供を無償で行ったことにより、被相続人の財産が維持または増加した場合、その親族が相続人に対し、一定の割合で寄与料を請求できるという制度です。

相続人でなくても、親族であれば、献身的に介護をすることはよくある話です。仕事や自身の生活を捧げながら何年間にもわたり介護を続けたにもかかわらず、相続人でないというだけで貢献が評価されず、相続人という立場だけが法的にものをいうというのも理不尽ではないかと考えられるようになりました。そこで、このような制度が創設されました。

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特別寄与料の範囲は?請求できるのは誰?

特別寄与料を請求できる者の範囲は、「親族」です。そして、親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。もっとも、親族であっても、相続人である場合には当然、請求権者にはなりません。また、相続放棄をした、相続欠格や排除により相続人でなくなった者も当然にこれにあたりません。

特別寄与料が認められる要件は?

特別寄与料を請求するためには、まず、親族が被相続人の生前、療養看護をしたか、あるいは、労務の提供をしたことが必要になります。あくまで労務の提供であるため、財産を提供してもこれに含まれません。そして、これは無償で行わなければならず、対価を受け取っていた場合には、請求の要件をみたさないことになります。
さらに、上記行為によって、被相続人の財産が維持または増加したことが必要です。たとえば、介護をし続けたことにより、介護サービスを利用せず、被相続人がその料金を支払わずに済んだというようなケースです。この場合には、本来ならば支払っていたであろう介護料を支払わずに済んだので、財産が維持されたといえます。

いつまで請求できる?時効はあるの?

特別寄与料を請求できる期間には定めがあり、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6カ月間とされています(民法1050条2項但書)。
6か月を超えて請求した場合、相続人が「援用」という形で消滅時効を主張すると、請求自体をすることは一切できなくなってしまいます。このようなことを避けるため、相続が開始されたら、すみやかに請求の手続きをすすめましょう。

遺産分割終了後でも請求できる?

原則として、遺産分割協議が終了した後には、特別寄与料の請求をすることはできません。すでに、各相続人の取り分が決まった状態でこのような請求をかけられると、不安定な状態になってしまうからです。
遺産分割協議自体を、脅迫や錯誤、などの理由によりもう一度リセットする場合に限り、遺産分割協議後であっても請求はできますが、このようなケースは限られています。

特別寄与料の相場はどれくらい?計算方法は?

特別寄与料には、明確な計算方法がありません。そのため、相続人との協議による場合には、合意で決めることになります。もっとも、家庭裁判所が決める場合には、計算方法に一定の基準があり、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して金額を算定するとされています(民法1030条5項)。
以下のように、療養看護型と家事従事型の2パターンに計算方法を分けるのが一般的とされています。

介護した場合(療養看護型)

療養看護をした場合の日当額に、療養看護の総日数を乗じ、さらに裁量割合として0.5~0.8の数字をかけるとされています。この日当額は介護報酬基準額などに基づいて決められます。
たとえば、日当額が7000円で、総看護日数が年300日(10年)、裁量割合が0.5だとすれば、このような計算になります。

7000円×(300日×10年)×0.5=1050万円

もちろん、遺産額を超えたり、遺産額と同額になることは想定されていないので、実際には調整がされることになります。

事業を手伝った場合(家事従事型)

この場合、療養看護型と計算方法は異なり、以下の計算式で金額を算出します。

特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1-生活費控除割合)×寄与期間

特別寄与者が通常得られたであろう給与額は、賃金センサス(年齢、性別、学歴ごとの平均収入の統計資料)を参考に定めます。また、生活費控除割合とは、労働の対価から生活費を控除するために設けられた一定の指標です。家業の収入の中から生活費が支出されていることが多いためです。

特別寄与料の請求先は?誰が払うの?

特別寄与料を請求する先は、相続人です。相続人全員が対象になり、各相続人が法定相続分に応じた割合で特別寄与料を負担することになります。たとえば、特別寄与料が200万である場合、配偶者及び子1人が相続人だとすると、それぞれ法定相続分は2分の1になるので、各相続人は100万円ずつ(200万×1/2)負担することになります。このように、相続人に対しての一種の請求権として、特別寄与料は位置づけられています。

特別寄与料請求の流れ

特別寄与料を請求しようと考えた場合、まずは相続人と直接交渉をし、合意をして決めることが考えられます。交渉が難しいといった場合、家庭裁判所に対し「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てることになります。この調停もやはり、最終的には相続人との合意が必要になるので、合意ができなければ不成立になります。その時は、さらに、審判へ移行してもらうようにし、裁判所の判断に任せることになります。

このように、段階を踏む必要も生じてくるので、早いうちに介護当時の日記や、亡くなった被相続人との関係を示すメールなど、証拠を集めておくのが得策です。

特別寄与料の受け取りに税金はかかる?

特別寄与料は相続人に請求しているため、無事取得した場合、「被相続人から遺贈されたもの」という扱いになり、相続税の課税対象財産に含まれます。具体的には、相続税法に基づき、算出された税額にこの特別寄与料の分として、2割を加算することになります。

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特別寄与料請求をお考えの方は弁護士にご相談ください

特別寄与料を請求できるといっても、このように税金がかかったりなど、知らないことがたくさんあると思います。どのような資料を収集すべきか、どんな手続きを踏めばいいかなど、わからず考えているうちに、時効期間を過ぎてしまうといったこともあるかもしれません。
そのようなことがないように、法律の専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。そして、できる限り早く依頼される方がよいでしょう。主張、立証や収集する証拠についてアドバイスを早い段階で得られるので、スムーズに請求の手続きが進められるかと思います。まずはお早めにご相談ください。

借金を残して死亡した場合、その人が残した借金はどうなるでしょうか。相続人は借金も引き継がなければならないのか、借金を引き継がないでよい方法はないのか、借金を引き継ぐ場合、債権者にどのように対応しなければならないのか等、相続に関する借金問題は、正しく理解しておかなければ予期しない損害を被る可能性がありますので、注意する必要があります。ここでは、相続と借金の問題について、いくつか解説していきます。

相続財産には借金も含まれる

相続人は、被相続人から、相続財産を引き継ぎます。
そして、相続財産は、プラスの財産のみならず、マイナスの財産(借金等)も含まれます。
例えば、被相続人について、預金が1000万円、借入金が1500万円あるような場合、相続人は、1000万円の預金のみならず、1500万円の借金も引き継がなければなりません。
相続した結果、マイナスの財産の方が大きい場合には、残念ながら、相続をしたことで損をしたということになります。

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相続放棄すれば借金は相続しなくてもいい

では、借金等のマイナスの財産を引き継がないために、どのような手段を講じることになるでしょうか。
借金等のマイナスの財産を引き継がず、相続財産としての負債から解放されたい場合には、「相続放棄」の手続きをとらなければなりません。
「相続放棄」の手続きは、必ず、家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければなりません。この手続きを行わない場合、いくら他の相続人との遺産分割の結果、遺産を取得しないこととなったとしても、「相続放棄」はできていませんので、注意が必要です。

相続放棄するメリット

相続放棄をするメリットは、相続財産に含まれるマイナスの財産を引き継がなくてよいということです。相続放棄をすれば、借金、第三者への損害賠償債務、連帯保証債務等、マイナスの財産を引き継がなくてよくなり、債権者に対して支払いを行わないで済むようになります。
また、相続人が複数人いる場合、遺産の最終的な取得内容について、相続人で遺産分割を行わなければなりません。遺産分割は相続人全員で行う必要があり、分割が終わるまで、その手続きに拘束されることになります。例えば、自分以外の相続人同士が揉めているというだけであっても、数年単位で自分も手続きに拘束されるというケースが多く存在します。相続放棄を行えば、相続人ではなかったことになるため、遺産分割にも参加する必要がなくなります。このように、煩わしい遺産分割協議からも解放されるというメリットもあります。

相続放棄するデメリット

他方、相続放棄をするのであれば、当然、プラスの財産を受け取ることもできません。相続放棄は、プラスの財産も、マイナスの財産も一切取得しないという内容のため、プラスの財産は相続し、マイナスの財産は相続しないという「良いとこ取り」はできません。
また、原則として相続放棄は撤回できません。そのため、仮に相続放棄をした後に、多額のプラスの財産があることが判明したとしても、基本的に、プラスの財産を相続するということはできなくなります。プラスの財産があるかどうか、十分に調査を尽くすために時間が必要であるということであれば、「熟慮期間の伸長の申立て」を家庭裁判所に対して行うことになります。

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ほかの相続人とトラブルになる可能性がある

相続放棄を行うと、他の相続人とトラブルになることもあります。
例えば、複数の相続人がおり、遺産に倒壊寸前の空き家があったとします。この場合、誰も、この空き家を相続したいとは考えません。そのため、相続人全員が、内心、相続放棄をしたいと考えていたとします。
そのような中で、他の相続人より先に相続放棄をしてしまうことは可能です。しかし、その場合、「まだ相続放棄をしていない相続人」が、その空き家を管理しなければなりません。そして、順次相続放棄されていき、最後に相続放棄をした相続人は、「自分が取得する財産ではないにもかかわらず」その空き家を管理する義務を法律上負うことになります。
つまり、先に相続放棄をしてしまって、「管理が面倒な遺産の管理を他の相続人に押し付ける」こととなるため、相続放棄をすることで、他の相続人と揉めるきっかけにはなってしまいます。このようなトラブルが起こり得ることは、十分認識しておく必要があります。

限定承認という方法もある

多くの相続案件では、相続人は、単純承認(プラスの財産も、マイナスの財産も全て引き受ける)か、相続放棄(プラスの財産も、マイナスの財産も全て引き受けない)を選択します。
他方、法律上、「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産の責任を負う」という、限定承認という方法も認められています。例えば、預金が1000万円あることがわかったが、負債がいくらあるか分からないという状態において、限定承認したとします。その場合、限定承認の手続きの中で、借金が1500万円あることが分かったとしても、相続人は1000万円だけ、債権者に弁済をすれば良いことになります。すなわち、相続の結果、プラスマイナス0か、プラスで終わることができます。
しかし、実際には限定承認はほとんど利用されておらず、取り扱ったことのある弁護士も非常に少ないと思われます。これは、限定承認の手続きが煩雑で負担が大きいことが主たる原因と思われます。

限定承認ならトラブルを回避しやすい

限定承認であれば、プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産についての責任を負えばよいので、相続人からすれば安心です。また、限定承認は相続人全員で行う必要があるため、相続人同士でトラブルになるということも少ないように思われます。手続き的な煩雑さはあるものの、事案によっては限定承認をすべき事案もあるため、限定承認を検討する際は、限定承認の取り扱い経験のある弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

相続放棄・限定承認には期限がある

相続放棄や限定承認をするには、家庭裁判所に対し、「相続放棄の申述」「限定承認の申述」をしなければなりません。
そしてこの申述には期限が定められており、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」以内に申述を行う必要があります。
この期間を熟慮期間といい、この間に、単純承認するか、相続放棄をするか、限定承認をするか検討し、結論を出す必要があります(熟慮期間内に相続放棄又は限定承認の申述を行わない場合、単純承認をしたことになります)。
熟慮期間が3か月では足りないという場合には、熟慮期間伸長の申立てを、家庭裁判所に対して行う必要があります。

債権者から取り立てを受けた場合の対応は?

熟慮期間中に、債権者から支払を求められた場合、どのように対応したらよいでしょうか。
結論としては、「熟慮期間中であり、相続放棄や限定承認する可能性があるため、待って欲しい」と債権者に対して伝え、単純承認をするか、相続放棄をするか、限定承認するかを早期に判断することになります。

単純承認をした後に、債権者から支払を求められた場合には、その債権が真実として存在するものであれば、法定相続分に応じて支払いをする必要があります。相続人間での負債の負担割合は、別途相続人間で協議を行うことになります。
相続放棄をした後に、債権者から支払を求められた場合には、相続放棄をしたので支払いをしないという旨を債権者に伝え、支払いを拒絶するということになります。

相続財産から借金を返済してしまうと相続放棄ができなくなる

相続財産から、相続財産に含まれる借金を返済してしまうと、それが相続財産の処分にあたり、単純承認をしたものとみなされる可能性があります。その場合、単純承認をしていることとなるため、相続放棄をすることはできなくなってしまいます。
相続放棄を確実に行うためには、とにかく遺産には手を付けないというのが鉄則です。他方、現実には様々な債権者から対応を求められたり、支払いを求められたりすることが多くあります。これらに対してどのように対応するのが適切か、相続放棄に精通している弁護士に適宜相談をしながら進めるのが良いでしょう。

借金の相続に関するQ&A

法定相続人全員が相続放棄した場合、借金はどうなりますか?

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産は、現実の人間は誰も引き継がないということになります。最終的には、引き継ぐ者がない相続財産は、国庫に帰属することになります。国庫に引き継がれるまでの間は、相続財産自身が相続財産法人として権利義務の主体となり、相続財産清算人がその管理を行います。
相続財産に借金が含まれる場合、相続財産清算人が、プラスの財産から借金を返済し、残ったプラスの財産を国庫に引き継ぐことになります。

相続放棄する前に借金があるか調べる方法はありますか?

全ての借金を漏れなく調査する方法はありません。金融機関等からの借金であれば照会により判明しますが、個人からの借入金等は、資料が紛失していることもあり、その存否が不明とせざるを得ないためです。
その上で、調査可能な借金はあります。信用情報を利用している業者からの借入金であれば、CIC、JICC、KSC等に照会をすれば、一括で調査を行うことができます。これらは、相続人の身分であれば、被相続人の負債調査が可能なため、財産調査の一環として、基本的に行うことが多いです。これらの調査により多額の借金が判明した場合には、相続放棄を検討した方がよいでしょう。
なお、これらの調査にも戸籍等の提出書類が必要であったり、回答も一定程度時間がかかったりするため、調査自体は早期に進めることをお勧めします。

借金があることを知らず、相続放棄の期限が過ぎてしまったのですが、相続するしかないのでしょうか?

個々の案件毎に裁判所が判断することになりますが、借金の金額、それが後から発覚した経緯等によっては、「借金があることを知ってから」3か月というように、熟慮期間の起算点が遅くなる可能性があります。 後から借金が発覚した場合でも、諦めずに相続放棄の申述を行うことをお勧めします。
もっとも、必ず起算点を後にずらせるとは限らないため、いずれにしても、早期調査、必要であれば熟慮期間の伸長を行うのがよいでしょう。

相続後に借金が発覚したのですが、相続放棄はできますか?

一度、遺産を処分するなどして単純承認をしてしまった後は、その後に借金が発覚したとしても、基本的に相続放棄はできないものと考えた方が良いです。
一応、遺産の処分を行い単純承認した後に、その遺産の処分行為自体に民法により定められた取消事由がある場合には、その取消により単純承認の効果がなくなり、結果的に、相続放棄を行うことが可能となる場合があるという見解はあります。ただし、実務上も必ずしも統一的な取り扱いがされている部分ではなく、個々の裁判官の判断に委ねているのが現状と考えられます。
したがって、遺産の処分行為を行う際は、「万が一借金が後から発覚しても相続放棄できない」という心づもりでいる必要があります。

亡くなってから4ヶ月ほどたった頃に債権者から連絡があり、借金していたことを知りました。もう相続放棄できないのでしょうか?

4ヶ月の間、特段遺産に手を付けておらず、遺産の処分行為を行っていないという状況があれば、借金の金額や後から判明した経緯によっては、「借金が発覚した時点」が熟慮期間の起算点とされる可能性があります。その場合、借金が発覚してから3か月以内であれば相続放棄ができることとなります。この点も、専門家である弁護士に相談の上、相続放棄の申述を行ってみるのも良いでしょう。

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借金の相続についてお困りでしたら、弁護士にご相談ください

借金はどの被相続人にもある可能性があります。プラスの財産は、後から判明しても再度遺産分割すればよいという程度ですが、借金の場合、一度相続してしまうと、その責任を負わなければなりません。そのため、本来なら借金の調査は必ず行うべきですが、実際には、借金の調査を行わず単純承認している人が大半です。後になって後悔しないように、借金の調査を必ず行った上で、単純承認、相続放棄、限定承認のいずれかを選択しましょう。専門家である弁護士であれば、これらの手続きをスムーズに行うことができ、安心して相続問題に対処することができますので、是非お気軽にご相談ください。

離婚するときに、離婚原因に責任のある配偶者に対して、慰謝料を請求できることがあります。離婚の際には必ず慰謝料が支払われると思われるかもしれませんが、全ての離婚で慰謝料の請求が認められるわけではありません。また、慰謝料の請求が認められたとしても、慰謝料の額にはケースによって大きな開きがあります。

本稿では、離婚する際に、慰謝料の支払いが認められるのはどのような場合か、また、具体的にどの程度の慰謝料が認められるのかということをご紹介していきます。

離婚慰謝料とは?

離婚慰謝料とは、夫婦の一方が離婚の原因を作り、離婚せざるを得なくなった場合に、相手の配偶者の受けた精神的苦痛に対して認められる慰謝料です。これは、離婚の原因となった個別の行為に対してではなく、離婚という結果そのものへの精神的苦痛に対して認められるものです。

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離婚慰謝料を請求できるケース

離婚慰謝料の請求が認められる具体的な行為には、不貞行為・DVなどがあります。
以下では、その中で代表的なものをご紹介します。

不貞行為

不貞行為とは、配偶者がいるにもかかわらず、それ以外の者と関係を持つことです。一般的には、「浮気」や「不倫」と呼ばれる行為ですが、慰謝料を請求するためには、2人きりでの食事やキスだけでは足りず、通常は性行為を伴う関係であることが必要になります。
慰謝料の金額は、婚姻期間の長さや不貞行為の回数・期間に影響されます。また、不貞相手が妊娠・中絶していた場合も、慰謝料の増額事由になります。

DV・モラハラ

DVとは、家庭内で行われる暴力一般のことであり、モラハラとはその中でも精神的な暴力のことを指します。
体にあざなどが残る身体的な暴力は、写真や医師の診断書などの証拠を集めることによって、証明が比較的容易です。これに対して、暴言や冷たい態度をとるといった精神的暴力は、形として残るものではないため、客観的な証拠を集めにくいです。そのため、慰謝料を請求するためには、相手の言動を録音したり、日記に残したりすることで、できる限り物理的な証拠を作成しておく必要があります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、夫婦としての扶養義務や同居義務を果たさないことです。具体的には、自宅を出て長期間連絡をしないことや、必要な生活費を渡さないことです。
悪意の遺棄に対する慰謝料は、結婚期間の長さ、別居期間の長さや別居に至った経緯によって、慰謝料の金額が変わります。例えば、別居期間が長くなるほど精神的苦痛も大きいため、慰謝料の金額も大きくなりますし、不貞行為が原因で一方的に別居を開始すれば、慰謝料の増額理由になります。

浪費やギャンブルによる借金

ギャンブルや浪費で多額の借金をしたことにより離婚せざるを得なくなった場合も、離婚慰謝料を請求できる可能性はあります。
本当に借金で生活が困難となるくらいの精神的苦痛を味わったことを証明するために、細かい借金の額についての証拠を集めておく必要があります。

セックスレス

正当な理由がないのに夫婦間の性行為を拒否された場合、いわゆるセックスレスにより離婚に至った場合にも、離婚慰謝料を請求することができます。
ただし、セックスレスを理由に慰謝料を請求するためには、長期間夫婦の間に性交渉がなかったことが必要であり、性交渉はあったが単に自分が求めたときに応じてもらえなかったというだけでは、慰謝料の請求は難しくなります。

離婚慰謝料を請求できないケース

離婚による慰謝料請求の性質は、法律的には、不法行為に基づく損害賠償請求と呼ばれるものです。そのため、慰謝料の請求をするためには不法行為と評価される程度の違法性を帯びている必要があります。

単なる性格の不一致程度が原因では、離婚は認められても、慰謝料の請求までは認められない可能性があります。また、不法行為と婚姻関係の破綻との間に因果関係がない場合、具体的には、不貞行為が行われた時には既に婚姻関係が破綻していた場合も、慰謝料請求は認められません。

不貞行為が原因で離婚に至った場合は、有責配偶者と不貞相手で慰謝料を分担する関係にあるので、不貞相手が慰謝料全額を支払った後は、配偶者に慰謝料を請求することはできません。

離婚慰謝料の請求でのポイントは「不法行為の証拠」

離婚慰謝料を請求するためには、離婚の原因となる行為についての証拠が必要になります。不貞行為であれば、配偶者と不貞相手がラブホテルへ出入りする写真や、肉体関係の存在が明らかである、あるいはそうした行為があったことを推認させるメール等のメッセージです。

ただし、ラブホテルでの写真が撮れていても、出入りのどちらか片方しか取れていなかったり、写真がぼやけていて誰か判断できなかったりする場合は、不貞行為の存在を立証できず、慰謝料が減額される又は認められないこともあります。

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の相場は、一般的には数十万円から300万円程度の幅に収まることが多いです。
しかし、相場がはっきりと決まっているわけではないので、事案の性質や証拠がどれだけ揃っているかによって、金額にはかなり幅があるといえます。

離婚慰謝料の増額・減額に影響する要因

一般に、婚姻期間が長ければ離婚慰謝料は高くなります。婚姻期間が長いほど、婚姻関係が破綻した際の精神的苦痛も大きくなると判断されるからです。また、相手の行為の悪質さが大きい場合、具体的には、不貞行為なら不貞相手が妊娠・出産した場合、DVなら暴行の程度や頻度が大きい場合は、慰謝料を増額する要因になります。

反対に、婚姻期間が比較的短い場合や、夫婦間に未成熟子がいない場合は、精神的苦痛や離婚による影響が小さいとして、慰謝料を減額する要素として判断されます。

離婚慰謝料の請求の流れ

離婚慰謝料を請求するためには、まず、離婚協議の話合いの中で慰謝料の支払いを求めることになります。話合いで慰謝料の支払いに合意できた場合は、必ず書面を作成するようにしましょう。
当事者同士の話合いで合意できなかった場合は、調停委員を交えた離婚調停の場で話合いが行われます。ただし、調停はあくまで話合いでの解決を目指す場なので、条件で合意できなければ慰謝料は支払われません。

調停でも合意できなければ、最終的に裁判で、裁判官に請求が認められるか判断をしてもらいます。裁判では、慰謝料を請求する側が、請求が認められるための証拠を集めて提出しなければなりません。

離婚慰謝料に関するQ&A

離婚慰謝料の貰い方(受け取り方)は?

慰謝料を支払うときは、現金や預貯金を振り込む方法で支払うことが一般的です。ただし、当事者同士で合意できていれば、金銭に代えて不動産などを取得させることもあります。通常、不動産は財産分与の中で考慮されることが多いですが、当事者が納得していれば、財産分与と慰謝料の支払いをまとめて行うことで、離婚の手続きを一度に清算することができます。

離婚後でも慰謝料請求できますか?できる場合、いつまで可能ですか?

離婚後でも、慰謝料を請求することはできます。ただし、離婚から3年が経過した場合は、時効により慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。そのため、離婚後に慰謝料を請求しようと思ったときは、離婚から何年経過したかに注意してください。

また、離婚する前であれば、早く離婚問題を解決するために、慰謝料についても比較的短期間で合意できることがあります。しかし、離婚した後は、そうした考慮が必要ないので、離婚前と比べて交渉が難航する可能性があります。

離婚慰謝料には税金はかかりますか?

離婚による慰謝料が金銭で支払われた場合、相当な金額であれば税金はかかりません。離婚慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償であり、利益が発生しているわけではないからです。
ただし、慰謝料の金額が不相当に過大な場合や、金銭の支払いに代えて不動産が譲渡された場合は、贈与とみなされて税金がかかる可能性があります。

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離婚慰謝料についてわからないことがあれば弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求するためには、慰謝料の原因となる行為を特定し、必要な証拠を用意しなければなりません。また、金額が高すぎる場合などは、相手との交渉が難航し、慰謝料だけでなく離婚手続きにも影響が出てしまいます。

弁護士にご依頼いただければ、慰謝料の相場や証拠収集についてアドバイスするだけでなく、相手との交渉を代理することで、依頼者の精神的負担を軽減することができます。離婚慰謝料の請求を検討している方は、是非弁護士にご相談ください。

父母間で養育費を取り決めても、その後養育費が支払われないという問題が多く見受けられるのが実情です。
養育費未払いへの対策のひとつとして、公正証書を作成しておくことが挙げられます。
公正証書があれば、強制執行の手続きをすることで、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえて回収することができます。

本記事では、養育費に関することを公正証書に残すことのメリット・デメリットや公正証書に記載しておくべき内容など、“養育費の公正証書”に関して、幅広く解説していきます。

養育費を公正証書に残すべき理由とは?

公正証書とは、裁判官や検察官などを長年努めてきた法律の専門家である公証人が作成する公文書です。
養育費を取り決めたときに、公正証書を残しておけば、養育費の不払いが生じたときに強制執行の手続きを行って、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さ、不払いとなった養育費を回収することができます。また、公正証書は当事者間の合意を確定的なものとする証拠として、信用性が高く、養育費の金額等での将来の紛争・トラブルを防止するのに効果的です。

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養育費に関することを公正証書に残すことのメリット

養育費に関することを公正証書に残すことのメリットとして、次の3つが挙げられます。
具体的にそれぞれ説明していきます。

合意した条件について争いにくくなる

公正証書は、当事者それぞれが公証人の前で内容を確認しながら作成しますので、後日、合意した内容について争いにくくなります。
例えば、あとから、相手から「そんな取り決めをした覚えがない」、「そんな内容は知らない」といってくるようなトラブルは回避できます。

なお、公正証書は当事者それぞれに交付されますが、公証役場でも20年保管されていますので、相手による偽造や破棄などが行われるおそれはありません。
万が一、偽造したとしても公証役場に保管している公正証書の原本を確認すれば、偽造がすぐに判明します。

養育費の支払が滞ったときに強制執行ができる

公正証書を作成しておくと、万が一、養育費の支払いが滞った場合は、裁判所の手続きを経ずに強制執行の手続きができます。強制執行の手続きをすると、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえ、不払いとなった養育費を回収することができます。

※なお、強制執行の手続きを行うには、「強制執行認諾文言付公正証書」にしておく必要があります。

財産開示手続きが利用できる

まず、財産開示手続きとは、裁判所に養育費を滞納している相手を呼びだし、自己の財産について陳述させて財産を特定する手続きです。
以前は、調停や審判、裁判などの手続きで養育費を取り決めた者に限定されていましたが、2020年4月に民事執行法が改正されて、公正証書(強制執行認諾文言付)で養育費を取り決めた者も財産開示が利用できるようになりました。財産開示手続きに応じなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑罰が課せられる可能性がありますので、実効性の向上が期待され、利用するメリットが高まりました。(改正前は30万円以下の過料のみでした)。

養育費に関することを公正証書に残すことのデメリット

他方で、養育費に関することを公正証書に残すデメリットもあります。
主に、次の3つが挙げられますので、それぞれ詳しくみていきましょう。

作成費用がかかる

公正証書は公証人によって作成される公文書のため、作成には次のとおり作成費用(手数料)がかかります。
公正証書に記載させる養育費の合計金額(支払期間の上限は10年)によって、作成費用(手数料)は異なります。
下記表のとおり、取り決めた養育費の合計金額が高ければ高いほど、公正証書の作成費用(手数料)は高くなります。

そのほかにも、公正証書の文案の作成や公証役場での手続きの代行などを弁護士に依頼すると、別途弁護士費用が発生します。

目的の金額(養育負の合計金額) 公正証書作成の手数料
100万円以下 5,000円
100万円超、200万円以下 7,000円
200万円超、500万円以下 11,000円
500万円超、1,000万円以下 17,000円
1,000万円超、3,000万円以下 23,000円
3,000万円超、5,000万円以下 29,000円
5,000万円超、1億円以下 43,000円

作成するのに時間がかかる

公正証書は、すぐに完成して受け取ることができるものではありません。
まず、公正証書にする内容が決定すれば、公証役場へ連絡し、公正証書の作成を申し込みます。
しかし、公証人との文案の調整や公証役場の予約状況もあるので、申し込みを行った当日中に、公正証書を作成するのは、現実的に難しく、公証役場や時期などによって異なりますが、約2週間程度、準備に時間を要します。

準備が整うと、事前に指定された日時に夫婦ともに公証役場へ行き、公証人と最終確認をしたうえで、公正証書を完成させます。
完成した公正証書は、公証役場に行った日に受け取って持ち帰ることができます。

作成するためには夫婦で協力しなくてはいけない

公正証書は、夫婦で取り決めた内容で作成する必要があり、相手と話し合って、内容について合意していることが前提です。
また基本的に夫婦ふたりとも、公証役場に出向いて、公証人の前で、夫婦それぞれが意思を互いに確認したうえで公正証書を作成しますので、夫婦の協力は必要不可欠です。

養育費と公正証書の書き方

養育費について公正証書を作成するときに、記載しておくべき事項があります。
具体的に記載しておけば、後々のトラブルや紛争を未然に防げられます。
では、記載しておくべき事項について、具体的に説明しておきましょう。

毎月の支払額

養育費は、子供の日々の生活にかかる費用であるという性質上、“毎月払い”にするのが通常です。
毎月の支払額は明確に公正証書に記載しておきましょう。

養育費の金額は夫婦で合意できれば自由に決めて問題ありませんが、だいたいの相場を知りたいという方もいらっしゃるかと思います。
相場を知る方法として、裁判所のウエブページで公表されている「養育費算定表」を確認することになります。
養育費算定表は夫婦それぞれの年収と雇用形態(自営業か給与所得者か)と子供の人数と年齢で算出できます。
参考例として、次のとおり、2つのパターンで養育費の相場を把握してみましょう。

【例1】
夫(義務者・会社員)年収500万円、妻(権利者)専業主婦、子供1人(0歳~14歳)の場合
相場・・・6~8万円

     支払う側が年収500万、受け取る側が専業主婦の養育費相場

【例2】
夫(義務者・会社員)年収300万円、妻(権利者・会社員)年収200万円、子供2人(いずれも0歳~14歳)の場合
相場・・・・2~4万円

     支払う側が年収500万、受け取る側が年収200万の養育費相場

養育費の支払日

養育費の毎月の金額だけでなく、養育費の毎月の支払日についても、明確に公正証書に記載しておきましょう。
例えば、「当月分」を「毎月25日」や「毎月末日」までに支払うなどです。
取り決めておくと、養育費を使う予定も立てやすく、支払いが遅れているかどうかも確認しやすくなります。

支払開始日

養育費をいつから支払うのか、支払開始日を取り決めておくことも重要です。
当事者間で話し合って自由に決めても問題ありませんが、一般的に、離婚前に取り決める場合は「離婚が成立した月から」支払開始とするケースが多いです。
離婚をした後に養育費を取り決めた場合は、支払開始日を「●年●月●日から」と明確に記載していたほうがいいでしょう。

支払終了日

養育費の支払終了日も事前に明確に取り決めておいたほうが、後からのトラブルや紛争を防げます。
一般的には、子供が社会的・経済的に自立するであろう「20歳になるまで」と取り決めることが多いです。
しかし、大学に進学させる予定の場合は、「大学卒業するまで」や「満22歳に達した3月まで」などと夫婦で合意すれば取り決めて問題ありません。
ただし、注意しないといけないのは、「大学卒業するまで」と取り決めた場合、子供が浪人や留年などをして、社会的・経済的に自立する時期が延びたときに、いつまで養育費を支払うのか問題になるケースもあるので、具体的に決めておく方が良いでしょう。

支払方法

養育費の支払方法もしっかり取り決めて公正証書に記載しておきましょう。
手渡しでも問題ありませんが、養育費の受領を証明しづらいという問題があり、一般的には、銀行口座への振り込みが多いです。口座名義は親名義の口座でも子供名義の口座でも問題ありませんので、当事者間で話し合って決めましょう。
また、通常は、銀行口座への振り込みをする場合には振込手数料がかかりますので、この振込手数料を振り込んだ側が負担するのか、振り込まれた側が負担するのかも明確にしておくとトラブルを未然に防止できます。
一般的には、振り込んだ側が負担するケースが多いです。

養育費の変更について

離婚してから、養育費を支払い終えるまで長期にわたるので、(元)夫婦どちらにも生活環境の変化は当然に起こりえることです。
例えば、どちらかが再婚して新たに子供が生まれたり、再婚相手と子供が養子縁組をしたり、リストラに遭い失業したりするなどの場合です。
公正証書を作成するときに、「離婚後、やむを得ない事情の変更があった場合は、当事者間で改めて誠実に協議をする」などの文言を入れておくと、安心です。

強制執行について

公正証書を作成するときに、「強制執行認諾文言」付きにしておくと、裁判所の手続きを経ずに強制執行の手続きをして、相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえ、不払いとなった養育費を回収することができます。

「強制執行認諾文言」とは

公正証書の末尾に記載する、「債務者は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」という一文のことです。

一度公正証書に養育費のことを残したら、金額は変更できない?

公正証書を作成したあとに、養育費の金額をはじめ、内容・条件についても変更したい場合は、父母間で合意できれば変更は可能です。話し合いで変更ができた場合には、変更した内容で、新たに強制執行認諾文言付の公正証書を作成しておくようにしましょう。
父母間で合意できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てして話し合って決めるか、審判を申し立てして裁判所に判断してもらうことになります。
ただし、裁判所の手続きでは、養育費の条件を定めたときには予測できなかった「やむを得ない事情」が認められる必要があります。

よくある質問

養育費について公正証書を作成したいのですが、相手に拒否された場合はどうしたらいいですか?

公正証書は、夫婦ふたりの同意と協力のもと作成しますので、相手が拒否をしていると公正証書の作成は断念せざるを得ません。
相手に拒否された場合は、方法を変えて、家庭裁判所に調停を申し立てしましょう。
調停では、調停委員を交えて話し合いを行い、養育費について合意できれば、調停が成立します。
調停が成立すると「調停調書」が作成されます。調停調書は、裁判の確定判決を同じ効力をもちますので、公正証書とも同等の効力を持ちます。
もし、調停が不成立になっても、審判や裁判で裁判所が養育費について決定し、「審判書」、または「判決書」が作成されます。

公正証書が作成できなくても、調停調書や審判書や判決書などがあれば、養育費の不払いが生じたときは、強制執行の手続きで相手の財産を差し押さえたり、裁判所から養育費の支払いを勧告してもらえたりします。

養育費の公正証書はどこで作成することができますか?

養育費の公正証書は、「公証役場」と呼ばれる場所で作成します。

公証役場とは、法務省によって管理されている役所のひとつです。
聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、国民が公証役場を利用しやすいように、日本各地・約300ヶ所に設置されています。

どの公証役場で作成するかについては、自分たちで希望する場所の公証役場を選んで利用することができます。
ただし、公正証書を作成するときには、実際に公証役場に行かなければなりません。そのため、夫婦双方にとって、利便性のいい公証役場に依頼するのがいいでしょう。

離婚の際に公正証書を作成したいのですが、養育費に関して書けないことなどありますか?

公正証書は、執行力もあり、強力な証拠として使える公文書です。そうであるがゆえに、公正証書には記載できない内容があります。
「養育費の支払いの拒否」や「養育費の放棄」、「養育費の利息制限法を超える金利の記載」などは、公正証書に書けませんので、公証人に削除される可能性が高いです。
養育費の関連以外にも、「面会交流の拒否」や「親権者の変更予定や変更の禁止」、「慰謝料や財産分与の長期分割払い」なども記載できません。

そのほかに、夫婦どちらかに対しての罵倒や悪口など、公序良俗に反するような内容についても記載できません。

公正証書がないと養育費がもらえませんか?

公正証書がなくても、父母間で話し合って決めた養育費を請求することや、養育費を受け取ることは可能です。
養育費の請求方法は、電話やメールなどで行ってかまいません。内容証明郵便を送付するのも、相手に心理的プレッシャーを与えるのに効果的です。
もし、取り決めた養育費が滞った場合も、電話やメールや内容証明郵便などで督促することは可能です。
しかし、公正証書がないと、督促しても相手が応じない場合に、裁判所の手続きを踏まえなければ強制執行の手続きが行えないため、手間・時間・費用などがかかります。

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養育費の公正証書を作成する際は弁護士にご相談ください

養育費は、子供が健やかに成長するための大切なお金です。
離婚後に、金銭面で子供に不自由をさせないためにも、しっかり養育費を取り決めて公正証書に残しておきましょう。
公正証書は自分でも作成できますが、決して容易なものではありませんので、作成に労力や手間を費やすことになります。また記載漏れがあれば、将来トラブルを招いてしまうおそれもあります。
養育費に関する公正証書の作成を検討している方や、お悩みのある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、それぞれの事情を伺い、困っている点、悩んでいる点について、的確にアドバイスをいたします。
また、公正証書の作成も弁護士に一任できますので、相手とのやりとり、公証人とのやりとりなど、手間のかかる作業が軽減できます。まずは弁護士法人ALGにお気軽にご相談ください。

「信号待ちで停車していたら、突然、後ろの車から追突された」
このように、全く自分に責任がない事故のことを、「もらい事故」といいます。
何も悪いことをしていないのだから、慰謝料は多くもらえるはずと思う方がいるかもしれませんが、実はもらい事故だからと言って、十分な慰謝料がもらえるわけではないのです。

それでも、相手方保険会社が提示する慰謝料額に安易に応じると、適正な慰謝料がもらえなくなる可能性があるため注意が必要です。
そこで、もらい事故の被害者の方が損をすることのないよう、本記事で、もらい事故の慰謝料や、被害者が注意すべき点について解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

もらい事故と通常の事故の違い

もらい事故とは、被害者に全く過失がない事故のことをいいます。
過失とは、交通事故を起こした責任のことです。
通常の事故では、加害者と被害者、どちらにも過失があるケースが多く、例えば、お互いに前方不注意で衝突したような場合は、それぞれの責任の重さを「7:3」のように、過失割合で示します。そして、自身の過失分だけ、慰謝料・賠償金が減額されることになります。これを過失相殺といいます。

一方、もらい事故では、被害者に過失がないため、「10:0」となり、過失相殺が適用されず、慰謝料を満額もらうことができます。
ただし、相手方保険会社から相場よりも低い慰謝料が提示されるおそれがあるため、油断できません。

もらい事故になりやすい例

もらい事故になりやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 赤信号で停車中に、後ろから追突された
  • 駐車場に適切に停めていた車がぶつけられた
  • 交差点に青信号で進入したところ、赤信号無視の相手と出合い頭にぶつかった
  • 対向車線を走る車がセンターラインを越えて、ぶつかってきた
  • 青信号で横断歩道を渡っていたら、車にはねられた

もらい事故の慰謝料相場はいくら?

慰謝料の金額はケガの症状や治療内容、通院日数・期間・頻度などにより決まるため、もらい事故特有の慰謝料の相場というものはありません。ただし、もらい事故の被害者には全く過失がないため、過失相殺による慰謝料の減額を受けず、基本的な慰謝料相場の満額を受けとることができます。
基本的な慰謝料相場については、以下のページで解説していますので、ご一読ください。

交通事故の慰謝料相場

もらい事故ならではの注意点

もらい事故の被害者は、慰謝料を満額受け取れるため、心配がないように見えますが、実は注意すべき点があります。特に、相手方保険会社との示談交渉のときには、保険会社と直接調整をしなければならないので、気をつけなければいけません。
どのような点に注意すべきか、以下にポイントを挙げますのでご確認ください。

もらい事故は保険会社が示談交渉を行えない

加害者と被害者、どちらにも過失がある事故であれば、お互いに加入する保険会社同士で示談交渉を行うのが通常です。
しかし、もらい事故では、被害者に過失がないため、被害者が加入する保険会社の示談代行サービスを利用できず、被害者自身で加害者側の保険会社、または加害者本人と交渉する必要があります。

なぜなら、加害者に賠償金を支払う必要がないのに、被害者側の保険会社が示談交渉を行うことは、弁護士法で禁止されているからです。
一方、加害者は示談代行サービスを使い、保険会社を代理人として、示談交渉を行うケースがほとんどです。つまり、慰謝料などの賠償金を受けとるために、もらい事故の被害者本人が、加害者側の保険会社と示談交渉を行う必要があります。

「もらい事故で過失ゼロだから慰謝料額に心配はない」というのは間違い

慰謝料を計算するための算定基準は、3種類あります。

①自賠責基準:法律で決められた最低補償の基準。基本的に、3つの基準の中で最も低額となる。

②任意保険基準:任意保険会社ごとに定める基準。基本的に、自賠責基準とほぼ同額か、多少高い程度となる。

③弁護士基準:裁判例をもとに作られた、弁護士や裁判所が使う基準。基本的に、最も高額となる。

相手方の保険会社が提示する慰謝料は、自賠責基準か任意保険基準で計算された、低額なものであることがほとんどです。しかし、被害者が本来受け取るべき慰謝料は、最も高額で、法にかなった弁護士基準の慰謝料であるといえます。

ただし、弁護士基準の慰謝料を請求できるのは一般的に弁護士だけです。被害者個人で請求しても、認めてもらえないことがほとんどでしょう。
弁護士基準を使うと、どのぐらい慰謝料がアップするのか、例をあげてみましょう。

弁護士法人ALGの事例ですが、弁護士が介入し、弁護士基準による増額交渉を行った結果、軽症のケースで、慰謝料を12万円から70万円、後遺症の残ったむちうちで、130万円から300万円に増額した事例があります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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もらい事故に見えても過失割合で揉めることがある

もらい事故に見えても、相手方保険会社が、被害者にも一定の過失があると主張してくることがあります。
過失割合でもめやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 正しい事故状況を示す証拠がない:ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、ブレーキ痕などの明確な証拠がない
  • 事故状況について当事者間の証言が食い違っている:ウィンカーを出したか、前方不注意があったか、速度違反があったか、停車していたかなど
  • 駐車場での事故:駐車場での事故にあてはめられる、過去の裁判例データが少ないため

もらい事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

もらい事故の示談交渉を被害者に有利に進めるには、交通事故を得意とする弁護士に依頼するのが望ましいといえます。相手方の保険会社は年間何十件も示談交渉を行う、いわば示談交渉のプロです。専門知識のない被害者が個人で保険会社と交渉を行うと、保険会社主導で示談が進み、適正な慰謝料が得られなくなるおそれがあります。
弁護士に依頼するメリットについて、以下でご紹介します。

弁護士に依頼すれば高額の慰謝料を受け取れる可能性がある

相手方の保険会社は、被害者本人と示談交渉をしている場合は、弁護士がいないため、弁護士基準の慰謝料を支払おうとは思っていません。そのため、「自賠責基準」か「任意保険基準」で計算した、低額な慰謝料を被害者に提示することがほとんどです。
しかし、弁護士が示談交渉に入れば、高額になることが多い「弁護士基準」による慰謝料を請求することができます。

保険会社は弁護士が登場すると、裁判を意識するようになります。裁判を起こされたら、保険会社としても弁護士を雇う、敗訴したら高額な慰謝料を支払う必要があるなど、余計な労力やコストがかかってしまいます。そのため、被害者が弁護士に依頼すると、裁判を起こさずとも、保険会社が弁護士基準に近い金額で慰謝料の支払いに応じるというケースが多々あります。

相談のタイミングが早いほどメリットが大きい

正しい金額の慰謝料をもらうには、できる限り早く、弁護士に依頼することが重要です。
慰謝料の金額はケガの重さだけでなく、通院期間や通院頻度、治療の内容などをもとに算定されるため、通院の仕方が重要となります。

例えば、ケガの治療中に弁護士に依頼すれば、適切な通院頻度や治療の受け方のアドバイス、後遺症が残った場合に備えて受ける検査のアドバイス等が受けられるため、慰謝料の減額を防ぎ、適正な慰謝料を受けとれる可能性が高まります。
また、示談交渉や保険関係の書類の準備など、面倒な手続きを弁護士に頼むことができるため、余計な手間がかからず、治療に専念できるというメリットもあります。

後遺障害等級認定の申請についてサポートを受けられる

治療を続けても完治せず、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請することが通例です。後遺障害等級認定を受けると、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益をもらえるようになるため、賠償金額が跳ね上がります。

弁護士であれば、この賠償金額を大きく左右する「後遺障害等級認定の申請」のトータルサポートをすることが可能です。例えば、認定を受けるために必要な検査・治療、「後遺障害診断書」に書くべき内容についてアドバイスすることが可能です。さらに、主治医が作成した後遺障害診断書の内容を確認し、不備や誤りがあれば、主治医に追加記載や修正を求めるなどの対応をとることもできます。

なお、後遺障害等級が非該当となってしまった場合でも、弁護士に異議申立てを依頼すれば、求める等級認定を受けられる可能性があります。

弁護士費用特約があれば弁護士費用を自己負担なしで依頼できる

弁護士費用特約とは、加害者との示談交渉を弁護士に依頼するとき、被害者が負担することになる弁護士費用を、保険会社が負担してくれる特約です。

自動車保険などに主に付けられる特約で、一般的には、着手金や報酬金などの弁護士費用は300万円まで、法律相談料は10万円まで、保険会社が負担してくれます。
重いケガや死亡事故でない限り、一般的に300万円の上限額超えることがないため、この特約を使えば、事故の被害者は、実質上0円で示談交渉を弁護士に依頼できることになります。
自分の自動車保険だけでなく、家族の自動車保険、火災保険、医療保険などにも特約が付いている可能性があるため、まずは調査することをおすすめします。

もらい事故の慰謝料に関するQ&A

もらい事故に遭いました。怪我なしで物損のみですが慰謝料は請求できますか?

ケガがなく物損のみの事故では、基本的に、慰謝料を請求することはできません。
慰謝料は、事故によって受けた精神的苦痛に対する補償ですが、物損事故では、壊れた車や物の補償を受ければ、同時に精神的苦痛もなくなるため、別途で慰謝料を支払う必要はないと考えられているからです。

そのため、物損事故で請求できるものは、車の修理費や買替費用、代車費用、事故で破損した物の修理費などに限定されます。
ただし、家族の一員であったペットが亡くなってしまった、車が突っ込んだことで自宅が倒壊してしまったようなケースでは、精神的苦痛が特別に大きいと判断され、例外的に慰謝料が認められる場合があります。

物損事故についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

物損事故とは

もらい事故の慰謝料と休業損害は別々に請求できますか?

慰謝料と休業損害は、どちらも損害賠償金の一部であるため、別々に請求することが可能です。
休業損害とは、事故によるケガの治療のため、仕事を休んだことで減った収入をいいます。
被害者の収入や休業日数をもとに金額が決められるのが基本です。収入がない専業主婦(主夫)であっても、家事労働には経済的価値があると考えられているため、請求できる可能性があります。
ただし、休業損害を請求するには、仕事を休んだことと、交通事故との因果関係を証明する必要があり、示談交渉でも争いになりやすいため注意が必要です。例えば、保険会社が「もうけがは治っているから、この日は仕事を休む必要はなかった」と主張し、休業日数の一部を対象外としてしまうおそれもあります。慰謝料、休業損害いずれも十分な賠償を受けたいのであれば、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。

休業損害の詳細については、以下の記事をご覧ください。

交通事故の休業損害とは

もらい事故に遭ったら弁護士にご相談ください

「もらい事故だから、慰謝料のことで心配する必要はない」という考えは誤解です。
むしろ、「もらい事故だからこそ、慰謝料が低額におさえられる可能性がある」と考えるべきでしょう。
それは、前述のとおり、被害者に過失がない場合は、被害者自身で、保険会社と示談交渉を行う必要があるからです。

保険会社の担当者は、これまで数多くの交渉に関わっているため、十分な知識と経験を持っています。
そのため、専門知識のない被害者が、個人で、保険会社と対等に交渉を行うのは困難です。
この点、交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、保険会社の担当者と対等な立場で対応してくれます。また、弁護士基準での増額交渉も行えるため、慰謝料の増額も期待できます。
弁護士法人ALGでは無料相談も受けつけておりますので、もらい事故でお悩みの方は、ぜひご相談下さい。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。